各会計決算委員会94年4月15日
定時制高校統廃合問題を追及
◯曽根委員 私からは、都立の定時制高校の問題で幾つか質問をいたします。
都立の定時制高校は今日、働きながら勉強する貴重な場であるとともに、さらに、さまざまなハンディを抱えながらも学校に行って勉強を続けたい、または高校卒業の資格だけは取っておきたいという人、そして最近は、高校を中退した生徒や、小中学校から不登校などで多人数の学級制度ではなじめなかった子供たちの少人数のよさを生かした学習の場、また、外国からの帰国者、外国人の学習の場、こういうところとして、教育の持っている、知識だけではなく、人間としての成長を助けていくという重要な役割を現実に発揮していると思います。
中卒で就職したり、また地方から集団就職で上京する子供たちは、人数的には減りましたけれども、二千人近くおりますし、また一方で高校の中退者がこの間非常にふえている。その中には、自分に合った勉強の場を求めている人もたくさんいるはずだと私は思います。全日制では難しいけれども、定時制ならついていける、そういう発見ができるかどうか、それは、その子供本人にとっても、またその子供の人生にとっても、大きな影響を持つことが少なくありません。
しかし現実には、定時制については、正規の従業員で働く勤労青年が中心ではないかとか、中退者は行きにくいとか、怖いところだとか、いろいろな先入観を持たれています。もっと積極的にこうした若い世代に定時制をアピールするような、定時制のPRも含めた振興対策の新たな展開が求められていると思うんです。
しかし、残念ながら東京都がこれまでやってきたのは、定時制については、先日予算特別委員会で我が党の松村委員も質問しましたが、振興法に基づく振興計画もつくらないで、また一方で、中卒の子供が減った、定時制の生徒が減ったということを理由に、廃校や廃科で定数を減らすことばかりこの間やってきました。
これは、定時制教育のあり方について現場などで真剣に考えている人たち、またマスコミなど世論の動き、これに東京都のやり方は全く逆行しているのではないかというふうに思います。
先ほど指摘した高等学校の定時制教育及び通信教育振興法、この法律に基づく総合計画が東京都では持たれていないということが予算特別委員会で明らかになったわけですが、都の答弁は、計画はないけれども現在の振興策で目的は十分に達しているんだというお答えでした。
そこで、現在の振興策について幾つかまず質問したいと思うんです。
現在行っている定時制高校についてのPRも含めた振興策は、事業項目としてどういうものが主に挙げられますか。
◯齋藤学務部長 定時制、通信制課程のPRにつきましては、定時制課程、通信制課程の入学案内を毎年発行いたしまして、地区教育委員会、中学校等へ配布いたしております。
また、就学相談所を都内に二カ所設置をいたしまして、電話や面談によりまして就学相談に応じているところでございます。
◯曽根委員 今、PRのお話を中心にあったんですが、それ以外の問題については後でまたお聞きしますが、そのPRのための一つの重要な場として就学相談所というのがあります。
これは、定時制というものが、例えば今新しくふえてきている全日制高校の中退者、こうした人たちがもう一度高校教育を受ける場としても機能しているんだということを知らせたり、それから、働きながら学ぶという点での就学相談に乗るという点で非常に重要だと思うんですが、この間、平成四年度でいいますと、年間の相談件数はどれぐらいあるんでしょうか。
◯齋藤学務部長 就学相談所におきます平成四年度の相談件数でございますけれども、総数は四千七百二十六件でございます。なお、このうち定時制に関する相談は千五百十三件でございまして、相談件数の約三分の一弱というところでございます。
◯曽根委員 この相談というのはやはり受験とか募集の時期にかなり集中するわけですね。これは相談所だけじゃなくて、本庁も含めて、相談は大変な数がそのときには来るわけですね。
