はじめ通信・子どもと教育のはた4−723 疑問と不安が渦巻いた中高一貫校計画 小石川高校の保護者・同窓生説明会に参加して ●本日7月23日、知人の現役保護者の方から、小石川高校の保護者と同窓生を対象に、06年度開校予定の中高一貫校の説明会が開かれ、1回で終わらずに近く2回目が開かれそうだと聞いて、日時を調べ参加しました。 残念ながら抜けられない行事が入ったため7時開会に間に合わず、学校の会議室に着いたのは8時近くになっていました。参加者は20人ほどで、前のほうに都教委の職員数名と遠藤校長が座り、保護者やOBがそれぞれ質問や意見を述べていました。 ●保護者の質問で多かったのは、普通科高校から中高一貫になることで、学校としての”連続性”がなくなる心配でした。 ある母親は、前から良い学校だと聞いていて、半信半疑で子どもを入学させたらまさにその通りだったので、その良き伝統を確実に残すためにどうすべきかという発言をしましたが、保護者の発言の多くは同じ趣旨でした。 同窓生からも、初代校長伊藤長七以来の校風をいかに受け継ぐか、そのためには校歌や校章、クラブ活動の伝統や、縦割りクラスの連帯と競いあいなどをちゃんと残すとの約束をしてほしいと言う意見もあり、「各界のエリートを育てるなどと目標に掲げること自体、小石川の校風に反する。五中以来の伝統というのは、人から一流と言われるより、自分で納得できるまで一流をめざしながら、結果として社会の評価がついてくるというものだ」などと”小石川哲学”も飛び出して、周りから拍手も起きました。 ある女性は、中等教育学校(高校段階での追加入学を認めず、6年間同じ生徒でずっと持ち上がる仕組み)になると、地域の小学生で行きたいと思っている人には一発勝負の狭き門になり、中学生にとってはもはや小石川は受験すらできなくなる問題を心配していました。 ●これに対し遠藤校長は、「学校制度として全く違う学校になる以上、立志・開拓・創作の伝統は受け継ぐが、入学式なども別になるし、校歌や校章は新しくするのが当然。」との発言をしました。これを聞いて会場はざわつき、「そんなこと決まってないでしょう。検討すると答えるべきだ」との声が飛ぶ中で、同窓会長が手をあげました。 ーー同窓会が中高一貫校を支持したのは、受験中心ではなく、6年間多様な人間教育を行なえるという中高一貫のよさを評価したから。我々も、小石川の伝統のすべてを残せとは言っていないが、少なくとも、校名に小石川を冠するとか、校歌や校章などは、伝統を引き継ぐと言うなら変える必要はないはず。校長がことさらに「まったく新しい学校制度になる」ことを強調すると、誤解もまねくし、我々の理解が間違っていたのかと考えざるをえない。そうすれば「話が違う」ということで、態度を変えることも考えなくてはならないーー 正確ではありませんが、そんな趣旨の発言をして、都教委側があわてる場面もありました。 ●校長や都教委の検討委員会の責任者らしき人が「伝統は、立志・開拓・創作という形でしっかり引き継ぐ。中高一貫校の教育も、小石川の教育実績が土台と、図にも描いてある」などと釈明しましたが、校名や校歌、校章などをどうするかについては、いっさい触れませんでした。 ●一番具体的な要望を出したのはPTAの方々で、会長さんは、中学・高校6年制となれば、いまの校舎では4クラスがせいぜい。少人数授業などはなかなか困難。今の8クラスの学年規模を残してほしい。それにはキャパシティーが足りないので、新たな校地を確保する努力と、そのためにも18年度開校を遅らせるべきではないか、と求めました。 また、小石川のよさとは、第1にクラブ活動の活発さで、クラスの生徒の思い出も、40人のうち30人以上が部活の話をする。部活をなくせば小石川には何も残らないとさえ思う。そんな活動が、半分の4クラスになり、中学と高校のバレーコートの高さ一つまでも違ってくるなど、とても今の計画では残せない。せめて高校部分だけでも8クラスを維持してほしい。との意見もありました。 同窓生からは、3年間のクラス縦割りで対抗しあって運動会などをやったことなどが語られ、縦割りの結びつきなどを8クラスで維持したいとの強い希望が語られ、拍手がありました。 都教委は、18年度開校はどうしてもやりたい様子で、新たな校地を確保する考えもないことを冷たく答えました。 ●私は、保護者や同窓生の思いを知りたくて参加者の発言をじっと聞いていましたが、議会でそれらにどうこたえるべきか、考えさせられました。 これまでの1次、2次の統廃合では、「伝統をひきつぐ」という約束をしても、校名はもちろん校歌も校章も学校行事もすべて切り離され、せいぜい校長と教員が両方の学校を掛け持つだけでした。小石川だけ特別にそれらを残すとは、今の都教委では考えにくいし、校長はあっさり正直にそういう考えをしゃべってしまい、訂正していません。 ●いちばん問題なのは、「立志・開拓・創作」などの言葉は引き継いだとしても、それが小石川関係者の多くが求めているような継承のされ方をするかどうかは、結局のところ新しい学校がスタートしてみなければわからないことであり、新学校がスタートすれば、そこには旧小石川の保護者や同窓会が「話が違う」と言って口を出す場は、ほとんどないだろうということです。 なぜなら、学校が代わっても旧高校関係者から意見を言われることは、自分たちの思うままに都立高校「改革」を進めたい都教委の側が一番警戒していることだし、新しい学校の運営に口を出させないために、ありとあらゆる防衛線を張っているからです。もちろん、旧高校から同窓会をそのまま引き継いだ統廃合は、過去に一つもありません。 ●私は、少なくともこのままで18年度開校すれば、後に関係者の間に大きな不信と禍根を残すことになると考えます。私なりに、今後も中高一貫のあり方を含めて、母校の行く末に希望を見出せるよう、かかわって行きたいと思います。 |