トップページへ  議会質問目次へ   質問全文リストへ

 

臨海開発特別委員会97年2月24日

 見直し計画でも2次公募見通し立たず。

 

◯曽根委員 きょうの委員会の論議を聞いていても、今臨海開発地域には対照的な二つの事態が進行していると思います。

先ほど論議があったように、一方では、お台場海浜公園周辺とか有明南などは、都民の身近な観光と憩いの場としてにぎわっていますが、一方で、この開発の本来の目標としていた、また前港湾局長も、百年の計に立って、一喜一憂せずに進めるといっておりましたテレポートタウン、そして副都心構想に基づく中心施設であるテレコムセンター、フロンティアビルは、植木委員が明らかにしたように、一般企業でいえば倒産寸前というべき状態であります。都民は憩いと楽しみに来るけれども、企業は来ないという対照的な事態があると思うのです。

  問題は、今回の推進計画が、後者の企業を呼んで国際ビジネス都市づくりを進めるという方向をさらに促進するために、これを具体化することを前提とした財政推進計画を出してきていることにあります。

今のままでは破綻が明瞭ですから、オフィス開発などの企業都市づくりを進めるためには、この財政計画の中に新たに大変悪質な都民負担増大のからくりが盛り込まれている。

この問題については、後ほど西田委員の方からじっくりとお聞きすることにしまして、私は、この推進計画で進めたら、じゃ、これから東京都が思っているとおりに開発が進むのかという問題について、何点かお聞きしたいと思います。

  まず、第二次公募についてお聞きします。昨年の本委員会では、第二次公募は八年度内にやりたいといっていましたが、それは可能でしょうか。

 

◯前川港湾局開発部長 第二次公募につきましては、その手法であるとかあるいは今後の日程等について、年度内にも方針を決定、公表して、公募に向けて具体的な準備作業に入っていきたいと考えております。

 

◯曽根委員 公募を年度内にやるのではなくて、年度内には準備作業が行われる。先ほどどなたかの質問で、六月ごろに暫定利用の利用方式について公募などについての話がありました。

第二次公募はその後にというようなお答えもあったかと思いますが、結局年度内はできずに新年度にずれ込むことになるわけです。

私大変不可解なのは、昨年の秋ごろに、たしか第二次進出についての意向調査をかなり多くの企業を対象に行ったはずですが、この結果がいまだに公表されていません。

一体この意向調査についていつごろ公表するのか、この点についてお聞きします。

 

◯前川港湾局開発部長 進出意向調査は、ご指摘のとおり、昨年の十、十一月に行っているわけですが、現在調査内容の分析と取りまとめを行っているところでございます。三月中には内容の公表を行っていきたいと考えております。

 

◯曽根委員 もう昨年の秋にやっているわけですよね。分析調査に何カ月もかかっている。もし結果がよければ、当然この推進計画と同時に、この委員会にも報告して、この計画で進めればこれだけ出てきそうだというのがタイミングよくこの委員会、議会にも示されていいはずですが、三月末になる。この辺やっぱりこの計画で進めてもうまくいくのかどうかという点についての疑問が出てくるわけだと思うのです。

  実際にはかなりの数の文書を出していますね。何社送って、何割ぐらいの企業から回答があったのか。その回答の中には当然、第二次進出についての公募をやったときに、積極的に進出の意思があるかどうかという設問も当然入っていると思うのですが、それに積極的に対応するという意向を文書で回答した企業は何社あったのですか。

 

◯前川港湾局開発部長 アンケートを行った企業のうち、三割強の企業から回答をもらっております。ただ、ここで申し上げておきたいのは、今回のアンケートは臨海へのいわば進出意向、条件を個別的に把握をしたい。

個別に把握をして、今後の具体的な事業者の進出につなげたいというのが目的でございますので、先ほど申し上げた、分析、取りまとめというのは、現在必要に応じて回答事業者へのヒアリングを行っているところでございます。そういう意味で、作業に若干の時間がかかっていますが、三月中には概要の取りまとめと発表を行っていきたいと考えているわけでございます。

 

◯曽根委員 私がお聞きしたことに直接お答えがないので、もう一度確認しますけれども、意向調査は文書で出されましたね。その文書の中には、第二次公募をしたときに進出の意思があるかどうか、それは当然項目に入っていると思うのです。この点について確認をしたい。

入っていたとすれば、それに具体的に文書で回答があったのは何社なのか。

これは、別に分析を何カ月もやらなくても、数を数えれば出てくる。数え切れぬぐらいあれば別ですけれども、どうでしょうか。

 

