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総務委員会97年3月18日

 同和政策の即時終結を要求

 

◯曽根委員 私からは、同和対策の今後の問題について、何点か質問したいと思います。

  今年度も同和対策事業、総務局だけではありませんが、総務局が調整役をやっているもので、総額で七十億円を超える予算が組まれているわけです。

ところが、昨年、国の地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律という長ったらしい名前の、いわゆる地対財特法が期限切れになるということから、今後の同和対策事業を、一般施策との関係でどういうふうに発展解消していくのかということが、東京都にとっても大きな課題として問われていると思います。

  そこで、何点かお聞きしたいんですが、きょういただきました資料の三〇ページ以下に載っておりますが、国が閣議決定をした地対財特法の期限切れに当たっての今後のあり方についての基本的な考え方について、まずお聞きしたいと思います。

 

◯石山同和対策部長 地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律、長いんですが、いわゆる地対財特法に基づきます地域改善対策特定事業の平成九年度以降のあり方につきましては、国の附属機関でございます地域改善対策協議会が、昨年の五月、意見具申を行っております。

  閣議決定の内容の前に、この意見具申に少し触れさせていただきたいと思いますが、この意見具申では、国際的な潮流や人権問題全般を視野に入れまして、同和問題解決への展望について基本的認識を示しているところでございます。

現行法に基づいて行っております地域改善対策特定事業の今後の基本的方向といたしまして、物的な生活環境を初めとするさまざまな面で存在いたしました格差が大きく改善されたということから、現行法は平成九年三月末をもって終了し、一般対策へ移行すべきであると述べております。

しかし、教育、就労、産業等の残された課題も存在するため、法的措置を含めた各般の措置について、具体的な検討を政府にゆだねたという記述になっております。

  政府は、これを受けまして、昨年の七月「同和問題の早期解決に向けた今後の方策について」を閣議決定いたしまして、先ほどの要求資料の二九ページ以降にお示ししてあるところでございます。

  その概要につきまして簡単に申し上げますと、第一に、地域改善対策特定事業の一般対策への円滑な移行に関する法的措置等につきましては、今日なお残されております事業課題、それから、地方公共団体の財政状況、これまでの施策の成果に支障を来さないことなどを考慮いたしまして、一定の条件のもとに、現在四十五の事業のうち十五事業につきまして、経過的措置として五年間に限り財政上の特別措置を行うこととし、所要の法的措置を講ずるとしております。

また、法律的措置は講じませんが、二十四の事業につきまして一般対策に工夫を加え、所要の行財政的措置を講ずるとし、その他の施策につきましても、既存の一般対策で対応するというものでございます。

  第二点目でございますが、差別意識の解消に向けた教育及び啓発の推進、人権侵害による被害の救済等の充実強化につきましては、国で策定中でございます人権教育のための国連十年の国内行動計画、これは平成六年に国連総会において採択され、決議をしましたことを受けて、国が検討中のものでございますが、この国内行動計画を踏まえまして、積極的な施策を推進するための所要の行財政的措置を講ずるということが述べられております。     

第三点目は、今後の施策の適正な推進ということでございまして、第四に、その他ということで、地方単独事業についてのさらなる見直し等について述べられているところでございます。

  以上でございます。

 

◯曽根委員 それで、この閣議決定が出され、方針が国から出されまして、昨年十一月に東京都は、同和対策の今後の方向について、きょう資料もいただきましたが、出されたわけですね。

私たちは以前から、国の制度は、地域改善対策というふうに銘打っているように、同和問題がまだ残されている地域を指定して、属地属人主義でやってきたということに比べて、東京都は、いわゆる同和地区というものはもうない、地域指定がない中で、属人主義という考え方でやってきている。

これが、法的な根拠もなく、また実態にも即さない中で多額の予算が使われていることから、私たちは、逆差別が生まれているという問題をかねてから指摘してきました。

  したがって、今度の財特法の期限切れを迎えて、いよいよ法的にも根拠がないだけではなくて、依拠するものが全くなくなっていくという中で、東京都の同和対策事業というものは、暫定的な措置云々ではなく、きっぱりと全面終了を早く宣言すべきだということを前からいってきたわけです。

東京都の方針というのは、この国の閣議決定に対してどういう形で受けとめ、国の方針との関係でこれを生かそうとしているのか、その点について東京都の考え方をお聞きしたいと思います。

 

◯石山同和対策部長 都の同和対策事業についてでございますが、ただいまご指摘のとおり、いわゆる地域指定が困難な状況の中で、直接的には法律の適用を受けることなく、都の単独事業として実施してきたという経緯がございます。

