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各会計決算特別委員会94年6月6日衛生局質疑

 看護婦の不足問題、都の医療機関援助を質問

 

 ◯曽根委員 資料をいただきましたけれども、私からは、看護職員の確保対策について、何点か質問したいと思います。

  看護婦さんが足りないということが叫ばれて久しいわけですが、そのために国の方も看護婦確保法というのをつくる――中身については、私たちはいろいろ厳しい批判というのを持っておりますけれども、自治体でも看護婦確保のための計画を立てるということになって、いただいた資料の一ページ、東京都看護職員需給計画、十年計画でつくられたわけです。

  最初に、平成三年から平成十二年にかけて行われる看護職員の需給計画で必要数とされる数字というものの根拠、それから、それに対応する供給数、それぞれどのような考え方で出しているのか、まずお聞きします。

 

◯長岡医療計画部長 東京都看護職員需給計画の必要数と供給数についてのお尋ねでございますけれども、必要数につきましては、次の三点の考え方で見込んでおります。

  一つは、東京都の保健医療計画の二次医療圏における必要病床数を基本にしまして、不足する圏域での不足病床数をすべて増床するものとして見込んだこと。

二つ目としましては、勤務時間の週四十時間への短縮など、看護職員の勤務条件を改善するために必要な看護職員を見込んだこと。三つ目としましては、東京都長期計画及び東京都総合実施計画で計画されました老人保健施設、特別養護老人ホーム、訪問看護ステーションなどの事業に必要な看護職員を見込んでおります。

  一方、供給数につきましては、都立看護専門学校の新設、あるいは学級増等による定員の拡大、民間看護婦等の養成施設に対する助成の充実などによる養成対策での増、院内保育施設や看護宿舎の整備促進、看護業務改善の支援などの定着対策での増、再就業対策として、ナースバンクの充実などでの増など、各種確保対策の強化を図り、これにより増加する看護職員を見込んでおります。

 

◯曽根委員 今、挙げられたことが供給数として計画どおり実現されれば、十年後には――平成三年から十年後ですから、平成十二年には帳じりが合うだろうという見通しのもとに平成三年スタートしているわけですが、実際のところ、例えば根拠となっている二次医療圏での必要な病床数が増床されてきているのかという点ですね。

これは、計画でいうと、平成三年、四年、五年と毎年何床ぐらいずつベッド数がふえていくというふうに見込んでいて、実際は平成三年から四年にかけてどれぐらい増減になっているのか、計画の病床数の増床分と実際の数を教えてください。

 

◯長岡医療計画部長 需給計画におきます不足圏域の合計の不足病床数は、約五千床となっております。需給計画では、この不足病床数を平成五年までに増床し、不足圏域を解消するものとして算定しております。その年までの計画病床数は、平成三年の約十四万三千床を平成四年には約十四万六千床とし、平成五年には約十四万八千床まで増床するとしたものでございます。

  その計画病床に対します実際の病床数の把握につきましては、平成四年まででございますが、平成三年度及び平成四年度は、おおむね変化なく、病床の増加が見られない形で約十四万一千床で推移しております。

 

◯曽根委員 平成三年から五年にかけて、二年間で五千床の不足分を埋めるということで、一年間に二千五百床ぐらいはふえていくという計画で設定されたベッド数に対して、実際は平成三年か四年――五年の統計はまだ出ていないそうなんですが、数はほとんど変わっていない、若干八十床ぐらい逆に減っているというような状況ですね。

  看護婦さんは、もちろん病院だけで働くのではなく、これからは訪問看護制度その他を充実させるということで、いろんなところで活躍の舞台が当然広がっていくわけで、ますます数としても、また質としても充実しなければならないと思うんです。

しかし、基本となる病院のベッド数そのものが、今民間病院を中心に非常に経営が困難になっていて、減ってきているということで見ますと、これは厚生省のある役人がいったそうなんですが、看護婦不足といっても、将来、民間病院が今の半分ぐらいに減れば、看護婦不足はなくなるよといっている厚生省の役人もいるというぐらいで、実際には病院が減るという形で看護婦不足というものがごまかされはしないかという点で大変危惧を持っているわけです。

したがって、看護婦確保という点は、当然都民にとって必要な病院を確保していく、ベッド数を確保していくということとあわせて考えていかなければならないという点を特に指摘しておきたいと思うんです。

  実際に、看護婦さんはこの供給計画どおりふえているかどうかという問題なんですが、こちらの方ではどのような形で看護婦さんの実際働いている人数を押さえているのか、そのデータがもしありましたら、この数年間の動きについて教えていただきたい。

 