◯前川港湾局開発部長 先ほどもお答え申し上げましたが、今回のアンケートの目的は、いわば臨海への人気度といいますか、それを調査しているわけではなくて、今後の二次公募から具体的な事業者の進出につなげるために、事業者別に具体的に希望を把握していきたいということでございます。

そのため、ヒアリング、回答内容の分析を行っているところでございますので、結果の公表については、先ほど申し上げたとおり、三月中に行いたいと考えております。

 

◯曽根委員 なかなかいわないですよね。(笑声)これは、やっぱり第一次公募のときと天地の差がありますよ。

あのときはアンケートなんか配る前から売り込みが殺到して、大変な競争率だったわけでしょう。しかも、うちはこういう具体的な進出計画があると示させて、進出した跡地計画まで出さなきゃだめだというところまでやっても大変な倍率だったという状況に比べて、今回は競争どころの話ではなくて、処分予定の区画が埋まるかどうかさえ、実際には怪しい状況ではないでしょうか。

  進出意欲が薄いというのは、私は当然根拠があると思うのです。企業は、進出するならば、建物の建設費や移転する費用をかけても、後でおつりが来るぐらいのメリットがない限り進出はしないわけですから、その最大のバロメーターは資産価値の上昇が見込めることだとか、商業やオフィスの床としての利用価値が今後高くなっていくのかどうか、この点にかかっていると思います。

  それでお聞きしますけれども、臨海部に近い芝浦や三田の地域の大型ビルの新規契約賃料は、現在坪当たりどれぐらいが相場になっているのか。

それから、昨年と比べて上がっているのか下がっているのか、その点についてお願いします。

 

◯前川港湾局開発部長 これは民間の調査機関のデータでございますが、都心三区のワンフロアが二百坪以上の大型ビルでございますけれども、ここで募集表示している賃料につきまして、昨年一月では月坪当たり平均二万九千百三十二円でございましたが、一年たちました本年一月では二万六千六百九十一円ということで、約八%の下落となっております。

また、芝浦地区の大規模ビルの賃料につきましては、本年一月で、これは高いのと低いのとグループが二つあるものですから、高い賃料の平均では月坪当たり一万九千六百八十二円、低い平均では一万四千三百十一円となっております。

 

◯曽根委員 芝浦の方は結局高いのと低いので両方あるということですが、前段でお答えになった三田の地域でいうと、二万九千百三十二円ぐらいから二万七千円弱、約八%下落をしている。

しかも、今後大幅に上昇する保証も今のところはないということですね。こんなときに、都心からのアクセスが、道路の点でも、また他の交通機関でも十分ではない臨海部に進出してビルを建てても、建設費の元を取れるという確信が企業の側にないのは明瞭だと思います。

  それでは、第一次進出企業でまだ契約をしていないところについてはどうなっているのかということを聞きたいのですが、最近その一つである資生堂と組んで進出する予定だった鈴屋の経営が傾いて進出できなくなったといわれていますが、都はこれにどう対応しているのでしょうか。

 

◯前川港湾局開発部長 鈴屋の経営状態の悪化につきましては、私どもも報告を受けておりますが、平成四年三月に取り交わしました基本協定は、資生堂・鈴屋グループとして協定を結び、平成九年度中に土地を引き渡し契約することとしているわけでございます。したがいまして、私どもは今後、鈴屋の経営状態も適宜確認をしながら、同グループとして協定を樹立するように引き続き働きかけていきたいと考えております。

 

◯曽根委員 今のままでは契約どころじゃないという事態になっているわけで、もう平成九年度内ですから、あと一年ぐらいの間に契約を具体化しなければならないとすれば、時間は余りないわけです。それからもう一つ、三井不動産の方ですが、こちらもテナントビルを計画しているのですけれども、台場に比べて交通の便が悪い青海地区で、当初の計画どおりテナントビルは着工できるのでしょうか。

 

◯前川港湾局開発部長 三井不動産につきましては、やはり平成四年三月に取り交わしました基本協定におきまして、平成九年度中までの土地引き渡し時に契約をすることといたしております。したがいまして、私どもとしましては、平成九年度中の契約に向けて引き続き話し合いを進めているところでございます。

 

◯曽根委員 私たちのところに入ってきている情報では、テナントビルは危ない。だから、場合によっては、本社機能を移すとかいううわさもいろいろ聞いているわけです。

そういうふうに、当初の基本コンセプトを変えてくるという場合、東京都としてはどうするのかという問題があると思うのです。例えば、既に契約をして進出している企業については、何とか契約して進出して頑張ってくれたということで権利金の返還も行われ、先日、これから三年間の地代の特別減額というのがありました。

