2004年3月18日文教委員会(大学管理本部予算質疑) 大学人を排除して都立の大学改革などありえない ○曽根委員 それでは、私から、今回予算審議でございますので、今までは改革問題に関連してさまざまな急激な事態とか混乱というのがあって、なかなか予算運営全体に関連しての質疑ができなかったので、今回はトータルにできるだけ予算との絡みで質問もしていきたいと思います。 最初に、都立四大学の今日的な役割や、それから社会的に果たしている業績の評価に関して幾つか質問したいんですけれども、例えば、私は北区におりますので、すぐ近くが保健科学大学で、医療技術短大から保健科学大学になり、私、厚生委員長をやったことがあるので、卒業式にもあいさつしたことがあるんですが、医療分野のOT、PTなども含めた専門家を育てて、それぞれ仕事の面でいうと、今の常勤職が少ない分野で大変厳しい条件ではありますが、非常に熱心に取り組んでいるなという実感を持っております。 保健科学大学は、教養学部の一年間を南大沢に来て通わせて学ばせるということを考えているようですが、私は、単独の大学としても本当に立派に実績も上げていて、統合しなければならない理由は余り見当たらないんじゃないかということを、率直に意見を持っております。 それから、科学技術大学は、先日伺って、一部を除いて大変老朽化した建物の中で、条件厳しい中でも、遺伝子研究などで国際的にもハイレベルな研究が進んでいるということを紹介いただきました。 首都圏を探しても、工業系の単科大学というのは高崎工業大学があるくらいで、本当に貴重な存在だということでした。この点でも、もちろん都立大学との連携などは当然必要ですが、大学として統合しなければならない、どうしてもやむを得ない必然性というのがあるかどうか。この点も私、疑問なんです。 中でも、短期大学の廃止はいうまでもないんですが、都立大学の評価については、大学関係者、それから一般都民、全国、国内外といってもいいと思いますが、大学にかかわる人々の評価と東京都の石原知事や大学管理本部の評価になぜこうも雲泥の違いがあるんだろうか。この評価の違いを引きずったままで、本当にいい大学ができていくんだろうかということ、その点が非常に疑問でありますので、幾つか質問したいと思うんです。 最初に、知事が最初の本会議で取り上げたゴーマンレポートについてお聞きします。 知事は、このゴーマンレポートを紹介しながら、この中のベスト百の中には、日本の主要大学は全然出てこないということで、日本の大学全体についていかにレベルが低いかということをお話になりました。 しかし、私、これも買って読んだんですけれども、確かに、アメリカの大学を中心にずらっとリストがいろんな分野について載っていますが、どうしてこの大学がこの順位なのかという根拠がほとんどこれに書いてないんです。このゴーマンレポートの評価の基準といいますか、指標というものはどういうものなのかということについて、管理本部としてはどう考えているでしょうか。 ○宮下参事 ゴーマンレポートについてでございますが、各大学とその教育プログラムを、学生、教員の質、カリキュラム、授業内容の水準、教授、研究助手の人数、図書館の質など、十八項目に基づいて評価していると聞いております。 ○曽根委員 評価の項目はそういうことらしいんですが、それぞれについて、いわゆる物差しですね。どういう点がレベルが高ければ評価する・・数値化するのか、それとも、いわば権威ある筋からの何らかの評価を下してやるのか。大学ランキング、いろんなのが国内外出ていますが、それぞれやり方があるようですが、ゴーマンレポートについては、信用できないという声が国際的にあるわけですね。 例えば、これは、喜多村和之さんという大学評価の問題を専門に扱っている学者の方ですが、この方が中公新書で、大学は生まれ変われるかということを書いていまして、この方は、やっぱり大学はもう今日の時代では社会的評価は免れない、何らかの社会的評価を受けなければならないと。 とはいうものの、大学の評価というのは非常に難しいという立場から、ゴーマンレポートについては、このゴーマンレポートが一九六七年以来出ているが、これは方法もデータの出所や評価の根拠も示されておらず、その順位もおよそ不自然で、アメリカ国内でも大学評価の専門家から厳しく批判されてきたとしておりまして、ここにアメリカ国内の大学のみならず世界の大学ランキングなるものを載せられているカリキュラム、教授団、総合などという観点、先ほどお話しありましたように点数化して序列化している。 