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2002年3月18日文教委員会の質疑

都立の大学改革のあるべき方向を解明
議論をオープンに・教職員、学生、都民の意見を聞く場を持て
短期間で3回もの学費値上げは許せない

◯曽根委員 私から最初に、大学改革大綱に基づくその後の具体化の問題、それから、先ほどもありましたが、授業料の問題についても触れたいと思います。
 前回、たしか十二月の文教委員会で大学改革大綱の報告がありまして、私も質問いたしました。そこで、大きくいうと四点の内容でただしたつもりです。
 一つは、改革の検討経過が極めて性急で、諮問会議などをつくっていろんな意見を聞く形はとりながらも、大事なことは全部、ほとんど本部の内部でつくってきたこと。
 それから二つ目に、法人化の仕組みについては、国よりもさらに踏み込んで、学長とは別に、知事任命の法人の長を置き、事実上財政権、運営権を知事サイドが握って大学運営をコントロールするこういう露骨な大学介入の仕組みになっているということ。
 三つ目に、研究教育費の配分が、経済界の要求にこたえて、もうかる研究ということに重点が置かれ、基礎研究や社会的意義は大きくても企業利益になりにくい研究は冷遇される仕組みとなる危険があること。
 そして四点目に、都立大学の特色であり、学生から大変喜ばれているB類、そして短期大学の廃止を含めて、教職員の大幅削減を計画し、かつまた公務員資格を外して身分を不安定にする可能性が高いことなどについてそれぞれただしてきました。
 以上のことから、改革大綱に基づく路線は、これまでの大学の自治、学問研究の自由を乱暴に破壊するものとして、白紙撤回と抜本見直しを求めてきたところです。しかし、その後も本部は法人化の検討会をつくって、さらに具体化を進めております。
 その中身について資料をお願いしましたが、この委員会に出された資料は、四ページにあるような全くの概要程度であり、何が論議されているかも一切報告がないというものです。これじゃ、日程がわかるだけということですよね。私は少なくとも、第一回から四回までは開かれているのですから、この検討会で何を論議したか、目次ぐらいは出してもらってもいいのじゃないかと思うし、事前のすり合わせのときにはそれぐらいを出せるような話だったと思うのですが、このことも含めて、何でこの程度の資料しか我々には出せないのか、ちょっとお聞きしたいと思うんです。


◯佐藤改革推進担当部長 今回の資料にお示ししましたとおり、現在、大学と我々大学管理本部の中で、大学の法人化につきまして基礎的な検討を行っているところでございます。我々といたしましては、基礎的な検討を整理した段階で、それらについての資料を明らかにしていきたい、そういうふうに考えております。


◯曽根委員 これじゃ、その後の具体化について我々論議のしようがないんですけれども、年度末に向けて、とにかく結論を急ぐというあせりといいますか、性急さというのが目立つわけです。これまでと同じです。あたかも国の法人化におくれをとるなと強制するような印象があります。議会にも、全くといっていいほど資料を出さない秘密主義も続いています。私はこのやり方では、開かれた大学づくりなどはできるはずがないと思います。
 その一方で、国の大学法人化の検討は、きょうそれも資料をいただいたのですが、まだ都立大学の大綱に比べても形がはっきりしない。したがって、私は、都の大綱に基づく改革の動きとまるで並行しているというよりは、おくれて引きずられるように進んでいる国の方の法人化の検討との関係で、近い将来そごを生じるのではないかという危険を感じます。
 それは、都立大学を含めて公立大学の法人化というのは、私たちはこれについては反対ですけれども、少なくとも国の法律ができなければ、できないわけです。国の法律がどうなるかが決まっていない、まだ形も見えないのに、東京都の法人化構想がどんどん固まっていって、大きな食い違いが出たらどうするのかということになります。
 それで、国の法人化の検討状況、一体いつ法律が出されて、どうなるのか。都はどういう見通しを持っているのか。それとの関係で、東京都の法人化の検討というのは、全く調整せずに進んでいくつもりなのか、この点をお聞きしておきたいと思うんです。


