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94年11月17日住宅港湾委員会質問全文
都営住宅の住宅変更、階段型へもエレベーター設置を要求

◯曽根委員 私からは、最初に都営住宅の住宅変更の問題について、何点かお伺いいたします。  都営住宅の中で、いろんな事情によって住宅を変更をしたいという要望は、ある条件をつけて認められているわけですが、ここ三年間ぐらい、その希望が何件ぐらい出ているのか。ことしの上半期まで含めて、希望件数と、それから、それが実現して許可された件数、これを教えていただきたいと思います。

◯那須管理部長 住宅変更の実績についてのお尋ねでございますけれども、おおむね毎年、住宅変更の申請は五百件前後ございます。ちなみに平成五年度につきましては五百四十七件ございまして、許可は百九十件いたしております。おおむね三分の一程度の許可が例年の実績ということでございます。平成六年度につきましては、九月三十日までに二百七十件の申請がございまして、許可件数は九十九件でございます。

◯曽根委員 昨年の場合ですが、希望が五百四十七件で、百九十件実現と。ことしもやはり三分の一程度という流れで、ということは、三分の二の方は申請はしているが、なかなか希望が実現しない状況がこの間続いているという状況だと思うんですね。
 それで、申請してから実際に許可されるまでの期間というのが、私にご相談があった方も含めて非常に長くなっているというふうに聞いているんですが、これは実例として、北区の場合で、ことし上半期に許可した方の中で、申請してからどれぐらいで移れたのかというのは、長い方と短い方、それから期間は平均でどれぐらいになるでしょうか。

◯那須管理部長 北区内の都営住宅入居者に対しまして、本年上半期に住宅変更の許可をいたしました件数は八件でございます。最も早い方では一カ月半程度で許可をしておりますけれども、三年半ぐらいかかったケースもございます。平均いたしますと、一年程度かかっている状況でございます。
 私どもといたしましては、住宅変更につきましてもなるべく早く許可をいたしたいと思っておるわけでございますけれども、本来この住宅変更の制度は、入居者は公募により選定するという公住法の大原則の例外的措置とも考えられますので、私どもといたしましても、居住者の実情をよく調査をさせていただきまして、慎重に対処をさせていただいているというのが現状でございまして、このために若干期間を要するケースがございますので、ご理解を賜りたいと思っております。

◯曽根委員 ことしの上半期の北区の例ということで答弁いただいたんですが、平均で一年程度はかかっていると。私が聞いている実情では、まず住宅供給公社の窓口に申し込みに行くと、担当者の方に、一年二年は待たされますよといわれるというんですよね。
 そこで大体くじける方がかなりいるんですが、そういうふうに積み残しが現実に三分の二ぐらいが毎年出ていることと、期間がだんだん延びてきているということで、実態としてどういう希望が、住宅の変更の理由ですね、申請の理由が多いのかといえば、私が相談を受けているところでは、やはり高齢化に伴って長期の疾病、寝たきりの場合もあるし、それから入退院を繰り返している場合もある、それから身体障害などが起きるなどで、高層階から低層階に移りたい、または入院、通院する病院の近くに移りたいという方が、かなり多くを占めているんじゃないかと思うんですが、そういった理由による住宅変更というのは、平成五年度の場合はどれぐらいの割合を占めているんでしょうか。

◯那須管理部長 平成五年度の申請件数五百四十七件のうち、今先生のご指摘のございました長期の疾病でありますとか、あるいは身体障害等により、高層階から低層階への住宅変更を希望した例は三百九十一件でございまして、七一・五%に当たるわけでございます。

◯曽根委員 実際、私の実感とそれも一致しているんですが、上の階から下の階へ移りたいという方の大半はお年寄りなんですよね。古い都営住宅ほど高齢化が進んでいて、しかも中層住宅にはエレベーターがついていないために、一階におろしていただきたいと。階段の上がりおりだけで一時間二時間かかってしまう、荷物も持って上がることができないということで相談があったり、ご主人を抱えるようにして、通院するために奥さんが階段の上げおろしをやらざるを得ないという、聞けば本当に切実だなと思うような相談があるんですが、期間としては非常に待たされるということになっているんですね。
 そこで、こうした住宅変更の希望を何とかかなえていく道はないものだろうかということで、一つには、昨年もちょっとこの事務事業の説明のときに聞きましたが、住宅交換制度というのが都営住宅にはあるんですが、これが事実上、今実績がない、非常に制度として難しくなっているということで、これにかわる住宅変更の制度的な改善といいますか、これをぜひ住宅局でも検討していただきたい、これは要望にとどめておきたいと思います。
 もう一つは、技術的な問題として、エレベーターをつけることによって、中層住宅の上の階の方も、階段の上がりおりの苦労をしなくても下におりられるということが可能になってきているわけですが、この既設の中層アパートのエレベーターの設置については、どういった実績になっているのか。中層アパートが都営住宅の中で何棟ぐらいを占めていて、設置可能な棟数はどれぐらいあって、そのうち実績として今までに何台ぐらいついているのか、これをまとめてお聞きします。

◯小山参事 まず、既設中層住宅のエレベーターの設置基準でございますが、新築住宅で設置しています事由と同じような扱いでやっておりまして、具体的に申し上げますと、一棟が二十四戸以上で、四階以上の建物で廊下型のもの、こういうことでございます。さらに、既設ということでございますから、当然居住者がいるわけでございますので、居住者の賛同の得られる住棟をやる、こういうことでございます。
 それから、中層アパートはどのくらいあって、そのうち設置可能なものはどのくらいかというご質問でございますが、この事業を始めました三年前の調査でございますが、そのときの中層アパートの棟数は五千三百六十九棟ございまして、そのうち、この二十四戸以上、四階建て以上、廊下型、こういう基準に該当しますのが千七百九十七棟ございます。そのうち、増築の敷地のゆとりがある、それから建築法規上もなんとかクリアできそうだ、こういうものが四百五十八棟でございます。設置可能の棟数は、このような状況でございます。
 それから、これまでの実績でございますが、平成三年度にモデルといいますか、実験的に三台設置いたしまして、それ以降、平成四年度に十台、平成五年度に十台、今年度に、予定でございますが、十五台を予定しておりまして、これが全部設置されますと、合わせて三十八台、かようになります。

