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住宅港湾委員会94年7月11日

 都営住宅家賃制度回悪・値上げに反対の討論

 

◯曽根委員 私は、日本共産党都議団を代表して、本委員会に付託された第百八十七号議案、都営住宅条例の一部を改正する条例案に反対する立場から討論を行います。

  本条例案は、都営住宅の家賃に市場家賃の制度を導入し、著しく低過ぎる収入基準を盾に、収入基準を超える入居者に制裁的家賃を課すことで、都営住宅から追い出すことを目的とした応能応益的家賃負担制度を導入するものであります。これによって全世帯の七割が値上げとなり、年間十三万円を超える値上げが押しつけられることになるものです。

  本改定案は、一九九二年の十一月、都知事による諮問以来、居住者代表や関係者の意見は一度聞いただけで、素案が出てからは都民に非公開の中で検討され、初めて公開された住宅政策審議会は四十分の審議で、我が党の発言を途中で打ち切って、答申の採決が強行されたものです。

その後、住宅局による具体化の中でも、都民と居住者の声は無視され続けました。

さらに、本定例会での審議に当たって、我が党の、参考人を呼んで聴聞会を開くべきとの動議が、他の全会派の反対で否決されたことは、議会としての当然の責務を放棄することにつながるもので、極めて残念です。

  東京都は、この制度の導入の目的を、適正かつ公正な住居費負担の実現を図るものとしました。 しかし、この間の審議を通じて、この改定の根拠が全く不当なものであることが明らかにされました。

とりわけ、収入超過者、高額所得者について、法も条例も、これらの人の存在について何ら不正なものではないこと、むしろ、こうした人々が住みかえることが可能となる条件を整備することを求めているのであります。

ところが、都も国も収入基準を実態に合わせることをせず、高額所得者をふやしてきました。また、公社や公団などのあっせん住宅が実態に見合って行われていないこと、公社や公団家賃が高額化していることなど、住みかえのための条件整備が放置されてきたのであります。

不公正が問題となるとすれば、このことが不公正そのものなのであります。高額の家賃を課すことで追い出しを図ることは、住民の福祉に責任を負う自治体が行うことではありません。

  また、こうした高額所得者が低い家賃であるとして、法定限度額との差額が都民の税金で賄われているかのような主張が論拠として掲げられました。これも質疑を通じて、実際には税金で賄われるものではないことも明らかにされました。法定限度額の根拠である地代相当額、都の場合の使用料限度額の固定資産税評価額や国の補助金は、実際に税金が使われているわけではなく、計算上のものであることが我が党の追及で暴露されました。

都民の税金が五百十四億円も投じられているという当委員会に提出された資料そのものが全く根拠のないもので、都民を欺くものであります。

  このように、都がこの制度が必要とする根拠、理由は成り立たず、客観的批判に到底たえられるものではありません。提案の前提が崩れているのであり、撤回するのが良識ある態度であります。

中嶋局長は発言で、この改定が建設省通達に基づくものであることを明らかにしましたが、まさにこの改定は都民のためでなく、国のいいなりに進められたことを証明したことは重大です。

  また、本日の理事会での中嶋局長の補足発言の中で、建設省の通達を強調し過ぎた形となり、あたかも都営住宅の家賃に市場家賃を導入するかのように誤解されたものでございます、との説明がありましたが、市場家賃などに照らして、適切な負担を求めるのが法の趣旨だと、建設省通達でもみずから述べており、どんなにいい繕っても、都の改定案が国に追随して市場家賃の導入を図るものであることは明白です。

  改定案の内容については、何よりも審議で明らかになったように、本改定案が実施されると、家賃の増額は都営住宅の六五%に及び、一方で減額となる居住者は、一般減免の家賃改定に伴う拡充を除けば、全体の一一%にすぎないこと、これによる都の差引増収が百五十億円に及ぶことなどから、都営住宅として史上最大の値上げとなるものであります。円高など不況の一層の深刻化、他の公共料金の相次ぐ値上げなどの中で、これに追い打ちをかけるもので、断じて認められません。

  さらに、今回の応能応益的家賃負担制度の導入は、東京の実態から見て低過ぎる入居収入基準や明け渡し基準を盾に、これを超えた者を収入超過者、高額認定者として、市場家賃に近い使用料限度額をもとに制裁的な高額家賃をかけ、追い出しを図ろうとするものです。全国一律の基準では、東京の勤労者の賃金水準から見て、四分の一程度しか入居資格が認められず、明け渡し義務の生ずる高額認定基準も、都内の勤労者の平均収入を下回っています。高額家賃で追い打ちをかけることは、制裁以外の何物でもありません。

  今回新たに用いられる使用料限度額は、基準家賃の上限として設定されるだけでなく、収入超過者の付加使用料や高額認定者の家賃計算の基礎に使われようとしています。これは、東京の高地価を反映する法定限度額では実態に合わないために、三十年近く政策家賃制度を採用してきたことに逆行するものです。

しかも、使用料限度額の算出に、ことしの見直しで四倍から五倍にはね上がった固定資産税評価額がいずれ盛り込まれるとの答弁があり、これが都心でも郊外でも使用料限度額を軒並み二倍から三倍に引き上げ、再び家賃負担の大幅増につながる危険性も明らかとなりました。低廉な家賃で供給すると定めた公営住宅家賃のあり方を投げ捨てるもので、許すわけにいかない制度の大改悪です。

  さらに、応益調整の内容を立地条件を重視して大きく変更したのも、結局、固定資産税の評価額による家賃のランクづけという市場原理を持ち込むものです。

生活には全く不便の都心の古い団地が最高ランクとされたり、住宅の老朽度や居住面積の違いが逆に軽視されるなど、生活実感とかけ離れた新たな不公平が生ずるとともに、都営家賃全体が応益調整で底上げされ、大幅な値上げの大きな要因になっている点も重大な問題です。

  これだけの大幅な値上げを行うのに、いまだに各住宅別の家賃の改定額が、または、それがわかるだけの説明資料が全く居住者に知らされていないことが大問題です。

これでどうして入居者への周知やPRに努力したといえるでしょうか。民間賃貸住宅では通用しない一方的なやり方です。だからこそ、東京都公営住宅協議会の代表者を含め、東京都生活と健康を守る会連合会、その他四百五十以上の団体、七万近い個人から、今回の改定案の撤回を求める陳情請願、都知事への要請が届いており、都民を無視した一方的改定はやめようとの声がますます広がっているのです。都民、居住者との信頼関係を乱暴に踏みにじっての家賃改定の強行は絶対に許されません。

  東京都は改めて、都民の一貫した願いである都営住宅の大量建設、負担率一五%以内で住み続けられるための公共住宅や、民間賃貸居住者への支援など、都民本位の姿勢に立ち返るべきです。  以上のことから、私は本議案に強く反対して、討論を終わります。

 

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