だが一体、大学という多様かつ複雑な組織をどのようにして五・〇を満点とする小刻みな数値に表現できるのか不可解である。計算の方法もさっぱり示されていない。これをつくっているゴーマン氏によると、九八年の第十版でも、十年前に出た八七年度の第六版でも、自分が留学したパリ大学の得点が最高点になっている。十年間一貫して世界第一位がパリ大学だ。非常に恣意的じゃないかという評価があるわけなんですね。 さすがに、ゴーマンレポート、アメリカの学会からたたかれて、しばらく姿を消していたが、最近、これを再刊する有名出版社があらわれた。そこで一斉に教育関係者から憂慮と非難の声が上がった。ところが日本ではいち早くその翻訳書まで出るようになった。私が買ったのはそれなんです。「いかにいかがわしいものであっても、ランキングの妖怪はしぶとく復活をしてくる」というふうに彼は紹介しています。 その中で、「日本の大学の質がいかに低いかの証明にこれを利用、喧伝する人がいると。しかし、世界の大学の組織全体の質を科学的に評価し、しかもこれを序列化するなどということは、よほど限定した資料がない限り不可能であり、そんな評価方法は開発されていないのである。」と書いている。 最近、この大学評価に関する学会も生まれるところだというように聞いていますが、いずれにしてもこれからの大きな課題だと思います。ですから、ゴーマンレポート一つをとって、都立大学を含めて日本の大学をなで切りにするなどということが、いかに乱暴なことかということだと思います。 そのもとで、では国内で、そういう中ではあるけれども、相対的にいえば信頼できる大学評価とは何なのか。私、率直にいえば、余り信頼できるのかなという疑問はありますが、今唯一公的な立場での大学評価で信頼されるに足るといわれているのが、いわゆる大学評価・学位授与機構です。 国の機関であり、問題はいろいろあると思いますが、この大学評価・学位授与機構に、最近、都立大学の先生方が自己評価を申請したというふうに聞いているんですが、管理本部として、これについての結果を聞いているでしょうか。 ○宮下参事 大学学位授与機構によります大学評価についてでございますが、評価結果の公表はまだ行われてございません。予定では三月中には行われると聞いているところでございます。 ○曽根委員 残念ながら、きょうの審議に間に合わないみたいなんですが、しかし何回かのヒアリングがあり、もう事前に、大体内示的には大学の方には評価の内容についておよその概要が示されているようなんです。 それによると、特にすぐれた点の評価として、第一に、教育の実施体制、これは、人文学部などでは、専攻、専門科目など、教育上主要な領域を専任教員が担当しており、非常勤講師依存率が低いこと、専任教員が大学院の授業のみならず、学部の授業も担当しており、年齢構成や出身大学についてもバランスがとれており、特に近年、女性教員の割合が高くなっている点もすぐれていると評価されています。 教育内容の取り組みについても、「少人数を軸とした柔軟なカリキュラムとなっており、演習、実習科目が多く、大学院と学部の共通授業など学問上の刺激を得られることから、問題を把握する能力が向上するなど有益である。共通学部科目が設定され、広範囲にわたる学問を学生に提供し理念を生かすことができるようになっている。」 それから、教育方法及び成績評価面での取り組みでも、「施設の活用の点、それから学生による授業評価の点、そういったことで工夫が見られるほかに、少人数の授業でTA、いわゆるティーチングアシスタントなどを活用するなど、非常にきめ細かい専攻ごとの指導方法がとられていること」、また、「学生による授業評価」の中でも、満足度が非常に高いということがわざわざこれは訪問調査をして確認をしているようです。 修士課程の修了者は博士課程に進学者が多く、博士課程満期取得退学者の多くが研究職に着いており、高い達成度を示しているなどなど、人文学部を中心に非常に高い評価がもう既に大学側に示されてきている。 私は、こういうものが出されてきて、こうした結果を受けて、大学管理本部がなお現都立大学について評価を全く変えずに、全く新しい大学につくりかえてしまうという方針を頑迷に固持するとするならば、本当に東京都民としての知的財産を失うということになりかねないと思います。 実業界の評価として、「週刊ダイヤモンド」も私、昨年末紹介しました。受験関係者の声もいろいろ聞いてきましたが、受験倍率に示されるように、都立大学は受験界からも非常に期待が高く、信頼が高い大学です。あらゆる面から見て、都立大学を解体し、全く新しい大学、学部に構成し直さなきやならない必然性は私ほとんど見当たらないと思います。 