◯曽根委員 都営住宅の中層アパートが五千三百六十九棟あると。このうち、今の段階で設置可能だというのは四百五十八棟だということですね。それに対して実績が、今年度分を含めて三十八台。設置可能棟数の十分の一にもまだ達していないわけですが、ことし十五台の計画ということで、このペースで行きますと数十年かかるわけです。
 設置可能棟数が終わるまでに、もう数十年かかってしまう。少なくとも可能な棟については直ちにつけるというのが、これは先ほど紹介した、お年寄りや身体障害の方の、上の階の方の日常生活のいろんな苦労を解消するということだけではなくて、今の新築の都営住宅は中層でもエレベーターをつけているということから見ても、当然これからの住宅として、バリアフリーというようなお話もありましたが、一つの必須の条件になってきていると思うんです。
 その点で、来年度以降、これを大幅に台数もふやして、計画も繰り上げていくということが必要だと思いますが、その点での積極的な決意をぜひお聞かせいただきたいと思います。

◯小山参事 エレベーター設置についてでございますが、これは大変居住者要望が強いのでございますが、一基設置しますために多額の経費を必要とします。それから、設置場所といいますか、そういう敷地の確保だとか、それから関係法令等の整合などいろいろ課題がございまして、困難な問題がいろいろあるわけでございます。
 しかし、今先生のお話にございましたように、これからの高齢化社会に対応するためにも大変重要な施策であると認識しておりますので、今後とも、この四百五十八台につきましては、できるだけ早く事業をするように積極的に取り組んでまいりたい、かように考えております。

◯曽根委員 それから、実際には四百五十八台というのは、中層の都営住宅の一割に満たないわけですよね。既に居住者の方からエレベーターをつけてほしいと、中層アパートのところから希望も出ていると思うんですよ。
 これは大分前から居住者の方が熱心に運動されている場合と、それから、東京都から設置可能だと聞いて、地元で居住者でまとまって要望を出した場合と、いろいろあるでしょうけれども、どれぐらいの団地から希望が出ていて、そのうち設置可能な棟は何棟ぐらいあって、実際につけることができた棟は何棟ぐらいありますか。

◯小山参事 居住者の要望につきましては、いろいろな形で提出されます。したがいまして、数を数えるということは大変難しゅうございますので、今先生は、希望の出ている団地は何団地あるか、こういうことでございましたので、団地数で申し上げますと、平成五年度末までで九十三団地からご要望がございました。
 このうち、その団地内で一棟でもエレベーターをつけることができる棟がある、こういう団地を可能団地だ、こういうふうに決めますと、九十三のうち三十七団地が設置可能団地でございます。そして、先ほど申し上げました、今年度までの三十八台を設置する、こういうことでありますと、三十七団地のうち三十一団地が設置が終わることになります。したがって、六団地が未設置である、こういうことでございます。この六団地につきましては、今後順次設置していきたいと考えております。それから、希望がありました九十三のうちの残りの五十六団地でございますが、保留しているものが三十団地と、設置困難なものが二十六団地でございます。

◯曽根委員 希望のある団地の一割以下とはいわないまでも、大体三分の一しか設置可能にならない。三分の二は、希望はあるんだけれども、現実には設置ができないということになっているということで、せっかくそういういろんな切実な事情があって要望が出ていても、なかなか実らないということで、この点の解消が今後課題になってくると思うんですが、一つには、技術的な問題として、階段型の住宅ですね、縦の階段の両側に住宅がある場合、これは廊下型の住宅と違って、今の技術ではなかなかエレベーターをつけるのは難しいということになりますね。そういう階段型住宅の解消法、エレベーターをつけた形での住宅改善を技術的に開発する必要があるんじゃないか。建てかえがかなり先になる場合には、どうしても階段型住宅についてもこういう開発は必要になってくると思うんですが、そういう点の検討はされているかどうか。
 それからもう一つは、あわせてお聞きしますが、今保留になっている団地があるというふうにお答えがありましたが、その中には大規模団地で建てかえなどが計画をされていて、その計画の中で住宅改善などがあるという場合もあると思うんですね。したがって、住宅改善が行われる都営住宅については、その住宅改善事業の中でエレベーターも設置するということができるんじゃないかと思うんですが、これについては具体化できるかどうか、この二点、お伺いします。

◯小山参事 現行の設置基準の対象外となっています住棟へのエレベーター設置のことでございますが、この点の技術開発につきましては、当面は、先ほどの設置可能の四百五十八台の住棟について、全力を挙げてこのエレベーター設置を完了させることが必要だと考えておりまして、その上でその技術開発についても今後の課題として検討をいたしたい、かように考えておりますので、ぜひご理解いただきたいと思います。

◯遠藤建設部長 住宅改善事業は、浴室のない住宅や狭小な住宅に対しまして、浴室の設置、居室の増築などによりまして、居住水準の向上を図っているところでございます。この事業の実施に当たりましては、高齢者向けの改善といたしまして、玄関、便所等の手すりの取りつけ、それから便所の暖房便座のコンセントの取りつけというふうなものを重視しているところでございますが、今後ともこうした高齢者向けの改善につきましては、ますます重要な施策であろうというふうに認識しているところでございます。
 したがいまして、住宅改善を実施する住棟のうち、エレベーターの設置可能なものにつきましては、住宅改善事業と一体的に進めてまいりたいというふうに考えております。

◯曽根委員 階段型住宅についてはなかなか難しいというお話だったんですが、住宅改善ではこれに取り込んで、エレベーターが可能なところで、つけられるということなので、これは積極的に推進していただきたい。全体として、都営住宅のたとえ古い住宅といえども、これは東京都の貴重な財産であって、都民にやはり安全で便利に住んでもらうという点では、必要な改善はやはり今後も重点的に進める必要があると思うので、この点を強く要望しておきます。
 次に、私からは家賃制度の改定について何点かお聞きしたいと思うんですが、最初に、七月に決定された新家賃制度の説明が居住者の方に、「すまいのひろば」という黄色い表紙の、これが配られました。これが新しい家賃制度についての東京都の説明になるわけですね。
 この一ページ目は経過が書いてありまして、二ページ目の最初の、制度のあらましというところの1に、新しい使用料は現行の使用料と大きく異なる場合があります、というのが最初に書いてあるんです。ここに書いてある、大きく異なるというのはどういう意味なのか、この点についてまずお伺いいたします。