私の知人で、その方は相談所を知らなかったんで、こちらの教育庁の本庁に子供さんのことで相談の電話を入れたんだが、話し中で受付のところで待たされるということで、かなりの時間待たされたというような話も聞いています。
この相談所の機能として、もっと身近なところに相談所がありますよということをアピールしながら、やはり身近に相談に行ける場としてもっと増設を図るべきだというふうに私は思うんですが、東京都のこの間の相談所についての施策は、むしろ設置数は減らしてきたというふうに聞いているんですが、それはいつ、何カ所から今の二カ所に減らしたのか、その点をお聞きします。
◯齋藤学務部長 就学相談所の設置の状況でございますけれども、昭和四十六年、これは相談所の設置の当初でございますけれども、このときには五カ所ございました。
その後、勤労青少年の減少や、あるいはまた来所による相談件数の減少などによりまして、昭和五十六年度に現在の二カ所に統合いたしました。
現在、その二カ所と申しますのは、一つは水道橋の工芸高校がございますけれども、その敷地内、もう一カ所は国立の第五商業高等学校の敷地内というところでございます。
◯曽根委員 前は、昭和四十六年設置当時五カ所あったんですが、十年後に二カ所、区部に一カ所、多摩に一カ所というふうにしてしまったということで、来所相談が少ないというのは、むしろそれはもっともっと知らせていくべきことだと思うんですが、逆に、今少ないから減らすという発想は、私は考え方としては振興になっていないんじゃないかと思うんですね。
それから、平成元年に設置規則が改正をされていますが、これはどういう内容の改正だったんでしょうか。
◯齋藤学務部長 平成元年に就学相談員の設置に関する規則を改正いたしまして、定時制、通信制課程のみならず、都立高等学校全般の就学相談業務を扱う、そのように改正しまして、就学相談の充実に努めているところでございます。
◯曽根委員 設置の規則をちょっと写し取ってきたんですが、それまでは、勤労青少年またその雇用主及びその他関係者への都立高校定時制課程及び通信制課程に関する情報の提供及び連絡に関すること、これが中心的な仕事だったのが、実態として、全日制の就学相談もたくさん来るということで、その実態に合わせて扱いの間口を広げたというんですか、そういうようなことというふうに聞いているんですが、いってみれば、確かにこの間、全日制を中途退学したり入試に失敗したりするということで、就学相談がそちらの方がふえてきた。
その実態に合わせて、就学相談所としての間口を広げることそれ自体は、私否定しないんですが、だったらば、今まで定時制を中心にやってきたものについて、当然箇所数をふやすなどして、体制は充実しないと、相対的にいって定時制の分は減ってきたということになってしまうわけです。
そういう点でも、私、この相談所の機能というのはもっともっと、せめてかつての五カ所以上に設置数は戻すべきじゃないかと思うんですが、そういう検討はされたことありますか。
◯齋藤学務部長 就学相談所をもっとふやすべきであるというご質問いただきましたけれども、先ほどちょっと申し上げましたけれども、例えば、平成四年度の例で申し上げますと、相談件数の四千七百二十六件のうち約九五%が電話による相談でございます。
そういうことで、現在はこの二カ所の相談所に十一名の相談員体制で対応しているわけでございますけれども、そのようなことで、現在の相談所の状況を考えますと、この体制で今後とも十分に対応していけるというふうに考えております。
◯曽根委員 電話相談が多いというのは自然の成り行きですね、今電話の時代ですから。しかし、本庁だってどんどん電話がかかってくるわけでしょう、時期が来れば。
そういう意味では、まず一つは電話の台数だってもっとふやしてもいいだろうけれども、私はやはり、就学相談、教育に関する相談というのは面談が大事だと思うんですよ。しかし、身近なところにないから電話でせざるを得ないというのが現状なんじゃないですかね。
