2001年9月28日文教委員会の質疑
都立総合学科高校のあり方・・1校100億円で良いのか
◯曽根委員 今度つばさ高校が設置されるということについて、何点かお聞きしていきたいんですが、これは、この資料にありますように、平成八年からスタートしている晴海総合高校が総合学科の第一号で、今度のつばさ高校が第二号ということなので、それはやはり先にスタートしているところをきちっと見ておいた方がいいだろうと思いまして、私どもの会派として、始業時間から、生徒さんがどういうふうに通ってきているのか、それから一時間目、二時間目の授業ぐらいまで、晴海総合高校に伺わせていただいて、見させていただきました。パンフレットもいただいたので──もうなかなかの、いいシチュエーションといいますか、このパンフレットのとおり非常にいい環境なんですよね。校舎も大変すばらしい設備ですし、そこで行われている学習、授業の内容も大変すぐれていると思いました。正直、本当に関心しましたよ。
一つは、校長先生、坂本先生とおっしゃるんですね。坂本先生の、この学校をよくしていきたいという熱意、先ほどちょっとお話もありましたが、市民講師ですか、二十人ぐらい、踊りやお茶や太鼓ですか、そういった市民の方々の授業もある。そういう意味で非常にいろいろなことにチャレンジをされているなと思いましたし、それから、それにこたえるように、生徒さんも非常に学習態度がしっかりしているなと。廊下で、休み時間に歩いている生徒さんをちょっとつかまえまして、この学校どうと聞くと、みんなやはり自分の進路をいろいろ考えているんですね。それで、自分に必要な授業を、コース制ですから、いろいろ選択できるということで、いろいろしっかり考えてとっているなと。そういう意味では、設備も非常にすばらしいものですし、行われている教育内容についても、その学校の中としては最大限の努力をされているということは十分感じました。
これから職業選択がいろいろ幅が広くなっていくということで、職業選択についての授業も中にはあって、それは一年生のときにやるらしいんですけれども、たまたまその授業をやっているところにこちらが訪問で行ったものですから、都議会議員が来たということで突然出場させられまして、都議会議員の仕事とは何かということで生徒から質問を受けるという、都議会議員はもうかりますかとか、都議会は立派ですかとか、都議会議員はどんな仕事をしているんですかという一番難しい質問もいただきましたが、そういうふうなこともあって、非常に学ばされるところがありました。
同時に、今後、総合学科高校を、このつばさ高校、先ほどもお話がありました東久留米の方も、つくっていくというときに、ぜひ考えてもらいたい、私たちも研究していきたい幾つかの点がありますので、質問と若干のコメントもさせていただきたいと思います。
一つは、晴海総合高校が非常に立派な建物、設備を持っているということについて、これは率直にどれぐらいの費用でできているのかということをまずお聞きしておきたいと思います。全体でどれぐらいの費用をかけてつくられているのか。
◯松田施設部長 晴海総合高校は商業系の総合高校でございまして、平成八年三月に完成いたしました。体育館、グラウンド整備を含めました建設工事費は、約百六億七千五百万円でございます。
◯曽根委員 建設事業費で百億円を超える都立高校は私は初めてだと思うんですね。当時、かなりこうした公共施設にお金をかけるという点では、潤沢にお金を出していたということもありますけれども、それ見てもわかるんですよ、すばらしさが。そこに通っている生徒さんたちにとって、また、そこに通わせている父母の方々にとって、やはり相当期待が集まるだろうなというふうに思いました。同時に、当時、九六年ですから、あの直後から、公共施設についてはいろいろ節約といいますか、コストを縮減しようという動きもあると思います。今度つばさ高校をつくって、もう工事が大体終わるころですね。このつばさ高校については、その辺は、建設コストその他についてはどういう考え方でやっているんでしょうか。
◯松田施設部長 つばさ総合高校は工業系の総合高校でございまして、本年十二月に竣工の予定でございます。
