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94年11月29日住宅港湾委員会での質問全文

臨海開発の第3セクタービル経営問題を質疑

◯曽根委員 私からは、臨海副都心開発のモデルビル事業の収支の見通しについて何点かお聞きしたいと思います。
 この問題は、昨年十一月二日の当委員会で、我が党の西田委員が一回質問しております。
 このときは、公式に設定されているモデルビルの賃貸料が見直し前の段階でしたので、改めて見直し後の状況についてお聞きしたいと思うんですが、私たちは、今のただでさえ厳しいオフィスビルの状況のもとで、企業の入居などは非常に困難であろうというふうに考えておりますが、昨年十一月時点で、収支計画においては、単年度黒字転換が何年ごろと予想していたのか、また累積赤字の解消、債務の償還はそれぞれ何年ごろということで設定をされていたのか。
 また、この見通しの前提となっておりますモデルビル三棟の開業時の総事業費、開業後の入居率や月々の賃貸料はどのように設定されていたのか、まずその点をお聞きします。

◯安樂開発部長 モデルビルの事業収支についてでございますが、昨年十一月時点での収支計画では、単年度黒字転換は平成十八年度、累積赤字解消は平成三十年度、債務償還は平成三十二年度となっておりました。また、フロンティアビル三棟の事業費は、合わせまして二千百三十億円でございます。
 入居率は、開業一年目七一%、二年目九二%、三年目九五%、四年目以降九九%というふうに収支を計算しております。賃貸料は、一カ月坪当たり四万三千円と設定してございます。

◯曽根委員 坪当たり四万三千円というのは余りにも非現実的である、実際には海を越えてこちらから渡ったところの、しかも交通手段の極めて少ない開発地域のモデルビルであるということから、例えばこの近所の新宿の副都心でも、実態としてはその半分程度の賃貸料で入居を募集しても、半分も埋まらないという状況があるじゃないかということを指摘したわけです。
 その後、実際には昨年の暮れからことしにかけて賃貸料の見直しが行われたようですが、これも委員会には報告ありましたけれども、改めて、月の賃貸料が幾らというふうにしたのか、またその理由は何か、それによって黒字の転換は何年延長されたのか、この点お聞きします。

◯安樂開発部長 平成八年三月に、土地処分方式が通常の長期貸付方式に変更されることがございます。それから社会経済状況、オフィスの需給状況等を勘案いたしまして、一カ月坪当たり四万円というふうに変更しております。またその結果、黒字転換は平成十八年度から平成二十年度に二年間延びてございます。

◯曽根委員 さすがに四万三千円では余りにも高過ぎるということで見直しがされたわけですが、四万円ということで一割も下がっていないんです。率直にいって、これでも極めて困難だというふうに思うんですね。
 黒字転換もいよいよ平成二十年度ということで、二年間、単年度の黒字転換がもう平成二十年まで延びているわけですが、これで実際に入居があるかどうかは極めて難しいと思うんです。
 三月の委員会のときに、私もこの四万円というのは、実際は、契約上はあり得ない数字じゃないか、実際の契約を結ぶに当たっては、当然別の額が契約上の金額になるんじゃないかということで、その点はお聞きしたことがありますが、大体どれぐらい割り引かなきゃならないと考えているのか、実際のところの契約上の金額はどのぐらいになると思っていらっしゃるのか、この点をお聞きしたい。

◯安樂開発部長 具体的な賃料につきましては、今後、臨海副都心建設株式会社におきまして、テナントの進出意欲、業種、進出時期、こういうものを総合的に勘案して契約を締結するということになるというふうに存じております。

◯曽根委員 臨海副都心の会社でこれから決めることだということですが、進出意欲はどうかという点を見ても――それから進出時期、来年十一月オープン予定ですよね。その時期までにオフィスビルの状況が好転しているとは到底思えないという状況なので、実際にはこれからかなり下回るということになると思うんです。その金額はまだ確定していないわけですが、現時点で、臨海副都心地域と直近になっている港区の港南地域、竹芝、芝浦などで、オフィスビルの平均賃料は、坪当たり幾らぐらいになっているのか、実際の平均賃料、どうなんですか。

◯安樂開発部長 民間調査会社の一九九四年版のIDSS、オフィスマーケットレポートによりますと、芝浦海岸地域の平均賃料は、一カ月坪当たり二万六千八百七十円というふうになっております。

◯曽根委員 芝浦とか港南というのは、臨海副都心より手前の都心に近い方だし、しかも臨海に行くには、海を渡って、新交通か、または今数少ない道路で行かなきゃならない。それだけのハンディを抜きにしても、二万六千円というのがこの地域の実態だというふうに民間の調査会社でも出しているわけですね。この金額も、公表されているものですけれども、実際にはもっと低いだろうという情報もやっぱりあるわけです。
 こういう中で、四万円というのがいかに非現実的な数字かというのがわかるんですが、実際の交渉上は、かなりいろいろ調整が行われると思います。その上で、来年十一月、いよいよ一年弱に迫ったわけですが、三棟のモデルビルに入居が決まっている、もしくは入居の見通しであるという企業は、どれぐらいありますでしょうか。