  都は、同和問題の解決が国民的課題でございまして、行政の責務であるという認識のもとに、法律や各種答申等の精神を尊重し、都の実態に即して、昭和四十三年度以来、同和対策事業を推進してきたところでございます。

  都としましては、このたびの事業の見直しに当たりまして、これまでの同和対策事業の成果及び現状を踏まえるとともに、地域改善対策協議会の意見具申、先ほどの閣議決定の内容、それから、国が法的措置や行財政的措置を講ずるに至った経緯等を十分考慮いたしまして、現行の同和対策事業の平成九年度以降の方向について定めたところでございます。

  お手元の資料の三五から三六ページに記載してございますが、その基本的な考え方を申し上げますと、第一点といたしまして、国の地域改善対策特定事業に対応いたします都の同和対策事業につきましては、原則として国の方針に沿って対応するということでございます。

  二点目でございますが、国の地域改善対策特定事業に対応しない都の同和対策につきましては、これまでの成果や閣議決定の趣旨を踏まえ、一般対策により対応する。

  なお、一般対策に類似の施策がないものにつきましては、原則として平成八年度末で終了いたしますが、そのうち激変緩和措置を講ずる必要のある事業につきましては、最長五年間の経過的措置を設け終了するというものでございます。

 

◯曽根委員 私たちは、国が暫定期間を設けたということに、東京都が何も追随する必要はないのであって、もともと地域指定がない中で行われてきた事業なんですから、直ちに終了が可能であるし、やるべきだというふうに考えています。

  それにしても、東京都が本当に国の事業に対応する都の事業について、国にならって五年間の延長で終わり、それ以外は基本的には今年度で終了、例外的な意味なんでしょうが、激変緩和措置を講ずる必要のある事業については五年間の経過措置というような考え方を示しているんですが、それが実態としてどうなのかということについてお聞きしたいと思います。

  まず、国が五年の期限で延長する事業は幾つあって、それに対応して東京都が五年の期限をつけるという事業は幾つなのか、それについてお聞きします。

 

◯石山同和対策部長 国の事業であります地域改善対策特定事業、これは四十五事業ございますが、五年間に限り財政上の特別措置を行うこととして所要の法的措置を講ずる事業は十五事業でございます。

その内容でございますが、物的事業で、住宅地区改良事業等で六事業でございます。非物的事業につきましては、高等学校等進学奨励費補助事業等の個人給付的事業のうち、特に利用度が高く激変緩和的な措置を講ずる必要のある五事業、及び相談員、指導員等を設置しております四事業の計九事業で、これを全部合わせますと十五事業でございます。

  次に、これに対応いたします都の同和対策事業といたしましては、全部で二十事業がございますが、そのうち十二の事業につきましては、経過的措置として継続することとしております。

継続する事業の内容でございますが、物的事業で、都営住宅の同和向け割り当て等の四事業、非物的事業のうち個人給付的事業は、高校、大学等進学奨励事業や各種職業訓練等六事業、それから、相談員の設置事業二事業の計八事業で、合計で十二の事業でございます。

 

◯曽根委員 それでは、都が延長する事業は全体で幾つあるのか。今、国に対応しての十二事業を含めて、都が当面延長する事業が全体で幾つか、また、その事業費は幾らなのか、それが今年度の同和対策予算と比べて何%を占めることになるのか、それをお聞かせいただきたい。

 

◯石山同和対策部長 現在、東京都は、同和対策事業として、歳出予算を伴わない事業を含めまして、九十六事業を実施しております。

  九十六事業の九年度以降の取り扱いといたしましては、平成八年度末をもって終了する事業が十九事業、平成九年度から一般対策へ移行する事業が十三事業、激変緩和措置として五年間の経過的措置を講じて終了する事業が十七事業、今後の施策の方向を検討する事業が四十一事業、当面継続する事業が六事業でございます。このうち、終了する事業及び一般対策へ移行する事業を除く六十四事業が延長する事業でございます。

  次に、六十四事業の総事業費でございますが、平成八年度ベースで見ますと、既に実施いたしました環境改善事業に伴う区への義務的経費としての補助金二十二億二千万余円を含めまして、五十億三千万余円でございます。これは、同和対策事業全体の事業費五十五億五千万余円の九〇・六%を占めております。

 

◯曽根委員 ちょっと長い説明がありましたが、要するに、九十六事業のうち六十四事業が継続ということになりますと、事業数でいってもちょうど三分の二、予算でいうと九〇%が継続しちゃうわけですよね。

先ほどいったように、私たちは、これは即時完了できるという事業だと思いますが、百歩譲って国の考え方に従って方針を出すというのであれば、国が四十五の事業のうち十五しか継続しないんですから、それに対応して──本来であれば、国に対応する十二事業の延長以外は全部やめるべきだと思うんですが、全体の九割を延長すると。当面継続しなければならないとか、事務的な理由だとか、今後の施策の方向がはっきりしないからとか、いろいろな理由をつけて結局は延長していくというところが、東京都がやっている同和対策の実態であり、また、大問題だと思うんです。

