各会計決算委員会(94−1−28)そね質問全文
◯曽根委員 私からは、東京都のフロン対策について何点かお聞きをいたします。
フロンが原因と見られるオゾンホールが初めて発見されたのが、日本の南極観測隊の越冬隊が南極で観測をしたのが八二年で、これが最初だといわれているんですが、学会で、これはフロンが原因であるというふうに裏づけられたのが八五年ですから、間もなく十年近くになろうとしているわけです。
国の方でも、国際的に定められたモントリオール議定書の八七年の採択に基づいて、八八年に特定物質の規制に関する法律が制定されました。それから九二年には、このモントリオール議定書の締約国会合で、フロン全廃を西暦二〇〇〇年から九六年に前倒しするということも定められたわけで、これから見ますと、特定フロンについては、来年いっぱいで製造が禁止されるということから、今残っているフロンの回収、処分の問題等含めて、東京都の対応も非常に急がれていると思うわけです。
そこで、資料でいただきましたが、平成四年度の東京都フロン対策事業の各事業について、その目的、内容、特に、だれを対象とした事業なのか、それから、その成果についてお聞きします。
◯長沼参事 平成四年度のフロン対策事業のご質問でございますが、資料にもございますように、まず、平成四年の五月でございます、東京都地球環境保全行動計画を策定いたしました。これは、行政、事業者、都民が地球環境の保全に向けての行動を進めるための基本的な方向や行動指針を示したものであると同時に、東京都の地球環境保全対策を総合的に推進していくというものでございます。 具体的には、これに基づきまして、都民を対象といたしました地球環境問題の普及啓発事業として、地球環境展を引き続き開催しておりますし、また、床面積千五百平米以上の都有施設におきます特定フロン使用空調用冷凍機などの使用実態調査を開始いたしまして、今後の計画的な機器更新等の基礎資料を得たところでございます。加えまして、環境中のフロン等の濃度を継続的に把握していくための連続自動環境モニタリング装置を平成四年度に都内三カ所に設置したところでございます。
◯曽根委員 その平成四年度からの、本格的に始まったといわれるフロン対策が、今年度、平成五年度、それから次年度である六年度にどのように受け継がれてきているのか。特に重点としている課題についてお聞きいたします。
◯長沼参事 平成五年度以降の対応でございますけれども、まず、引き続きまして地球環境展を継続して実施いたしましたし、今後とも実施していく予定でございます。また、都有施設におきます特定フロン使用空調用冷凍機の四年度の使用実態を踏まえまして、五年度には関連設備機器等の取扱方針を策定し、具体的な更新計画あるいは冷媒フロンの回収・再生・再利用システムを確立いたしまして、ことしの四月から運用していく予定でございます。 さらに、現在、都内の事業所におきますフロン等の使用及び廃棄の実態調査をやっております。その結果を整理した上で、効果的なフロン対策を今後展開していきたい、かように考えております。
◯曽根委員 このような流れを見ますと、一つは、地球環境展、これは一般都民向けという形になろうかと思うんですが、都民全体にこうした問題を啓発、普及していくということは当然大事だと思いますが、同時に、具体的にフロンをどうやって回収するのか、それから、実際にまだ使われているところに対する対策はどうするのかという実効のある対策が今緊急に求められていると思うんです。その中で、最近東京都として、一つは、ここに出されておりますように、都有施設については空調用冷凍機、いわゆるクーラーの冷媒フロンを回収することと、それから、これは所管外かと思いますが、清掃局の方では、やはりことしから、粗大ごみとして回収された冷蔵庫の中の一定の量の回収をスタートさせるというようなお話も聞いていますが、どの程度の量を回収予定していますか。