このことを申し上げておきます。 もう一つ、先ほどもありましたが、就職の問題についても、実は、三年前、私、文教委員になるちょっと前に、決算委員会で、就職支援の充実をということで、都立大学の決算のときに質問したことがあります。 そのとき、当時、二村次長でしたが、お答えの中で、就職の体制、充実の努力をしているというお話がありました。現在、都立大学の事務職員が何名いて、そのうち就職専任の職員数は何人でしょうか。 ○大村参事 現在、都立大学の事務局の職員につきましては、一般職員百二十五名、技能系、技術系も含めまして、事務職員については百九名でございます。 就職の関係でございますけれども、都立大学では、学生課長のもと、専任の担当係長と係員一名を置いて対応してございます。 なお、ほかの三大学、科技大、保健科学大学、短大につきましては、分掌事務の一つとして、係単位で対応をしてございます。 ○曽根委員 数千名の学生がいる大学で、事務職ももともと少ないんですけれども、中で就職支援の仕事を専任に持っている人は、係長とあと職員一名、二人しかいないんですよ。 しかもこれは、私、読み返してみてびっくりしたんですが、二〇〇〇年度、私が前に質問したとき、二〇〇〇年度には就職担当係長一名に二名をふやしまして、三名体制としたというふうに答えているんですよ。このときは既に大学改革の基本方針が出た直後だと思います。 その夏の選挙の後に私、文教委員になって、その年の秋に大学大綱が出たんですね。だから、このときに三名にふやしたのを、その後大学改革の取り組みの中で二名に減らしているわけです、都立大学は。そうですよね。これあのときの議事録で三名とはっきり答えているんです、次長。それで、就職が把握されていないとか、就職率が悪い責任をあたかも大学の先生たちの責任のようにいっておいて、一万人近い学生がいる大学で二人しか職員を置かないんですよ。どうやって統計とるんですか。大変じゃないですか。 そこで私は、ほかの大学に聞いてみましたよ。 私立大学は、例えば、日大でいうと五十三人職員がいる。もちろん大学の規模が大きいですから、都立大学に縮尺合わせてみても、恐らく十人以上の職員がいてもおかしくないわけです。各学部に一人か二人、多いところでは五、六人の体制を置いている。学部ごとに就職担当の職員を置いているという話でした。 大体ほかの私立大学も似たり寄ったり、数十名の単位で職員を置いていますよ。就職の率を高めるということが大学の一つの評価になっています、確かに。ですから重視しているんですよ、職員の上でも。 それから大阪の大学、聞いたんですけれども大阪府立大学も、少ないですけれども、都立大学よりは多い三名でした。本当に都立大学の二名というのは、先生たちに就職の援助をしていないとかなんとかいう前に、自分たちの責任でできることをやりなさいと私はいいたい。 それでは、例えば、学部の先生たちが学生の就職について何も援助してないのか、把握していないのか・・・。とんでもない話で、私、人文学部について一番いわれているので、お聞きしてみました。 そしたら、学部生、院生を含めて、毎年先生のゼミがあって、そこで学生、院生が年間通じて指導を受けますね、卒論も書くと。卒業した後まで含めて、そのゼミを卒業した人たちを呼んで、年に一回は合宿ゼミをやるとか、そういう形でつながりを持っている先生が、例えば人文でいえば半分くらいいるそうです。 そうでなくても就職口、文科系はなかなか大変ですから、まずは、講師や非常勤講師だとか、教えるというキャリアを積ませるために、いろんな口が来たら、どの学生をどこにはめ込んだらいいかといろいろ苦労して、キャリアをつけさせてやる。そうしないまま卒業してしまうとなかなか就職が難しいということで、苦労して各先生方はやっているそうです。 問題は、そういう先生方が苦労して、もう人脈ができていて、生涯大体おつき合いをするという関係が学生との間ではできているのに、そういうことについて大学側で何も.集約をする仕組みがないということですよ。二人しかいないんですから。 ここのところが最大の問題であって、私は、どんな形にせよ大学が改革されていく以上、学生の就職問題というのは今社会的に大きな課題ですから、休制の充実を図っていく必要があるということを申し上げておきたいと思うんです。 それから、これから都立大学を含めて四大学を統合し、新しい大学をつくっていこうとしているわけですが、その上で幾つか重大な問題が残されているのでお聞きします。 まず一番はっきりさせなければならないのは、大学院構想がいまだに出ていないという問題です。