  それで、特にこの中で、国の地域改善対策特定事業に全く対応していない都の単独事業がありますね。私たちは、これはもともと根拠がない、法律の精神からいったってないというものだと思うんですが、この事業は今幾つあって、継続するもの、終了するもの、それぞれ幾つずつになるんでしょうか。

 

◯石山同和対策部長 国の地域改善対策特定事業に対応しない都の同和対策事業でございますが、八年度ベースで見ますと十七事業でございます。金額で二億五千八百万余円でございます。

そのうち九年度で実施する事業は、同和応急生活資金貸付など八事業でございまして、これは九年度の予算案で見ますと、九千二百万余円となっております。

  なお、同和対策事業として九年度に実施しない事業は、残りの九事業でございまして、八年度ベースで見ました予算額は一億五千五百万余円でございます。

 

◯曽根委員 単独でやっていた事業でも、事業数でいうと半分近く残す。それで金額では、少し少ないですけれども三分の一残るわけですね。

  九十六事業のうち、今お話を伺ったのをトータルしますと、要するに、やめたり一般施策に移行するのは三十二事業であって、残り六十四事業は残すと。

しかも、この中で、国の方針に対応して残すのは十二事業だけで、また、もともと都の単独だったものを残すのが八事業ですか。そうすると、国は廃止するけれども、都は廃止しないという形になっているのが四十事業以上あるんですね。私は、これは、国の閣議決定の方向からいっても、なお後退しているというのが、この方針の実態だろうというふうに思うわけです。

  それで、きょうは総務局の所管の審議ですから、総務局が担当している同和対策の事業について何点かお伺いしていきたいと思うんですが、進学奨励事業、これは学事部の方で担当していますよね。

ちょっと最初に、わかりやすくするためにお聞きしておきたいんですが、先ほどご説明があったような、国の制度の延長に対応して都も延長するという十二事業の中に入っているわけですよね。

しかし、私が先ほど指摘したように、これは制度の根本が、地域指定問題については違うわけだと思うんですが、その違いを、今回延長するに当たって都は何も考慮しなかったんでしょうか。

この点について、国との制度の違い、それから、今回この違いは全く問題にならなかったのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。

 

◯太田学事部長 国の高等学校等進学奨励費補助事業の制度につきましては、対象地域に居住し、かつ同和地区出身者である方を対象とする、いわゆる属地属人主義によりまして実施されているところでございます。

  一方、都におきましては、地域指定がなされていない中で、高等学校、大学等進学奨励事業のような個人給付的事業につきましては、東京都に居住する同和地区出身者につきましても、他の府県に居住する同和地区出身者と同様の施策が受けられますよう、同和対策事業の一環といたしまして、法律あるいは各種答申等の精神を尊重しながら、属人的事業として実施をしているところでございます。

 

◯曽根委員 進学奨励費補助制度というのは、ほかの府県に行きますと、その地域に住んでいる限りにおいて認定をされるわけですね。

しかし、東京は、同和地区出身者であれば、ほかから入ってきた人も認定ができる。そういう意味で、ほかの府県と比べても均衡を失しているような制度なんです。それで、ほかが国の制度に基づいて延長したからといって、東京都が延長する理由は、私、全くないと思うんですよ。

  この制度の延長というのは、これから五年間というふうになっていますが、現在受けている方が五年間延長できるのか、それとも、五年先まで新たに認定がされ得るのか、そして、最大何年先まで、この制度が個人的に受けられるものなのか、その点をお聞きしたいと思います。

 

◯太田学事部長 高等学校等進学奨励費補助事業につきましては、お話しのように、閣議決定の中で、五年間の経過的措置を講ずる事業の一つとされておるところでございます。

都におきましては、この考え方に沿いまして事業を進めることとなりますが、経過措置期間中におきましても、新たな申請を受け付けることとなります。

 また、具体的な延長の期間でございますが、先ほどの閣議決定の中では、五年経過時に現に貸し付けを受けて在学している者について、当該者が当該学校を卒業または中退するまでの間、引き続き所要の法的措置を講ずるというふうになってございます。都におきましては、国の措置に準じて対応する考えでありますことから、例えば、経過措置の五年目に四年制大学の第一学年に在学している方が貸し付けを受けた場合には、正規の卒業年次であります三年先まで適用されるということになります。

 