◯長沼参事 まず、都有施設の空調用冷凍機の更新台数、先ほど千五百平米以上の都有施設と申し上げましたけれども、これで約二十台程度を予定しております。それから、清掃局が実施いたします粗大ごみの冷蔵庫からの冷媒フロンの回収は、清掃局では緊急対策事業として約二万一千台程度を実施する予定としております。 ちなみに、若干コメントさせていただきたいんですが、全国で生産される冷蔵庫の台数は年間約四百万台でございます。これに内蔵されます特定フロンが、冷媒として約七百二十トン程度と見込まれます。 この七百二十トンという数値なんですが、国内全体の特定フロンの出荷量が、もちろん冷蔵庫以外さまざまあるわけでございますが、約六万トンございますので、この六万トンのうちの約一・二%程度になろうかと思います。また、私どもの二十三区から廃棄される冷蔵庫は年間約三十四万台でございまして、そのうち約七万台を清掃局扱いで収集しているという現状でございまして、来年度はこの三割に当たります約二万一千台を、先ほど申し上げましたように、フロン回収緊急対策事業の対象とする予定となっております。
◯曽根委員 そうしますと、東京都がこれから行おうとしているフロンの回収というのは、都有施設については二十台程度ですから、ごく微量というしかないわけですが、清掃局が行う二万一千台についても、特定フロン出荷量の約一・二%、百分の一程度の冷媒用フロンの中の、東京都内分三十四万台、約十分の一ですか、そのうち粗大ごみで来る七万台のさらに三分の一程度の二万一千台ということで、ほとんど数字にならない。実際に出回っているフロンの量からすれば、本当にゼロ・コンマ・ゼロが二つぐらい並ぶパーセントになるわけでありますが、それでも、何か始めなければということで、現場では対応が始まったということだと思います。まだまだ微量ではありますが、この点は私は重要だと思っています。
それで、実際にオゾン層を破壊するという点で考えた場合、フロンもいろいろな用途がありますが、最も破壊の影響力の大きいと考えられている用途先はどういうものでしょうか。
◯長沼参事 金属製品製造業等の事業所で使用されております洗浄用の分野でございます。
◯曽根委員 結局、フロン、製造されているものの大半はこの洗浄用で使われていて、しかもこれは冷媒用のフロンのように密封されていない状態で使われますので、絶えず空中に、使われているさなかから飛散していくということで、これが、家庭用で使われているスプレーだとかいろいろありますけれども、圧倒的に量が多いということだと思うんですね。それに対する対策は、当然、別個にまた打たれなければならないわけです。
先にその冷媒用フロンの方なんですが、最近、この問題を研究している横浜国立大学の研究チームが、この冷媒用フロンの回収また処分の実態、また今後の見通しについて、専門誌である「資源環境対策」という雑誌にレポートを発表しているんですが、これは東京都の方でも入手されていますか。
◯長沼参事 入手しておりまして、私自身も拝見しております。
◯曽根委員 専門家の方にお聞きしますと、このレポートはかなり現状をよくとらえていて、最新の情報が得られているというふうにお聞きしたんですが、この中では、技術的な問題もいろいろ書いてありますが、特に、国や自治体がこのフロンの回収、処分について積極的に取り組まないと、これ以上は進まないだろうというふうに明確に指摘がされています。
既に日本でも、九二年の秋に日本フロン回収事業連合会というのが発足していまして、ゼネコンやデパート、事務所ビル、スーパーマーケットなどに、冷媒フロンの回収を呼びかけているが、義務づけが行われていない現状では、経費と時間がかかるので、必ずしも積極的な協力が得られていないというふうに指摘をされて、国や自治体が冷媒回収を義務づけたり、回収業者に助成をするなど、民間の努力による回収システムの構築を支援する必要があるというふうな指摘もされているわけです。
また、欧米の例も述べられておりまして、ドイツなどでは、冷蔵庫などに含まれる冷媒のフロンと同時に、本当は断熱材に入っているフロンの方が冷蔵庫の中より量が多いんだそうですが、そういうのも含めて一括して回収をし、回収装置には自治体が助成をしているということも紹介されておりまして、これはかなり、これから東京都が取り組む上での参考にしなければならないんじゃないかと思います。この点は指摘をしておきたいと思います。
それで、東京都もいよいよ回収に乗り出したということで、回収したものは、これはフロンは使えないわけですから、破壊しなければならないわけですが、最近、この同じ研究チームが、実用性のあるフロンの熱処理による破壊方法を開発して、焼却炉などを使って、実用可能であるというような報道がNHKのニュースや新聞などでされておりますが、これはご存じですか。
