【 にがつみっかだから 】

 山茶花の花言葉は、“無垢”。
 赤ならば“謙譲”、白ならば“理想の恋”。
 椿の花言葉は、“誇り”。
 赤ならば“高潔な理性”、白ならば“理想の愛”。


「…また、か」
 男は呟く。
 癖のある長い銀の前髪。
 其れと同じ色をした瞳―――左目には大きな引き攣れた疵痕。
 唯一つの目が細められて、もう一度呟く。
(また、雪が……)
 降ってきたのだと。

「―――また、か」
 今度は違う場所で同じ台詞が呟かれる。
 言葉を発したのは先程の人物と酷似した風貌の男。
 ただし、一つだけ違うのはこの人物には両目がきちんとあると言うことだ。
 その他は似ていると言うよりも同じであると言った方が早い。
 僅かに先程の男の方が幼い印章を与えるだろうが、
二人並べば目以外で見分けのつく者はそう多くない筈だ―――己の目の前に立つ青年以外は。
 例え同じ格好をして傷が見えない様並んだ所で。
 相手のフリをして電話をかけた所で。
 声だけでも、この青年は二人の差異を見破ってしまう。
 いとも簡単にさも当然と言った風に。
「また、とは?」
「…彼奴が居ない」
 尋ねなくとも推測はついているだろうに、わざわざ聞くのがこの青年の性格でもある。
 返答を聞き、ああ成る程確かにといった表情をするのも。
「彼なら書庫だ」
「……」
 冒頭の言葉を今度は疑問符付きで言いそうになったのを堪えて。
 男は青年を見た。
 瞳の中には理由を催促する意志。
「最近とある本が気に入った様で…此処毎日、朝から晩まで入り浸りになっている」
「食事は?」
「無論摂らせているが、声を何度かかけなければ気付かないな」
 青年は苦笑する。
 余程熱中しているのだと。
 此の青年を以てしても予想外の行動らしい。
 男に於いては尚更の事。
 正直に言って、まさかと疑う己が居る。
 信じていない訳では無い、それでも。
「…書名は?」
「植物図鑑」
「……。何?」
「だから、植物図鑑だ、と」
「………」
 思わず聞き返すのに反応が遅れてしまったのは更に範疇外の言葉が返ってきたからだ。
 書庫に入り浸り、と言うからには何か違うものを想像していたのに。
 開いた口が塞がらずに――実際に開けていた訳ではなく、心情的な表現として――男が黙っていると。
「君も昔は良く書庫にいたな。…もしかして君も」
「違う…!」
 5年も前、と言うのかそれともたった5年前、の事というのか。
 多くのものを得て多くのものを喪ったあの大切な硝子の様に脆い月日を、青年は示唆したのだ。
 青年の記憶では初めて出逢ったのは書庫。
 もっと言えば部隊メンバー選抜の模擬戦シミュレーター時。
 しかしあの時の印象が忘れられなかったと、時折振り返る。
『優しい目をしていた』
 とは彼の言葉。
 青年の方は既にシミュレーターで互角に引き分けた相手の名を知り、どんな人物かと考えていたらしい。
 生憎と己は全く意識の外で、勝てなかった事を理由に更に修行に励もうと意志を固めただけだった。
 其処で偶然にも互いの姿を初めて見た訳である。
 序でに言えば。
 男には感覚が無いのだ、本を読んでいる時の表情など。
 どんな顔をして書物に対しているのかなどとは。
「俺はそんなものを読みたいとは…」
 あくまでも図鑑や事典といったものは資料や調査の時に使用するぐらいで、読むものではないと思っていた。
 だがあの男の場合はどうやら違うらしい。
 とは言え、初めて興味を持ったものが書物だという点に。
「―――矢張り、彼は」
「エルザム」
 男は青年の続く言葉を遮る。
 悲しい、優しい瞳で。
「剰り、言うな」
「…ああ」
 青年の感じ方ももっともだと思う。
 確かに其れは正しい見方だ、だが己は其れを安易に口にしてはいけないと思う。
 そしてこの青年にも剰り言って欲しくない。
 過保護とも呼べる振る舞いだ、此は。
 些か気を遣うにしては度の過ぎた干渉。
 ―――彼がこの屋敷へ来てからもう1年も経つというのに。
(1年…?)
 ふと思考が止まる、その一点に。
 気付かなかった、そうだいつの間にこんなにも時が過ぎて。
 己がした注意も忘れて何やら考えに耽っている男の様子を見て、青年は苦笑する。
(そう言う所も、同じだな)
 と。