振興策、十分に機能を果たしているというんだけれども、それが本当に教育的なものになっているのか、そういう十分な検討がされているのかというと、私は、この就学相談所一つ見ても、定時制への就学の道、それを案内していく、PRしていくその道はやはり、全日制との関係や、最近脚光を浴びている山吹高校など単位制高校との関係で、埋もれさせられているんじゃないかという危惧を非常に強く持つわけです。
それで、最近東京都の振興策の中で、ほかの問題についても幾つか私ども取り上げてきましたけれども、一つには修学旅行の補助金の問題がありますね。これも長い間据え置きだということで、この間予算委員会で指摘をしました。実際、何年ぐらい据え置きになっていて、そういう過程の中で、今高校の修学旅行の費用というのは全体どれぐらいになっている状態なのか、そのことをお聞きします。
◯齋藤学務部長 定時制、通信制課程の修学旅行の生徒の補助の件でございますけれども、現在、補助額は一人当たり五千円でございます。これは昭和四十八年から同じ額でございます。
◯曽根委員 現在の修学旅行の費用……。
◯齋藤学務部長 失礼しました。それから、修学旅行の平均費用でございますけれども、最近の修学旅行の行き先は、北海道、九州、沖縄、このようなところが主要な行き先でございますけれども、その生徒一人当たりの平均経費は約八万四千円でございます。
◯曽根委員 補助金を始めた当初、これは都の単独事業で、いわば当時、東京都によって都立の定時制というのは非常に大事にされていたというふうに思うんですよ。当時の修学旅行の費用というのは、私が高校を卒業したちょっと後ぐらいなんですが、大体二万円から三万円ぐらい。もう二十年前ですからね。そのころの二万円、三万円の費用の中で五千円の補助というのは大きいですよ。大体一泊分ぐらいの費用になっている。
それが今日、もう一割に満たない割合でしかないというのは、いかにも、東京都の単独事業でせっかく始めたこの補助が、実質切り下げられてきている象徴的な姿になっているんじゃないかと思うんですね。せっかく振興策の目玉として当時スタートをさせたこれがずっと据え置きになって久しいわけなんで、やはり時代にふさわしく、ちゃんと今の費用に見合った、当時の割合と同じぐらいにはせめて拡充を求められていると思うんですが、そういう検討はいかがでしょうか。されているんでしょうか。
◯齋藤学務部長 修学旅行参加補助費の件でございますけれども、ただいまご説明申しましたように、昭和四十八年から据え置かれております。
この四十八年設立当初の趣旨でございますけれども、学校行事として行われます修学旅行に参加する際の経済的負担を軽減するとともに、学校行事への参加を促進し、勤労青少年の定時制への就学を奨励することを目的としてということになっております。
補助金の増額につきましては、近年の勤労青少年の減少の状況、あるいはまた補助の目的との関連がございまして、現在のところ難しいと考えております。
◯曽根委員 定時制の高校に入る道、これが、一方でPRも就学相談所なども二カ所でしかやっていない。全日制も、間口としては広げてしまったために、今、定時制の部分というのは相談の三分の一でしかないわけですね。
実態は、それ以上の数が定時制の就学相談になっている。それで、振興策の目玉だった修学旅行の補助金も据え置きで、実質大幅な切り下げになっているという事態ですよね。私は、はっきりいってこれは、定時制はもういいやというのが東京都の姿勢だというのが、こういう数で、データではっきり出ていると思うんですね。
しかし、じゃ一般の人たちも、定時制について、もう時代おくれだとか、もう必要ないんだというふうになっているかどうかということなんですよ。私、この間、統廃合問題も起きたこともあって、マスコミを初めとして、定時制に子供を通わせている保護者、生徒本人、それからこれに関心を持った地域の人たち、多くの人たちがこの定時制問題について新たな関心を寄せていると思うんですね。
マスコミでも、最近の例でいいますと、例えば読売新聞が、今定時制は、ということで五回にわたってかなり大きな記事を繰り返し載せていて、その中でも、あるベテランの先生の話として、確かに昔に比べて中卒者の採用が少なくなって地方からの上京組も減った、熱気も以前ほどでなくなり、生徒数もかつての半分になってしまった。