◯吉田参事 お話しの点は、二ページの中見出しに表現されているものだと思いますが、今回の制度改善におきましては、使用料そのもの、これは収入に応じて減額等される前の使用料でございますが、これが現行制度と比べまして一万円以上増額となるものが、戸数で全体の一五%ほどある一方で、逆に一万円程度まで減額となるものがやはり一二%程度ほど、戸数でございます。このように、今回の制度改善は、増のみでなくて、減も含めまして変動が非常に大きいもので、このような表現とさせていただいたものでございます。

◯曽根委員 ところが、この説明を読むと、そういうふうには書いてないんですよ。これは都営住宅家賃全体が変わるという全体をあらわしている説明だったら、それはわかるんですよ、上がる方もいれば、下がる方もいるというのは事実ですから。
 しかし、この説明書きには、住宅の立地などの見直しにより、特に都心部の年数を経た住宅の使用料が現行の使用料に比べ大きく異なる場合があります、と書いてあるんですよ。だから限定されているわけですよ。都心部の年数を経た住宅ですよ。
 それで、括弧で応益調整の改善と書いてあるんですが、都心部の年数を経た住宅で、今おっしゃったような規定家賃が一万円ぐらいも下がるような住宅というのは、私は一戸もないと思うんです。応益調整の改善で、全部応益調整率は上がっているわけです、都心部の古い住宅は。
 ですから、明らかにこれは、大きく異なるという意味は、この文脈からいえば値上げしか考えられないんですが、値上げと書かないで、大きく異なるというふうに書かれているから、最初のところから説明があいまいでわかりにくいんですよ。値上げならば、増額なり値上げなりというふうに、どうしてここに正直に書かないんですか。

◯吉田参事 最初に中見出しの部分で、大きく異なる場合がございますということで、先ほど申し上げましたように、増もあり減もあるということで、今回の三つの柱の第一点について触れさせていただいているわけでございますが、ただいま先生お話しのように、その中の説明で、都心部の住宅について、大きく異なるという表現をとったことは、これはたまたま見出しの表現をそのまま繰り返させていただいたということで、今後は、お話しのように、できるだけ具体的ケースに即した表現をとるように努めてまいりたいと考えてございます。

◯曽根委員 つまり、見出しのほうの大きく異なるというのは、全体の話だと。だから、説明文のところは、これはやっぱり具体的にいえば値上げなんだということですよね。そのことを今認めたわけだけど、大きく異なるという書き方自体が、だから不誠実なんですよ。素直でないんですよね、東京都のこの「すまいのひろば」というのは。ほかにもいっぱいいろいろありますが、イの一番でここが出てくるものだから。私もいろいろとこれについては皆さんにお知らせ出しましたけれども、都心の古い住宅、上がりますよと、私は正直に書いたんですよ、そういうお知らせには。
 しかし、東京都はこういう書き方をしている。  それで、ほかにもいろいろと説明不足があって、大変混乱をしている方が多いわけです。最近、皆さんに届いた個別の通知、私は見本をいただきましたが、家賃や、それを足したり引いたりする金額についての欄が二十三カ所あるんですね。どれが自分の家賃で、どれが足すものか引くものか、二十三カ所の数字がだあっと並ぶわけですよ。一番結論が、来年の一月からの家賃になるわけだけれども、特にお年寄りの方なんかは数字になれていないから、それに至る過程でわけがわからなくなるわけですよ。
 そういうことで非常に大きな混乱が起きているわけですが、その中で収入報告というのが夏に行われましたね。これが、通知が行く前です。毎年収入報告というのはありますが、今回は、収入報告を出さなかった方は、応能減額が受けられる方も、報告がないと減額の対象にならないということで不利益になる、利益が受けられないという方が出てくるわけですね。実際に何軒のお宅に収入報告用紙を送って、何軒戻ってきて、そのうち、書類上不備があったりして再調査をされたのが何軒ぐらいか、その数字をまず教えてください。

◯那須管理部長 収入報告用紙を発送いたしました件数は二十万五千件でございます。それに伴いまして、収入報告がなされました件数が十六万五千件でございます。そのうち、記入等の不備で私どもの調査を必要としたものは四万二千件でございます。 ◯曽根委員 この説明を見ても、それから、この通知がまだ来ていない段階で収入報告というのが行われたわけで、例年の収入報告と同じだというふうに勘違いされた方もいるかもしれません。
 それで、約四万件の方が戻ってきていないわけですね。この方々の中で、応能減額を受けられる方もこのままでは受けられなくなるという問題がありますし、四万二千件の書類が不備だった方の扱いをどうするのかという問題もあるわけですよね。これについてはまた別の機会にお聞きしますが、約八万件の方が、場合によっては応能減額を受けられない場合もあり得るという扱い上の問題がこれから生じてくるだろうと思います。
 それから、先ほど指摘した都心の年数を経た住宅の一例として、新宿に戸山ハイツというのがあるんです。かなり戸数が多い住宅ですが、十月初旬に規定家賃の通知が来て、もう大騒ぎになったわけですよ。
 それから、十一月の初旬に、今度は個別の通知が来て、皆さん自分の家賃が初めてそこでわかって、大変だと。自治会長自身が二万円の値上げになってしまう。一体この金をどこから出せというのかということで、自治会ぐるみで反対の署名が始まった。この決定がされ、そしてこの説明が送られた後になって、自分の通知を見て、初めて大変なショックを受けたという方がたくさんいる。ですから、この家賃問題についての居住者の反響というのは、これからどんどん出てくるんだろうというふうに私は思うのです。
 ところが一方で、思っていたほど上がらなかったという方がいるわけです。規定家賃を見てみたら、恐れていたほどは上がらなかったという反応が一部にありました。それで、私、そういう方によく聞いてみましたら、そういう思ったほど上がらなかったという居住者の方の大半は、規定使用料と使用料限度額が同じ金額になっていたというのですね。これはどうしてそういうことになるのか。また、こういう住宅というのは、都営住宅全体のうちどれぐらいの割合出たのか、教えてください。