◯長岡医療計画部長 現在把握できます就業の看護婦職員数は、法律に基づきまして従事者届をすることになっておりまして、これは隔年で実施されております。その年の十二月三十一日現在の数字でございますけれども、直近の年は平成四年末で六万六千三百七十八名、平成二年末の六万四千六百二十一名と比べますと、千七百五十七名の増となっております。

  なお、この届け出は、看護職員個人が就業地の都道府県知事に届け出ることになっておりますので、届け出の漏れがございまして、その割合が十数%程度あるといわれておりますので、実際の就業者数はこの届け出の数よりは若干多いものと考えております。

 

◯曽根委員 平成二年から四年までにかけて、二年間で千七百名余の人数がふえている。実際の供給数の計画から見ますと、これはかなり少ないわけですよね。これは、確かに、実態が正確に反映されているかどうかという疑問はありますが、それにしても二年間で千七百名、年間にしますと八百数十名というレベルでは、この供給計画そのものが、まだスタートして、前半の段階で極めて厳しい状況に陥っているのではないかと私は思います。

  それから、データとしても前に資料をいただきましたが、昭和六十一年ごろから二年ごとに供給数を見てみますと、それまでは毎年千五、六百人ずつふえていたのに、平成二年以降は、逆に供給数のふえ方が減っている。何か頭打ちになってきているというような傾向も見られるということで、これが非常に危惧されるところなんです。

やはり、本当に供給をしていくための看護婦の養成の仕組み――都立の看護学校できちんと看護婦さんを育てていく、その数をふやしていかないことには実際の供給数はふえないわけで、この点でどういう取り組みをされているのか、または民間や国の看護学校に対しての要請をされているのか、この点をお聞きします。

 

◯長岡医療計画部長 都立の看護婦養成施設におきましては、平成三年から入学者の一割増を行っております。また、四校の看護学校で一学級ずつの学級増を行っております。また、平成七年度の開校を目指しまして新校の開設を準備しておりまして、こういった形で都立の看護専門学校につきましては養成増を図っているところでございます。

 

◯曽根委員 確かにもらった資料、これは衛生局の事務事業概要に資料があったんですが、平成三年から四年にかけて見ますと、衛生局の所管する看護専門学校の卒業生の数は、平成三年の八百九十五名に対して、平成四年度は九百二十一名と、確かに、三十名弱ですが、ふえてきています。

それから、定員数に対して入学者数を見ると、どの学校も平均すると一割程度定員より上回って入学者をとっているという点で、入学者の数がふえているというのはこの数字でもわかるんですが、入学者数をふやすというのであれば、定員をちゃんとふやすべきだろうし、十一ぐらいありますか、都立の看護学校のクラスの定員をふやすだけでは到底間に合わない、不足があるわけで、学校建設、これは当面一校みたいですが、これはやはりもっとたくさんつくっていく――この間減らしたばかりですから、そういうのもちゃんとふやしていくということを考えなければいけないと思う。

  さらに、私ちょっと気になるのは、都内の看護学校の中で、国立や民間もありますけれども、聞くところによると、国立の看護学校を出た生徒さんは大体国立病院に就職するケースが多い。民間の場合は、大体自分の病院で働くための看護婦さんを養成しているケースがほとんどである。そうすると、看護婦養成の機関を持たない民間の病院にとっては、看護婦さんを確保するには、都立の看護学校の学生さんがまず対象になるという点で、都立の看護学校を卒業した卒業生の中で、今どれぐらいの方が都立の病院に行き、どれぐらいの方が民間病院に行っているんでしょうか、その点をちょっとお聞きしたいんです。

 

◯長岡医療計画部長 都立の看護婦等養成施設卒業者である看護職員が民間の病院へどのくらい就職しているかというお尋ねでございますけれども、平成四年度の卒業者で、都内に就業しました八百九十九名のうち、民間病院への就業者が三百七十名でございまして、その割合は約四割となっております。

 

◯曽根委員 平成四年度の卒業者の数を今おっしゃっていただいたと思うんですが、この衛生局の所管の看護学校の――それ以外に養育院だとか医療技術短大とかありますので、衛生局の所管について事務事業概要の資料を見ますと、前の年に比べて、先ほど申し上げましたように三十人ぐらい卒業生がふえているにもかかわらず、民間の病院、都立以外の病院に就職した卒業生を見ると、平成三年が三百三十五人に対して、平成四年度の卒業生は二百九十七人で、四十人ぐらい減っているんですよね、

もちろんその分、都立がうんとふえているんですが。ということは、平成三年から四年にかけて卒業生はせっかくふえたんだけれども、都立病院に吸収されてしまって、民間病院に行く数が逆にかなり減っている、一割以上減っちゃっているという点でいうと、民間病院は大変じゃないかなというふうに思うんですが、これはどうしてこの年、これだけ民間に行く卒業生が減ったんでしょうか。

