臨海開発特別委員会95年11月15日
臨海部への総合保税地域導入を批判
◯曽根委員 私からは、先ほど西田委員の質問もありましたが、きょうの議論を聞いていまして、臨海副都心というのが長期的戦略でどうしても必要なものだから、今一喜一憂せずに開発を続けるべきだなどという話が、質問側からも答弁側からもありましたが、私は本当にとんでもない話だと思っているのです。
もしも、バブルの崩壊やオフィスの過剰が起きないでそのまま進んでいれば、では、あそこに副都心をつくることがよかったのかと、ここのところが原点から厳しく問われているんだということを忘れてはいけないと私は思う。
都民の共有財産である臨海部の埋立地域を副都心にすることについて、都政モニターアンケートや江東区民世論調査に示された、公園、緑地、文化、スポーツ施設、住宅等の都民要望に逆行するものであったことは、先ほど西田委員が指摘しました。しかも、副都心づくりというのが、一極集中の緩和どころか、ビルラッシュと地価高騰で都市問題を激化させたことも、歴史的経過で明らかであります。
さらにいえば、臨海副都心というのは、副都心構想を支持する人々からも批判されているわけです。皆さんの大先輩である、元港湾局長の竹下惟利氏も、「都市問題」という雑誌のことしの五、六月号にかけて、臨海副都心開発の大幅見直しを求めていますが、この中で、大量の通勤通学者を生み出す居住地が、都心部を隔てて臨海副都心とは対極の位置に広がっていることに加えて、臨海副都心には、都心部への流入者を途中で受けとめるべき背後圏が存在しないこと、さらに、この開発で増加する業務人口が、大量交通機関も自動車交通による流入も、その相当部分が都心部を経由して臨海部に入っていくことになると指摘をして、臨海副都心は、都心部への一点集中の抑制を目指す多心型都市構造の一翼を担うといいながらも、都心部の過密状態を一層激化させかねない要素をはらんでいると厳しく批判しているわけです。私は、この限りにおいて、非常に説得力のある話だと思うのです。 このほかにも、ヒートアイランド現象の問題、先ほどもありました。大気汚染、海からの風の障壁となるなどの環境問題や、九割以上が液状化の危険性があるなどの防災問題も、もう指摘されています。
このように、もともと根本的な問題を抱えたまま進めてきた臨海副都心開発が、今日、バブルの崩壊で、もうオフィス街づくりそのものが破綻に直面している。私は、まさに自業自得だと思っているんです。
この点に関連して、事実経過だけを聞いておきたいと思うのですが、かつて、一九八七年に、関係省庁等連絡会議が、西暦二〇〇〇年までの二十三区内のオフィス床の需要増加分をどれくらいと予測していたか、これに対し、実際にそれ以後今日まで、二十三区内にどれだけのオフィス床が供給されてきたか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
◯秋口都市計画局総合計画部長 関係省庁等連絡会議での予測と、これまでの供給量でございますが、昭和六十二年の関係省庁等連絡会議では、一九八五年から二〇〇〇年までの区部事務所床の新規需要量を千六百から千九百ヘクタールと見込んでおりました。これに対しまして、一九八七年から一九九五年までの区部の事務所の供給量は二千七百四十三ヘクタールでございます。
◯曽根委員 バブルの真っ盛りのときに政府が予測したビル需要の予測をはるかに超える分量が供給されてしまっている、しかも景気は、バブルがはじけて長期の不況に陥っている、こういうところまで来てしまったわけです。政府の過大な予測さえ上回るこの供給が、今日の臨海地域を初めとするオフィスビルの賃料低下をもたらしているわけです。東京都は、公式に臨海のモデルビルの賃料などを坪三万五千円としていますが、これは全く実態に合っていません。そこで、オフィスの契約賃料の実態を反映している住信基礎研究所のデータでは、臨海よりも都心に近い芝浦また浜松町では、今どれぐらいの賃貸契約がされているんですか。
◯砂岡港湾局臨海部開発調整担当部長 住信基礎研究所が本年十月に発行いたしました「東京のオフィスマーケット'95」には、同社が行ったアンケート調査をもとにしまして、エリア別の大規模ビル新規成約賃料推定が掲載されております。これによりますと、推定賃料は、浜松町エリアは、共益費込みで坪二万三千五百円、共益費別では坪一万九千百円、また芝浦エリアは、共益費込みで二万一千百円、共益費別で一万六千七百円となっております。
◯曽根委員 共益費を入れなければ二万円を切っているわけですよ。それも、臨海地域よりも海を渡って都心に近いところでさえ、こういう金額。先ほど、一万八千円という話もありましたが、ここまで下がってもオフィスは埋まっていないわけです。