◯佐藤改革推進担当部長 国立大学の法人化に関する法整備につきましては、今年度中に文部科学省の調査検討会議から、新しい国立大学法人像について最終報告が出される予定になっておりまして、それを受けて、国では平成十六年度の法人化を目指して、十五年の通常国会での成立に向けた準備が進められていくというふうに聞いております。
 公立大学につきましても、同時ではないにしても、大きくおくれることがないよう、法整備が進められることになると理解をしているところでございます。
 私どもの検討に当たりましても、この国の法整備の状況については十分情報を得て、注視しながら検討を進めていく所存でございます。


◯曽根委員 国と調整なしにはできないということは間違いありません。しかし、既に法人化のあり方については、大綱に示された考え方と国とでは幾つか大きな食い違いが出ていると思うのですが、都の方では、その食い違っている点についてはどう認識されていますか。


◯佐藤改革推進担当部長 東京都の改革大綱では、大学法人の経営にできる限り民間の経営感覚を導入する観点から、経営部門と教育研究部門の役割を区分をいたしまして、それぞれの責任の所在を明確にするとともに、学長は教育研究部門で選考をし、法人の長は知事が選任する方向で検討するというふうにしております。
 これに対しまして、国立大学の法人化の案では、法人化後の経営と教学の一体性を重視をいたしまして、学長を経営と教学双方の責任者とするとしております。
 また、教職員の身分につきましては、都では大綱で、特に非公務員型の制度について積極的な検討を行うとしております。
 国立大学の法人化の最終報告案では、法人化のメリットを最大限に生かし、弾力的で多様な人事制度を実現する観点から、教職員の身分は非公務員型を選択としております。
 都といたしましては、現在検討中でございまして、身分関係について最終的結論を得ておりませんが、仮に同じ非公務員型となったとしても、その具体的な任用形態、勤務条件の面では異なることもあり得ると、このように考えております。


◯曽根委員 教職員の身分の問題は、まだちょっとこれから先のようですが、少なくとも教育研究と経営の責任者を分離するという都の考え方だけでも、国とのいわば法人化の根本が違うといわざるを得ないと思うんです。私、なぜここにこだわるかといいますと、今都立の各大学で、大学内に非常に切迫した不安といいますか、うわさというか、情報というか、流れているというふうに私たちに聞こえてくるからです。
 都の大学法人化検討会に資料を要求すると、我々にはこれしか出てこないのだけども、大学内では既にかなり具体的な検討会の資料や記録などが示されていて、教職員の間ではほとんど知られている、そこからもいろんなうわさや情報が飛び交っているというふうに聞いているのですが、この検討会の中身については、大学の方に対する公開はどうなっているのでしょうか。


◯佐藤改革推進担当部長 現在、大学教員と我々行政から成る大学改革推進会議の幹事会のもとに、各大学から推薦をされました教員と事務局で構成する法人化小委員会を設けまして、主に運営、組織のあり方、それから人事制度のあり方などを中心といたしまして、法人化の実現に向けた課題を整理している状況でございます。
 大学内に対しましては、小委員会で出しました資料はできる限りオープンにする、そして大学教員の意見を、推薦されたその小委員会構成メンバーを通じて検討の場に上げてくるという考え方をとっておりまして、小委員会の資料を学内での議論に供しているということでございます。


◯曽根委員 各大学で教職員の方々、関係者の方には事実上オープンになっているわけですよね。ですから、少なくとも私たちにも、この大学問題を都議会として真剣に議論していくための、少なくとも必要最小限の資料として、大学側に公開しているものを──こっちにはこれじゃあ、余りにも秘密主義じゃないかというふうに思うんで、また後でちょっといいますけど、それはお願いしておきたいと思います。
 それで、いろんな議論がされている中で、共通して各大学で出ているのは、都の考えている法人化の構想では、大学の将来に希望が持てないという非常に強い不信感があって、教員にとっては、国立大学の法人化された、もしされればその後よりも、都立大学の法人化の方が、教育研究者にとって環境はどうも悪そうだ、条件も厳しそうだという声が強いことなんです。これは、非常にこれから教育研究者は流動化していきますから、私は重大な問題だと思うんです。
 したがって、これは、都の方でそういう声が出ていることをつかんでいるかどうか。そして、つかんでいれば、何が原因でこういう不安や声が出ているかという点を、ご認識をお聞きしたいと思うんです。