大学院構想については、いつまでに構想を具体化するのか。新大学の申請は恐らく間もなくやると思うんですが、新大学における大学院の構想がないまま申請をすることになるんでしょうか。 ○大村参事 大学院の構想のお話に入ります前に、就職の問題につきましては、先ほどは常勤職員の体制だけを申し上げましたけれども、非常勤の相談員また実際に先に就職を決めた先輩の学生が後輩を指導する体制なども進めていること、また、都立大学では、各教員の方による就職支援委員会などもつくって今支援体制をやっていただいているということで、就職について徐々に先生方も含めて体制はとっているということでございますけれども、新大学ではなお一層トータルな体制でやっていきたいというふうに考えてございます。 なお、大学院構想についてでございますけれども、平成十七年にスタートいたします首都大学東京の大学院につきましては、現都立の三大学の大学院構成をもとに十七年の大学院として設置をいたしますが、新しい大学の理念に基づいた新たな構成による大学院については、平成十八年度にスタートするために、現在、大学院検討ワーキングを設置したところでございます。 これによりまして、十七年度の関学のための申請については、現在の都立の三大学の大学院構成をもとにした形で申請をさせていただくという形でございます。 これにつきましては、平成十七年度に新大学の学部に入学した学生が大学院課程に進学するのは、基本的には四年後の平成二十一年度からであること、また、現夜の部立の三大学につきましては、大学院も含めまして、平成二十二年度まで存在するということから、特段の支障はないというふうに考えてございます。 ○曽根委員 特段の支障がないどころか、私、大学受験をする人ももちろんですし、それから何といっても今大学院にいる、これから大学院を受けて大学院に進もうとしている人たちにとっては、来年度はとりあえず今の形で新大学になると仮定しても、その後には新しい大学院構想が待っているということになりますので、それがどうなるのかということは、都立大を受けるような学生の多くが専門の学問を進めたいという人で占めているわけですので、関心がないはずがありません。 それをわからないまま受験しなければならないということになります。新大学を受ける受験生についても同じです。したがって、この問題は、ちゃんと立派な構想がつくれるんであれば、早くつくるのが当たり前だと思うんす。 その点で、私は、新大学について、今の学生や院生の声を聞く気がないような先日の答弁がありましたが、とんでもない話で、今の人文や化学や生物、科学などの学生、院生の方々から、新大学発足後の大学院生の研究環境に対する保障の要望が出ていて、詳しく自分たちの希望などが書かれたレポートが出ていまして、これは当然本部に行っているはずなんです。 今の院生が大学の今後のあり方について、どういう不安、一意見を持っているかということも、院生同士・・休学者もいますし、留学をしている人もいますので、なかなか大変だと思いますが、苦労して半分近い方々の声を集めて、こういうアンケートもやっています。 こういうものは余りいい答えないでしょうけれども、本当にちゃんと当事者の声を生かさないと大学だってできないはずなんで、生かすよう強く求めておきたいと思うんです。 しかも、ワーキンググループの話がありましたが、この中には、今ある学部のうち、いわば大学本部のいうことを聞く学部長しか入れてないという非常に姑息なことをやっているんですよ、メンバーについても。 こういう公平性を欠いたやり方というのは、私、幾ら立場が違っても、本当に子どもじゃないんですから、そんな非民主的なやり方やめなさいといいたいです。意見が違う人同士が議論しなければいいものできないじゃないですか。 こういう状態だから、私、大学院の入試が倍率下がっているのはそのせいだと思うんですね。特に人文は先生が減らされるということがもう新構想ではっきりしていますので、今年度まで二・九倍あったのが、今一・七倍で半分近くに減っているわけですね。 こういう点でも、私は、都立大学は大学院大学というふうに銘打って、学生が将来の学問の振興に非常に学問的刺激も受けられるという大学院の充実という意味でも、社会的責献という研究の深さという意味でも、それから研究者を育て送り出すという面でも、非常に大学院大学として重要な役割を果たしている、この成果を台無しにしてはならないということを強く申し上げておきたいと思うんです。 