 窓の外。
 降る雪が。
 灰の空に白い。
「…っく」
 中途半端に零れたくしゃみに、男は小さく身震いをした。
 暖房器具をつけて、膝掛けをして、それでも忍び寄る寒さに敏感に反応を示した身体。
 外の温度よりは暖かい――当然の事だが――己よりも冷たいページに手を置く。
 特に、意味は無い。
 意識して置いたものでは無く、単に移動しただけだ。
 瞳は変わらず窓の外にある。
 空に、向けられていた。
「………」
 急激に脳裡から引き出された情景。
 回顧する、あの瞬間を。
『知りたいか? どうしても。知った事で傷つき、何かを喪う事になっても』
 問われた。
 時の流れが緩やかなこの場所で。
 まるで世界からたった一つ置いて行かれた様なこの場所で。
 優しい瞳をした男に。
『俺は、今のお前のままでも良い。だが、もしお前が』
 望むのであれば。
 答えようと。
 お前の問いに応えようと。
「…ゼンガー…」
 我知らず口から漏れ出たのは。
 深々と降る雪。
 未だ止まず。
 止みそうにも、無く。

「…ふむ、それで?」
「だから料理の準備はお前に任せる、問題は」
「彼に渡す物か」
「明日明後日に必要な物だからな…買い出しに行くという訳にもいかん」
「行けない事は無いが―――」
「船員たちを少しは休ませてやれ。何より総メンテナンス中だろう」
「……残念な事に」
「俺がもう少し、早くに気付いていれば…!」
「気に病んだ所で仕方が無い、今は善処を考えるべきだ」
「そうだな」
 青年は男とテーブルを挟んで何やら相談を重ねていた。
 此も昔懐かしい――今は隣に立って戦場の図を見比べる事の方が多い――光景だと思うのだが。
 またしても其れは此方の独り相撲に終わるだろう、
目の前の男の脳内では密かな計画を如何にして順調に進めるかの試案が急速に行われている。
 郷愁の言葉を一つでもかければ、消えてしまう程。
 集中力とは裏腹に記憶は抜けがある。
 次々と案を打ち出すからだと、言っても理解してくれるだろうか。
 若しくは思考の段階移動が早いからだとも。
 ひとまずある程度の計画が出来上がったのだろう、男が立ち上がった。
 手には幾つかのメモ。
 青年にも同じようなメモを渡し、一つ一つ指示を加えていく。
「後は何処まで準備が出来るか、だが」
「出来るかが問題では無い」
「やらなければならない、そう言う事か」
「無論」
 意志が決まれば行動は早い。
 二人は早速動き始めた、二日後へ向けて秘密裏に。