◯佐藤改革推進担当部長 東京都が進めております大学改革は、教育の中でも、とりわけ教養教育の重視や多様な履修システムの導入など、学生にとって魅力的な教育の場を提供しようとするための改革を目指しております。
 また、教員の業績を適切に反映した給与制度の導入など、教員に教育研究活動へのインセンティブを付与していこうと、そういうふうなものとなっていると考えております。
 これらにつきましては、十分に学内に今後もその趣旨を浸透させていきたいと思っておりますが、さらに今後の検討に当たりましては、学生、教員にとって魅力ある大学づくりという観点から、具体的な制度設計を行っていきたいというふうに考えております。


◯曽根委員 前半にお答えになった抽象的な話は、国だって出ているんですよね。どっちも同じような不安があるわけです。だから、国立の方がいいとか都立の方がいいとかいう話には必ずしもならないんです。
 私が聞いた話はもっと具体的で、法人化の検討会の中で、東京都の本部の方が来て、もう都の予算はふえませんよと、大学予算はこれから景気が相当よくならない限りはふえないと。マイナスシーリングでずうっといくんだと、一〇%のマイナスシーリングがかかっているんだと。教職員も二〇%ぐらい減らしますよと。それでお金が足りない分は、外部資金でとってくるんですよ、この制度は。そういうふうにもうきっぱりとおっしゃったと。
 そうすると、じゃ、まだ国の方がはっきりしないわけですから、東京都の方は相当、都が出すお金を絞ってくるようだと。いろいろそれはそれぞれ大学で外部資金導入は工夫はするだろうけれども、もとの東京都が税金をきちんと必要に応じてつぎ込んで大学を支えていこうというところが、どんどん細ってきそうだと。教職員の身分も、もうわからない。ここが具体的な不安となっているようなんですけど、そういうお話をやっぱり検討会でされているのじゃないでしょうか。いかがでしょうか。


◯佐藤改革推進担当部長 検討会におきましては、大学が従来のままの教育、研究環境にはないということで、都全体の厳しい財政運営状況、これに無縁であるとはいえないということを、教員との検討の中ではこちら側も申しております。
 しかしながら、我々が大学を改革する意図は、今まで社会に対して閉ざされてきた大学運営というものを社会に適合させていくという観点からすれば、さまざまな経営努力を今後していかなければならないというようなところもあわせて申し上げております。


◯曽根委員 前半おっしゃったことが、かなり露骨に示されたために、相当やはり大学の内部での不安が広がっている。後半いわれたことは、それは大義名分として、大綱の路線ですよね。
 私、きれいごとはいろいろいえると思うんです。看板も掲げられるでしょう。しかし、そんなにいろいろ名目や目標と麗々しく掲げることはできても、結局のところ、改革の結果、教員の人たちにとって魅力のある大学になるのかどうか、学生の人たちにとって魅力のある大学なのかどうか。いい研究者が集まらなければ、結局学生の側も、いい研究者を慕って集まってくる大学生が減ってくるわけですから、そこが判断されるわけですよね。これから選ばれるわけです、大学は。公立大学でも全部。そのときに、幾らきれいごとをいっていても、中身が魅力がなければみんな去っていくわけです。
 私が聞いたところ、既に都立大学や科学技術大学で非常に優秀な先生が、これは偶然だとおっしゃるでしょうけれども、今年度末で転出される方もいる。それで、こういう傾向がさらに広がっていく危険性を私は感じるわけです。これは杞憂にすぎなければいいですけれども、私は、このままではどんどん優秀な人が都立大学を見捨てていく危険はないのかということを申し上げておきたいのです。
 それで、私は、都が国より先行して、国の法人化の方向がまだ固まらないうちに、どんどんどんどん先走っていくと、かえって不安を広げて、国よりもどうも悪くなりそうだ、強引にやられそうだということでやられていく。少なくとも、国の法人化のあり方や何かの検討を慎重に見て、また、私たちの議論をよく聞いて、関係者の話もよく尊重して慎重に進めるという姿勢が私は欲しいと思うんですが、そうじゃないといい人材が集まりませんよ、大学に。いかがでしょうか。