建設工事費は約六十七億五千万円でございます。体育館と格技棟は既存のものを利用することでコストの節減を図っております。
◯曽根委員 体育館、格技棟というのは平成に入ってからつくったものだと思うので、それを活用していくというのはある意味で当然だと思います。それで校舎の方で、設計図を前に教育庁の方からいただいたんですが、かなりこちらも立派な建物につくっていると思いますね。それで、晴海高校と比べて、校舎の部分についての比較をした場合、床面積当たりの建設コストとしてはどうでしょうか。
◯松田施設部長 晴海総合高校の校舎棟の建設面積は約二万一千平米でございますが、平米当たりの単価は約三十四万六千五百円でございます。つばさ総合高校の校舎棟の建設面積は約一万九千四百平米でございまして、一平米当たりの単価が約三十四万七千二百円でございます。
なお、都立高校の施設整備につきましては、都立高校改革推進計画を踏まえるとともに、校舎、設備の老朽化の程度、耐震性能や学科改善、個性化、特色化への取り組み等、総合的に勘案して整備することとしております。
◯曽根委員 これは私、一概に比べるつもりはないんです。というのは、晴海総合高校の場合は、京橋高校と京橋商業高校で、商業系の総合学科といいますか、そういうものがあるので、パソコンその他、商業コースに必要な器材というのがあります。羽田の場合は工業系ですから、もっと高いいろいろな器機が恐らく使われているでしょうから、その伝統も引き継ぐということになれば、それなりの設備は必要だと思います。
ただ、やはりそうはいっても、今度つくる戸山高校は体育館も入れて二十三億余ですか、先ほどの契約案で。生徒数はほぼ同じぐらいですから、やはり総合学科には相当お金の面でも力を入れていることは間違いないですね。確かに授業を見に行きますと、百六十三の科目があるということなんですね。ですから、少人数でいろいろな授業をやっていて、絶えず入れかわって、子どもさんは動いていく。授業をやっている教室というのは全体の教室の大体半分ぐらいかなと思うんですね。半分ぐらいの教室はあいているけれども、いろいろな形で使われて、回しているという感じでした。これはその学校として教育を進めていく上での条件としては極めていい条件だということは間違いありません。ただ、教育施設予算全体の枠はそんなにふえていないし、逆に今シーリングがかかって減ってきている中で、教育の機会均等ということを施設の面でもある程度は考えていかなきゃならないというのは、私たち、やはり考慮する必要があると思っています。
晴海についてどうこうではないんですが、先ほど資料でいただきましたように、戦前の建物で築後七十三年という、もちろん耐震基準はクリアしているんでしょうけれども、そういう建物の学校も一方に残っているということもありますので、そういうことについての考慮を今後していっていただきたいというふうに思います。
それから、もう一つなんですが、この総合学科高校をつくったために、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、前に京橋高校という普通科高校と、それから京橋商業という商業高校があったのを統合しました。今度、つばさの場合も工業高校と普通科高校を統合するわけです。
私たちはいつもこの統合があるときに申し上げるんですが、決して、なくなっていく学校が、その学校がなくてよかったということでは絶対ない。先ほど、伝統を残すという話もありましたが、しかし、やはり学校の名前も変わり、制度も授業の中身もがらりと変わってしまうということは、ある意味で、そこに通ってきた子どもさんやOBの方や父母の方にとって、また、そこに携わってきた教育関係者の方にとっては、やはり存在が否定されたという印象を持つのはやむを得ないことだと思います。(「実態はそうですね」と呼ぶ者あり)そういうことありますよね。実態もそういういろいろな問題が起きていると思うんですね。それで、それをやはり本当の意味で納得のいく改革としていくために考えていかなきゃならない問題があると思います。