 梅、福寿草、クロッカス、山茱萸、薺、水仙。
 もう少ししたら、沈丁花、馬酔木、春蘭、菫、蒲公英。
 もう一体何が切欠だったかは忘れてしまった、興味が湧いたものから次々に手に取り眺めては時を過ごす。
 気付けば1日が終わっていた。
 日が天に昇り、そして沈み。
 星が瞬く頃になっているのだ、いつの間にか。
 食事の度に呼ばれるのだが、剰り食べているという感触は無い。
 とりあえず摂取している。
「………」
 兎に角片っ端から見ては閉じ、見ては閉じ。
 目に入れるだけは入れて、目を引いた物の説明は読む。
 其れ以外は眺めるだけ。
 そんな事を此処数日繰り返していた。
 だが今日は違う。
 意識の空いた隙間に天を見る。
(積もるのか…)
 己の内には雪に惹かれる心が在る、不思議と外へ出て行きたいと想う。
 あの森の奥、ひっそりと咲く山茶花を見たくなる。
 海へ、波が揺れている様を見たくなる。
 鈍色の淀んだ空に真っ直ぐ顔を向けたくなる。
 でも。
 ―――――何かが、足りない。
 己が貪欲に求めているものの正体が分からない。
 何故こんなにも求めてしまうのかが分からない。
 気付かない様にしているだけなのかも知れないが、少なくとも今は。
 分からない。
 一体何が。
 その時。
「ウォーダン、居るか?」
「…ゼンガー?」
 ノックと同時に顔を見せた人物に目を丸くした。
「少し、付き合え」

 真っ直ぐに白い原を歩く。
 剰りにも静かすぎて怖いと思う程。
 遠くで波がぶつかり、また引いていく音がする。
 鳥の掠れた声と羽ばたきの音。
 そして、足が雪を踏み締める音。
 靴の底から伝わる感触が不意に、以前の事を思い出した。
『…雪は、好きか?』
 答えられずに、倒れてしまった事を。
 世界が黒と白の中間色で埋められていく度に、外へ出たいと感じる。
 空気は冷たく肌を刺し、息は凍えて白くなる。
 どんなに服を重ねて暖かい格好をしていても足下から忍び寄るものに勝てはしない。
 だが誰に何と言われようと外へ出てしまう。
 例え途中から雨になってしまった時でも。
 外に、居た。
「ゼンガー」
「……」
 別にこうして外へ出る事自体は悪い事では無く。
 相手に不服があるという訳でも無い。
 文句を付けるとすれば唯一点。
「おい」
「…何だ?」
「何処へ行く?」
「……」
 一度呼びかけを無視したかと思えば、もう一度問いに答えようとしない姿勢の男。
 煩わしい、と言うよりもその奇妙な態度の理由が気になる。
「……」
 ―――何よりもこの道は。
 己が良く知っている、あの場所への道。
『どうすればいい、どうやって生きていけばいい…!?』
 揺れ動く感情をそのままぶつけた。
 止められなかった。
 相手がどんなに戸惑うかも知っていたのに。
 困らせてしまうのだと、理解していたのに。
 それでも問わずには居られない。
 離別への恐懼。
 掬われる足下。
 消えゆくのは。
「…最近、植物図鑑がお気に入りの様だな」
「あ、ああ」
 突然の話題だった。
 そう尋ねられて戸惑いながらも肯定する。
 足を止めると其処はもう見慣れた山茶花の庭。
 雪と同化する白、時を留める事の出来る赤。
 互いに引かれ合い相反する者達。
「ならば分かるか?」
「何を…」
「山茶花と、椿の違いが」
 振り返った男は手に白い花を持っていた。
 己が視線を泳がせている間に手折ったものらしい。
「さて此は?」
「………」
 どちらかと問うている。
 図鑑で見た限り殆ど差が無い生え方をし、椿の中には山茶花に分類される物もあるぐらいと書いてあった。
 素人が図鑑を見ただけでどちらかを判断しろとは酷な話だ。
 思い切り理不尽にも程が過ぎると言う様な目線で睨むと、男が苦笑した。
「すまんな…」
「っ」
 白い、花が。
 肩に置かれる。
 そっと触れた掌に訳も無く慌て。
 挙げ句の果てには。
「お前には白だな」
 等と勝手に呟くものだから。
 花を無碍に扱うのは心苦しい故、男に返す。
 ―――花に罪は無い。
(当たり前だ…!)
「帰る!」
 言い残して去ろうとしたが。
 気付けただろうか、あの時とまるで同じだと。
 心が訳もなく落ち着かずに揺れ動き、惑う。
 ところが。
「帰り道はお前が居ないと、分からん」
 たった一言で。
「…知らん」
「お前が必要だ、ウォーダン」
 その言葉だけが。
「知らん…!!」
 どんなに突き放そうとも己が心を貫く何かが在る。
 主人を裏切り、意に反する行動をさせる何かが。
 単に帰り道の案内をしろと言うだけなのに、此の男に掛かれば響きが違う。
 本当に欲しいのがこの一言では無いのだとしても―――――其れを望めば終わりだという事も。
 分かっているのに胸の奥が大きな裂け目に悲鳴をあげる。
 闇の中、ぽつんと咲く白い花が。
 哀切の叫びに揺れた。
「帰ろう」