◯佐藤改革推進担当部長 先ほどもご答弁申し上げましたが、国の状況は、平成十六年度の法人化を目指して、十五年通常国会での法案成立に向けた準備が進められていくものというふうに理解しております。十四年度中に国の検討の状況をつぶさに情報を得ながら、我々としても、国におくれることがないよう積極的に法整備についての国への要求をすると同時に、我々としての内部検討を遅滞なく進めていきたいというふうに考えております。
 また、先ほどございました他大学への流出の件につきましては、都立の大学については、従前から教員の他大学間との流動化は一定程度ございまして、ご指摘のような教員の流出というような認識は持ってございません。


◯鎌形大学管理本部長 ちょっと補足させて説明させていただきます。
 先ほど曽根委員からるるお話ございましたけれども、私どもがやっております改革はなぜあるかというところに問題意識を持って取り組んだわけでして、先生方が不安になるか不安にならないかはともかくとしまして、今のままの大学ではだめだということを前提に改革に取り組んでいるところでございます。
 したがって、私たちがやろうとしている、教育研究を含めて──教育研究と一言でいうと、ちょっとこれは全く平らな話になってしまうんですが、教育と研究で大学は構成されているわけでして、今までは、どちらかというと研究に重点が置かれた大学であったと。ところがこれから、我々が今やろうとしているのは、基礎、教養を含めて教育にも重点をきちんと置いて、大綱に掲げた立派な人材を育成したいということと、それから、あわせて研究の方もこれは当然やっていかなくちゃいけない問題がございますので、それはそれとして、きちんと研究ができる環境も整えておこうということを前提に今、改革に取り組んでいるところでございます。
 したがって、先ほど来ございますように、国がどういうふうにやるかは別にしまして、私どもは東京都が考えている基本的な考え方を打ち出したわけでございまして、それに基づいて、今、文部科学省、総務省に対して、こういったものを実現できるような法整備をお願いしたいということでお願いをしているわけでございます。したがって、国と必ずしも同じになるかは、これは、法律に抵触するような制度はできませんけれども、各自治体がみずからの独創性に基づいて大学をつくっていきたいという考え方があるわけでございますので、そういった大学がつくれるような法整備をお願いしたいということで今、国にお話をしているということでございますので、どちらが先かということでは私はないと思います。国の方が今回新しい大学像の考え方を打ち出しますので、それも当然私どもは参考にさせていただきたいということでございます。


◯曽根委員 国の方に、東京都としては自治体の裁量で、独自の方向を認められるような幅を設けた公立大学の法人化の法律を求めていきたい。いい意味でなら、我々もそういったことはあり得るかもしれません。法人化については、私たち反対ですが、大学の改革をいわば自治体で独自に進めていこうということ自体は大いに議論をすべきだし、前向きにやっていきたいといつも思っています。
 その中で、最後はしかし、国内の中でも国立大学の法人化問題では統廃合の計画も出ていますよね。大学の教授の人たち、先生たちの集まりがいろいろあって、非常にいろんな意見が出ているんですよね。ああいうまとまらない段階でどんどん進められるのかなと。文部省は本当にこの夏ぐらいですか、まとめて、法案提出して、押し切れるのかなと、大学問題で。それが、私は、もっと国立大学についても大学人の声を尊重しなきゃならないと思うし、そうなってくるという可能性は大いにあると思うんです。スケジュールがおくれる可能性はあると思う。東京都がどっとこどっとこ進めて、先走ってしまう。そうすると、先生たちにとってみれば、東京都の大学にいるよりも、まだ国の方がましだということになりかねない。そうすると、本当にすぐれた先生方は見限るということも出てくる。現に出てきていると思うんです、私は。
 こういう点で、しかも国全体が法人化、法人化ということで、五十歩百歩でしょうね。そういってなってしまえば、先生たちは、今度は国外に出ていく。もう既に出ていますよ。ノーベル賞をとっていない人たちは──ここ数年割と続いていますけれども、結局業績を実らせたのは、プラスチックの伝導性の問題でもアメリカの大学に行ってからなんですよね。なぜかといったら、日本は何年も論文を出さないでいると日干しになってしまうからなんですよ、今でも。これがますます強まるんじゃないか。
 したがって、私は、少なくとも都立の大学の改革というならば、国の動向について、やっぱり国の大学の方でどういう論議がされているのか、それから、都立の大学の中でもどういう意見があるのか、どういう不安があるのか、もっともっと酌み尽くしてほしいと思う。
 そこで、さっきもお話ししましたが、少なくとも、私たちも真剣に議論したいので、今後の検討会、いろんな検討会が予定されているようですが、そこに出した資料については、全部委員会に積み上げろとはいいませんが、インターネットで公開するとか、積極的に求めたいと思ったら、私たちが手に入るような方法をとっていただきたい、それぐらいはできると思うんですが、いかがでしょうか。