それから、もう一つ、これはちょっと別な話になりますが、今度の大学構想をつくるに当たって、知事はもちろんですが、恐らく管理本部が参考にしたんじゃないかなと思うんですけれども、九九年に知事の私的な研究機関である一橋総研がこの都立大学について調査して、大学改革の提言というのを出しているんですね。ホームページにも出ていますが、この中では今の大学構想に非常に近い内容のものがかなり盛り込まれています。九九年にわざわざ都立大学を訪ねて調査をしたというふうにそこに書いてあるんですね。 当時、都立大学事務局に大村さんなどもおられたと思うんですけれども、一橋総研からどういう接触があり、どういう調査をされ、またどういう大学側からの話があったんでしようか。 ○大村参事 一九九九年、平成十一年から十二年度にかけて、私、都立大学事務局の方におりましたけれども、一橋総研と都立大学は接触したということについては承知してございません。 ○曽根委員 しかし、ホームページにはっきり都立大に調査に行ったと書いてあるんですよ。もし大村さんさえ当時総務課長の大村さんが知らないということになると、要するに施設を見学しただけかなというふうに勝手に想像するしかないんですけれども、とはいうものの、非常に細かく都立大の今後のあり方について提言しているんですね。 その中身は、やっぱり実業重視、産業界にこたえる内容ということですよ、徹底して。 そういう点では今の新大学構想に非常に近いものです。 その中で、今の都立大の大学院の最も特徴だと私思うのは、都市研究所のあり方で、大学院の一つの学科を含みながらも全都立大学に門戸を広げて、論文や研究を集めて、都市問題という一つの範疇の中でさまざまな研究を経年的に行っていく。他大学からの協力も得るというふうなあり方ですね。 これは、前回見直しという話がありましたが、私、改めて重要な研究所としてのあり方だということを強調したいと思うんです。 しかも、私も随分活用させてもらっているんですが、あそこは、都市研究所としての研究論文の報告と、既に二十冊くらいになると思うんですが、都市ライブラリーということで、一般の都民や行政マンやそういう方々が活用できるテーマ別の冊子も発行しているわけですね。 こうした重要な発行物、そして大学関係者だけじゃなくて、広く都民に向けての本として出されているもの、こういうものはぜひ残すべきと思うんですが、見直しの中でどういうふうに考えているんでしょうか。 ○大村参事 今度の新しい首都大学東京は、大都市における人間社会の理想像の追求ということを使命としてございまして、これまで、都立大学の都市研究所で取り組んできた都市問題も含めまして、大都市のいろいろな課題を解決していくための教育研究を、複合的な視点から、大学全体を東京という大都市のシンクタンクとして役立たせていきたいというふうに考えてございます。 そういう意味で、大学全体として、それらの研究報告についてどういうような形でやっていくかということについては、これからでございまして、新大学で必要に応じていろいろな冊子とか物を発行していくことになろうと思いますけれども、具体的にはこれから検討してまいります。 ○曽根委員 確かに都立大学で、都民や議会にいる者が接することができるというのはわずかの部分だと思います。 ほとんどが研究論文で専門家の中で活用されるんだと思いますよ。 しかし、それにしても、まだ十分とはいえないかもしれないけれども、私たちが都立大学の成果を知ることができる貴重な出版物について、ここよりも後退するようなことがあったら、やっぱり新大学のあり方の方向としては私はまずいということを指摘しておきたいと思うんです。 新大学での教員の身分の話がさっきありまして、大学構想と教員の身分にかかわって、一番わかりやすい話だなと思ったのは、システムデザイン学部ですか、ここは新設されるので、教授、准教授、いわゆる助教授ですね、九ポストを公募したというふうなことで、結果が新聞には出たんですが、私たちには知らされておりませんが、この公募の結果はどうだったんでしょうか。倍率、その他教えてください。 ○大村参事 大学の公募の状況やその倍率につきましては、応募者のプライバシー等の観点から、人事情報としては公開してございません。新聞になぜ出ているのかはよくわかりませんけれども、これにつきましては、他の国公立大学につきましても同様でございまして、倍率としてどうだということについては、特に比較はできるものではございません。 ○曽根委員 倍率を発表することがプライバシーに何かひっかかると思いますか、大村さん。 ○大村参事 応募倍率の状況によっては、だれが応募したかというのは全国的にその分野で見ればわかるというふうな状況もございますし、そういう意味では応募倍率、あるいはだれがその審査をするかというのも含めまして、公開しないというのが人事情報としての、教育界の中でもなっているということを聞いております。 ○曽根委員 今お答えのあるとおりなんですよね、事態は。 一般的にいうと、国公立大学で新ポスト、しかも教授ですからね。教授、助教授のポストを公募するというんですから、百倍、二百倍は当たり前の世界なんです。 だから、それくらいに倍率が高ければ、どこから応募したかなんていうのは問題にならないんですが、今回は平均六倍。 ヒューマンメカトロニクスシステムコースといういわゆるロボット専攻が一人しか応募がなかった。倍率なかったんですよね、競争が。 こうなると、本当にどこのだれが応募したのかなってわかっちゃうかもしれない。確かにその方の名誉にかかわるというようなことになるかもしれませんが、私、そういうような倍率に甘んじなければならないという学部のあり方や、全国のそういうことを目指している方々に対するアピールがいかに悪いかということだと思います。 これは皆さんがいかにこれがすばらしいものだと宣伝しても、周りから見る目は客観的に見られるわけなので、第三者の評価はこういうものだということを肝に銘じておいてほしいんです。 それがまた公表できないといったって、新しく大学をもし発足すれば、当然その学科の担当教諭というのは名前が出るわけですから、隠しても意味がないことであって、私こういうふうな、例えばそれに応募した人が、仮にシステムデザイン学部のこの学科の理念に共鳴して来た人だとしても、その方のレベルや、何であんた一人しか応募しなかったんだみたいなことがその方の名誉を傷つけることのないようにするのは、あなた方の責任なんですよ。そうですよね。したがって、こういう不名誉なポストになってしまうような学部のつくり方自体を私は問題にしたいと思います。 それで、あと、これからの新大学への移行の問題にいきたいと思うんですが、意思確認書の提出数については先ほどお話がありました。 意思確認書を提出したけれども、それについて全面的に了承したわけじゃないという条件を付した方がいるというふうに聞いているんですが、三百一人の提出者の中で何人くらい条件を付した方がおられるんですか。 ○大村参事 意思確認書三百一人の提出者の中で九人ほどの方につきましては、いろいろ学部の希望その他について書いてございます。なお、保留というふうな形で書いてある方については、これについては受理してございませんので、三百一人の数字の中には入ってございません。 ○曽根委員 一定数の条件つきの方も含めて三百一人と。都立大は恐らく過半数にいっていないんじゃないでしょうかね。こういう膨大な未提出者が残されているわけです。この未提出者の扱いについては、先ほどちょっと仕切りというふうなお話がありました。改めてお聞きしますが、未提出者についての扱いについてはどのような方針でいくつもりですか。 ○大村参事 首都大学東京をつくるに当たりましては、新大学の設計に前向きな姿勢で取り組みまして、期限を守って提出いただいた先生方とともに首都大学東京をつくっていくものでございまして、その他の先生に対しては同様の取り扱いを行うことはできません。 未提出者の扱いでございますけれども、その内容は、現在も提出のない人、また三月に入っておくれて出してきた方など、いろいろ状況がございます。おくれて出してきたけれども、新大学の準備を阻害する中心的な役割を果たしてきた人など、いろいろございますけれども、新大学参加の前提といたしましては、社会的、道義的責任をわきまえた対応を求めているところでございまして、そのような意味でも、おくれてきた方には仕切りが必要であるというような形で考えてございます。 ○曽根委員 未提出者の大多数は、第一に、確認書には法的拘束力はないということははっきりしていますし、強制されるものではないし、新大学への移行の法的条件にはならないこと、第二に、教員に意思を問う前に、新大学構想の発表や具体化の横暴なやり方を正すべきであること、第三に、自分の新大学での身分や担当学科などについてまともな情報のないまま判断はできないことなど、また第四に、大学院構想を初め新大学の重要な骨格さえまだ決まっていないことなど、全く正当な理由から、七月の正式な意向確認のはるか以前の現段階での意思確認は筋違いだとして提出していないわけです。 私、当然の理由だと思います。 都立大学では、過半数に及ぶそうそうたる教員の方がそうした立場を貫いています。 それでも、出さなければ新大学に受け入れないというのであれば、管理本部は教員採用について、教員の教育や研究の業績よりも、管理本部のやり方、知事のやり方に従うのかどうかを事実上の踏み絵にすることになります。