 それから2日後。
 男は同じように書斎に閉じこもり、植物図鑑に没頭していた。
 しかし先程からは壁に掛かっている時計と図鑑の間を、視線が行き来している。
 普段であれば夕食の時間だというのに、全く呼ばれない事が不思議なのだ。
 そう思いつつまた図鑑に目を通そうとすると。
 ノックが二つ。
「…ゼンガーか?」
「ご希望に添えず申し訳ない」
 現れたのは長い金の髪をした青年。
「彼は今少し手が離せない状況にあるので、私が迎えに来た。夕食が遅れてすまないと、伝えて欲しいと」
「別に、其れは構わんが…」
「では」
 扉を開けて先へどうぞと促される。
 階下へ降りてふと見えるリビングの様子がいつもと違う事に気付く。
 足を踏み入れてからは理由がはっきりと分かった。
 電灯照明を使用せず、太めの蝋燭を多用する事でリビングを照らしているのだ。
 窓の側に置かれたテーブルのシーツは月光に照らされて白い雪原と同じ輝きを持つ。
 序でに、必ず蝋燭の傍には白い花――山茶花とも椿とも言えぬ其れ――が飾られており、
蝋燭の明かりに濃く陰影を創り出していた。
「君の席は此処だ、ウォーダン」
 今まで席を指定された事など無い。
 一体強は何が起こるのかとつい警戒心を露わにし、唯言われるままに坐っていると、青年が微笑する。
 緊張しなくとも良いと。
「今夜は良い夜になる、必ず」
 何処か謎めいた口調に思考がついて行かない。
 問いたいと思うのだが此処で問うのも妙に野暮な気がする。
 命が危険に晒されている訳でもないのだ、此処は大人しく従う事にしよう
―――出てきそうになった溜め息を一つ押し殺して。
 運ばれてくる料理が確かに青年の味ではない事が分かったが、矢張り未だ釈然としない表情。
 男は忙しなく皿を運んでいる。
 ところが。
「…何だ、其れは…」
 最後に運ばれてきた皿上に乗っているものを見て、食事の手が止まった。
 円柱を押し潰した様な形で。
 白と果物と菓子のデコレーション。
 何やらドイツ語で書かれている言葉は、読めない、が。
 “WODAN”と、己の名前がその文章の中にある事だけは間違い無い。
「ケーキだ」
 マッチを片手にした青年が答える。
「いや、そうでは無く」
「誕生日と言えばケーキと、相場が決まっている」
 多分、蝋燭を差す場所を迷っている男が答える。
「……。誰、の」
「君のだ」
「お前のだ」
 間髪入れず答える二人に。
 言葉を無くしてしまった。
 結局描かれている文字を潰さない様な位置に蝋燭をさした男と、その蝋燭に火を灯す青年が微笑を浮かべていた。
 男は軽い咳払いをする。
「今日はお前が来て1年目になる日だ」
「計画したのは私ではない、ウォーダン―――全てゼンガーが行った」
「俺一人では出来なかった」
「立案の方が大事だろう?」
「…俺、は」
 思わず声が震える。
「お前の誕生を、心から祝おう」
「そして此からも共に君と居る事を願おう」
「俺はお前に誓った」
「だから私も」
 二人が此方へ来るようにと手招き。
 促されて立ち上がり、ケーキの前まで歩く。
 数歩の距離がやけに遠く。
 青年が笑って後ろから肩を抱き、男が視線で言った。
(お前が消すのだ)
「ああ…」
 たった一本だけの蝋燭が消えるだけでも随分と視界が暗くなる。
 それでも囁かれる声に安堵を覚え。
「君に幸有る様に、と」
 ―――誕生日おめでとう、ウォーダン。
 生誕を寿ぐ言葉。
 存在を赦される瞬間。
 受け容れられて初めて想う。
 肩にある青年の手が酷く大きく、男の見守る目が酷く優しい事に。

