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臨海開発特別委員会96年7月1日

 知事の基本方針に反対、開発の破綻は解決しないと意見表明

 

◯曽根委員 それでは、六月十日に青島知事が発表した臨海副都心開発の基本方針案に対する日本共産党都議団の意見を述べます。

  今回の基本方針案は、今後も臨海部に業務機能の集積を図って、現行開発を継続、推進するために、進出する大企業に有利になる見直しを行おうとするものです。

それは第一に、破綻した開発の根本問題を何ら解決せず、そして第二に、そのツケが都民負担の増大という形で回されます。そして第三に、抜本見直しを望む圧倒的多数の都民世論に反し、第四に、何より徹底的な見直しという知事自身の公約に違反するものであります。

よって、我が党は、見直しの方向として、この基本方針案を認めることはできません。

  今、必要な見直しは、五月二十日の我が党の意見表明でも述べたように、大型オフィスビルの新たな建設をやめ、開発の内容を都民の意向に沿ったものに転換させ、今後の投資を抑制して都民負担を軽減するという懇談会報告のB意見の方向を基本としながら、都民の多様な要望を反映させて、緑や森、文化・スポーツ施設、防災、住宅、福祉施設などを整備し、都民の憩いの場とする開発としていくことです。

この立場から、基本方針案は抜本的に再検討すべきです。また、決定までの手続については、今後の都政を左右するこの重大な見直しを、都民の意向を確かめることもしないまま決めてしまうことは許されません。都民の合意によって見直しを進めるために、知事が見直しの方針案を都民に直接諮ることを改めて求めるものです。  以下、その理由について述べます。

  今回の見直しが必要とされたのは、この開発がどんな問題に直面していたからでしょうか。もともと臨海副都心開発は、業務機能を拡大し、一極集中と都市問題を激化させること、また環境への負荷など、新たな副都心づくりそのものの問題が指摘され、その出発点から開発が都民不在で進められてきたことについても強い批判がありました。こうした根本問題があったからこそ、バブルの崩壊を機に、一気に矛盾が噴き出したのです。

それは第一に、不況の到来と都心のオフィスビルの供給過剰で、当てにしていた企業の進出が見込めなくなったこと。第二に、地価の下落によって権利金、地代収入の見込みが大幅に減少し、この収入で開発事業費を賄うという、都民に迷惑はかけないとの財政計画が破綻したこと。この二つの現実に直面することになったわけです。

  こうしたもとで、見直しの方向については、財政計画の破綻で都民の税金の投入が避けられないならば、開発の内容を、これまでの反省から都民の参加と合意で、その意向に沿ったものに転換し、今までの投資を都民のための施設整備などに生かすという方向と、もう一つは、あくまで企業を進出させるために、企業の条件を大幅に有利にして、赤字は都民の負担で埋めていく見直しの方向と、その二つのうち、どちらの見直しを選ぶかが根本から問われていたわけです。

臨海副都心開発懇談会の最終報告が、現行開発推進のA意見と、抜本見直しのB意見との二つの両論併記となりましたが、これはまさに、今述べた二つの方向を、それぞれ体系立てて示したものでした。

  都民が求めたのはどちらの方向であったのかは、懇談会が行った一日都民臨海懇談会での圧倒的多数の意見が、これまでのオフィス中心の開発とは異なる、森を初め動物園、植物園、文化、スポーツ施設、防災空地などの整備を提言するものであったことや、各種マスコミの世論調査でも、抜本見直しを求めるものが多数であったことからも明瞭です。

しかも、青島知事の徹底的な見直しという都知事選挙での公約の内容は、「都政新報」のアンケートへの回答で明らかなように、今後の開発は、これまでのような商業ベースの企業中心の開発から、都民の憩いの場となるような福祉、文教ベースの開発に改めたいというものでした。この公約の立場に立つなら、二つの見直しの方向のうち、B意見の抜本的見直しの方向を選ぶべきであったことは明白であります。

  しかるに、知事が六月十日に発表した基本方針案は、都民の世論にも、知事自身の公約にも反し、今後も臨海副都心にふさわしい業務・商業施設の集積を図っていくとして、現行開発推進のA意見を踏襲したものでした。

方針案では、企業の進出をしやすくするために、権利金、地代の引き下げや企業の負担を半減する都有地の売却方式の導入など、大企業に有利となる見直しを行う一方、その赤字の穴埋めのために、道路や公園の維持管理費を一般会計に転嫁するほか、広域幹線道路の一部を一般会計での整備に回すなど、大幅な都民負担が新たに導入されているのです。

知事が述べたようなA意見やB意見でもない都独自の案などという弁明は、到底通用するものではありません。方針案が就業人口を七万人程度プラスアルファに縮小したかのように示していることについても、質疑の中で、今回、数字から除かれた都民提案制度による街区は、他の処分用地と同じ容積率が前提にされていることが明らかになり、これを加えれば、就業人口は八万数千人になって、懇談会報告のA意見が示した九万人に近くなることも明確になったのであります。

  こうした基本方針案で、臨海副都心開発がこのまま継続、推進されれば、現実に都民への影響はどうなるのでしょうか。方針案は、都民負担を極力抑制するといいながら、方針案の長期収支試算の中で明確になっているものだけでも、広域幹線道路などの整備に要する一般財源負担四千五百億円のほか、開発予定地内の有明の丘区域の用地会計での買い取りや、道路、公園の維持管理費の一般会計への転嫁、国際展示場の地代負担の引き上げの新たな三つの措置で五千五百億円、合わせて都民負担は、ちょうど一兆円になり、当初計画の都民負担六千四百億円より大幅に増大します。