これは、今度進出する第一次の企業については適用するのですか。

 

◯前川港湾局開発部長 私どもは、これから進出してくる企業、これは未契約であれ、あるいは新しく二次公募を行った場合であれ、これから以降の契約につきましては、今回の変更契約における契約書を標準的な契約書と考えておりますので、それに従いまして、不均衡是正条項はもちろんでありますけれども、優遇措置を契約書に入れることは一切考えておりません。

 

◯曽根委員 そうしますと、頑張って当初の計画どおり、コンセプトのとおりに進出しても、この間あったような優遇策がない、賃料の減額もこれから三年間ない。

そうすると、苦しければ契約を延ばせばいいじゃないか。もしくはもう撤退だという声が出ても不思議ではないと思うのです。そういう場合、基本協定は結んでいるけれども、まだ契約していない、こういう企業がもし仮に撤退を表明したりした場合に、東京都の側でこれを引きとめる策があるのか、ペナルティーはかけないのか、この点はいかがでしょうか。

 

◯前川港湾局開発部長 これは、いわば仮定のご質問でありますが、私どもは現状では、当然撤退といったことは考えずに進出をするようにと働きかけをやっているわけでございます。

一般論でございますけれども、撤退ということになる場合にいろんな事情があり得るであろう。例えば、経営上真にやむを得ない場合もあれば、あるいは逆に背信行為のような場合もあるであろう。

そういったいわば背信行為のようなことがあれば、これは当然法的な問題も含めてペナルティーについて検討していくことになるであろうと思いますが、いずれにせよ、具体的な事情に応じて検討することになるかというふうに考えております。

 

◯曽根委員 しかし、明確に法律的な根拠というとはっきりしないわけです。またそれが法律的な根拠を持つのだということになると、今後の契約などについても危なくなってくる面も出てくるでしょう。そういう点でいうと、これは企業家の側もいろいろ考えると思うのです。

私、仮定の質問をしているつもりはないので、第一次企業の中にも住商のように一年半も契約をおくらせたところが実際にあったわけです。ここにも実態としては、ペナルティーらしきものはほとんどかかっていないわけです。ああいうのが一つ参考にされてしまうだろうということは当然あり得る話だと思うのです。

  それから、もう一つ聞いておきたいのは、今青海に進出予定の一次進出企業が、仮に、青海は高速鉄道が通っていませんから場所が悪い、今度二次公募の対象になっている有明南の方が場所がいいと、一次をおりて、二次に回りたいというようなとんでもない提案が出てきたら、これは認められるのでしょうか。

 

◯前川港湾局開発部長 これは、一次公募企業が仮に撤退した場合でございますが、基本的には社会的な良識、社会常識から考えて、そうしたことは想定をしていないところでございます。もし万が一そういったことがあったとした場合には、なぜ一次公募から撤退をしたか、その理由であるとか、あるいは二次公募時の応募で全く違った内容で、違った形でということもあり得ないわけではないですが、そういったことも勘案をしながら、やはり個別に判断していくことになるかと思っております。

 

◯曽根委員 東京都もこれが絶対だめだとはいい切れないわけです。何しろ二次の方だって危ないのだから。こういう形で、企業の側は自分のところが危なくなるような話はのりませんから、そういう意味では厳しい選択、道義的な問題だとか背信行為だとかいってみたところで、法律的に押さえられなければ、そういうことも当然起こり得るわけだし、今までも起こってきたわけです。

 そういう状況のもとで、今回の事業化推進計画は、これらの進出企業がちゃんと予定どおり契約してくれて、第二次公募もこれ以上おくらせることなく、すべての区画が処分されることがいわば長期収支の前提となっているわけで、それでも黒字になるのに四十六年かかるわけです。

それがもし第二次公募がずれ込んだり、未処分地が残るようなことになれば、その分またまた試算が狂ってしまうわけです。

 そういう中で、今回何とか進出企業を新たに誘致しようということで、東京都は、進出企業が出やすいように、今後の成長が期待されるコンベンション産業の誘致とか、インキュベーション機能の整備とかとともに、先ほどもちょっと話が出ましたが、臨海部を国際貿易ビジネスゾーンにしていくということで、そのかぎとなる総合保税地域制度の活用を打ち出しています。

臨海部が総合保税地域の指定を受ければ、貿易関連産業が集積してくるというふうにかなり見通しを持っているような書き方をしているのですが、果たしてそういう見通しが本当に立つのかどうかということです。

