本会議討論94年9月29日
臨海撤退企業を3セクで穴埋め、理容洋裁学校廃止に反対
◯十五番(曽根はじめ君) 私は、日本共産党都議団を代表し、第二百九号議案、老人の医療費の助成に関する条例の一部改定案外十二議案に反対の立場から討論を行います。
今定例会で問われたのは、都民から吸い上げ、それを大企業奉仕の大型開発につぎ込んできた鈴木保守都政十五年の路線全体が、臨海副都心開発の破綻や開発経費の肥大化による財政圧迫など深刻な行き詰まりを来している現状を、どのような方向で打開していくのかということでありました。
これに対して知事が選択したのは、リストラの名による都民施策の本格的な切り捨てで、大規模開発にさらに都財政を投入していく道でした。この方向が、いかに道理もなく、都民の利益に根本から反するものであるかは、本定例会の審議を通じても明らかになりました。
都政の行き詰まりの象徴というべき臨海副都心開発では、地価の下落で都の七兆円の収入見込みが一兆円台まで落ち込み、その破綻は明白であるにもかかわらず、知事はこれを見直すどころか、民間企業が進出を断念した区画に、第一次公募で落選した第三セクターを、いわば裏口入学であてがいました。その上、知事自身がこの開発の起爆剤と躍起になっている世界都市博覧会には、閉幕後には跡形もなく消え去るにもかかわらず、六百三十億円もの巨費をつぎ込むとともに、二週間で三億円をかけたテレビコマーシャルなど、人を集めるためには金に糸目をつけないやり方を、都民は決して認めないでありましょう。都政のリストラをいうなら、何よりもまず、臨海副都心開発や世界都市博覧会こそやめるべきなのであります。
我が党は、今定例会に提案された関連道路議案を含め、臨海副都心開発を凍結し、都民参加による根本的な見直しを行うことを改めて要求するものであります。
一方で、知事の進める都民施策の切り捨て、事務事業の見直しがいかに道理のないものであるかは、理容学校・洋裁学校に係る連絡協議会の検討結果でも明らかになりました。
理容学校については、中卒者対策、後継者対策などのために組合に引き継ぎ、民間校と同じにしないよう援助を行うとしており、結局は、検討してみたら、公的な理容学校はやっぱり必要だったということなのであります。洋裁学校については、廃止の理由を、都は職業補導の役割が終わったためとしていましたが、今日の洋裁学校が、子育てに追われていた主婦が初めて社会に参加し、福祉に目を開くなど、社会福祉のすそ野を広げる新たな役割を果たしているとの我が党の追及に、都側もこれを認めざるを得ず、連絡協議会では、この肝心なことが検討されないまま、廃止の方向だけが追認されていたことが明らかになったのであります。
今回の事務事業見直しは、都民の運動で十五年間守り抜いてきた革新都政の成果を初め、福祉、教育の進んだ施策など都民の財産を掘り崩そうというのがそのねらいであり、我が党は、都民とともに、これを許さぬ闘いをさらに広げるものであります。
都政に今求められているのは、都民の命と暮らしを守るために、自治体として全力を尽くすことです。健康保険法の改悪で入院給食費が有料化されたこのときに、最も影響の大きいお年寄りだけを給食費助成の対象から外すことは許されません。我が党は、乳幼児、障害者に加え、六十五歳以上のお年寄りすべてを入院給食費助成の対象とするとともに、今こそ老人医療費の無料化を復活することを求めるものであります。
こうした都民を守る施策を講ずることをせず、今定例会に、これまで凍結されていた知事、都議などの報酬引き上げが出されたことは到底容認できません。長引く不況のもとで、中小企業の倒産件数は二年連続三千件を超え、完全失業率も三・三%と全国平均よりはるかに高いことなど、都民の苦しい生活や営業を無視して、知事や議員の報酬の引き上げなど今行うべきではないのであります。
次に、消費生活条例の改正について、我が党は、消費者団体などとの懇談を通じて最も要望の強かった、消費生活の安定と向上のための行政の施策に参加する消費者の権利を明記してほしいとの声を生かした修正案を提案いたしました。この提案が否決されたのは遺憾であります。都は消費者参加の観点を貫くとともに、新しい条例を積極的に活用し、消費者の生活と権利を守るために全力を挙げることを改めて求めるものです。
リキテンシュタインの「ヘア・リボンの少女」購入の議案について、議会の果たすべきことは、美術資料評価員会及び美術資料収集委員会での審査が公正なものであったかどうかを明らかにすることでありました。ところが教育庁は、我が党の議事録、購入額などの情報公開の要求には、改善の努力の表明にとどまり、肝心の今回の議事録の公開は拒否しました。
本議案には、美術関係者や都民から収集方法、価格などについて疑問が寄せられています。評価員会、収集委員会でどのような審議と意思決定がされたのか公にされていない現状では、本議案には賛成しかねるものであります。
今定例会中に、村山内閣は、消費税の増税方針を打ち出しました。首相の村山氏自身が、わずか七カ月前の細川内閣による国民福祉税構想に対して、福祉に名をかりた消費税率引き上げにほかならないなどと批判していたのを百八十度転換し、消費税率の五%引き上げを決めようとしていることは、重大な公約違反であります。 我が党は、消費税率引き上げに反対する意見書案を財務主税委員会に提案いたしましたが、我が党以外の全会派がこれに反対しました。このような態度は、消費税に苦しむ多くの都民の強い批判を免れません。
半年後に迫った都知事選挙では、都政の行き詰まりの現状を打開する二つの道の選択が鋭く問われるでありましょう。日本共産党は、新たな自治体リストラで大型開発を強行し、都政をさらに大企業に奉仕するものに再編する反都民的な路線と徹底的に闘うとともに、広範な都民と手を結び、住民の安全、福祉、健康を守り抜く都民が主人公の都政を取り戻すために全力を尽くす決意であることを述べて、私の討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)