そして今は、外国人の子供たちが学んだり、全日制から転じてきたり、中学校時代に不登校だったりした生徒もいる。二十七年前、この先生が就職した当時とは様子は全く違ってきている。しかしこの先生は、全日制に移る気はない、ここには心にしみる出会いがあるんだと。定時制の教育の新たな役割、そこをやはり、現場で頑張っている、教育に携わっている人たちは語っているし、また、それをマスコミも共感を持って取り上げている。
それから、もっと徹底した取材が行われたのは朝日新聞で、昨年から約一年間にわたって、記者の人が定時制の教育現場に入って一緒に授業を受け、修学旅行にも行き、そして、その一年の間にクラス仲間の女の子が一人難病で亡くなるんですが、そのお葬式にも行って死をみとって、卒業式までずっと生活をともにしながら、定時制のクラスの実態、光も影もあわせて取材をしているんですね。三十七回の連載です。
これぐらい、かなり徹底したマスコミでの取材も行われたし、その中で定時制というのは、昔の本当に大量に上京して集団就職するような子供たちの受け入れ場所ではなくなりつつあるが、高校を中退してもう一度チャレンジする人や、外国からの帰国子女の方々や、外国人の方や、心や体にハンディのある方の、中等教育の底辺を支える受け入れの場所として役割を持っているんじゃないかということを模索し始めているんじゃないかと思うんですね。
東京都が熱心にやらなくなったものを、こういう人たちが、マスコミも含めて、また地元の関係者の方々が一生懸命、今見直しをしようとしている。私はそこが、これからのあるべき姿を一つはっきりと示しているんじゃないかと思うんです。
それで、振興法に基づく総合計画がないという問題、予算委員会で取り上げましたが、私が今指摘したように、東京都の振興策、十分やっていますというが、実際には、こういうふうに実態は削減、縮小という流れになっている。振興じゃないんですね。やはり振興法に基づく、法に基づく総合計画がきちんと立っていないから、こういうふうに実態として削減、縮小という方向になってしまうと思うんです。
それで、改めて聞きますが、予特でも指摘を既にしておりますので、この法に基づく振興計画、総合計画、これの具体化についてどのように検討されているか、お聞きします。
◯齋藤学務部長 昭和二十八年に制定されました高等学校の定時制教育及び通信教育振興法は、勤労青少年の教育を充実させるという観点から、定時制、通信制課程について総合的な施策を講じるべきことを規定しております。
このため東京都教育委員会といたしましては、定時制高校の生徒受け入れについては、多くの勤労青少年が高等学校教育を受けられるよう、生徒数の動向に対応いたしまして、毎年度十分な余裕を持って就学計画を作成しているところでございます。
また、振興策といたしまして、学級編制基準を三十人としているところでございまして、生徒の学力や学習歴などの多様化に対応するため、習熟度別学習指導の充実、あるいは夜間給食費補助、ただいまの修学旅行費補助、また教科書無償給与などの施策を講じてきているところでございます。さらに、近年に至りましては、単位制高校の開設、修業年限三年制の導入など、改善充実策を図っているところでございます。
引き続き、今後とも定時制教育及び通信制教育の振興につきましては、振興法の趣旨に沿いまして総合的な施策を積極的に講じてまいりたい、このように考えております。
◯曽根委員 この間の予算委員会と同じ答弁なんですが、今お答えいただいた例えば三十人の学級、確かに東京都は全国に比べて一歩進んでいるわけですが、これはもう二十年ぐらい前につくられた制度で、学校給食の補助にしても、先ほどの修学旅行の補助にしても、それ以来、余りというか、ほとんど前進していないんです。むしろ就学相談所なんかは削減されているんです。