もともと副都心構想そのものが、東京一極集中の受け皿を、都心三区から二十三区全域まで拡大して、過剰なビル供給のいわば引き金になったわけですね。しかも、臨海副都心は、先ほどの議論にあったように、都心の集中、過密を緩和するどころか激化させるおそれもあるというんですから、私は二重の欠陥の都市計画だと思います。根本から見直さなければならない、破綻するのは当然だというふうに思います。
これを、今何が何でも続けようとしている東京都の姿勢、企業進出をやりやすくするために、徹底的な賃料の値下げ、土地の安値の売却に追い込まれようとしている。それでも足りずに、都心並みに利便性を高めるために、幹線道路建設などに莫大な都民の税金を使うことにならざるを得ないわけです。都民は、こういう無謀なやり方を絶対認めない、この点を指摘しておきたいと思います。
ところが、こういうオフィス街を中心にした副都心づくりにあくまで固執するといいますか、何とか企業の進出をやりやすくするということで、今度、新しい輸入促進地域、いわゆるフォーリン・アクセス・ゾーン──FAZとも約していいますが──だとか、総合保税地域、さらにはフリー・トレード・ゾーンなどの構想が、前の定例会の中で各党から提案されました。知事はこれに対して、臨海の懇談会に進言するというところまで答えている。随分熱心な答弁だなあというふうに聞いていたんですが、実際に知事がその懇談会に出て進言したという話は聞いていません。
そこで、一つ一つちょっとお聞きしたいんですが、まず、フリー・トレード・ゾーンというのはどういうものか、それから、これは現在の法律の枠内でも実現可能な制度なのか、この点をお聞きしたい。
◯砂岡港湾局臨海部開発調整担当部長 フリー・トレード・ゾーンはどういうものかというお尋ねでございます。 これは、自由経済地域といわれているものでございまして、関税上の外国に当たる地域、具体的には、関税の免除、為替管理、輸出手続等の規制緩和が行われ、貿易の拡大、促進が図られる地域であるといわれております。 現行法の枠内で対応可能かというご質問でございますが、対応することは大変難しい、関連法令の改正が必要であると考えております。ただし、現行、既にありますFAZ、すなわちフォーリン・アクセス・ゾーンあるいは総合保税地域など、こういう制度の活用をすることはもちろん可能でございます。
◯曽根委員 今お話もありましたが、それでは、フォーリン・アクセス・ゾーン及び総合保税地域というのはどういうものでしょうか。
◯北爪労働経済局商工計画部長 フォーリン・アクセス・ゾーン、FAZといわれているものでございますけれども、これは平成四年四月に施行されました法律に基づきまして設立された制度でございます。輸入の促進を図るために、港湾であるとか空港、その周辺地域に輸入に関する施設や事業を集積させまして、その中で物流施設、加工施設、卸売施設などの整備を行いまして、輸入の促進なり対外投資の促進を図ろうという制度でございます。
それから、総合保税地域というのは、これもやはり平成四年につくられた制度でございますが、ご存じのとおり、従来の保税制度というのは施設ごとになっております。全国六千カ所ございますが、保税上屋から展示場なり保税工場に出すにしても、一々税関長の許可が要る、こういう話でございますが、この総合保税地域になりますと、基本的には荷物の出し入れは自主管理、各施設間の移動につきましても税関長の許可が不要という意味で、そういう意味では非常に流通コストの削減なり許認可事務の軽減、そういうことになる制度でございます。
◯曽根委員 つまり、今現実の法律のもとで具体化できるのは、FAZと総合保税地域ということなわけです。FAZは現在、全国で十八カ所指定を受けているというふうに聞いていますが、その大半は、行く行くは総合保税地域の指定を受けようということで動いているらしい。
ただ、具体的に今、FAZと総合保税地域の両方の指定を受けて事業がスタートしているのは、大阪の南港地区のアジア太平洋トレードセンターの中にしかありません。全国で唯一一カ所です。その大阪の総合保税地域では、スタートしてから一年ぐらいになりますが、現在の入居率は何割でしょうか。
また、もう一つ、ついでにお聞きしますが、このアジア太平洋トレードセンターと隣接して、これと一体にといいますか、輸入関連産業のオフィス用に建てられたワールドトレードセンターという五十階建てのビルがありますが、こちらの入居率は何割でしょうか。