◯吉田参事 都営住宅の使用料の設定は、これは現行制度も新しい制度も基本的な仕組みは同じでございますけれども、今お話しの法定限度額あるいはまた使用料限度額をそのまま使用料とすることは原則としてございませんで、別にそれを離れまして、一種住宅の新築のものはおおむね六万円、二種住宅は四万円、これを基準といたしまして、既存住宅についてはそれをまた個別に、その質、いわゆる応益と申しておりますが、質的な違いを反映させて減額していく形で調整、設定しているものでございます。
 したがいまして、一種住宅で申し上げますと、いわゆる使用料限度額が十万円とか、それを超すものでございましても、使用料そのものは六万円台にとどまるわけでございます。逆に、この算定式におきまして使用料の額よりも限度額の方が低い場合、これは大体計算で申しますと二万円とか三万円の使用料計算になる場合が多いわけでございますが、その場合には、その限度額で使用料設定を限度としなければいけませんので、お話のような同額のものが生じるわけでございます。これら同額になっているものは、今申し上げたようにおおむね三万円以下の家賃のものでございますけれども、全体の戸数での四割、おおよそ十万戸がそのような状況になってございます。

◯曽根委員 私も聞いてびっくりしたんですが、都営住宅のうち四割がこの使用料限度額に規定家賃がぶつかっているわけですね。それ以上は法律で上げられませんから、そこでとまっている。
 ですから、応益調整率を掛けて基準家賃六万一千円からそのまま計算したら、限度額を超えるほどになっている住宅が非常に多いということなんですね。限度額というのはもともと法律で、公営住宅は基準内の方はこれ以上は取ってはいけませんよという限度ですから、それを超えるような応益調整率がたくさんの住宅にかかっているということ自体、私は非常に今度の応益調整のやり方、改善といっていますが、相当上げたんじゃないかと思うんですよ。聞いてみると、大半の団地は応益調整率が上がっている、下がっているところはごく少ないというふうに聞いているんですが、全体に底上げになっちゃったわけですよね。
 ただ、これは今の段階では使用料限度額でとまっているわけですが、問題はこれからなんですよね。これから使用料限度額が引き上げられるようなことがあれば、天井が上がるわけですから、当然規定の家賃も、その使用料限度額が上がった範囲の中でまた自動的に上がるわけですね。使用料限度額というのは、普通は収入超過の方の割り増し家賃だとか高額認定の方の家賃の計算の中に使われるものですが、基準内の方も、この天井が上がるということによって家賃の影響を受けることになるわけです。ですから、使用料限度額が今後どうなるのかというのは、これからの家賃を、全体を動いていく上では非常に影響が大きいと思うんです。
 それで、その限度額の改定というのはいつ行われる見通しなのか。その際問題なのは、現在の使用料限度額、今度導入した使用料限度額は平成三年の固定資産税評価額相当額というのを使っている。
 三年前の数字を使っていますね。これを六年度、ことし四月改定の固定資産税評価額に基づく相当額を直接使えば、これは七月の住宅港湾委員会で西田委員が指摘しましたけれども、軒並み使用料限度額は二倍か、極端にいえば四倍になる場合も出てくるというふうになってしまうということで、この六年度の固定資産税評価額相当額を直接見直しの際に使うのかどうか。この点について、今後の見通しについてお伺いしたいと思います。
◯吉田参事 使用料限度額の改定はそれ単独で行うというものではなくて、使用料の改定に合わせて行われることを基本と考えてございます。
 したがいまして、むしろ使用料の改定の時期ということになりますが、新しい制度におきましては、住政審の答申によりますと、入居収入基準の変更があれば、それに基づいて使用料を見直していく必要があるとされてございます。したがいまして、入居収入基準、これは国によって行われるものでございますが、その変更がいつという見通しは現在得てございませんので、明確なことはお示しできないわけでございます。
 なお、固定資産税評価額相当額を、六年度のものを、またどのような形で適用するかということにつきましても、その使用料見直しの時点で、いわゆるその改定を総合的に検討する中で検討される、扱われるべきことが原則であろうと考えてございますので、現時点で具体的に申し上げることは適当でないと考えてございます。

◯曽根委員 建設省の収入基準の改定というのは、やられたのは前回は四年前ですから、通常でいえば、そろそろ改定の時期なんですよね。ですから、近々やられる可能性だってないわけじゃない。そのとき、今までの例でいえば、使用料限度額も使用料と合わせて改定というふうになると思うんです。
 そういうときに、既に平成六年の新しい固定資産税評価額が出ている。公式にも発表されている。三年前の平成三年の数字というのは旧額であって、もう今は使われていない金額なんですね。それをそのままその改定のときに残すというようなことが、平成三年の数字をそのまま次の改定のときにも使うというようなことがあり得るのですか。

◯吉田参事 使用料見直しの時点で、その時点で家賃上使っておりました評価額と、またその時点での固定資産税評価額相当額の年次が異なれば、当然どうするかという検討は出てくると思いますが、先ほど申し上げましたように、それは使用料見直しの時点におきます総合的な検討によると考えますので、現時点でどうということは具体的に申し上げるのは適当でないということでございます。