◯安樂開発部長 現在、誘致活動に全力を挙げて努力しておりますが、入居の成約をしている企業はないというふうに聞いております。

◯曽根委員 臨海副都心建設株式会社自身は、自分の持っているこのモデルビルには入らないんですか。どうでしょうか。

◯安樂開発部長 現在のところ、はっきり決まっているわけではございませんが、どれかのフロンティアビルの中に入居するというふうに聞いております。

◯曽根委員 オーナーである臨海開発の株式会社自身が入らないようだったら、もうほとんどだめということになっちゃいますが、どれかに入るんだと思います。それ以外は決まっていないということですよね。したがって、当初予定されている一年目で七割という入居率が確保できる見通しは、まだ全く立っていないというふうにいっていいと思うんですね。

 臨海開発株式会社は、現在、別のビルに入居しているわけですが、そこで床面積をどれぐらい使っているのか。これが平成七年十一月、オープン時点で、仮に台場のモデルビルに入るとしますと、規模は現在よりも、同じなのか、縮小されるのか。それから、モデルビルでどれぐらいのフロアを使うことになるんでしょうか。

◯安樂開発部長 臨海副都心建設株式会社は、現在、二千百四十五平米を使用しております。仮に台場のフロンティアビルにこれを当てはめて、同じ事務所の広さで入ったといたしますと、二フロアを使用するということに相当いたします。

◯曽根委員 台場に入ったとしてもせいぜい二フロアということで、一割程度しか埋められないと。全く足りないですよね。三棟のモデルビルを、一年以内に七割ずつ全部埋めていく、これは大変なことですよ。実際には、借入金を今まで相当借りているという――返済がこれから始まるわけですよね。
 先ほど総事業費が二千百億程度というお話がありました。このうち資本金などがありますので、その分を差し引いたりして、実際に平成七年度までの分で、借入金で、返済しなければならないもの、これがどれぐらいになるのか。平成七年以降、返済しなければならない金額、教えてください。

◯安樂開発部長 借入金は、七年度に予定しているものも含めまして、約千五百億円となります。

◯曽根委員 千五百億円の借入金を、元金を含めて、累積の赤字の解消が平成三十年度ですから、それまでには全部返さなきゃならないということになると思います。仮に、当初は六%の利率で計算しますと、七年十一月の段階で、千五百億ということは約九十億円程度の、利払いだけでその分が年間必要になるということですね。
 それから、前回試算をいただいたときの資料によれば、年間の地代が約十五億円、そのほかにビルの維持管理費があるでしょうから、これは税金も含めて、私たちの試算ですが、三十億円ぐらいかかると思うんですね、三つの建物で。そうすると、年間でいうと大体百三十億円は、元金の返済を除いてもどうしてもかかる費用になってくる。
 この費用を捻出できなければ、実際にはビル事業としては最初から赤字ということになるわけです。お聞きしたいのは、現在公表されているオフィスの賃料四万円――仮に最初から三棟とも一〇〇%入居した場合に、満額で年間どれぐらいのオフィスの賃料の収入があるんでしょうか。

◯安樂開発部長 年間で、約百三十億円になります。

◯曽根委員 約ですけれども、同額になるわけですよ。つまり四万円の賃料で、最初から全部入居していた場合の年収で、ほとんど最初の段階での利払いや地代や税金、維持管理費を払えばなくなるということなんですね。
 したがって、もしそれよりも少しでも入居率が下回れば、その分が赤字になっていくという計算になるんですが、実際には、港湾局でも、先ほどお話のあったように入居率は一年目で七割、最初の五カ月間は四五%という設定ですね。それから、二年目でようやく九割を超えていくというふうに設定しているように、最初から一〇〇%埋まるなんていうのは、だれも考えていないわけです。しかし、そうでなければ、もう最初から赤字でスタートということになっちゃう。
 先ほどお話のあった直近の港南地域のように、二万六千円――私は、海を越えてさらに遠くに進出しなければならない企業の側にとっては、もっと安目ということになると思うんですが、仮に、二万五千円程度に賃料を下げざるを得ない、実際のところ――というふうにしますと、さらに収入が減るわけですね。最初五割程度埋まったとしましても、約百三十億円の収入見込みの三分の一しか入らないわけですよ。大体四十億円強程度しか入らない。これは利払いの金額にも足りないわけですね。
 利払いで約九十億円、当初は必要になりますから。十分あり得る話としての、港南地域での二万五千円程度の賃料と五割程度の入居率という設定でも、全くの赤字というふうになってしまうと思うんですが、こうした見通しが、もう大体だれの目にも明らかにもかかわらず、来年十一月にどうしてもオープンさせなければならないのかどうか。この点について、どのような見通しをお持ちなのか、もう一度お聞きします。