◯佐藤改革推進担当部長 先ほどもご答弁申し上げましたが、現段階ではいわゆる内部の検討をしている状況でございます。内部の検討状況を一定の整理をした上で、都民にもわかりやすく、また誤解の生じないような段階に至って初めて資料を提出をしていくというふうに考えております。


◯曽根委員 私たちは、少なくともその検討会の、そのものの資料を要求します。ただ、今のお答えですと、何らかの整理をした上で出すということを考えているようですから、早急に一定の整理はあったとしても、わかる内容をいただきたいんです。そうじゃないと、なかなか議論ができませんので。
 それと、この機会に、本部として大学の方々の意見、都の教育委員会の意見、都議会、一般都民の方、学生、それぞれからは意見を聞く場を持ったり説明の場を持ったりしているのはわかりますが、それぞれ全部個別にやっているわけですよね。したがって、一堂に会する論議の場もあっていいんじゃないか、こういう閉鎖的な、それぞれ個別通行的な議論のやり方を改めて、公開の論議の場を設けてよいんじゃないかと思うんですが、こういう考え方はいかがでしょうか。


◯佐藤改革推進担当部長 都民を含めまして、広く大学改革についての意見をお寄せいただくということは重要なことだというふうに認識しております。今後とも、適切な情報提供並びに意見の収集に努めてまいりたいと思っております。
 ご提案のシンポジウム等の開催につきましては、方法として効率的に適切なものかどうかも含めまして検討をいたします。


◯曽根委員 ぜひ一回はきちっとやってもらいたいと思います。
 それで私、今度、大綱の中で、この間論議しませんでしたけれども、都民とやっぱり違うところで議論しているとこういうものが出てくるという典型が、全寮制の問題だと思うんですよ。この間、余りに唐突なあれが入っているんで、議論しにくかったんですけれども、これはどこから出てきた構想で、全寮制をしくことによって都立の大学の存在意義が高まるとか、価値が高まるとかいう何らかの見通しを持って提案されているんでしょうか。


◯佐藤改革推進担当部長 全寮制につきましては、東京都大学運営諮問会議におきまして、基礎、教養教育の重視についてご議論をいただく中で、学生の豊かな人間性をはぐくむという観点から、教室だけではなく、同じ世代の若者同士が寝食をともにし、時間を忘れてさまざまな議論をするなどして、刺激し合う環境を用意することも重要であるとのご意見をいただいたところでございます。東京都大学改革大綱におきましては、再編統合により設立する都立の新たな大学では、これまでの学部教育を再構築をいたしまして、幅広い見識や豊かな人間性、それによって涵養される判断力を学生が身につけることができるように基礎、教養教育を重視していくという考え方、方針を打ち出しており、この諮問会議での意見も踏まえまして、全寮制も一つの試みであるという観点から、そのあり方の検討を盛り込んだところでございます。
 全寮制につきましては、学生の生活にも大きな影響を与えるということもございますので、今後そのあり方につきまして、十分検討をしてまいります。


