トップページへ  はじめ通信目次へ  らぴっどコーナー目次へ 

はじめ通信・子どもと教育のはた4−911
小石川と両国の中高一貫校基本計画を報告
平和・民主主義・人権・自由ぬきで「多様な価値観を理解」させるというが・・例の教科書を選べばパッと戦争色に染まるしかけが・・

●9月9日に教育庁の担当者が、小石川と両国、都立大付属の高校を中高一貫校にする基本計画がまとまったと言って、冊子を持ってきました。翌日のマスコミは「母体となる高校の伝統を生かし」「それぞれの学校の特色化をはかる」などと報道しました。
 しかし私の見る限り、小石川の一貫校は「理科好き」、両国は「国語好き」、都立大付属は「論理(?)学得意」の生徒育成に力を入れるというだけのこと。12歳からの中高一貫校の6年間で科目別の重点化をはかるのはリスクが高すぎるんではないかと、素人の私でも思いますが、そういう「形」でしか個性化を表現できないということでしょう。

●一方での特徴は、教育の最大の目的とされる人格の育成や個人の確立などについては、教育基本法にあるような、「平和で民主的な社会の形成者」などという言葉は一切出てきません。憲法の原理である「人権」「自由」の言葉もかけらさえ見当たりません。あるのは「人間力、リーダーシップ、使命感」であり「多様な価値観を理解し」「多面的・多角的考察を通して多様な視点に立つ生徒の育成」・・つまり戦後の社会原理に立脚することなく、どんな思想も相対化する”のっぺらぼう”の教育プランになっていることです。
(高田求という哲学者は小泉八雲の「むじな」に出てくるのっぺらぼうは、自由や人権の思想を抜きに制度や技術だけ西洋から導入しようとした明治の近代日本の姿を皮肉ったものだという解釈をしていました。)

●この場合、”のっぺらぼう”の人格育成は無色透明ではありえません。今年の8月末、すでに同じ中高一貫校第1号の都立白鴎の中学部門に「つくる会」の歴史と公民教科書が採択されているからです。
 たった2冊の教科書ですが、これで中高一貫校は”のっぺらぼう”に軍服を着せ、戦争色に染め上げる手立てができたわけですし、おそらくその趣旨に従う教員がぞくぞくと集まることになるでしょう。

●「週間朝日」は、都教委が都立の中高一貫校に「つくる会」教科書を採択したことに対して、大学受験指導を期待していた人々をがっかりさせたと論評しており、特に本命の小石川中高一貫校にまでこの教科書を導入すると、エリート校復活どころではなくなるだろうと書いています。
 確かにかなりの人々から敬遠される可能性がありますが、逆に、ある種の人々(たとえば2大政党の政治家など)からは、子弟を入学させようとする動きが強まるんじゃないでしょうか。
 そうなった場合、私としては極めておぞましいことですが、たとえば小石川の代表的先輩像といえば間違いなく「加藤剛」だったものが、「小沢一郎」に取って代わられてしまうのか・・・それこそ悪夢です。

●誰かが、「進学重点校が頭脳派のA級エリート造りなら、都立の中高一貫校は肉体派・武闘派のB級エリート造りだろう」と言っていましたが、なるほどと思います。どっちにしても絶対許せません。

●教育庁発表の3校の基本計画の概要は以下の通り。

 トップページへ  はじめ通信目次へ  らぴっどコーナー目次へ