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本会議一般質問95年6月28日

 震災を教訓にマンション対策を、いじめの無い教育を

 

◯十五番(曽根はじめ君) 私は、初めにマンション対策の抜本的な拡充を求めて質問します。

  今、都内で、マンション居住者や、これからマンションを購入しようとしている都民の中に大きな不安が広がっています。阪神で突然の震災に遭い、再建のめども立たずに苦しんでいるマンションの人々を見て、個人資産である我が家を、個人の力では守り抜けないという現実を突きつけられたからです。

  神戸、芦屋など、被災した七都市の二千カ所以上のマンションのうち、全壊または半壊が二百数十カ所、約一割に及ぶといわれますが、そのうち、マンションの管理組合が自力で建てかえなど再建に踏み出せたのはまだ十カ所にもなりません。避難先がばらばらで連絡もつかない、都市計画の変更で同じ規模の建てかえができない、資金不足の高齢者が多く、居住者の足並みがそろわないなど困難がつきまとい、公的負担で可能な取り壊しさえできず、いつ倒壊するかわからない危険なマンションさえ残されています。

  阪神大震災の経験が教えているのは、都市型居住の一つであるマンションの安全性、居住性の確保のためには、都がこれを貴重な住宅ストック、社会的財産として位置づけ、思い切った公的支援を行う必要があるということではないでしょうか。ところが、都は、都内のマンションがどういう実態にあるのかも全く調べておらず、耐震診断の相談や問い合わせが殺到しても、窓口で業者を紹介するだけ、しかも費用は全部個人負担ですから、都は実質的には何の援助もしていない、全くひどい立ちおくれです。

  あるマンションでは、震災後、自分たちの建物が心配になり、専門家に耐震診断の相談をしたら、費用をかけて詳しく調べてもいいが、すぐ建てかえが必要とわかったらどうするのかといわれ、耐震診断の話は立ち消えになったといいます。私有財産だから居住者の責任でというだけでは、結局、不安を抱えたまま問題は先送りされるだけです。マンションの耐震性は、目視でもかなりの診断が可能です。都も公共施設の目視による調査を始めています。都は何よりもまず、区市町村と連携して、専門家の目視による都内全マンションの基礎的診断を行うべきです。答弁を求めます。

 さらに、耐震補強が必要とわかっても、資金不足で改修できないのが現実です。国の住宅宅地審議会の報告でも、マンションの大規模修繕や建てかえについては、助成も視野に入れて支援することの必要性を指摘しています。私は、建物の安全確保に必要な診断費用及び補強工事費用に思い切った助成をするよう強く求めるものです。また、これから建設されるマンションについても、建築基準法の改正を待たずに、都として、震度七への対応や、手抜き工事防止の対策を強化すべきです。あわせて答弁を求めます。

  阪神大震災では、途中の階がつぶれたマンションで、管理組合の役員を先頭に、一致協力して自力で全員を救出した経験や、悲観的になりがちな組合員を励まして、いち早く再建に立ち上がったところもあるなど、住民組織としての管理組合の役割が浮き彫りとなりました。ところが、都内では、五十万戸を超す分譲マンションの管理組合は行政の視野の中に全く入っておらず、多くは、行政から公式の連絡があるのは、五年に一度の国勢調査のときだけというのが実態です。しかし、多摩市などでは、市の公的刊行物の配布や自治会連合会への参加など、自治会と対等に扱われています。私は、都がマンションの管理組合の育成のため、マンションハンドブックの作成や、中央区で始めた管理組合セミナーなどのような、各区市町村のマンション対策事業へ支援をすべきと考えます。答弁を求めます。

 今や都内のマンションは全世帯の一割を超えており、しかも、八一年の建築基準法改定以前に建てられた築十四年以上のマンションは六割にも及び、改修のための積み立てが不十分だったり、管理組合もないところも残されているなど、具体的な対策が求められています。都民がいつまでも安全で快適に住み続けられるように、マンションの実態調査、大規模修繕への支援、マンション改良助成の拡充などの抜本的な対策を進めるために、直ちにマンション対策課など専門体制を確立すべきです。知事の答弁を求めます。