  私は一年ほど前に、総合保税地域指定第一号の大阪南港地区のアジア太平洋トレードセンターがオープンして一年後も入居テナントは四割弱程度で、客の出入りがほとんどなく、昼間も薄暗くがらんとしている状況だということを指摘しましたけれども、この大阪の保税地域の入居率はその後上がったのでしょうか。

 

◯前川港湾局開発部長 大阪のアジア太平洋トレードセンターの入居率は、昨年、平成八年十二月現在でございますけれども、床面積の比率で見た場合三四%と聞いております。

ただ、念のために申し添えますと、これはやはり交通事情が、府の中心から地下鉄が入っていなくて、まだ交通機関が不便で六十分ぐらいかかるとか、周辺に集積がないとか、かなりまた特別な事情もあるのではなかろうかというふうに考えております。

 

◯曽根委員 今、前川さんがつけ加えた部分は臨海部にも当てはまるのではないかと思うのですが、私が一昨年質問した後、昨年春の国の方の優遇策がまたとられまして、例えば総合保税地域については、一団の土地または施設ということを、一団でなくてもいい、ばらばらになっていてもいいと。

それから、民間の土地や施設が含まれていてもいい。蔵置きと加工と展示の三機能がそろっていることが条件だったが、一機能欠けてもいいと。それから、第三セクターが運営することになっていますが、自治体の出資率は一〇%以上あればいいと、二五%から一〇%に下げた。

いろいろ緩和策はとられていますが、しかし大阪ではこういう状況です。しかも、首都圏では、既に臨海部に先行して、競争相手がオープンしたり計画が進んでいるわけです。オープンしたところは横浜など資料をいただきました。計画が進行しているところはどういうところでしょうか。

 

◯前川港湾局開発部長 総合保税地域制度の導入を検討している事業は、現在のところ全国で六カ所というふうに聞いております。

首都圏の場合につきましては、川崎市の東扇島に川崎総合物流センターの計画がございます。食品を主体として、延べ床面積が六十五万平米の施設規模と聞いております。

もう一つ横浜で、これは横浜みなとみらい21地区に横浜インポートマートの計画がございますが、これは小売も含めた多様な商品を対象として延べ床面積八万平米の施設と聞いております。

 

◯曽根委員 これだけの競争相手が先行していて、後発の臨海部の保税地域、もし指定を受けたとしても、これが何か新しいビジネスゾーンの目玉になるような状況でないことは、私は明瞭だと思うのです。

むしろ、先ほど前川部長がおっしゃったように、将来はこれが当たり前になるだろう。だから、東京港も東京の臨海部も乗りおくれないようにしておかなくちゃいかぬという程度のものではないかと思うんです。

これを運営するのは、第三セクターをまたつくるか、もしくは既存のセクターにやらせるか。いずれにしても、また赤字の第三セクターをふやすことになりかねない。

  逆に、この保税地域に、国や都がいろいろと支援をして企業進出にいろいろと優遇策をとったりして、これまでの貿易関係企業の集積地から企業を引っ張ってくるとどうなるか。

そうすると、先ほど心配がというお話もあったように、今度は秋葉原、御徒町、東京湾周辺の中小企業の貿易関連業者などが取り残されて、輸入関連の地域産業が破壊されたりするおそれもある。

それから、超安値の輸入品による大規模な価格破壊が起きて、都内の産業の空洞化が一層深刻になるという危険性もある。こういう問題が出てくるということも指摘しておかなければならないと思います。

  いずれにしても、私は、今回の推進計画で長期収支の帳じりを四十六年間で合わせようとしても、その前提である当面の第二次公募の見通し、それから貿易分野など進出企業の新たな分野についての問題も、それからオフィス利用の床賃料の収入見通しも、どれ一つとっても、計画どおりすんなりと進むとは思えない状況のもとで、逆に、ここで企業都市づくりの方向をきっぱりと断念して、特に今後の基盤投資の大半を占めている広域幹線道路建設などについて、この事業を凍結、中止して、これ以上の都民財産の投入を最小限に抑えながら、都民の参加と合意で憩いの場としての整備へと転換していくことは、これは昨年の懇談会報告が出された時点と同様に、今でも十分可能だということを指摘しておきたいと思います。

この方向こそまた一貫した都民の声でもあり、臨海部の自然を生かした都民犠牲の最も少ない道であることを強調して、私の質問を終わります。

 

トップページへ  議会質問目次へ  質問全文リストへ