◯長沼参事 既設の産業廃棄物焼却炉を活用いたしまして、燃焼法によるフロン破壊技術を実証したという報道について承知しております。
◯曽根委員 こうした技術も次々と開発されている中で、では、だれが回収し処分をしていくのかという問題がこれから大きな課題になっていくだろうと思います。私たちは、基本的にはこれは製造物責任としてメーカーが、企業が回収責任を持っているんじゃないか、これが基本だろうというふうに思うんですけれども、同時に、家庭からの粗大ごみで現実に今次々と集まっている冷蔵庫があるし、それから企業の中でも中小零細業者などで自力では難しいというところもあると。実態として冷蔵庫を壊したときにどんどんフロンが出ていってしまうというようなことを防ぐためにも、やはり自治体としても何らかの手を打たなきゃならないだろう。清掃局の動きもそういう一つかなと思うんです。
いずれにしても、国の法律がこれから定められていくでしょう。方針が出てくると思います。で、自治体についても責任がどの程度及んでくるのかということがはっきりしてくると思うんですが、その中で、東京都としても、自治体として負うべき責任、役割をきちっと果たしていく方向で、この冷媒フロンについての回収や処分について取り組んでいくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
◯長沼参事 フロンの回収の負担の問題、役割分担等の問題でございますが、製造業者あるいは販売業者、使用者、それから行政間の役割分担等のさまざまな問題がございます。現在、通産省あるいは環境庁、それぞれ鋭意検討を急いでいるところでございまして、今後、都といたしましては、国の動向を見きわめまして対応していきたい、かように考えております。
◯曽根委員 東京都も何もしないというわけにはいかないと思うんです。現に清掃局は具体的に回収を始めているわけで、回収したフロンをどうするのかというと、じゃあほかの方にお任せしますとはなかなかならないだろうと。そういう点で、東京都もこうした取り組みの中で、当然果たすべき役割を担っていると思いますので、今後の積極的な対応をお願いしたいと思います。
次に、洗浄用のフロン、こちらが量が多いわけですけれども、こちらについての実態調査が始まっているようですが、どのような調査方法をとっていらっしゃるのか、お聞きします。
◯長沼参事 洗浄用フロンの実態調査についてでございますけれども、現在、フロン等の使用が見込まれます金属製品製造業などの事業所を対象といたしまして、アンケート方式による調査を主体としながらも、一部聞き取り調査を併用して行っております。調査内容は、フロン等の使用、排出の実態、回収、再利用の状況と課題などについてでございます。
◯曽根委員 今、アンケート調査を主に内容とした調査というふうにお聞きしました。洗浄用フロンの使用実態はやはりぜひ現場に行って見てみなければ、なかなか実態はつかめないんじゃないかというのが、私も大田区の金属加工の業者の方のところにお訪ねして現場を見てきたんですが、それの実感です。そのお宅は、ご主人と奥さんと使用人一人、三人でやっている本当に町工場で、自動車関係、それから釣りのリールなどに使うねじ部品をつくっている会社なんですが、そこでは、いわゆる一斗缶、三十リットル入ったトリクロロエタンもしくはトリクロロエチレン、これを洗浄用に使っていまして、ねじ部品を金属のかごに入れてざぶざぶとつけて洗っているという状況です。
月にどれぐらい使うのかと聞いたら、その一斗缶で三本使うと。それで、その使ったあとの廃油といいますか、使ったあとは業者が回収していく、これが一回について五百円の実費を取って回収するというようなシステムになっているそうです。大体、見たところ、洗って使っている間に、半分以上の溶剤が飛んでるなというような感じでした。ですから、量的には、ほかの工場に比べてそれほど多くはないというふうに、ご本人はおっしゃってましたが、そういう形でどんどん空中に飛び出している。