〔「自分で数字持っているんだろう、いっちゃいなよ」と呼び、その他発言する者あり〕
◯砂岡港湾局臨海部開発調整担当部長 最初の大阪のATCの分でございますが、これは約四〇%程度と聞いております。 それから、大阪のワールドトレードセンターでございますが、約六〇%程度と聞いております。
◯曽根委員 何か自分の持っていることをいえというようなお話もありますが、私たち、先日、この現場を調査してきました。まず、ワールドトレードセンターについては、大阪市が約三割、三井不動産が三割出資して、FAZと民活法適用で五十階建てで建てられた。テナントは五割しか埋まらず、貿易センターという名前をつけながら、実際入居しているテナントは、港湾や貿易関係という当初目指したものとは全く関係がなくなっていました。それでも入居が五割でした。結局、大口出資者が責任をとるということになって、最近、貿易とは縁のない三井不動産が大阪本社を移転、入居して、今お答えになった六割にやっとなった。
当然、もう一つの大口出資者の大阪市の方も三井から責められているわけです。一時、港湾局をそっくり移転させるという話が浮上したんですが、新聞ですっぱ抜かれて、これが立ち消えになった。結局、港湾局関連ということで、埠頭公社など港湾関係の三セク二社が入ったということですね。
大体、ウオーターフロントの三セクビルというのはどこでも同じような話が出るものだなあというふうに聞いたんですが、そこで、問題の総合保税地域のあるアジア太平洋トレードセンターの方はもっと悲惨な状態なわけです。今お答えのように、十二階建てで、中が吹き抜けの回廊式のフロアが三十万平方メートルの広さがあるんですが、ここに入居は四割。総合保税指定で最も有利になるといわれている、いわゆる宝石、貴金属関係のフロアでさえ、床の三分の一はあいている状態です。六階から八階は全く使われておらず、真っ暗。全体に人けがなく、がらんとしていて、私が行った素人目にも、この事業が全くうまくいっていないというのが手にとるようにわかるわけです。
一人実例を挙げますけれども、Aさんという方が、自分のやっていた宝石店がつぶれてしまったために、大きな宝石商に雇われて、このアジア太平洋トレードセンターの展示卸売コーナーを任され、売り上げの一割を歩合で受け取るということでやっていますが、日中はほとんど客が来ない。店をあけていても仕方がないので、本人は、夜間、飲み屋のアルバイトで生活費を稼ぎ、アジア太平洋トレードセンターの店は、午後二時に行ってあけているということであります。
大体ほかの店もこんな調子なので、客もいなけりゃ店に店員もいないんです。全体が非常に暗い雰囲気なのにびっくりした。それでも何とか大阪市は、海外からも貿易関係の企業を入れようということで懸命なために、海外企業の入居には大阪市が家賃補助をしてやっているんですね。
さらに、ことしの急激な円高のときは、海外企業が逃げないように、賃料を一ドル百円のドル建てで支払うことを認めるという前代未聞のことまでやって引きとめている。まさにおんぶにだっこの扱いですけれども、当然、優遇措置のない国内業者は、これに対して不満を持っている、そういう状態です。
しかも聞いてみると、海外企業といっても、実は海外進出した日本企業が海外生産の商品を逆輸入するために、海外企業の名前でここに潜り込ませて優遇を受けているという実態もあるというんですから、これは、行政みずから産業空洞化の片棒を担がされているわけです。こんなことをやっているせいか、出店業者も、次から次に入れかわっているようです。
大阪市は、アジア太平洋トレードセンターの総合保税地域では、一応、輸入品の卸売だけを扱うとしていますが、実際にお店に行ってみると、日銭を稼ぐために、各フロアでは明らかに小売とわかる商品を並べています。原則として会員証を見せないと入れないはずが、余りに閑散としているので、見学と称して一般客が入っても、ノーチェックになっている。
もし東京が大阪と同じようなFAZと総合保税地域をこれからやるとすれば、わざわざ第三セクターを新しく設立しなきゃならない。おまけにFAZ指定を受けた建物を建設し、さんざん手間をかけたあげく、またまた赤字の三セクというお荷物を抱えることになりかねない。(「もうかる仕事を提案しろよ、何か。」と呼ぶ者あり)
今、大阪はこういう状況なんですが、一方で私が危惧しているのは、もしこれを何が何でもうまくいかせようとしたら、どういうことになるかということなんです。いわゆるもうかる話。FAZ法が最近改正されました。国も唯一の大阪の実情を見て、何とか事態を打開しようとしているらしいんですけれども、そこでお聞きしますが、そもそも三年前にFAZ法が制定されるに至った経緯は、どういうものだったのでしょうか。