「…寝てしまったか」
 未だ湯気立ち上る頬をした青年が寝室に入って来るなりそう言った。
 注がれる視線は男の胸へ頭を預ける様にして、安らかに眠る人物。
 先程の祝宴の中心にいた者。
「つい、先程の事だがな」
 男は苦笑する。
 あの後、誕生日のプレゼントとして良いものが準備出来なかった事を謝ると。
 一つの条件を呑んで貰えるのであれば、構わないと告げられ。
『今日は、一緒に寝ても良いか?』
 しかも位置は二人の間が良いのだと言う。
 普段よりも近い位置で会話が出来る事を何よりも楽しみにして。
 どんなにじゃれていようが怒られない事を嬉しそうに。
 最早弛んでしまったという方が相応しい様な顔つきで、青年が寝室へ来るのを待っていたのだと。
「騒いでいたのではないか?」
「…無論」
 男の疲れ切った返答に笑いを堪えたが、無駄だった。
 じろりと睨んでくる。
「此の寝間着の釦は付け直した方が良いと思うぞ、取れそうだ」
「其れは其れは」
 そう言えば心なしか、この二人の着ている寝間着がくたびれている様な気がしないでもない。
 どれだけ懐かれたのだろう、あの大きな子どもに。
 無邪気と言うよりも夢中。
 偏にこの時だけを願っていたのだろうか。
「…乾かさないのか?」
「ああ」
 彼が起きるだろう? と目配せをしながら、枕へとタオルを置く。
 と。
「ん…」
 男が慌てて――した所で何の意味もないだろうが――唇に人差し指を立てて、
起きるなという願いも込めて漸く眠り込んだウォーダンの様子を窺う。
 数秒程数えても起きない様子を見ると小さく溜息をついた。
 青年もそっとベッドへと入る。
 多少のスプリング音は仕方ないが、大きな振動を与えない様。
「深く…寝入っているのだな」
「目が赤かったからな、最近眠れていなかった筈だ」
「―――気付いていたのか」
 少し悲しげな瞳をして、ゼンガーは告げる。
 何となく雰囲気では察していたのだが、気付いたのはあの出かけた日だったと。
 そう言う前に小さな声が聞こえた。
「ゼン、…?」
「! …すまん、起こしたか…?」
「ふふ…いや……」
「?」
「今晩は……良く、眠れ……そう、だ…」
 薄く笑った男はゆっくりと手を伸ばす。
「エ…ザム、お前が……居るか、ら―――……」
「!?」
「ウォーダン…!?」
 結局そのまま意識を手放してしまった男は再び微睡みの中へと墜ちた。
 青年へと伸ばされた手も、シーツの上へと降りる。
 残された二人は顔を合わせるがしかし。
 あくまでも推測の域を出ないが、確信に近い。
(無意識にお前はエルザムを求めるのだな)
(だが君が焦がれているのは)
 未だ其の胸中を互いに量る事無く。
 量る術も無く。
 束の間の夢、華奢で儚い砂糖菓子の如し。
 やがて、暫くしてから三人分の寝息が―――ベッドの上で聞こえる様になった。


 にがつみっかだから。
 わがままをきいてほしい。
 いつまでも、じゃなくていいから。
 いま。
 いっしょに。


<了>

 writing by みみみ

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