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はじめ通信・子どもと教育のはた0517

急速に全国に広がった少人数学級
文部科学省も「3万人まで定数活用を認める」と。

●以前お知らせした文部科学省の教員加配定数の弾力的適用方針を受けて、この4月から少人数学級に踏み出す県が一気に増えて42道府県まで広がりました。昨年度は30道府県、その前年は20府県前後でしたから、この足掛け3年間で1・5倍化を2回くり返してきたことになります。いまだに実施しない4都県が石川、岐阜、香川、佐賀、そして東京です。(以前43道府県と報告したことがありますが、石川県で昨年末の文部科学省の問い合わせに定数振り替えを予定すると回答しましたが、内部検討を通じて今年は実施を見合わせたとのことです)

●ここまで実施県が広がったのには、幾つか決定的な理由があります。
 第1には、国民的な世論と運動のたかまりです。
 少人数学級制度は、学校制度の中でも最大の懸案事項であることを、教育関係者なら誰もが知っていますが、マスコミではあまり話題になりません。にもかかわらず、各県で広がってきたのには、「ゆきとどいた教育を求める3000万人署名」運動の、各県での粘り強い取り組みがあります。
 たとえば福島県では、3年前に全県のPTAがこの署名に協力を表明して一気に広がり、ついに02年県議会で自民党までが実施を求め、知事が約束するに至りました。「衰退する市町村の活性化のためにダムや空港や港湾につぎ込んだムダ遣いの公共事業が自治体財政を圧迫する中で、地域の未来を託すのは教育しかないという思いが次第に広がったのでは」と、署名運動のリーダーは分析します。

 第2には、保守的な知事の中にも、教育に関しては学校現場の声を聞く姿勢が広がってきたことです。東北地方で少人数学級を広げる先鞭をつけた山形県知事の、「橋や道路の1本や2本、あきらめたとしても、教育の予算を削るわけには行かない」との発言は有名になりました。
 また、田中康夫長野県知事が、議会で自民、公明、民主から不信任にあいながらも2選を勝ち取った要因には、無駄な公共事業を削っただけではなく、その財源を35人学級に振り向けたことへの有権者の支持が広がったことがあるといわれています。

 第3には、昨年暮れの文部科学省による、少人数指導向けの教員加配定数の少人数学級への弾力的運用を認めた措置があります。この制度を活用して初めて少人数学級に踏み出した県が11県に及びます。

 第4に、学級定数改善より少人数指導を優先して進める根拠としてきた、「学習集団としては少人数は効果的だが生活集団としての学級には一定の人数が必要」とか「習熟度別のグループでの学習がより効果的」などの理由は、実際には「生活集団と学習集団は分けるのは困難」「生活集団も小さいほうが子どもにプラス」「習熟度というより事実上能力別学級となり差別感が生まれ、学力格差も固定化される」などの弊害のほうが強く指摘されるようになってきたこともあげられます。最近、佐藤学氏のように「能力別の教育システムをとった欧米ではいずれも教育改革に失敗し、全体の学力低下が深刻になって、さまざまな能力の子ども集団による学習システムに戻しつつある」と、キッパリ指摘する専門家も現れました。

●5月14日には、都議団と国政選挙予定候補による文部科学省への30人学級実施の申し入れが行なわれ、国の担当者からも、かなり突っ込んだ見解が示されました。
 文科省は、来年度まで少人数のための定数改善を予定しており、全国トータルで5年間で約3万人定数配分する枠内ならすべてを少人数学級編制に活用しても良いとし、今回はその申請を8月末ごろには受けたいと意欲的でした。東京では毎年小240人、中150人ほどが定数配分されており、この定数を活用すれば、学級崩壊が多いといわれる小学校低学年についての学級定数改善は可能になります。

●都は少人数指導の学習効果を強調しますが、現実には根拠を持った少人数学級との比較検討は出来ておらず、やろうともしていません。
 わが党が、予算議会の代表質問で提起したように、小学校1年生で、仮に40人近くのクラスになった場合、「動物園状態」といわれるほど、ほぼ確実に通常の学級生活は成り立たないといわれ、その原因も、”小1プロブレム”と言われる子ども全体の発達心理の社会的な遅れにあることなど、かなり解明されてきているにもかかわらず、「学級定数で何人が適切という定説はない」というばかりです。
 文部科学省が、新たな学級定数を提案すれば、それに従わざるを得なくなるでしょうが、他の県の首長や教育長が、県民や学校現場の実情を受け止めて、国に先駆けて県の財政負担も覚悟で定数改善に踏み出していることに比べて、子どもの学習環境に、余りに冷たいと言わねばなりません。

●今後は、学校での子どもの様子を身近に受け止められる区市町村の教育行政が、これまでも「都独自の少人数学級の実現を」求めてきた観点から、具体的に来年度の少人数加配の定数を弾力的に活用する意向を都に対し明確にし、都教委が無視できない世論を広げることが、大きな鍵を握ることになるでしょう。

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