 

◯長岡医療計画部長 民間病院の就職率は年によりまして変動が見られますけれども、平成四年度卒業者が就職する平成五年度には、前年度と比べまして、都への採用数が増加したためと考えられております。ちなみに、翌年の平成六年三月に卒業した五年度卒業生では、四年度の卒業者に比べまして、民間病院への就職率は約二〇%増加しております。

 

◯曽根委員 年ごとに非常に変動があるようなんですが、同じ看護婦さんとして働く職場として、私実際には、財政的にバックアップのある国公立の病院とか大学病院に比べて、民間病院は非常に厳しい状況に置かれているんじゃないかというふうに思うんです。いろいろな労働条件の問題があります。二・八勤務の問題とか、週休二日制の問題なんかもあります。

  端的な例として、週休二日制の完全実施というのは、これは国公立の場合には、平成四年度から実施されているわけですね。中身については、私たちはいろいろ問題があると思っています。人数がそんなにふえないで、かなり無理してやっているというのがあります。

しかし、曲がりなりにも完全に実施されているのに対して、民間病院の看護婦さんの完全週休二日というのがかなりおくれているんじゃないかと思うんですが、その点のデータはありますか。

 

◯長岡医療計画部長 民間病院におきます完全週休二日制の実施状況についてでございますけれども、日本看護協会が平成三年八月に実施しました病院基礎調査によりますと、これは日本看護協会の会員が勤務する全国の病院を対象に四年に一回調査をしているものでございますけれども、民間病院の中で完全週休二日制を導入している病院の割合は七・七%であるという調査結果が出されております。

 

◯曽根委員 これは看護協会が四年に一遍調べているということで、その後平成四年に公立の病院については完全実施ということになりましたので、その時点で民間の方がどれぐらいになっているのかと、これはやはり東京都としてちゃんと押さえておかなければならない問題だと思うし、需給計画に私は大きくかかわると思うんです。確かに公立病院が完全週休二日を実現することは当然やらなきゃならないし、そういう点で模範を示すということは当然だと思うんですが、その一方で、民間がそれに追いつけないとすると、看護婦さんの就職の際に、まず週休二日が実現しているかどうかという点で大きなギャップが生じてしまうんじゃないか。

  私は、労働組合の方に聞いてみましたけれども、これは東京医療労働組合連合会に加盟している都内の民間病院八十のうち、完全週休二日制実施はどれぐらいいっていますかというふうに聞いてみたら、一番新しいデータで、十一カ所だというお話なんです。さっき七%というお話ありましたが、現状でも一割ちょっとですよね。

これは労働組合に加盟しているところの病院なんですが、大体都内ではそういうような状況だと思うんです。その十一カ所のうち、五カ所は精神病院ですから、一般の病院、一般の患者さんがかかる病院については、本当にわずかだというふうにいわざるを得ない。

  週休二日をやっているところでも、土日は全然無視して、四週八休でもって、日にちを全部はめ込んでいると。で、何とか無理してやっている。それから、やっていないところは、四週六休だとか四週五休になっているんですが、もし週休二日をやるとすれば、生理休暇はとれませんよということまでいっているんですよ。

これじゃ、看護婦さんは働けませんよね。こういうふうな状況に置かれている民間病院に対して看護婦さんを確保していく、病院としても看護婦さんがちゃんと確保できなければ経営ができない、病院としてやっていけないわけですから、そういうものとやはりセットに考えていく必要があると思うんです。

  そういうところで、特に民間病院の看護婦さんの定着確保ということに対する東京都の支援策ということでお聞きしたいんですが、資料の二ページにいただきましたけれども、この中で、特に実績の上で非常に数が少ない、〓に書いてある看護婦さんなどの厚生施設の整備資金、これが実際に年によっては実績がない年が多いんですけれども、どのような貸し付け、または助成制度が今やられていて――特に今病院側で求めているのは、やはり助成金を出してほしい、それから、実際には自分の病院で寮を建てるのは大変なので、借り上げ制度にしているところが多いわけですが、この借り上げにも適用してほしいと。看護婦さんの住宅を確保するというのが、病院にとっては非常に大きな定着の目玉になっているそうなんですが、その点について、現状と実績について教えていただきたい。

 

◯長岡医療計画部長 民間医療機関の厚生施設整備資金貸付事業は、昭和四十九年度から看護宿舎及び保育施設の建設等に係る資金の貸し付けを行っておりまして、定着対策の充実を図ることを目的に実施しているところでございます。その実績は、平成四年度には保育施設一件、看護宿舎につきましては四件の、計五件の貸し付けを行っております。  なお、平成三年度から、賃借資金につきましても貸し付けが対象となっております。

 