その中で、トリクロロエタンというのは特定物質に指定されているオゾン破壊物質なんですが、トリクロロエチレンはそうではないと。これは中毒症状などを持っている、むしろ毒性の方が問題になっているらしいんですが、ご本人はそういうこともよく知らないで、どっちが安いかということで使っているわけですね。そういう中身も含めて、やはり実態どういうふうに使われていて、そこに何の対策が打たれる必要があるのか、もっと情報が提供されなきゃならないでしょうし、じゃあ、具体的に、それを揮発しないように回収できるような装置を導入してはどうかとか、そういう点で、東京都はこういう業者の方に対する、こうした洗浄用のフロンまたは特定物質の回収支援策についてはどのような方法をとっていらっしゃるんでしょうか。
◯長沼参事 ただいま、大田区での中小企業の実情をお伺いいたしました。中小企業関係を取り扱っております労働経済局におきまして、現在、代替洗浄剤への転換のための、例えば工業技術センターの技術指導に加えまして、中小企業金融対策として、設備近代化資金や活性化資金等を実施しているところでございます。
◯曽根委員 フロン回収装置を導入するための資金融資というのが、昨年の春から東京都独自の事業としてスタートしたというふうにお聞きして、これは環境保全局の所管じゃないので、労働経済局の方にお聞きしたんですが、ことしの一月十九日までの実績で、六件実現をしていると。総額で一億一千三百五十万の融資なんですが、件数としては極めて少ないというふうに担当の方はおっしゃってました。何で少ないのかというと、PRが足りないんだというふうに担当の方はおっしゃるんですが、私がお尋ねした大田区の業者の方も、この制度があることは知っていたんですけれども、とにかく今融資が受けられるような状況じゃないと。先ほど、別の分野でお話がありましたが、とってもそんな余裕がないというようなお話だったんですね。
ですから、こういう業者の方に対して、実効ある支援策をこれから考えていかなければならない。来年の使用禁止になるまで、目いっぱい使って、空中にどんどん飛んでいくというような事態がないように、東京都としても対策を急いでもらいたいと思います。
それで、最後に、フロン対策の取り組みの体制なんですが、現在、地球環境対策の分科会という形で取り組んでいらっしゃると思うのですけれども、今後の取り組みを進める上での、そういった取り組みの強化の上での体制、その見通しはどうでしょうか。
◯長沼参事 フロン対策の取り組み強化の上での体制の問題でございますが、フロン対策は、本来的には国が全国的な視野に立って、フロン等の回収、再利用のあり方について具体的な方針を明らかにするということが基本だろうというふうに考えます。
都においては、地球環境保全対策を全庁的に推進しているわけでございますが、知事を本部長といたします地球環境保全推進本部におきまして、私ども環境保全局が事務局になっているわけでございますが、その中で、関係各局から成りますフロン問題対策分科会、クリーニングを扱う衛生局あるいは清掃局、ただいまの中小企業関係の労働経済局、私たちの四局で分科会を設置しております。こういう中で、具体的なフロン対策の促進に努力しているつもりでございます。
今後とも、より効果的な運営に努めていきたい、かように考えております。
◯曽根委員 最後に、先ほど、冷媒用フロンの回収、処分の問題、それから今、洗浄用フロンの問題について、それぞれ質問いたしましたが、改めて、東京都が自治体として───国の方針が前提だというお話がありましたが、国の方針の中で自治体の役割も明確になってくる。その中で東京都として当然果たすべき役割、回収、処分についても具体的な役割を負っていく姿勢を決意としてお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
◯長沼参事 先ほど来ご答弁申し上げておりますように、国際的な合意に基づくオゾン層保護対策でございます。本来的にはやはり国が施策の基本的な考え方を明らかにし、その体系化を図るべきであるというふうに考えております。
しかしながら、フロンの使用は、事業活動や多くの都民生活などに密接なかかわりがございます。このようなことから、都といたしましても、この問題の解決に向け十分対応していきたい、こういうふうに思っております。
このような観点から、これまで、庁有車からの冷媒フロンの回収、再利用や、都有施設の空調用冷凍機の更新、冷媒フロンの回収、再利用、あるいは洗浄用フロンの実態調査等々に取り組んでいるところでございます。
今後とも、関係各局と協力いたしまして、一層フロン対策の充実に努力していきたいと考えております。