◯北爪労働経済局商工計画部長 平成四年のころにつきましては、経常黒字が結構国のでかい問題であったわけでございますので、日本経済を国際経済に合わせる、そういう意味で、貿易、投資の両面にわたって日本のアクセスをよくしなければいけないというのが第一点目の目的であります。
二点目は、例えば四十フィートコンテナを東京港に入れまして、新潟まで十八万一千円かかります。これは、ヨーロッパから日本へ持ってくるだけの外航運賃と同じ値段であります。そういう意味では、地方の港湾を整備する、それによって地域の消費者の流通コストを下げる。そういう意味での地方の開発といいますか、国土の均衡ある発展を遂げると。 そういうような二つの意味から、この制度がつくられたというふうに理解をしております。
◯曽根委員 今のお答えでは、貿易不均衡の是正という、国際経済に日本経済を合わせるという話でしたが、これは、日米構造協議の最終報告の合意事項の一つの具体化になっていますよね。輸入関連施設にも至れり尽くせり優遇してやって輸入を促進するということだと思うんですが、日本の貿易黒字の原因というのは、低賃金と下請いじめでコストを減らして、とにかく円高でも何でも輸出を拡大するという、商社を初めとする八十数社の大企業が根源になっているんです。ここにメスを入れないで、国内の中小企業に大打撃を与えるような輸入を促進するようなことをやると、これ自体が大問題になるわけです。
事実、逆輸入によって産業の空洞化に拍車をかけている実態は、大阪のアジア太平洋トレードセンターに既に出ているわけです。こんなものにてこ入れして、うまくいくようにしたらば、これまた、もし東京であれば、都内の輸入関連小売業者に甚大な影響を与えると私はいわざるを得ないと思うんです。
そこで、大阪のアジア太平洋トレードセンターがうまくいっていないのが、小売まで含めてやっていない、卸売専門だという話があるわけですが、前定例会でも、臨海部にFAZと総合保税地域をつくって一般都民に輸入品を直接販売すれば、新交通も利用され、都民に喜ばれるというような議論もありました。
しかし、自治体が輸入品の安売りで大規模の小売を手がけるというふうになるとすれば、都内の中小小売業に甚大な影響を及ぼすことになります。だからこそ大阪では、最初から小売に与える影響が大きいということで対象に考えていないわけです。
東京だって、私同じだと思うんです。私、北区に住んでいますが、北区の商店街だって、既に長期の消費不況と大型店の進出で、街路灯の電気代も払えないということで解散した商店街が次々に出ているんですね。 東京都は、自治体として、こんなことに首を突っ込むことができると考えているのか。都内の小売業への影響など、検討しているんでしょうか。
◯北爪労働経済局商工計画部長 まず、二つの制度があるわけでございますが、総合保税地域につきましては、国内市場と切り離しまして保税地域を総合的に管理をするというシステムでございまして、基本的にご指摘のような点というのは、全く制度の目的とは関係がないということだろうと思います。
それから、東京の中の商店街を含めます中小小売業の問題はございますが、小売業を中心とします商店街におきましても、やはり現在の消費者のニーズに全く適合しないというような品ぞろえでは困るということは、切実に認識しているところでございます。
そういう意味から、商店街の国際化であるとか輸入品の品ぞろえというのも、当然のことながら考えているわけでございまして、制度自体がどのようなニュアンスを持つかというようなことはありません。制度は、あくまでもニュートラルであります。問題は、そういう制度につきまして、東京の中小企業なり、そういったものがどのような参加をするかというのが問題だろうと考えております。 以上でございます。
◯曽根委員 保税地域とは別物で小売をやるといったって、事実上、一体になって輸入品を安く買える売り物をやるわけでしょう、東京都がかんで大がかりに。中小業者が参加できるとかいったって、この消費不況で軒並み苦しんでいる小さい小売店が出てこられる余裕が一体どれぐらいあるかということなんですよ。
結局大手に持っていかれる。しかも、市民に低廉な価格で輸入品が提供されるといっても、それこそ海外進出企業の逆輸入で都内の産業が空洞化されて、消費者である都民自身の仕事が今なくなっていっているのと裏腹なんじゃありませんか。
