はじめ通信・子どもと教育のはた4−804 ”みせしめ”教員研修の要綱 「成果を確認」し「勤務状況」を監視 ●8月2日と9日に行なわれている「服務事故再発防止研修」の実施要綱が発表されました。 懲戒処分を受けたものと、諭旨免職を受けたものの監督責任者を対象とするもので、教員をやめさせた場合は、その校長まで研修対象にするという、念のいれようです。 (研修の成果等)の項目には、被処分者に「自ら行なった非行に関する報告書を作成させる」とし、さらに「研修後の勤務状況について学校長に報告を求める」とか、「研修の結果に基づき、必要な措置を講ずる」などと、研修での態度や、その後の勤務を監視し、報告書などの内容を見たうえで、さらなる”制裁”を加えることを露骨に示しているといえます。 ●なぜこれほど徹底しているのかといえば、この要綱は、日付を見ても分かるとおり、3年前に作成されたもので、当時は、子どもへの重大な体罰や、性的いたずらなど、誰が見ても「これはひどい」といえるような、教員の非行に対して行なわれるものだったからです。 体罰や性的いたずらなどは、まさに非行であり、教員である以上、研修によって再発を防止するために、念を入れた再発防止の対策が必要なことは明らかです。 その要綱を、そのまま今回、自らの良心の自由を守ることが、子どもに対する教育者としての責務との信念から不起立を貫いた教員に、いわば「思想転向」を迫る道具に使おうというところに、今度の研修の悪質さがあります。 ●最近作られた、指導力不足教員に対する「支援」とか「指導」、「研修」などのしくみも、すぐに同じような使われ方をするでしょう。 つまり、日の丸・君が代の歴史や法制化のいきさつを客観的、正確に教え、これをふまえて子どもたちに自ら考えさせるような教育をしている教員、さらには障害児をはじめ子どもたちの年齢や成長に合わせながら、きめ細かい性教育に取り組んでいる教員など、すでに教育内容についての「厳重注意」などの処分を受けた人たちに、そうした”みせしめ”制裁が待っているでしょう。 ●そしてしまいには、教科書だけでは不十分だからと、自分で資料を用意して意欲的に授業に取り組んでいる教員にまで、それが国や行政の方針に批判的内容(たとえば自然破壊問題など)であったりすれば、「指導力不足」として研修送りにされ、再び学校には戻ってこれないような事態が起きる可能性は、我々が思っているよりはるかに切迫しているといわなければなりません。 ●研修での講義概要、「報告書」という名の”反省文”の形式についても出されていますので、紹介します。 服務事故再発防止研修実施要綱 平成13年3月30日 教 育 長 決 定 (目 的) 第1 この要綱は、地方公務員法に基づく懲戒処分(以下「懲戒処分」という。)を受け た教職員に対し、再発防止に向け、教育公務員としての自覚を促し、自己啓発に努め、 モラルの向上を図ることを目的とする。 (実施主体) 第2 服務事故再発防止研修(以下「再発防止研修Jという。)は、東京都教職員研修セ ンター(以下「センター」という。)が実施する。 (対 象 者) 第3 再発防止研修の対象者は、次の者とする。 (1)停職、減給及び戒告の懲戒処分を受けた者 (2)懲戒処分を受けた者及び諭旨免職の措置を受けた者の管理監督責任者(以下「監督 責任者」 という。) (研修の内容) 第4 再発防止研修は、教育公務員としての自覚を促すための基本的な研修(「基本研修」) 及び非行の種類に応じた専門的な研修(「専門研鱒」)の2種類とし、別紙「服務事故 再発防止研修内容」により実施する。 (研修の時期) 第5 再発防止研修は、次の時期に実施する。 2 基本研修 ア 停職の懲戒処分を受けた者は、停職期間に引き続き実施する。 イ 減給及び戒告の懲戒処分を受けた者は、発令後速やかに実施する。 ウ 監督責任者は、原則として懲戒処分を受けた者と同時期に実施する。 3 専門研修は、直近の時期にセンターで行う、キャリアアップ研修等の受講を命じ実施 する。 (研修の成果等) 第6 被処分者が行った非行に対する反省を促すとともに、今後の再発防止を図るための 研修成果を確認する。 (1)被処分者に、自ら行った非行に関する報告書を作成させる。 (2)研修後の勤務状況について、学校長に報告を求める。 (3)研修の結果に基づき、必要な措置を講ずる。 (そ の 他) 第7 第1から第6までに定めるもののほか、この研修の実施について必要な事項は、別 に定める。 附 則 この要綱は、平成13年4月1日から施行する。 ●研修の講義概要 教育公務員の服務義務と関係法令について T 地方公務員法制定の意義 U 地方公務員法の適用職員 V 公務員の服務について 1 公務員の職務の特性 2 服務の根本基準 W 地方公務員法の服務規定の特徴・内容 1 法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(地公法第32条) 2 職務に専念する義務(地公法第35条) 3 信用失墜行為の禁止(地公法第33条) 4 秘密を守る義務(地公法第34条) 5 その他の義務(地公法第36条〜38条) X 服務事故の事例 Y 職員の身分保障・処分と服務事故の影響 Z 服務事故防止と服務規律の遵守 ●研修の受講報告書 |