振興計画というのはやはり振興のための計画であって、年次計画が必要だというのは、これからどう施策を発展充実させるのか、そのために計画が必要なんであって、毎年同じことを繰り返しているか、もしくは減らしていくんだったら、これは振興計画にならないわけです。
だからこそ法が、振興計画を年次計画でつくりなさいということを振興の一つの項目に挙げているわけですよね。
改めて、この計画をきちんと立てなければだめだということを指摘しておきたいんです。
そういう中で、例えば、三十人学級に今なっていますが、単位制高校の山吹高校などでは三十人学級に二人の教員を配置していますよね、重要科目について。そういうふうな教員の増配置なども、せめて山吹高校並みにどうして今までの定時制についてきちんとできないのか。二十人学級という声は前々から、教員の方々からも、それから父母、生徒さんからも上がっているわけですから、こういう要望の強いものにこたえることこそ、この計画の中できちんと盛り込まれるべきだということを指摘しておきたいと思うんです。
もう一つ、東京都は、こうした要望にかかわらず、逆に定時制を削減しているという問題をかねてから私たちは指摘してきました。きょうは、私、地元が北区なんで、赤羽商業高校のことしの春に行われた普通科の廃科の問題について絞ってお聞きをしたいと思います。
北区議会では、この赤羽商業高校の廃科が通知をされた十月十五日以降──それまでも一回、北区議会で全党一致で意見書が出されていますが、十一月に厚生文教委員会で我が党が質問したときには、まだこの決定が行われて以降の北区議会の二回の意見書や要望書については届いていないというお話でしたので、もう既に届いていると思いますので、三回にわたって北区議会が行った意見書や要望書の内容、その趣旨はどういうものだったのか、それからそれに対して具体的にどういう対応をされたのか、それをお聞きします。
◯齋藤学務部長 北区議会からいただいております意見書、要請書は、具体的に申し上げますと、平成五年三月三十一日付で北区議会議長から、都知事あるいはさらに都教育委員会委員長あてに意見書をいただいております。それから、五年の十一月八日に北区議会議長から、同じく都知事、都教育委員会委員長あてに要請書をいただいております。北区議会からいただいている意見書、要請書等については、以上二件でございます。
その中で、五年十一月八日の要請書の内容でございますけれども、赤羽商業高校が平成六年度におきまして、当校は商業科と普通科がございますけれども、普通科の学科廃止に対しまして、東京都教育委員会が当校学校関係者と十分な協議を行うとともに、慎重な検討を再度求めます、そのような趣旨の要望書でございます。
なお、この要望書をいただきまして、東京都教育委員会といたしましては、地域の貴重なご意見の一つであるというふうに承っておりまして、今回の適正規模、適正配置計画の実施に当たりましても、そのようなご意見を踏まえまして、慎重に決定をいたしたところでございます。
◯曽根委員 私が先ほど三回といったのは、一つは、この十一月八日の要請書のもとになっている陳情が北区議会で採択をされております。それは意見書としてこちらに届いていないかもしれませんが。
したがって、三回、北区議会で全会一致で──最初は、計画が出される前ですから、統廃合問題については地元と慎重に相談をしてくれ、一方的にやるなということを求めているわけですね。それから、十一月、決定が通知されて以降は、赤羽商業高校について具体的にもう出たわけですから、これをもう一度検討し直してくれということを要請しているわけです。
それに対して、これをきちんと尊重するというのであれば、当然地元に行って、改めて地元の声を聞くということが行われてしかるべきだと思うんですが、具体的に教育委員会は赤羽商業高校なり、また北区議会、こうしたところに、地元の方にお会いしたり、説明、相談をされたんでしょうか。
◯齋藤学務部長 昨年の十一月一日、それから十一月五日、十一月九日、計三回にわたりまして、赤羽商業高校定時制を守る会という地元の会がございまして、この方々とこの三回にわたりまして教育委員会事務室で要請を受け、また私どもの考えをご説明した機会を持った次第でございます。