●子供のいじめ問題

  次に、私は、子供たちの人権と尊厳、命まで踏みにじられているいじめの問題について質問します。

  都内のある中学校で、卒業間近の女の子たちによる下級生のいじめが起こりました。あいさつをしなかったなどという理由で、一人ずつトイレに呼び出し、便器に顔をつける、たばこを押しつけ、髪を切る、水を入れたPETボトルで殴りつけるなど残酷なものでしたが、幸いすぐに学校が気づき、それ以上のエスカレートは避けられました。都立高校の合格発表の直後という、緊張の糸が切れた瞬間に起こった出来事でした。

  いじめは、何か特別の子供の問題ではなく、きっかけさえあれば、子供の日常に次々に発生します。この背景には、友達も少なく、遊びの環境も奪われ、家族の結びつきも弱まるなど、子供の自立がかつてなく困難な状況や、無差別殺人、暴力、腐敗が野放しの社会のゆがみがあります。しかも、深刻なのは、こうした社会のゆがみから子供を守る防波堤となるべき学校の中でいじめが広がっていることです。

  日本共産党は、いじめから子供たちを解放するには、何よりも学校でこそ人間を大切にする教育が貫かれ、子供が守られなければならないという立場から、いじめ克服のための提言を発表しました。その中では、学校でいじめが起きる根本には、子供を差別し、管理、統制しようとする政府の教育政策があり、学校教育のこのゆがみこそ正されなければならないということを指摘しています。

  政府による学習指導要領の改訂で、詰め込みがかつてなく強化されました。子供たちは、小学校低学年からの超スピード授業に追いまくられ、塾通いも日常化しています。絶えずストレスが蓄積され、はけ口があれば、一気に吹き出します。

  さらに、受験競争の激化も子供を追い詰めています。都立高校の入試は、単独選抜の導入、推薦制度の普通科への拡大と、二年連続で大幅に変更されましたが、子供たちはますます早い時期から、仲間同士の激しく複雑な競争に追いやられていきます。今こそこうした学校教育のゆがみを正し、学校は、教育基本法に示された、人間を大事にする教育に徹しなければなりません。私は、子供たちのいじめをなくすには、憲法と教育基本法の原点に立ち返り、子どもの権利条約の観点に立つことが不可欠と考えますが、知事の所見を問うものであります。

  子供たちを異常な詰め込み教育から解放するためには、詰め込みと差別、選別を進め、ゆとりを奪う学習指導要領の見直しが不可欠です。見直しを求める意見書は、全国の二割の自治体で採択されています。現行学習指導要領の抜本的見直しを国に求めるとともに、学習指導要領の押しつけをやめるべきです。答弁を求めます。

  また、受験競争の解消も急務です。この春、中学校の卒業式が終わっても、約二千人の子供たちが進路が決まっていませんでした。都が全日制の定数を二千四百人も削減しなければ、全員迎え入れることができたはずです。都は、高校の選抜方法を複雑化させ、子供たちを仲間同士の競争へと追いやるやり方ではなく、高校の希望者全員入学を保障すべきであります。答弁を求めます。

  いじめが教師にも見えないまま子供を死にまで追いやっているのは、日本だけです。欧米では、教壇から一目で子供が見渡せるように、一学級の人数が二十人程度に抑えられています。東京でも子供の人数が減少し、学級定員を減らせる条件は既に生まれているのに、学級規模縮小の願いに背を向け、教職員も八年間に八千二百七十一人も減らされてしまいました。いじめをなくし、子供に教師の目が行き届くように、都は、三十人以下の少人数学級の実現と教職員の大幅増員を行うべきです。また、今、子供たちの相談しやすい相手となっている養護教員の複数配置を急ぐべきです。お答えください。

  以上、私は、人間を大切にする教育への根本的な転換を求め、質問を終わります。  ご清聴ありがとうございました。(拍手)

 

 〔知事青島幸男君登壇〕

◯知事(青島幸男君) 曽根議員にお答え申し上げます。

  住宅政策のうち、マンション対策についてのお尋ねでございますが、安全で快適なマンション居住に向けた対策の充実は、住宅政策の課題の一つと認識をいたしておりまして、現在、東京都住宅政策審議会におきまして、居住の場としても魅力的な東京を実現するための住宅施策の推進についてご審議をいただいておりまして、マンションの維持管理などにつきましても検討課題となっているところでございます。今後、その審議等も踏まえまして、マンションにかかわる問題について適切に取り組んでまいりたいと考えております。