◯曽根委員 もし平成三年の数字をそのまま次の改定のときにも使うとすれば、固定資産税評価額というのはもう古いものしか使えないという、とんでもないことになるわけですよ。制度として非常におかしなことになる。
 しかし、逆にことしの四月改定の数字を使えば、ご存じのとおり、公示地価の七割まで固定資産税評価額が上がっちゃっているわけですから、使用料限度額は二倍、三倍、場合によっては四倍ぐらいにもはね上がってしまう。それがはね上がれば、高額認定の方の家賃なんかは、もうとんでもない家賃が出てくるわけですね。これは前回やりました。三十万、四十万というような家賃が出てくるということになりますが、基準内の方だって、天井が上がっちゃうわけで、また一斉に上がる。四割の住宅がひっかかっているわけですから、この天井に。
 ということになるわけで、住政審の答申が出たのが二月、それから、住宅局から条例案が出たのは七月ですから、もう既に固定資産税評価額は上がっていたわけですよね。ですから、こういうふうな問題が起きることは当然予測できる時期に条例案が出されているのにかかわらず、この次の見直しのときに検討するんだというのでは、私、この制度そのものの破綻をみずから認めたようなものだと思うんですよ。
 しかも、使用料限度額というのは、さっきいったようにこれから影響が大きいわけですよね、基準内の方の天井を決めるわけですから。それから、高額認定の方は、家賃をその一・四倍取られるわけですね。もしくは、二種の方は一・八倍ですか。
 その基準となるというか土台となる使用料限度額が、その見直しのときに総合的判断、つまりはさじかげんでしょう、調整するわけですよね。何らかの調整で適当なところにおさまるように、そのときの住宅局の都合でもって何とかやるんだ、やりくりするんだ、総合的判断だというので、それで基準が決まってしまう。それでもって家賃が一・四倍だの一・八倍、高い人はかかっていく。基準内の方もそこまではどんどん上がっていくということで、一体いいのかということなんですよ。制度としての原則的な変更というのならわかるんですよ、仕組みとして。基本原則に従って変わるというのならわかるんだけれども、そのときのさじかげんで決まった金額で全部家賃がそれに合わせて動いていくという、極めて恣意的な話になると思うんですね。
 それから、もう一つの問題をちょっとお聞きしたいんですが、こういう使用料限度額の決め方からいいますと、住宅局も、この使用料限度額が都営住宅の原価的な家賃だというふうに説明されていましたけれども、私が思うには、例えば一つの製品つくったり、商品つくるときの製造のコストというような意味での原価と、この使用料限度額の原価的といっている意味は違うんじゃないかと思うんですが、この原価的という意味はどういう意味で使っているのか、その点をちょっとお答えいただきたい。

◯吉田参事 先に前のご質問でございますけれども、先ほど申し上げましたように、使用料限度額の改定は使用料の改定に合わせて行われるのが基本と考えてございますので、その具体的なやり方におきましては、やはりその時点での総合的な検討の余地があることがむしろ必要ではないかと考えてございます。
 答申におきましても、将来におきます使用料等の改定のルールを細部にわたってあらかじめ答申の上では決めておりませんで、むしろ、その時点での実務的あるいはまた政策的な扱いの余地を残しているものと受けとめております。  次に、同じく今申し上げた答申で、この使用料限度額を住宅の原価的な家賃だと表現していることでございますが、ここでいう原価的というものは、この審議の過程の経緯を踏まえますと、賃貸住宅家賃の基準的と申しますか、標準的な算定方法を踏まえた家賃の意味であると受けとめておりまして、例えば用地にかかわる部分について申し上げれば、建設当初の用地取得費を償却するという算定方法ではなくて、むしろ、用地をときどき適切に評価した上での地代相当額を算定するというものと受けとめてございます。
 都営住宅におきます使用料限度額の算定をこのような標準的な考え方に準じて行うということにいたしましたのは、新規に用地取得して建設する住宅との均衡からも、また、都民共有の財産である都有地の適切な保全という観点からも、理解を求めていかなければならないものと考えてございます。

◯曽根委員 そうすると、つまり個別の都営住宅の使用料限度額というのは、その都営住宅を建てるのに幾らかかったというような建設コストというのではなくて、いわゆる賃貸アパートだとか、それから不動産の売買だとか、こういうもののときに判断のもとになる住宅の資産価値というのですか、そういうものと大体同じ土台というか、同じ方式で計算されたものということですよね。
 そういうときに標準的に使われるものですね。そうすると、それは実際に都営住宅の建設に都の公費が幾らつぎ込まれたんだ、また、幾らのコストでその住宅が維持されているんだというものとは、別の計算で出されたものだということで理解してよろしいでしょうか。

◯吉田参事 今のお話の関連で、住宅政策審議会の答申におきまして、いわゆる使用料限度額と実際の家賃の差額、これは一般都民の税負担で賄うものであるという表現がございます。これは答申の表現でございますので、その用語の使い方についてコメントするのは差し控えさせていただきたいと思いますが、今のご質問の趣旨も同様のものと受け取っております。
 例えば、これは住宅政策審議会の議論の過程でよく例えとして出たケースでございますけれども、つまり一般都民の方から見ますと、都有地というものは都民共有の財産でございますので、活用の仕方によっては、今お話しのように適切な地代相当額で収入を上げ、税金ではなくて、その収入でもって行政サービスの費用に充てることも可能である。
 しかしながら、その収入を上げなければ、逆にその費用は税金で負担するということもあり得るだろう。そのような都民一般の考え方を踏まえますと、このような表現が出てきたのだろうということで、また、その答申の後に、この法定限度額と使用料の差額については、都民の理解と支持を前提とした上で考えていかなければいけないと書いてございますが、私どももそういう形でこの内容を受けとめておりまして、また、こういう形の理解を求めていかなければいけないと考えてございます。

◯曽根委員 長々とご説明をいただいたので時間が延びちゃうんですけれども、やっぱり違うものですよね。要するに今のご説明は、その都営住宅を別の資産として活用した場合に、幾らの税金としてみなされるのかということに換算したわけですよね。それでもって都民の財政がつぎ込まれているんだと。これはかなり飛躍があるわけですよ。
 実際には建設コストとは別物ですから、都民の税金をここにつぎ込んでいるんだという議論は非常に乱暴だと私は思うんですよ。しかし、その乱暴な議論が、前回の議会のときにもかなりやられているということでは問題があると思うんです。
 都営住宅というのは、もともと建設コストを家賃で回収するという性格の住宅ではありませんよね。これはいうまでもないことなんですが、そういう都営住宅に、何で原価とか原価的なものとかいう家賃の考え方が最近いわれるようになったのか。これがいわれ出したのは、たしか五年ほど前の住宅政策懇談会のときだと思うんですが、この報告の中では、結局、将来的には公共住宅の一元化を図っていくべきだということがいわれているんですね。そうすると、公団住宅、公社住宅、いろいろ違いはありますが、建設コストを家賃収入で回収していくという一つの家賃計算の大きなルールがある。都営住宅もそれに原理的に合わせていきたいという流れがあるんじゃないかと私は思うんです。
 そういう点で最近、二〇一五年の東京についての提言が出ました。その中身にも、その住宅政策懇談会と同じ公共住宅の一元化というようなことが出ていて、かなり突っ込んだ内容が書かれているんですが、この二〇一五年の提言の中でいわれている点について、住宅局の受けとめについて、これは企画審議室が担当のようなんですが、ちょっとお聞きしておきたいんです。
 二〇一五年の提言の中では、公営住宅については、一つは社会的公正などの観点から、高齢者、障害者などの住宅の困窮度をより的確に反映した入居者の選定を行うとともに、民間住宅の借り上げによる供給を進めるなどの工夫が必要だ、公営住宅についてこういうふうに述べておりますが、こうした問題も含めて、この提言についての住宅局としての受けとめはどうかということをお聞きしたいと思います。