それでいいんでしょうか。 ○大村参事 首都大学東京という新しい理念の大学をつくっていくわけでございますので、この新大学の理念に向けまして改革に前向きに取り組む先生方を尊重するのは当然でございまして、そういうふうな意味では、早く意思を表明し、そして改革に賛同された先生を中心に大学をつくつていくのは当然であるというふうに考えてございます。 ○曽根委員 そういうことをやっていると、都民に魅力ある大学とか都市の未来を切り開く人材を育てるなどといっても、今の都政に合わせて何でもいいなりの大学づくりにしかなりません。しかも、もっとひどいと思うのは、来年度の都立大学−−−まだ都立大学なんですが、などの研究予算の配分を今までと大きく変えようとしていることです。 いただいた資料の二四ページにありますが、都立大学における研究奨励費ですか、いわゆる東京都の出す研究予算ですが、これの配分については今までのやり方とどのように変えるのでしようか。 ○宮下参事 来年度の研究費の配分につきましては、十七年度四月から今ある四つの都立大学が一つの大学になるということもありまして、その前段といたしまして、今各大学でそれぞれ異なっている研究費配分の対象あるいは単価というものを統一していく必要があろうということで、研究費を基本的研究費と傾斜的配分経費に区分して配分を行うということにいたしました。 基本的研究費は、教員一人当たりの各大学共通単価を設定してございまして、本都議会で予算が通りました暁には、直ちに第一次配分をいたしたいというふうに考えてございます。 それから、傾斜的配分研究費につきましては、配分方法などについて引き続き検討しておりまして、方針が固まり次第各大学へ配分する予定でございます。 ○曽根委員 基本配分と傾斜配分に分けるだけじゃなくて、この書かれているのを見ますと、まず、今年度単価に一〇%シーリングをかけるわけですよね。まず一割減らすわけですね、予算全体を。 さらに、二〇%を傾斜分としてよけて、あとを基本配分する。 そうすると、基本配分だけになってしまう学科というのは今年度に比べて極端に下がるところが出てきます。 今でも確かに研究奨励費以外に都立大学の場合などでは総長特別予算というのがあって、もちろん総長が決めるんじゃなくて、これは集団的に教授会などで検討するんですが、一割程度の傾斜がつくというものがあるらしいです。 しかし、それはなしにして、二割を傾斜配分を今の研究の全体のプールの中からよけてやるわけなので、総長の特別配分を受けたり、それから外部資金など、頑張っている学科ほど、もしこの基本配分しかうけられないとすると、本当に雑誌を買ったらおしまいということになりかねない。半分くらいに減ってしまうというところも出てくるそうです。 私は、これはやりようによっては、いうことを聞かない教員を研究費で締めつけるつもりじゃないかと思うんですが、この傾斜配分はだれが決めるんですか。 ○宮下参事 傾斜的配分研究費の基本的な考え方は、研究をより活性化させようという趣旨から、従前よりも二〇%そちらの方に、傾斜的配分経費をふやしたということでございます。 だれが決めるかということでございますが、研究計画等を審査いたしまして、研究費を配分する検討委員会を設けまして、その判断のもとに傾斜的研究費配分を、研究費を配分してまいりたい、このように考えております。 ○曽根委員 その検討会のメンバーの中には、今の都立大の組織とは別であるはずの新学長予定者、新理事長予定者も入っているんでしょう。どうなんですか。 ○宮下参事 その委員会のメンバー等につきましては、経営準備室会議に諮りまして今後検討してまいりたい、このように考えております。 ○曽根委員 入っているんですよ。だから、自分のいうことを聞かないところには研究費出さんぞという姿勢がもう来年度の都立大のところから始まろうとしているんだ。 こんなやり方で一体本当にまともな大学をつくる気があるのかと根本から疑わしくなるわけです。 だからこそ、もう大学内外から今の管理本部と知事のやり方に抗議が殺到しているわけです。 私、本当に深刻だと思うのは、私たち共産党などとは立場はかなり違うと思いますが、経済学のグループが独自の声明を出しましたよね、一月十四日。 この経済学のグループは、二十一世紀COEプログラムの選択にも入った非常に優秀な方々ですよね。それから最近は、都立大学の名誉教授で健在の方のうち、回答を寄せた九割が、もっとまともな方法で改革をやってくれという共同声明を出しています。