◯曽根委員 学生の生活をある意味で縛らなきゃならないものですよ。全寮制ですからね、寮をつくるというんじゃないんだから。しかも、どう考えても費用的に合わないですよ。私もお金の問題だけで教育を云々する気はないけれども、今、新築のアパート、一人部屋、大体一人三百万円ぐらいかかるわけですから、一万人からの大学生の全寮制をつくったら数百億ですよ。数百億のお金をかけて寮をつくって、少なくとも大体都庁の管理費を見たって、それから十億円程度の管理費がずっとついて回るでしょう。学生からの負担も避けられない、授業料以外に負担をしてもらわなきゃならない。しかも生活は縛られる。確かに、イギリスだったらステータスになりますよ、それは。しかし、日本にはそういう教育の場における伝統はないんです。それが結局、じゃ、そういう全寮制を何百億もかけてつくって、学生がそれを目指して来るかということなんですよ。選ばれるんですから、これから大学は。もし、いや、全寮制でみんな寮に入らなきゃならないんだったらちょっと敬遠しますとなったら、何百億のお金が水の泡ですよ。だからやっぱり大学の改革大綱をつくるんだったら、当事者のさまざまな分野の方の意見をちゃんと聞いて、そういう中身を考えてもらいたいというふうに思うんですよね。これは意見として申し上げておきます。
 それに関連して、今回授業料の値上げが提案されているわけですね、入学料と。それで先ほど、影響についてもご意見ありました。私、山本委員や石川理事の意見、前半の方で、学生にこの厳しい中で負担を強いるのは非常に問題だということで取り上げておられたのを、私も本当に率直に同感です。
 それと加えて、ちょっと予定はなかったんですけれども、確か二年前に、授業料を前回値上げしていますよね。あのときに、スライド制というのが導入されて、在校生も値上げにかかってくることになったわけですね、新入生だけじゃなくて。そのときに、当時、文教委員会で我が党のくぼた議員が質問しているのを見ますと、十二年度入学の新入生については、十二年度と翌年十三年度、今年度ですね、連続してスライド制の影響を受けて連続値上げになるということを指摘しているんですが、そう考えると、今度の値上げは十五年度ですから、十二、十三連続上がって、来年度はないけれども、十五年度にまた上がると、十二年度入学生ですね。三回目の値上げが来るということになるのかどうか、ちょっとそこだけ確認をしたいんです。


◯二村管理部長 前回の値上げでございますが、これは、前知事の時代に使用料、手数料の改定が見送られた経緯がございます。その分を取り戻すといいますか、それで十二年度、十三年度と合わせて改定をしたものでございまして、今回の改定はそういった考え方に立っておりませんで、十五年度の授業料一つでございます。


◯曽根委員 そうすると、やっぱり十二年度の入学生は、入学した年に上がり、それから十三年度に上がり、ことしはこれ、今決めようとしている段階ですから間に合わないけれども、来年度また上がる。これは間違いないですか、同じ学生が三回値上げになるというのは。前回も二万七千六百円の値上げで、今度は二万四、五千円になりますか、出ていましたよね。それで、今回だけじゃないわけで、大体二年ごとに国の方も改定しているんです。それで、先ほど質問がありましたので、繰り返しません。東京都が独自の大学構想を考えようというときに、何で授業料だけは国にぴったり寄り添うようにくっついていかなきゃならないんだというのは私も思うんですよ、石川理事と同様に。
 それで、むしろ考えるべきは、いかに優秀な──研究者の話はさっきしましたよね。優秀な学生を確保するという観点に立てば、負担はやっぱり軽くした方が集まりやすくなるということは間違いないと思うんですよ。もし全寮制なんかしいて、三百億の建設費、毎年十億程度の維持費をかけることを考えたら、学生の授業料に還元してあげた方がよっぽど──全国から優秀な学生が集まってきますよ。だって、B類なんかはほかにないからね。本当に全国から理科系のB類を目指して都立を受けにくるんですから、働かなきゃならない優秀な人たちが。そのぐらいの考え方があってもいいと思う。
 私、たしかこの検討会の意見の中に、どこだかよくわからないんですけれども、院生だけでも無料もしくは低廉な授業料にしたらどうかと。大学院生というのは、授業を受けて教育を受けているというよりは、研究に参加している側面が非常に強くなりますよね。授業は余りないと思うんですよ、たしかそれほど。研究に参加している。それで、優秀な院生を集めるということは、大学の研究のレベルを上げることに非常に有効だといわれているのですね。
 ですから、そういう点では何か数億円ぐらいで大学院生の授業料をゼロにもできるということでしょう。寮をつくることを考えたら百年ぐらい大丈夫だなと思うんですけれども、そういった思い切った発想をして優秀な学生を、四年制の方で、最初の高校卒業の新入生はいろんな人がいますよね。東京都の人が多いかもしれない。しかし、大学院生というのは、やっぱり大学院を受けるときにはいろいろ全国のを調べて、自分に一番合ったところを選んでくるわけですから、そこで大学院の授業料を安くするというのはなかなかなアイデアだなと思うんですが、これについてはご存じでしょうか。それとまた、こういう考え方についてはどう評価されるんでしょうか。


