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はじめ通信・子どもと教育のはた0806

教育庁の職員大量動員による立ち入り調査は97年、第一次都立高校統廃合計画直後の「新宿高校事件」が皮切りだった

●障害児学校への立ち入り調査と、障害児教育の見直し
 都立七生養護学校への性教育問題をはじめとした立ち入り調査は、七生養護学校の個別問題にとどまらず、養護学校経営問題の「調査委員会」がつくられ、全ての養護学校への立ち入り調査が行なわれています。
 全養護学校調査の内容は、性教育というより、中心は学級編制と教員の服務の違反問題です。
「性教育のことを調べる中で、学級や勤務の問題が浮上してきた」というのが教育庁の言い分ですが、これまでレポートしてきたように、これらの実態は教育庁が前から知らないはずが無く、性教育調査を入り口にして、養護学校の運営全体を教育庁の支配下に置こうというたくらみではないでしょうか。
 しかも、この調査が、いま大問題になっている「障害学級を解消し特別支援教室へ」という問題をはじめとした、障害児教育の見直し検討のさなかに行なわれていることは、偶然とは思えません。
 教育庁の最終的な狙いは、どこにあるのか、きびしく警戒する必要があると考えます。

●大量動員の調査は「新宿高校事件」から
 実は、大量の職員を動員しての教育庁の立ち入り調査は、性教育問題を理由とした都立七生養護学校への調査が初めてではありません。
 97年9月に教育庁にファックスで届いたとされる、新宿高校教員からの一通の内部告発文書をきっかけに、「習熟度別授業のための教員加配が不正に運用されている」実態が浮かび上がり、校長などを集めて調査したが、らちが明かないため、教育庁が真珠湾並みの奇襲作戦に出たものです。
 翌98年1月6日、松の明けるのもそこそこに、100名の管理職がいっせいに都内208校の都立高校に早朝から立ち入り、「職務命令」をかざしながら、現場で使っている「時間割表」を全てコピーして集め、都への届出との違いを洗い出して、2月20日までに合計で校長や教頭で減給4名、戒告16名など185名の処分、教育庁関係で戒告1名など11名の処分を行なったもの。
 さらに、これと並行して、「都立学校等あり方検討委員会」を設置し、それまで論争が続いていた職員会議の位置づけについて、あくまで校長の「補助機関」に過ぎないとする規定を「学校の管理運営に関する規則」に明記し、以後、「校長のリーダーシップ」という名の教育庁主導の支配のしくみを教職員に押し付けることになったのです。


●統廃合反対運動を封じ込める役割はたす
 まさにこの時期は、97年7月に都立高校208校を、少子化を理由に三〇校程度統廃合する「高校改革」の第一次実施計画案がだされ、9月に決定が強行されて、都民的な反対世論が巻き起こりつつあったときでした。
 「新宿高校事件」は事実として、この統廃合反対世論の中心のひとつとなるべき高校教員の運動に大きな痛手となり、また学校内部での校長と教職員との間にくさびを打ち込み、マスコミによって、「こんないい加減な運営をしてきた都立高校を”改革”するのは当然」という、中味抜きの都教委への応援歌の大合唱を許す結果を招いたことは間違いありません。
 今回の、障害児学校への一部の議員の乱暴で理不尽な質問に端を発した「七生養護事件」ともいうべき事態が、いま紹介した「新宿高校事件」と細かい点を除けば、きわめて酷似していることに、私は注目する必要があると思います。

●これまでの教訓を生かして
 都立高校統廃合とのたたかいは、いまも粘り強く広がっています。しかし、これまでの教訓を生かせば、年内にも決められようとしている障害児教育の見直しについて、障害児のための充実・発展に本当に役立つものにさせていくうえで、「七生養護事件」とのたたかいは重要な意味を持っていることも、肝に銘じておくことが大切ではないでしょうか。

*「新宿高校事件」については、教育庁寄りの立場から「東京都の学校改革」という記録文献が都政新報社から発行されています。


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