しかも、この方針案を推進するなら、都民負担は一兆円ではとどまりません。今回、開発事業費を抑制したかのように見せかけるために、長期収支試算の計算から外した臨海道路の二期分や広域幹線道路の一部の事業費は二千四百億円。

この負担は、既に臨海道路整備事業費の臨海会計負担がゼロとされているように、大半が都民に回されます。また、今後、一般街路事業で整備することに変更された環状三号線は二千三百億円、これはすべて一般会計負担になります。

これらの道路については、整備時期検討路線としていますが、さきの定例会で知事が事業化に向けて努力、前向きに検討などと答弁しているように、整備を凍結したなどというものではありません。したがって、二千四百億円と二千三百億円を合わせた四千七百億円が、方針案の収支試算から隠された都民負担となっているのであり、収支試算に計上された都民負担一兆円と合わせれば、都民の税金からの支出は、一兆四千七百億円にも膨らむことになるのです。

  さて、このような莫大な都民負担を行っても、ようやく三十八年後の二〇三四年に収支均衡して初めて黒字になる計画ですが、それもそのとおりにいくのでしょうか。

先日報道された毎日新聞の進出企業へのアンケートで、道路建設のおくれで、ビルを建てても孤島状態になってしまうという不安を抱く企業が大半だったように、臨海部と都心を結ぶ幹線道路がないことが、企業が進出をためらう最大の要因になっています。

そういうアクセスのない場所に都市基盤整備をこんなに進めてしまったことが、いかに無謀で根本的欠陥を持つ開発だったかということが、今、浮き彫りになっているのです。

しかし、基本方針案では、都心と結ぶ幹線道路の開通の目途を平成十七年度、つまり二〇〇五年としながら、それまでにも、今年度から新たな企業進出が着々と進み、権利金、地代収入が見込める前提になっています。これはもう最初から見込み違いとなることが明瞭な計画だといわざるを得ません。

企業を予定どおり進出させるために道路整備を繰り上げようとすれば、工事期間の短縮や埋め立てと並行しての道路建設などで、事業費が大幅に膨らむことが予想されます。

先ほど明らかにした、今回計算から外された臨海道路二期分や環状三号線などの広域幹線道路なども、企業を進出させるためには、交通渋滞の解消のために、結局はつくらざるを得なくなります。

つまり、企業が見込みどおり進出しなければ、開発の赤字がふえて都民の負担が膨らみ、進出させようとすれば、今度は事業費が膨らんでしまい、どちらにしても都民の犠牲が拡大される悪循環に陥らざるを得ないわけです。こうした根本矛盾は、企業進出を前提とする限り、拡大するばかりです。

  これに対して、我が党が求めた懇談会報告のB意見をもとにした方向は、臨海部を都民の憩いの場にしていくことで、交通アクセスは、高速鉄道や新交通の延伸など公共輸送機関の整備を中心として賄うことができ、今後、莫大な事業費負担の中心となる広域幹線道路整備は大幅に削減することが可能になります。

これによって都民負担を抑制でき、しかも、投じられた税金も、進出する大企業のためでなく、開発全体を都民要望に基づくものに転換することで、都民本位に生かされるのであります。こうして都民犠牲の悪循環を断ち切ることこそ、今、求められているのです。

  今回の見直しで継続、推進すべきという主張の中に、ここまで来たから引き返せないなどという議論がありましたが、しかし、臨海開発にこれまでつぎ込まれた基盤投資は一兆四千億円ですが、今後に残された基盤整備の投資額は一兆六千億円近くになり、これからの方が大きいのです。

しかも、これまでの投資は、進出企業の負担でつくる基盤整備が中心でしたから、直接的な都民負担はまだ少なかったのですが、これからの投資は、域外の幹線道路整備が中心になり、一般会計など直接的な都民負担で進められるものが本格的に開始されます。

今ならまだ都民への本格的な犠牲を押しつけを食いとめることが可能なのであり、ここで引き返さなければ、今までよりもさらに規模の大きい投資が重ねられ、これまでとは質的に異なる、都民の直接的な負担での開発に踏み込んでいくことになります。

  この間、都財政の悪化を理由にして、福祉や教育を切り下げる行革大綱が示されましたが、臨海副都心開発をこのような都民負担で推進していくのでは、大型開発推進のために、そのツケを都民に回してきた鈴木前都政のやり方と同じではありませんか。このやり方を続ける限り、開発の持つ根本問題は何ら解決せず、都民との矛盾も一層拡大します。これを打開する道は抜本見直ししかないということを、我が党は改めて強調するものであります。

  最後に、さきの定例会で我が党を含む四会派二十二名の議員の共同により、臨海開発見直しについての都民投票条例を提案しましたが、この問題で都民投票を求める声が高まってきた背景には、今回の見直しの進め方で、都政と都議会が都民世論から離れていることへの強い批判があります。

住民の意思に沿って進められる政治こそ、今、求められているのであり、臨海開発で都民の意思を問うことの必要性を重ねて強く強調し、私の意見表明を終わります。

 以上です。

 

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