◯曽根委員 この平成五年度から実現をした助成制度についてなんですが、これはたしか国の制度で実施をされて、その病院が持っている看護宿舎ですね、自前の建物の増設もしくは新設について、個室を整備するときに出されるものだというふうに聞いていますが、どの程度の数を今度予定しているのか。

これについては、私は実態からして、自前の建物を建てられる病院はまだいいんですが、借り上げ制度しか実際にはやりようがないというのに対しては、東京都として、国の制度をそのまま適用するんじゃなくて、プラス借り上げの場合にも適用できるように実施をすべきだと思うんですが、その点はいかがですか。

 

◯長岡医療計画部長 看護宿舎に関する個室化整備事業に要する経費につきます助成制度でございますけれども、この制度は平成五年度から実施をしております。平成六年度につきましては、現在まだ集計をして――これからということでございます。

  また、貸し付けにつきましては、平成四年度から、対象規模の拡大をしておりますとか、あるいは基準単価の大幅な引き上げ等を行っておりまして、事業の充実を図っているところでございます。

 

◯曽根委員 これからだということなので、せっかく助成制度を国もやっと重い腰を上げてつくったわけですから、東京都としては、借り上げ制度にも実現をするというようなことぐらいは考えなければ――私が特にこの点を強調するのは、東京も地方も病院に対する医療報酬、診療報酬が同じ制度で適用されているわけですね。

看護料も特に低いわけですが、東京都内で働く看護婦さんが、夜勤も含めて働き続けようと思えば、職住接近というのが望ましいわけですが、都内で自分の住居を確保することは極めて困難です。したがって、地方から車で、タクシーで一時間もかけて、タクシー代だけでも一万円、二万円もかけて通っているというようなケースがある。それがかなりの部分が病院の持ち出しになっていますよね。こういうものを、やはり寮を近くにつくることによって、病院の看護婦さんの確保も、地価が高くて大変な分を助けるというぐらいのことは、東京都は当然財政的にもできるわけですから、やるべきだということを特に強調しておきたいと思います。

  最後に、今、潜在看護婦というふうにいわれているそうですが、せっかく資格を持ちながら就職していない方、子育てのために途中で退職された方をもう一度就職させようということで、ナースバンクなどの取り組みが始まっているようですが、まず東京都で取り組んでいる職場復帰のための取り組みと、それから研修の中身についてお聞きします。

 

◯長岡医療計画部長 ご指摘のとおり、未就業の看護職員の再就業を促進することは、大変重要な課題であると考えておりまして、離職中の有資格者に対する再就業促進対策といたしまして、昨年十月に開設をいたしました東京都ナースプラザの前に、就業相談、就業あっせんや看護に関する情報提供などを行うナースバンクを移設いたしまして、各種施策と連携を強化するなど、その充実に努めております。

  また、あわせまして、未就業の看護職員が最新の医療や看護の動向を理解するとともに、新しい知識や技術を習得しまして、一日も早く新しい職場に就業していただきたいという観点から、再就業看護婦等講習会を実施しているところでございます。今後とも、再就業促進対策の充実に努めてまいりたいと考えております。

 

◯曽根委員 これは余り詳しくお聞きする時間がありませんけれども、今八日間程度の研修で、現場の研修というのが実態として非常に少ないじゃないか。医療技術、医療機器が物すごく発達している中で、現場の研修というのが八日間のうち半分ぐらいだということなんですが、これじゃ余りにも再就職のための講習としては不足するんじゃないかというふうに思うんです。

この点は、ご本人、無料で講習を受けられるわけですが、もう少し研修内容を充実するためには、東京都も何らかの支援策を設けながら、再就職できるぐらいのところまでウオーミングアップができる研修制度として充実させる必要があるというふうに思いますので、この点を指摘しておきたいと思います。

  やはり都立病院などもまだまだ多くの問題を抱えていますが、次々と廃業とか倒産に追い込まれている民間の病院の場合は非常に切実ですよね。看護婦さんにお聞きしましたけれども、点滴の後に、ばんそうこうを張りますね。

このばんそうこうを一・五センチ以上切らないようにというところまで、本当につめに灯をともすようにして、財政をやりくりしながら病院の経営に協力しているんだと。エレベーターも自分一人では絶対乗らない、患者さんと一緒のときしかエレベーターに乗らないというような、本当に涙ぐましい話をいろいろお聞きしましたけれども、そういうふうにしなければ、民間病院は本当に次々と倒産ですよ。

私は、都民の地域医療に責任を持つ東京都としては、やはり救急医療その他で非常に支えになっている民間病院が安心して医療活動ができるようにしていく、また、訪問看護など新しい課題にこたえていけるようにしていくという点でも、看護婦さんの確保を中心に支援を強めることを強く求めて、質問を終わりたいと思います。

 

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