 次に、教育政策について、特にいじめの問題でございますが、いじめ問題にかかわって、憲法と教育基本法の観点に立つことが不可欠とのお尋ねでございます。

  教育は、日本国憲法、教育基本法等に基づいて行われるべきものでございまして、また、児童の権利に関する条約の趣旨を尊重して行われることがもとより大切なことであると考えております。  なお、その他のご質問につきましては、関係局長から答弁申し上げます。

 

   〔都市計画局長木宮進君登壇〕

◯都市計画局長(木宮進君) 住宅対策に関連して三点のご質問にお答え申し上げます。

  マンションの耐震診断についてのお尋ねでございますが、マンション等の民間建築物の耐震診断につきましては、本来その所有者または管理者の責任において行われるべきものと考えますが、都としても、耐震性の確保は、震災対策上重要な課題であると認識しております。このため、建築物の耐震診断システムの普及及び専門技術者の育成に努めているところでございます。今後、関係区市等と連携をとりながら、積極的にこのシステムの普及を図ってまいりたいと考えております。

 次に、耐震診断等の費用助成についてのお尋ねでございますが、民間建築物の耐震診断助成につきましては、今年度より都内数区におきまして実施すると聞いておりまして、この動向を踏まえ、今後研究をしてまいりたいというふうに考えております。

  また、補強工事費用助成につきましては、既存の融資制度の活用等も含め、十分に検討してまいりたいと思います。

 最後に、建築物の耐震基準及び手抜き工事防止対策についてのお尋ねがございました。  耐震基準につきましては、現在、国が阪神・淡路大震災の被害状況をもとに検討を行っているところでございまして、その動向を踏まえ、適切に対処してまいりたいというふうに思います。

 また、施工管理の適正化についてでございますが、東京都では従来から一定規模以上の建築物の工事につきましては、施工に関する報告書の提出を義務づけ、必要に応じ、現場実査などにより指導を行っているところでございます。今後とも、適正な工事施工が行われるよう指導を徹底してまいりたいと存じます。

 

   〔住宅局長石橋清治君登壇〕

◯住宅局長(石橋清治君) マンション管理組合についてのお尋ねにお答えします。

  都はこれまで、不動産取引に関する相談窓口において、維持管理の問題を含め、マンションにかかわる相談にも応じてきたところであります。今後ともマンションの適正な維持管理に資するよう、区市町村との連携を図りながら、管理組合の運営にかかわる啓発や相談体制の充実に努めてまいりたいと考えています。

 

   〔教育長市川正君登壇〕

◯教育長(市川正君) 学習指導要領の抜本的見直しを国に求めることなどについてのお尋ねでございます。

  学習指導要領は、全国的に一定の教育水準を確保するとともに、実質的な教育の機会均等を保障するため、国が学校教育法に基づき、教育課程の基準として定めているものでございます。都教育委員会としましては、今後とも学習指導要領を尊重してまいります。

 高等学校の就学計画についてのお尋ねでございます。  都教育委員会は、高等学校の生徒の受け入れにつきましては、従来から公立、私立一体となって就学対策を講じてまいりました。今後とも、高等学校教育を受ける熱意と意欲のある生徒を一人でも多く受け入れることができますよう努力してまいります。

 次に、三十人以下の少人数学級の実施と養護教諭の複数配置等の教職員の増員についてのお尋ねでございます。  現行の四十人学級においては、一学級平均の実員は、小学校で約三十一人、中学校では約三十五人となっております。ご指摘の学級編制基準の改善につきましては、国や他の道府県の動向を見ながら対処してまいります。

  教職員の増員につきましては、チームティーチングの実施や選択履修の拡大、登校拒否生徒対応など、指導方法の改善により、一人一人を大切にした教育を展開しているところでございます。また、養護教諭につきましては、三十学級以上校への複数配置の改善計画を踏まえ、増員を計画的に図っているところでございます。今後とも、教職員定数の改善には努力を重ねてまいりたいと存じます。

 

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