◯曽根委員 結局、これから五年延ばして、ぎりぎりで受けた人は、それからさらに三年先まで受けられると、八年延長になるわけです。ずるずると引きずるわけですよ、こういう制度を。私たち、前からいっていますが、こういう制度は、かつては期限が切られていなかったから、世代交代でつながっていっちゃうじゃないかということを指摘しましたけれども、きっぱりとこういう事業は──国が属地属人主義で、地域指定があるからこそ、一定の延長をしなければならない事情が他県の場合あったとしても、東京の場合はもともと地域指定がないんですから、きっぱりとここで終了すべきだというふうに申し上げておきたいと思います。

  それから、今後、同和問題にかかわる差別の意識の解消とか、この問題の最終的な解決については、ほかの人権問題とあわせて、普及啓発事業などの中で取り組んでいくんだということが閣議決定で述べられています。これについては、私、質問もちょっと考えたんですが、意見だけ申し上げておきたいと思うんです。

  閣議決定でもいわれているように、基本的には、部落差別問題というのは、他の人権問題と同様の一般施策、つまり一般的な差別や人権の問題として、そういう教育活動の中で解決していくというものの一つとして解決していくべきなんだと。特に東京においては、部落といわれるような同和地域がないわけですから、なおのこと、そういう意味での一般施策への移行が、この分野においても必要だということを私たち前からいっておりましたし、閣議決定の中で、この方針の中でも、あえて同和という言葉を使わないで、差別意識の解消に向けての教育及び普及啓発の推進ということをいっているように、これは一般施策の中で、人権問題、広い差別解消の問題として考えていくべきだということを重ねて申し上げておきたいと思います。

  最後に、今後の施策の適正な推進というのが閣議決定の第三のところに出てまいります。ここで何点か、具体的な事業の執行の仕方について指摘をしていると思うんですが、どういうものを挙げているのか、紹介をしていただきたいと思います。

 

◯石山同和対策部長 閣議決定では、今後の施策の適正な推進につきまして述べられてございます。具体的な問題点といたしまして、行政職員の研修の体系的な実施、個人給付的事業における返還金の償還率の向上等の適正化、著しく均衡を失した低家賃の是正など六項目にわたりまして、引き続き厳しく是正するため、国は地方公共団体に対し助言、指導を行うこととしております。

 

◯曽根委員 ここに具体的に挙げられているということは、これまでの同和対策事業の中でこの種の問題が起きているからこそ挙がっているわけです。例えば、個人給付的事業で返還金の償還率が大変悪い、事実上返さなくてもいいお金になっているというような事態だとか、著しく均衡を失した低家賃が、同和対策事業の中で、都営住宅等で生まれているとか、それから、今、答弁では省略されましたが、ここには民間運動団体に対する補助金等の支出がどうなのかという問題や、教育の中立性の確保、公的施設の管理運営の適正化など、具体的にいろいろ私たちも思い当たる節のあるさまざまな出来事があって、こういうことが書かれているわけです。

したがって、個別の事業、私たちは、東京の場合は、ごく一部を除いて完了すべきだというふうに考えていますが、今後の対策について、こういう問題こそきちんと是正をするという立場で臨むという点を、改めて考え方をただしておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

 

◯石山同和対策部長 同和対策事業、特に個人給付的事業につきましては、同和地区出身の方々がさまざまな差別を受け、生活が低位な状態にあることに着目いたしまして、特定の期間、一般対策より有利な条件で特別対策を講じることにより、一日も早く生活改善を図ることを目的とした事業でございます。

  施策の具体的執行に当たっては、これまでも地域改善対策協議会の意見具申、国、他府県の動向を勘案しながら、収入基準や居住条件等の導入を図るなど、法律の改正時等の節目節目に見直しを行い、適正な推進を図ってきたところでございます。

 今回、閣議決定で指摘されている内容については、今後とも事業の執行に当たって十分留意していく必要があると考えております。都といたしましては、この趣旨を踏まえて、さらに適正な推進に努めてまいる所存でございます。

 

◯曽根委員 最後に意見を申し上げておきます。

  今、部長さんの答弁で、同和対策事業、今までも生活改善のためにやってきたというお話でしたが、私たちがこれまで繰り返してきたことに対する反省が非常に足りないと思うんですよ。実際上は、特定の団体の中でのいろいろな──いわばその団体の特殊な目的のためにいろいろな補助金が使われたり、それから、地域の一般の住民から見て余りにも差別が、逆差別じゃないかといわれるような事態が数々生まれてきたことは、私たちも指摘してきたわけで、この国の方針の決定を機に、都の同和対策事業のきっぱりとした終了宣言を出すということで、基本的には、必要な事業は一般施策の中で、一般都民と同じように受けるようにしていくべきだということをもう一度申し上げて、質問を終わります。

 

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