◯曽根委員 結局、地元にいつまで待っても来ないから、しびれを切らして向こうから来たわけですよね、地元の方が要請に。そのことは後で指摘しますが、なぜ北区議会が三回にわたってこの意見書なり要請書なり決定を行ったのか。これは北区議会でも異例のことなんですよ。おそらく今まで、過去例がないといってもいいぐらいです。
私は、昨年の六月まで北区議会の文教委員会におりましたので、昨年三月に行った全会一致の最初の意見書のときには、私も、まとめる中で発言もし、参加をしていた関係がありますので──最初はとにかく、統廃合計画、一体どういう基準でなぜやられているのか、皆さんわからなかったんですよ。それで、議会局を通じたり、教育委員会を通じて調べてみたら、どうも東京都の基準は全くいいかげんだと。これは地元としてほうっておけないし、なにしろ地元の子供たちが半分赤羽商業に行っているわけだから、これはやはり何とかしなければならぬということで、東京都議会では与党だけども、やはり東京都のやることには待ったをかけなければいけないということで、まとまったわけなんです。
実際その計画が発表されてみましたら、この計画が非常に異常だというのは、昨年の春に、この廃科された赤羽商業の定時制の普通科には十二名が入学していました。二けたの生徒さんが入学しているクラスを廃科でつぶすというのは余り例がないですよ。ほとんど例がない。
その十二名というのは、ことしもみんな頑張って進級しているんですけども、私、担任の先生にお会いして、どういう人たちがこの普通科で頑張っているのかということをお聞きしてきたんですね。十二人中八人の人が仕事をしています。その中身は、家業の製めん業を手伝っていたり、大学進学を目指して新聞の奨学生として住み込みで働いている方、そのほかは全員がアルバイトなんですけれども、アルバイトといっても、大半が正規の職員と同じ時間帯働いているんですよ。ただ制度として正規職員になれないだけなんです。その中には、両親と死別しておばあさんと二人暮らしで、本人のアルバイト収入だけで生計を支えている十六歳の生徒さんもいるんです。
本当に厳しい状況の中で、それでも大半の子供たちが、アルバイトなどの仕事で、一生懸命終わった後に駆けつけて勉強をしているわけなんです。仕事をしていない子供の中には、難聴で治療中のために仕事はできないんだけれども、一年のときには無遅刻無欠席で通い通した子供もいます。
特徴はやはり、十二人中七人がほかの高校を中退もしくはほかの高校からの転校の経験者なんです。今の定時制教育が求められている方向、その姿が私は本当にこの一クラス十二人の中にもはっきりとあらわれているのじゃないかと思ったんです。
みんな今二年生で頑張っているんですが、その十二人の一人一人にとって、赤羽商業高校の定時制普通科というのはかけがえのないところなんですよ。しかし、彼らの後輩はもう入学してきません。ことしから廃科になった。こういうことがファクス一枚で通知されているんですよ。一人や二人じゃないんですよ、二けたの人数が入っているところをつぶしていく。これはやはり余りにも異例なやり方ですし、異常なやり方だといわざるを得ない。地元の方だって、これはやはり頭にきますよ。
ですから、生徒さんを中心にして、また先生たちも一緒になって、赤羽駅の西口で駅頭宣伝を始めたら、午後の三時とか四時ぐらいの人通りの少ない時間にもかかわらず、短期間で一万人の署名が駅前だけで集まった。そのほかも含めて二万人以上の署名が地元の方々から集まっているんですね。この人たちの怒りというのはやはり、東京都のやり方が余りひど過ぎるからだというふうに思うんですが、こういう声に対して東京都がどう答えたのか。