◯村上住宅政策担当部長 先ほど示されました「二〇一五年の東京への提言」は、都政全般につきまして二十年後を展望いたしました中から、その展開の方向のあるべき姿について提言されたものでございまして、その中で、今ご指摘ございました公営住宅のくだりにつきましては、高齢者や障害者などの住宅の困窮度をより的確に反映した入居者の選定を行うとともに、民間住宅の借り上げによる供給を進めるなどの工夫が必要です。
 このことはまた、入居者にとっても居住の場所などについて選択の幅を広げていくこととなり、さまざまな人々が住む地域社会の実現の上からも望ましいと考えられます、こういうふうに述べられておるわけでございまして、この懇談会の提言につきましては、公営住宅を供給するについては住宅の困窮度を踏まえて的確に行う必要がある、その例として一般的に住宅の困窮度がより高いと考えられる高齢者、障害者を挙げているものであるというふうに受けとめております。
 また、民間住宅の借り上げによる公営住宅の供給についてでございますが、公営住宅につきましては法律に基づくものでございますので、これは直ちに法律に基づく公営住宅をいっているかどうかは不確かなところでございますが、こうした公営住宅の供給につきましては、入居者にとってその居住の場所などについて選択の幅を広げていく、さらにまた、それによってさまざまな人々が住む地域社会の実現を図る上から望ましいんだ、そういうような観点から今後供給形態の工夫が必要である、こういうことで提言されたものと受けとめておるところでございます。

◯曽根委員 そうすると、これはその後に、将来の公共住宅の一元化ということを視野に入れながらという文章も出てきますね。
 そういう点でいうと、住政懇で出された報告の方向、これをさらに進めるという立場でこれが提言されているというふうに考えておられるのか、それとも新しい提言だというふうに受けとめているのか。私は、将来の公共住宅の一元化というものの流れの中で、今いった高齢者、障害者を重点にと、また、民間住宅の借り上げもという文脈が出ているんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

◯村上住宅政策担当部長 今の公共住宅制度の一元化の関係でございますが、住宅政策懇談会の報告、これは平成二年に出されたものでございますが、この住宅政策懇談会の委員メンバーと、それから、今回出されました「二〇一五年の東京への提言」、この委員メンバーとは全然異なるわけでございまして、そういう意味で、ある一つの流れがあってということでは決してございませんで、違う方々がご議論された中で、一元化という言葉がたまたま同じような形で出てきている、こういうものであると理解しております。

◯曽根委員 審議会のメンバーが違うからといって、方向が全然無関係に出るということはあり得ませんよ。それは、当然今までの提言や報告をもとにしての検討を住宅部分については考えているわけですから、そういうものを読まないでまた考えるということがあったら、また、それはそれで問題になると思うんですよ。
 しかし、実態としては、私は、東京の公共住宅については、一元化というのは実際に始まっていると思うんです。例えば、都営住宅については今建てかえで、前の戸数は確保するけれども、プラスアルファ分、これは今都民住宅を盛んにつくっていますよね。
 それから、公社住宅については、建てかえ後は基本的に都民住宅にしていく、公社の一般賃貸はもう基本的にはつくらない、そういうふうになってきている。それから、最近は公団住宅の建てかえの中でも、今の公団の制度では家賃が上がり過ぎてしまうので、地元の自治体が借り上げて、特優賃を使った都民住宅と同じような形で供給できるような制度というのが国で発足しましたよね。これは東京都の要綱もできたと思うんですが、この公共住宅、建てかえなどを見ますと、都民住宅中心にだんだんシフトしてきている。
 先ほど、公社住宅から都民住宅に重点が変わったんだという話も質問の中のお答えにありましたけれども、恐らく、これから都営住宅を高額認定で明け渡さなければならない方のあっせん住宅も、中心は都民住宅になってくるわけですね、数が出てくれば。都民住宅というものを軸にして、東京の公共住宅というのはだんだん一元化されつつあるんじゃないですか。
 そういう意味でこの流れというものは、既に東京都自身も着々と進めているというふうに私は受けとめられると思うのですが、実際には都民住宅、私昨年も新しい制度ができたときに問題点を指摘しました。最初はいいわけですよ、一八%、せいぜい二〇%ぐらいに負担率は抑えている。
 しかし、二十年の間にどんどん負担率が上がって、低い所得の、都民住宅に入れる方の低い方の収入の方は、最後は二〇%、住宅基本条例でいっている公共住宅の目安としての二五%の負担率も超えちゃって、三〇%ぐらいまで上がっちゃう方が出てくるという致命的な問題点を抱えているわけですよね。
 それに一元化をしていくというのであっては決してならないと思うんですが、その点について、実際のところ、住宅政策としてこういう方向を出されているのは、実態からいってそういうことになっているんじゃないですか、いかがでしょう。

◯村上住宅政策担当部長 平成二年に出されました住宅政策懇談会の報告におきましては、都営住宅入居者の約四割が収入超過者、公社住宅入居者の約三割が公営階層に該当するほか、公社公団の新築家賃の上昇に伴い、公営と公社公団のどちらにも入居できない階層が生じている、こういう理由を述べた上で、長期的な方向としては、家賃制度も含めた公共住宅の一元性での再構築が検討されなければならない、こういうふうに指摘しております。
 ただし、当面の対応としては、都民住宅の供給の拡大を図るとともに、各公共住宅について、制度、運営の改善に努めつつ、公共住宅がそれぞれの施策目的に沿って相互に連携し、協働する関係をつくっていくべきである、こういうふうに提言されておるわけでございまして、今日私ども、公営住宅、都営住宅の建てかえを行う、そのほかの場面においても、住宅政策懇談会の方の指摘されている当面の対応という中で、しかるべく適切な措置というふうに考えて講じておるところでございます。