私は、もう一つ、輸入関係の卸売の問題でも大変大きな問題を起こすと思います。東京には、長年かけて各種輸入関連業者の集積がそれぞれの分野でつくられてきています。例えば宝石、貴金属関係では、御徒町かいわいに行けば何でもそろう。中小零細も含めて、その品ぞろえが最大の集積のメリットになっているわけです。
もし、総合保税地域を何が何でも軌道に乗せようということで、都内の輸入関係の集積を臨海部に進出させるというようなことがやられるとするならば、結局大手の企業しか出られない。零細な業者は地域に取り残されてしまう。そういうふうに品ぞろえの魅力が失われていくことになれば、例えば御徒町かいわい、本当に寂れてしまいます。こういう危険性について、都は検討したんでしょうか。
◯北爪労働経済局商工計画部長 基本的にいえば、東京都としまして、FAZなり総合保税地域を適用するということを決めたわけではございませんし、検討したかといわれても、お答えしようがないということでございます。
◯曽根委員 まだ検討したことがないというんですから、これは本当に今考えなくちゃいけないと思うんです。 労経局は最近、円高、空洞化対策について、検討会をつくって中間報告をまとめたと聞いていますが、それはどういう趣旨ですか。
◯北爪労働経済局商工計画部長 労経局は、現在の円高といったものを背景としまして、都内の中小企業の受注が減少するとか、単価の切り下げとか、そういった問題があるということ、それからまた、後継者難とかいろんな問題から都内の工場数が減少している、そういう状況を踏まえまして、何らかの対策を考えねばいかぬのではないかということで、本年の三月に検討委員会を設けまして、八月に中間報告をまとめました。
最終的には、やはり都内の工業集積というものがある程度維持をされませんと、都内の中での技術集積といいますか、そういったものもなくなりますし、消費者ニーズに合った製品もつくれなくなる、そういうことから、空洞化といいますか、工業集積を維持し、活性化する方向で問題を整理して対策を考えたいということを主として考えております。 近く最終報告を取りまとめまして、具体的な対策の実現を図っていくつもりでございます。
◯曽根委員 今のお答えだと、空洞化の問題については全然話がないんですが、要するに、企業の海外進出、海外生産による生産品の輸入による影響というのは、空洞化のもう一つの中心問題でしょう。そういうことについて全く検討していないんですか。
◯北爪労働経済局商工計画部長 確かに輸入の問題はありますけれども、現実問題としまして、今の状況の中で輸入を全くシャットアウトするというのはできないわけでございまして、輸入のそういった増勢の中で東京の中小企業が本来の力を発揮していくためにはどのような政策をとっていくべきか、それから、東京都としてどのような誘導をしていくべきか、そういうことを中心にこの報告書を考えているわけでございます。
◯曽根委員 北爪さん、ちょっとごまかしがひどいと思うんですよ。私、この中間報告をもらったんですよ。前書きの冒頭に書いてあるんですよ。近年の急激な円高による対外直接投資の増加、製造業の海外生産比率の上昇及び輸入の増加等により、我が国産業の空洞化は懸念されていると。明確じゃないですか。輸入の増加によって産業空洞化が懸念されていると書いてあるじゃないの、前書きの冒頭に。それを、今輸入の問題はありますがというふうないい方では、私は本当に答弁として正確じゃないと思うんですよ。この前書きで明瞭だと思うんですね。
つまり労経局の仕事というのは、一つは、この空洞化対策についていえば、どんどん海外から超低価格で輸入品が入ってきて、都内の小売が大変な状況に陥っているから、これに対して何とかしなきゃならぬということで、この対策をやっているわけでしょう。その一方で、輸入促進だということで、こういう乱暴なやり方のFAZや総合保税地域をもし推し進めるとすれば、大変なことになるわけですよ。今の労経局が守るべき中小零細の商業者に大きな犠牲を強いる、いわば正反対の方向に進むことになりかねない、このことを強く指摘しておきたい。
結局、FAZとか総合保税地域は、失敗すれば大阪の二の舞で、入り手のないビルと赤字の三セクをふやすだけだし、逆に、なりふり構わず成功させて輸入品が急増すれば、都内の中小企業や商店に重大な影響を与える。都内の産業空洞化の促進で都民全体に影響が及ぶという、どっちに転んでも重大な問題になるといわざるを得ないわけです。臨海部の開発を副都心づくりにこだわって推し進めようとする限り、こうした問題に突き当たらざるを得ないと思うんです。
やはり開発の基本目標を、大企業優先型ではなくて、都民のもともとの願いに沿って根本から見直すしかない、このこのことを強調して私の質問を終わります。