こういう声を管理本部ではどう受けとめているんでしょうか。 ○大村参事 まず、一月十四日の都立大学経済学轡近代経済学グループ一同の声明につきましては、この中では、研究機関としての大学の視点の欠如とか研究面を軽視した改革というふうなことのお話と、設立準備の問題と二つされてございます。 この研究面につきまして申し上げますと、大学の核となるべき研究面が軽視されているというふうなことをいわれてございますが、そのようなつもりは毛頭ございません。ただ、研究だけを重視するということもおかしいのでございまして、研究機関としての大学ということでは、研究所ではないので、やはり教育と研究が一体となって進めるべきものではないかというふうに考えてございます。そういう意味でも、新しい大学の大学院設置に当たっての基本理念でも、基礎研究だけに閉じこもらず、常に現場を意識し、よく問題をつかまえて社会のニーズに対応した研究を行う、実用、実践から学術大系を創造する、地場優先ということを意識し、産学連携を初めとする社会責献に取り組むということで、学長予定者の方から基本理念のメッセージが出ているとごろでございます。 それから、三月十五日に都立大学名誉教授百二十二名の方がお出しになった共同声明というものでございますけれども、この中では、手続穏当を欠く、内容についても不明確な点が多いというふうなことをおっしゃってございます。手続穏当を欠くといわれてございますけれども、現在、都立大学の教員の方も含めました教学準備委員会、経営準備室の方で新大学についていろいろ協議をして進めているところでございまして、穏当を欠くということはない。また、内容についても順次詰めてございますので、そういうふうなことはないと思ってございます。 なお、この名誉教授の方がいらっしやった時代、昭和の時代、平成の初期にかけましては、大学にとってはある意味でいい時代でございました。ただ、これからは既に大学の定員と入学希望者の数が逆転するという全入時代になって、大学も厳しい時代になってございまして、国立、私立も含めていろいろ改革を進めなきゃいけない時期になったということですので、ぜひその辺もご理解いただければというふうに考えてございます。 ○宮下参事 先ほど研究費の配分について少し誤解があると思いますので、もう少し説明させていただきますが、現在、新しい大学でどのように研究費を配分するかということで、これは経営準備の事項になるわけですが、十六年度については今の大学でございますので、経営準備室のメンバーが十六年度の研究費配分委員会というのを兼ねまして検討をしているところでございます。 それで、具体的な、どの研究にどう配分するかということについては、方針等はこの研究費配分委員会で検討いたしますが、それをどこにどう配分するかというのは、専門性的な見地からの検討も必要ですので、さらに具体的な、仮称でございますが、研究費配分検討委員会のようなものを立ち上げて、そこで決めてまいりたい、このように考えております。 ○曽根委員 経営準備委員会には学長予定者、理事長予定者は入っていますよね。 そのもとに小委員会的なものをつくるんでしょうけれども、大もとの権限がそっちにあることははっきりしている、細かいことはいろいろあるでしょうけれども。 私は、今OBの方、名誉教授の方々について、その時代はよかったんだというお話がありましたが、現在都立大学で頑張っている人も全く同じように、これからの大学のあり方について、時代に合うというんだったら、それは合わせていく改革は大いに必要なんだけれども、全く見当違いの方向に大学が解体され、変質されようとしているからこそ、皆さん怒りを持っているわけです。 今確認書未提出者の中には、人文学部も再三紹介をしてきましたが、理学部でも石原知事が視察にまで行った植物研究の世界的権威の教授だとか、化学でも外部の研究費を最も多く獲得している教授などが先頭に立って、今の大学改革のあり方について意見をいって、確認書を出さないで、やり方の見直しを求めているわけです。 こういう方々を都立大から失うことになるわけです、このままでは。 これでは本当に都民からも、国民からも、世界からも選ばれない大学になってしまう。ぼろぼろの大学になってしまいます。 そういう点で、今自分の業績に誇りを持っているからこそ、政治権力の勝手な学問分野への介入を許さないと思う大学人らしい大学人の声を正面から受けとめて、来年度予算についても、改革の方向についても再検討をしていくということが今管理本部に根本から問われているということを改めて強調して、質問を終わりたいと思います。 以上です。 |