◯曽根委員 私は今回家賃問題については、これも七月のこの委員会で議論があったところですが、そのとき局長のお答えにもありましたけれども、建設省が通達を出して、使用料限度額というものを収入超過の方などにはきちっとかけなければならないよというのに基づいて、今回使用料限度額を導入したんだというお話がありましたよね。
 しかし、使用料限度額というのは、先ほどいったように、民間の賃貸住宅や資産的な価値としての基準で使われている考え方と同じものをもとにしているわけですね。そういうものを持ち込む、民間的な家賃の仕組みというのを持ち込むことで、都営住宅の本来のあり方を損ねるものだということを私たち批判してきたわけです。
 これが今、将来的には公共住宅を一元化していこうという流れの中で出されてきているのではないかと思うのですね。そうだとすれば、将来公営住宅はどうなるのか。ここで二〇一五年、提言されているように、高齢者、障害者など、この部分に、今の建設戸数が余り多くない中で、そこを重点に選定を行うようなことになれば、低所得者一般についての応募の機会というのはだんだん減っていくことは明らかなんです。  公営住宅法の第一条で、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸するというふうにいわれているし、第三条では、地方公共団体は、常にその区域内の住宅事情に留意し、低額所得者の住宅不足を緩和するため必要があると認めるときは、公営住宅を供給しなければならないと定めているわけで、こういう基本原則から外れていく。
 低額所得者全体に供給するというのではなくて、特定の階層といいますか、分野に特化していってしまう。また、地方公共団体が供給すべきものを、民間の力もかりましょうというふうになっていってしまう。法律的にいっても、かなり逸脱という、先ほどもお答えがありましたけれども、超えていくものになりかねないと思うんです。
 私は、都営住宅というのは大量に建設してこそ、高齢者、障害者を含めて低所得層全体に入居の機会が与えられるものだ、この原則を外してはならないというふうに思いますし、これを保障する意味でも、家賃制度については民間の考え方、市場家賃的な考え方を導入する今回の家賃制度の導入は、今からでも遅くない、撤回すべきだということを申し上げて、質問を終わります。

(2)多摩ニュータウンの商店街の衰退に対策を求める

◯曽根委員 私からは多摩ニュータウン開発の幾つかの問題点について、特に住民の生活に不可欠の公共住宅や医療施設、商業施設、そうしたものについて幾つか聞きたいので、簡潔にそれぞれお答えいただきたいと思います。  最初に、南大沢駅の駅前開発で出店したそごうがこの十月三日に閉店をして撤退したわけですが、その原因は何か、経過も含めて簡潔に説明してください。

◯曽根委員 この駅前は、今、核テナントでそごうという話がありましたが、それと忠実屋、今ダイエーと。このほかにはそういう物品を販売している店舗は今あるんですか。

◯曽根委員 通常、駅前の開発で核テナントというのは、周りにいろいろ専門店街があって、その中心にデパート形式だとか大型スーパーなどで核になる店舗をテナントで呼ぶというのが一般的なんですが、ここの場合は大型店だけがあって、ほかはお店がほとんどないんですよね、新しく駅をつくったという関係もありますが。
 それで、計画を立てた当時、この商業施設のテナントをどうするかというときに、地元の店の方に聞いたらば、例えば地元の八王子の店の支店を出すとか、お店が移転してきて、そこに入れるようにもう少し小割りの、小さいお店が入れるような形にしたらどうかという話もあったようなんですが、結局大型店だけで商業ビルをつくったというのは、今から見ると、そごうが撤退すると、もうがらあきになっちゃうわけですよね。そういう点では、商業開発のやり方そのものとしては失敗なんじゃないかというふうにいわざるを得ないと思うのですが、その点の評価はいかがですか。

◯曽根委員 一つは、対策の方もちょっとご答弁があったんですが、今お聞きしたところ、今度入るお店というのは、いろんな店を呼び集めるということだそうですね。そうすると、やはり大型店だけでいくというのは、今の段階で見直さざるを得なかったというのがありますよね。
 それから、中心地区にするんだという大きな計画は結構なんですが、しかし、それは将来の話で、人口は今余りないわけですよね。そういう段階でいきなり大型店に出店させても、それでうまくいくのかというと、なかなかそういうふうに、将来のことを今の段階でいうと、うまくはいかないということがいっぱいあるわけです。だから、不況のせいだけにするのは私はおかしい。オープンしたのはつい二年前ですか、そういう段階ですから、もう不況は始まっていたわけですからね。そういう点がいろいろと――商業施設の開発一つとってもまちづくりは非常に難しいもので、計画できれいごとをいっても、うまくいくというものではないと私は思うんですね。
 もう一つ、商業施設について聞きたいんですが、この八王子の、今度は多摩ニュータウンでも古い方の、もう二十年ぐらいたっているのでしょうか、都営住宅の中にある鹿島地区の商業施設、これが十二店舗ほどあるのですが、現在、どれぐらいの空き家率になっているのか、それから対策はとられているのか、この点についてお聞きします。

◯曽根委員 私は、地元の方からご相談があったので、先日行ってみたのですが、もう十二店舗のうち半分ないですからね。歯抜けという言葉がありますけれども、歯抜けどころじゃない。ほとんどもう、何というんですか、大変な状況なんですよ。
 それで、今残っているのは、学習塾と肉屋さんとクリーニング店と美容院と酒屋さんとすし屋さん、この六軒が残っているんですね。生鮮食料品を扱っているのは肉屋さんだけ。魚屋さんはついこの間撤退しちゃって、その前に八百屋さんが撤退したので、もう大体日常品を買い物できる状態じゃないですね。学習塾の方、たまたま若い先生がいたのでお聞きしたんですけれども、もう人通りなんかないというんですよ。人通りがないと、学習塾も生徒が集まらなくて、もううちもそろそろといっているんですよ。
 だから、こういう状況を、家賃をそのまま据え置いているというだけでいいのかと。責任持ってつくったわけだから、十二店舗。十二店舗という数も私は非常に不十分だと思いますけれどもね、にぎわいというか、商業施設をこれ全体でつくっていく上では。しかし、それにしても何とかする責任があるわけですよね。そういう点、例えば、そこは二階に住むということを前提にして、住居と店舗とあわせて賃貸で出しているようなんですが、その辺をそのままでいいのかとか、それから、十二店舗が全部同じ区割りなんですけれども、もう少し狭かったり広かったりするような賃貸の仕方はないのかということも含めて、責任を持ってきちんと、全部のお店に埋めるような手だてを抜本的にとるべきじゃないか。その点、もう少し柔軟に対応すべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。