まず、幾つかこの間の変化をお聞きしておきたいのですが、晴海総合高校が立ち上がったときに、一つは、京橋高校、京橋商業の時代からの、通ってくる生徒さんが変わってくると思うんですよね。そこで、倍率がどう変わったのか。
それから、まとめてお聞きしますけれども、京橋高校は全日制普通科ですから、第五学区から通っていたと思うんですけれども、それが第五学区以外の子どもさんが来る、学区がなくなりますので。晴海の場合、それがどれぐらいになっているのか、その辺の変化をちょっとお聞きしたいと思います。
◯山際都立高校改革推進担当部長 晴海総合高校は、ご指摘のとおり、平成八年に開校したわけです。当初の応募倍率、入学者選抜の一般入試の応募倍率でございますが、当初三・〇三倍でございました。それ以降、三・八四倍、二・五九倍、二・九〇倍、二・二〇倍、そして十三年度、資料にありますとおり、二・一四倍になっております。
また、晴海総合高校における在籍者の数のうち、五学区以外の生徒の割合でございます。これについては全体の八〇・四%が五学区以外から来ている生徒でございます。
◯曽根委員 倍率の方も、新しく立ち上がったときは、設備を見ても、コース制のいろいろな案内を見ても、期待が集まるというのは当然だと思うんです。第一号だということもあって、四倍近い倍率になったわけですね。今は大分落ちついてきたとはいえ二倍を超えているということは、先ほど都民の支持を得ているというお話があって、確かに期待を集めているんですよ。
ところが、一方で、本当に商業のコースが自分に合っているなと思っている中学生の卒業を控えた生徒さんにとってどうか。その道が、いわば新しく開かれた、選択の幅が広がったというのは客観的にいえば事実です。しかし、ではそこに受験できるかというふうに考えると、期待が集まって、一回目は四倍近い倍率になった。しかも外から八割ぐらい入ってくる。今までのように、いわば地元の高校だからということで安心して受けられるというふうにはちょっとならない。がけを飛び越えなきゃならない。落ちると、もう都立の場合には都立に入る道は二次募集しかありませんから、私立その他も考えざるを得ないというふうになる。
ですから、受験の上で選択がしやすくなったのかなというのは私は疑問なんですよ。それぞれの学区にどんどん総合学科がつくられていく計画なので、そのうち落ちつくというふうになるかもしれません。しかし、私は、そういうふうにどんどんどんどん事を進めていく前に、今の段階で考えておいてほしいこと、それは、こういう新しい、しかもいわばかなり実験的、試行的な内容を持つ新しい高校をつくるときは、今まであった普通科高校をつぶすのじゃなくて、新しくつくるということを考えるべきじゃないか。
それから、全体としての都立高校の改革は、私もう大分前で余り年数をいいたくないんですけれども、私が高校を卒業するころにちょうどカリキュラムの改革というのが始まって、それまでほとんどが必修科目だった都立高校の全日制普通科の高校にも選択科目が入ってきた時期なんですが、それは生徒さんたちが希望を出すんですね。それにこたえて先生方もいろいろ相談して、学校の中で話し合いが何度も持たれて、この選択を入れていこうというようなことが当時学校の中で大いに議論がありました。そういうふうにしてつくられていく普通科高校の改革というのもまだまだ大いにあり得るだろうというふうに思うので、その点も申し上げておきたいと思います。
最後に一点だけ。晴海高校の坂本校長先生から特に熱意を持って訴えられたのは、キャリアアドバイザーという方がいるんですね。これはコース制の総合学科高校などにはどうしても必要な制度だそうです。私、見ていてもわかりました。年間三千人ぐらいの生徒さんが相談に来る、今後の進路について。その先生は理科の先生で、キャリアアドバイザーそのものの定数がないので、理科の先生がその仕事をされているんだそうです、専任で。それは学校の中でのやりくりなんですね。
これはぜひ制度化してほしいという要望がありましたので、これは私はそのとおりだと思うので、こういう学校をつくるからには、そういうきちんとした専任の教職員を配置するように最後にお願いして、質問を終わります。