先ほど、守る会の人たちと東京都でお会いしたという話がありました。その話は実はこの雑誌に載っているんですが、この雑誌は朝日新聞社が出したんですが、「ザ中退」という、今高校離れが非常に広がっているその実態について、いわば今までの学校教育で受け入れられなかった子供たち、若い人たちのこれからの生き方について問いかけるといいますか、模索するという意味で出されている雑誌で、本屋さんに行くとかなり積んであったんですが、この中で、今高校中退経験者が全国で六十万人になっている。それから長期不登校なども入れると百万人を超えている。十五歳から二十の間ですね。
そういう人たちはもう少数派ではない、そういう人たちがどうするか、またどう教育として受け入れるのかということが問われているんだということを問題提起しているんですが、その中に、赤羽商業定時制普通科の生徒会の会長である石井君という人が、名前を堂々と出して、ルポルタージュにインタビューで答えているんですが、この中で、先ほどお話のあった教育委員会の対応について載っています。
ちょっと具体的に読みますが、「教育長への面会を求めたが、現れたのは担当課長だった。「うちの学校を見たことがあるのか、なんで学校に来て説明もしないのかと聞いたんです。でも、何も返事は返ってきませんでした。『教育長に要請を伝えておきます』とこたえるだけ。……結局、『検討はしますが、廃校・廃科はやめられません。そのまま話を進めたいと思います』と。教育委員会ってそんなもんですかね。決定したのだから、ただそれに従えばいいっていうんですか。それ自体、おかしいですよ。もう、かなり一方的でした」」というふうに証言しています。
一方的でしたというのは石井君の受けとめなんですが、この言葉としては、私はこれは担当課長さんがおっしゃったとおりだと思いますが、これは事実ですね。
◯齋藤学務部長 ただいま具体的な事例のお話がございましたけれども、私どもの手元にそのやりとりの記録がございませんので、その詳細な経過についてはご説明できませんですけれども、私ども、関係者とお会いした際には、現下の都立の定時制高校の現状をご説明いたしまして、少なくとも現在の生徒数が減少していく中で、現在の都立高校の充足率が五〇%そこそこであるという……(曽根委員「事実かどうかだけ聞いているんで、それだけお答えください」と呼ぶ) 踏まえまして、そのようなことも説明をいたしながら、ご理解をいただいたつもりでございます。
◯曽根委員 生徒会長は全然理解していませんよ。それで、この中でもいっている石井さんの証言というものが事実だったら、これはまさに彼がいっているとおり、一方的なやり方ですよ。慎重な再検討なんてかけらもありませんよ。北区議会は何回にもわたって事前の相談、それから慎重な再検討を求め続けてきたわけですから。これで尊重しているというふうには全くいえないというふうに思うんですね。
石井さんが最後にいっていることは私は大事だと思うんですが、「『ここに入らなかったら自分には何もなかったかもしれない。先生とも知り合えなかっただろうし、サッカーもやってなかった。……仕事で学校に遅れたり休んでも、それぞれの事情を考慮してくれる。前にいた高校のことはあまり悪くいいたくないけど、定時制では一人一人が人間として認められているというのを感じますね』」定時制に通っている中で、定時制の少人数教育としてのよさを彼はしみじみとやはりわかってきているわけです。『「地元では、赤商はイメージが悪いなんていわれてます。でも、何度もいいますが、入ってよかった。友だちとも先生とも、ほんとうにいいたいことをいい合える関係なんです』」 「石井君は、卒業しても署名集めを続けるという。定時制で“学んだ”ことは、勉強だけではない。それは、自分や友だちにとってかけがえのないものを大切にし、こだわりを主張することだ。
だからこそ、赤商を守り、廃科撤回・募集再開を果たすまで戦おうという決意は固い。」これはルポライターが書いているんです。
私は、石井さんのこの言葉、またルポライターのこの結論というのは、これこそ、現場で定時制のこれからのあり方を真剣に考えている人の共通の願いであり、声だと思うんです。
これに全く、先ほどの話のように、こたえていない東京都の姿勢、そればかりか、無造作に定時制を切ってきているこの東京都の姿勢こそ、私は教育の名に値しないということを最後に指摘して、終わります。