◯安樂開発部長 確かに、ご指摘の非常に厳しい状況にはございますが、開業できない場合にはさらに収支が悪化するわけでございまして、平成七年十一月には、予定どおり開業できるように最大限の努力をしていきたいというふうに存じております。

◯曽根委員 もう本当に追い込まれていますよね。私は、モデルビルも含めて、とにかく何が何でも予定どおりやらなきゃならなくなっているという港湾局のお答えも、それからほかの事業についてもみんなそうなんですけれども、どうしてこのように、それぞれが赤字をかなり見込まれるにもかかわらずやらなきゃならないのかということで、やはりこの臨海開発のもろもろの事業の関連が、お互いに、片方が倒れれば、もう一方も共倒れになるという仕組みになっているからじゃないかと思うんですよ。
 一例として、新交通との関連をちょっとお聞きしておきたいんですが、新交通はやっぱり来年の秋開業予定ですが、これは再来年の春の世界都市博覧会のお客さんを見込んでいるということで、その時点では一定程度の、イベントのお客さんということで見込めるかもしれない。
 しかし、再来年の秋に世界都市博覧会が終了した時点で、一体どれぐらいの企業が臨海副都心に進出していて、どれぐらいの人が住んでいて、どれぐらいの人が交通を利用するのかという見通しをきちんと持たなければ、運輸省への認可申請はできないはずなんですね。世界都市博覧会が終わった時点で、モデルビルなども含めて、オープンしている予定のビルは何棟あるんでしょうか。

◯安樂開発部長 世界都市博覧会終了時にオープンしておりますビルは、九棟でございます。それから、ホテルが二棟でございます。住宅は、台場地区で千三百五戸が既に入居しております。

◯曽根委員 住宅は千三百五戸ということで、居住者の数を考えても、実際に新交通の利用者の、やはり過半数は外からこの臨海副都心地域に通勤してくる人を見込まなければならないと思うんですね。そういう点でいうと、九棟のオフィス関係のビルのうち、三分の一をモデルビルが占めるわけです。
 したがって、再来年の秋、世界都市博覧会も終わって、お客さんはその関係は来なくなるという時点で、モデルビルがもし立ち行かない状態になっていると、新交通のお客さんも予定どおりは来ないというふうになってしまうんですね。仮に立ち行かない状況にならないまでも、この時点で予定の七割という入居率をモデルビルが確保できなければ、その分、新交通の収入も減ってしまうという点では、もう当初の段階から、モデルビルの見通しが狂えば、新交通そのものも収入は厳しくなるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

◯安樂開発部長 モデルビルの経営が立ち行かなくなれば、その影響というのは非常に大きいわけでございます。モデルビルの健全な経営が図れるように、テナント等の確保に全力で努力してまいりたいというふうに存じます。

◯曽根委員 新交通の場合には、認可の条件として、たしか十年以内に累積で黒字にしなければならないというふうな条件がつくわけですよね。
 そういう点からいっても、モデルビル、そのほかのオフィス関係のビルの入居がどうかということは、事業全体に及ぼす影響は非常に大きいし、熱供給株式会社も、やはりビルがオープンしなければ、またオフィスが埋まらなければ商売になりません。これも赤字になってしまう。
 したがって、私が見ると、臨海開発の事業というのは、一カ所が倒れますと、あらゆる事業が共倒れになっていく。したがって、港湾局が所管している第三セクターである臨海開発株式会社のモデルビル事業も、それ自体が赤字になろうがどうなろうが、とにかくお客さんは入れて、企業を誘致して出発しなければどうにもならない。
 ほかの事業から、極めて大きな責めを受けるという関係になっているんではないでしょうか。その点では、とにかくモデルビルを来年十一月にオープンさせて、賃貸料を、いわば破格の安値にしてでも入れていくというふうな事態にならざるを得ないんじゃないかと私は思うんですが、その点はいかがでしょうか。

◯安樂開発部長 ただいまも申し上げましたように、モデルビルの経営が立ち行かなくなれば、その影響は非常に大きいわけでございますので、その健全な経営を図れるようにさまざまな工夫をいたしまして、テナントの確保に努力していきたいと思います。

◯曽根委員 これは、港湾局だけを責めても仕方のない問題だというのは、私、重々わかっているんですけれども、ここまで開発を一気に推し進めて、破綻もまた大きく生み出してしまった責任は非常に大きいと私は思うんです。
 モデルビル、それから今取り上げた新交通、熱供給、ありとあらゆる事業が、お互いに赤字でもってやらなきゃならない関係をつくってしまっているという点では、これからいろいろと臨海開発の全体計画について、部分修正とかさまざまな議論が出るかもしれませんが、こういう点からいうと、部分を動かしても、また一方がだめになるという関係から見れば、臨海開発というのは、全体を根本から見直さないと、どこかを変えるだけではどうしようもない関係になっているという点が、きょうのモデルビルを中心にした問題一つとっても明らかだと思うんです。
 そういう点では、繰り返しになりますけれども、この開発は、本当に根本からやり直すべきだということを指摘して、私の質問を終わります。

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