◯鎌形大学管理本部長 先ほど来、全寮制と結びつけられるというのは、ちょっとこれはいかがなものかなという気がいたします。全寮制は、お金がかかる、かからないの問題じゃなくて、教育をどうするかという教育目的のために全寮制をどうするかという議論で今、検討を進めているわけですので、いい学生を集めるためにまず全寮制、そういう意味では、通用するところがありますけれども、教育目的ということでございますので、ちょっと混乱があるかなと思います。
 それから、いい大学にするためにはぜひ生徒を集める、これは当然のことでございまして、ただそれを、授業料を安くする、ただにすればいい生徒が来るのかということは、これは少しまた違うんだろうなと思います。大学の教育と研究の質を上げる以外にいい生徒は来ないということでございますので、いい生徒を集めるためには、お金を安くするということよりも、授業料を安くするよりも、むしろ教育と研究のレベルを上げるということだろうと思います。そういった面では、これからの新しい大学の中では、教育、研究の充実はぜひ図っていきたいというふうに考えております。
 それからもう一つ、そういった面で学生にインセンティブを与えるという意味では、まだ我々の方も、優秀な生徒をどうするかという意味では、インセンティブのつけ方につきましては、これから検討しなくちゃいけない課題であるというふうにも考えております。


◯曽根委員 今お話のあったように、大学は研究、教育、それにはいわばそれを提供する側の先生方、教員の人たちの問題と、そして受ける側の学生の問題がある。私は今、学生の問題をいいました。先ほどいった教員の側の問題もあるわけなんです。両面から見て、どんなにすばらしい美辞麗句をここに書いても、優秀な教授が大学に来てくれなければ教育、研究のレベルは上げようがないんですよ。ですから、教授の人たち、先生方がどういう、自分のやりたい研究を思い切ってできるような環境をこの大学の中に見出していくのか、それをどう保障するのか、ここで本当に真剣に考えておかなければならないと思います。法人化することがそれに資することがあるんだったら、それはもう納得できるように説明しなきゃならないと思うんですが、今のところははっきりいって説明できていないと思うんです。
 大学の意見がどういう意見が出ているかは、あとで整理した形でお示しいただきたいと思うんですが、相当やはりみんな厳しい目で見ています。ですから、そこのところが第一点と、それから、鎌形さんがいみじくもおっしゃったように、いい学生をやはり確保すると。単にかき集めるというんじゃないですよね。いい学生が最終的に大学に残って研究に参加してくれて、大学全体の研究のレベルを上げるために貢献してもらうと。欧米では、学生、院生は基本的に学費はかからないわけですよ。ましてや院生については、研究に参加して、大学のレベルアップに貢献するわけですから、一部手当だって出しているところがあるわけですよ。日本は、負担をかけているわけですよ。
 したがって、これから新しい大学を考えていくんですから、本当に学生の側からも魅力のある、そして参加しようという気の起きるそういう大学の教育体系をつくっていただきたい。私は、そういう点では、寮をつくる問題も、授業料の問題も、大きな意味ではその考えで、同じ範疇の問題としてとらえるべきだというふうに思います。
 今回提案されている授業料の改定については、そうした観点から見て、まず第一に東京都として志を持つべきだと思うんです。ましてや、先ほどお話のあったように、この厳しいときに、おととし入った学生は、もう三回目の値上げですよ。参っちゃいますよ。年間五万円を超えるでしょう、値上げ幅を合わせれば。こういうことの負担を一方的に学生に押しつけて、新しい授業料になると還元があるのかと先ほどお話があったけれども、具体的には何にもないわけですよ。そういう値上げについては全く認められないということもあわせて申し上げて、質問を終わります。

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