◯曽根委員 まず自分たちで相談してみろということですけれども、もう六店舗になっちゃうと、相談するも何も、数が減っちゃって気力もわかないという状況なんですよ。それは担当部局の方で相談の窓口は用意するということなので、もし地元から具体的な相談があったときには、ぜひ柔軟に対応していただきたいということをこの点ではいっておきますが、南大沢の中心地区のところもうまくいかない。それから、その住宅に密接したその商業施設も、鹿島地区だけで全体を推しはかるわけじゃありませんが、必ずしもうまくいっていないという点で、商業開発というものを、駅前が中心で、それで住宅のそばは近隣の商店街でやるというふうな形だけで決めていくような開発で、なかなかまちづくりはうまくいかないということがニュータウンの例でも私はいえると思うんですね。
 それから、医療施設についてなんですが、きょう資料でいただきましたが、多摩ニュータウンの場合は新しくつくる町なので、お医者さんについては分譲で誘致しましたよね。その誘致した中で休業や廃業になっているお医者さんはどれぐらいあるかということで、資料きょういただいて、一ページで、休業が一件と廃業が五件出ているのですが、これは今まで診療科目が変わったり、お医者さんが入れかわったりした途中経過については残念ながら入っていないようなんですが、そういったものについてはわからないんですか。

◯曽根委員 私、地元の方にお聞きしたんですけれども、今廃業はしていない、休業もしていないお医者さんでも、過去に一時的に休業で、やっていなかった時期があったり、それから診療科目は相当変わっているんですよね。例えば、今、多摩ニュータウンはもう三十年になりますから、高齢化が進んで赤ちゃんが余り産まれないということで、小児科はどんどん減っているというような傾向も出てきて、お医者さんの配置が、当初の計画からくるというとかなり変わってきている。
 そういうときに、これは分譲で出していますから、今いるお医者さんが廃業になって、住んでいるだけ、お医者はやっていないというふうになった場合に、そこをどいてもらって、別のお医者さんを誘致するというようなことは権限の上でできるのでしょうか。

◯曽根委員 十年間の特約はついているけれども、十年以上たったものについては、もう廃業しても、それは当然分譲ですから、その方の持ち物ですよね。そうすると、実際上お医者さんが減っても、それに対する個人診療所という形では対応できないという問題が残されるわけで、最近多摩の南多摩病院が開院しましたので、大型の病院の方は整いつつあるけれども、地域に身近な医療機関という点では、これは前に決算委員会で取り上げたことがありますが、共同診療所などを賃貸で進出を誘致するとか、やはり医療施設についても当初の計画よりは改善をしていかないとならないと思うんです。この点は指摘だけしておきます。
 それから、肝心の住宅の方なんですが、最近、公団の賃貸住宅でここ一、二年に建ったものでかなり空き家が目立つ、募集期間を過ぎても埋まっていないという話を聞くんですが、公団の賃貸住宅についての入居状況はどうですか。

◯曽根委員 入居待機者に順次交渉中だけれども、なかなか成立しなくて入っていない。先ほど都民住宅のことでも空き家辞退が多いという話がちょっとあったんですが、公団住宅で聞いてみましたら、三LDKで十七万円から二十万円近い家賃だと。これはあの周辺の民間の住宅と比べても、決して安くないどころか、高い場合もあるということなんですよ。ですから、これも公団住宅の賃貸、最近非常に住宅そのもののグレードは上がっているわけですが、住める家賃なのかという点では、あの多摩のニュータウンでさえ大きな問題になっているということなんですね。
 今いろいろと医療施設、商業施設の問題とあわせて指摘しましたけれども、多摩ニュータウンの開発が最近収束といいますか、総仕上げの段階に入っているという報告を時々聞くんですけれども、まちづくりを最初からやっているという東京都としてもかつてない事業ですから、いろんな問題が起きるということですので、決して総仕上げどころか、これから町がきちんと熟成していけるように、住民の立場に立って、多摩都市整備本部としては責任を持って対処していく必要があるだろう。つくりっ放しというようなことは絶対あってはならないというふうに私は思うので、その点はぜひ本部長に決意をお聞きしたいと思います。

◯曽根委員 最後に意見を申し上げておきますが、今多摩都市整備本部は、資料にもいただいたように、秋留台の開発にいよいよ本格的に着手をしようとしているわけです。ここも多摩ニュータウンに比較しても、一層規模の大きな、非常に複雑な開発計画になることは間違いない。
 この秋留台開発の場合には、加えて、国の方の首都圏構想だとか、最近、二〇一五年の都市づくりの提言などにも秋留台開発が取り上げられているとか、国や東京都のかなり大きな計画の中に組み込まれているという面が強いので、私は、多摩ニュータウン以上に上からの開発の計画の押しつけというのが出てくる危険性が非常に高いと思っているわけです。
 自然問題だとか圏央道の問題とか、さまざまな問題を私たち指摘していますが、多摩ニュータウンで教訓となったまちづくりのこうしたいろいろな問題点からいって、秋留台開発については、私は本当に慎重でなければならないというふうに思っているんです。まちづくりは一たん手がけますと、そこに人が住んでしまうわけですから、もう引き戻すことはできないし、始めたからには最後まで責任を持ってやらなければならないわけですよね。お店がなければ、お店をつくらなければならないわけですよ。そういう点を本当に踏まえて、考えていただきたいということを最後に要望として申し上げて、質問を終わります。

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