トップページへ  はじめ通信目次へ  らぴっどコーナー目次へ 

はじめ通信・冬から春へ0409
日本人拘束のニュースから20時間
限られた時間の中で緊急街頭演説

●ついに恐れていたことが起きてしまった、イラクでの日本人の拘束人質事件。わが党は、昨日の夜に国会で志位和夫委員長が見解を述べていましたが、本日、改めて下記のような緊急申し入れを、小泉首相あてに行いました。

●申し入れの結論は、もちろん、政府の行動によって、民間日本人の犠牲者を出すことのないよう、自衛隊の撤退を今こそ決断すべきというものです。
 かねてからわが党が警告していた危険が現実のものとなったものであり、また事件を起こしたテロ集団が、金銭などの利益供与を求めておらず、したがっておそらく交渉する意思を持っていない集団であり、かつ正体が不明であるとすれば、3日の期限が切れても政府には事態打開の決め手がないことが十分予想されます。
 よって日本人救出のためには政府の自衛隊イラク駐留への固執を捨て、撤退の意思を内外に示し、実行することが最後の切り札とならざるを得ないのです。

●そう言ってもこの24時間は、日本国民の大多数が、矛盾する二つの感情の間で揺れ動かされた一日だったと思います。それは一方での武装集団の卑劣なやり口への怒りと、それに屈するわけにはいかないという思いであり、もう一方ではこの要求に従ってでも3人の若者を救わねばならないという思いです。決して単純に割り切れるものでないのは当然です。

●きょう各テレビ局の報道を見ていて、街頭インタビューやファックスや電話のアンケートなどの結果が、多くのテレビ局で「この際、自衛隊は撤退すべき」という意見を多く紹介していたのに、あるテレビ局に限っては「危険を承知で行った自己責任の問題であり、自衛隊派遣と関係ない」などの意見を多数の声のように紹介していました。評論家まで「ここで安易に撤退すれば日本人の拉致を誘発する」などと述べていました。
 今後、この種の議論がマスコミでは増えていくと思います。

●この論理を押し通して、結果として3人の犠牲という最悪の事態を招いた場合、「自衛隊派遣継続」派の主張は「自己責任」から一転して、無実の民間日本人を殺したテロリストを許すなという大キャンペーンを張り、すでに憲法を踏みにじって派遣されている自衛隊の行動を、日本人を殺害したテロリスト捜索など、軍事的にエスカレートさせようとする可能性が十分あると思います。憎しみの連鎖と、暴力の応酬による戦争の泥沼に、日本全体が引きずり込まれることになりかねません。

●自分自身として複雑な思いを抱えつつも、自衛隊イラク派兵に反対を貫いたわが党としていまこそ訴えるべきことがあると決意して、夕方の赤羽東口の街頭演説に臨みました。また緊急の国会向け署名も取り組みました。
 スクランブル交差点や商店街を行きかう人たちの表情も、非常に戸惑っているのが感じられました。しかし、あえて戦争の道を好んで選ぶのでない限り、わが国のとるべき選択の道は一つしかないのは明らかです。我々がまず、腹を決めねばならないのです。
 スペインでは、数百名のテロの犠牲を出し、当然テロリストの捜査・追及を厳しく行うことと同時に、イラクからの撤退という冷静な判断を、国民の総意として行なおうとしています。60年前、ピカソの「ゲルニカ」にも描かれた内戦で膨大な犠牲者を出し、以後数十年も歴史にその傷を残したスペイン国民の選択にこそ、学ぶべきだと、私も考えます。

●日本共産党の緊急申し入れは、以下のとおり。

緊急申し入れ
一、八日、イラク国内で、日本人の民間人三人が、「ムジャヒディン旅団」をなのるグループによって拘束され、自衛隊をイラクから撤退させなければ三人を殺害するとの脅迫がなされるという重大な事態がおこった。
 NGOやジャーナリストなど民間人を人質にし、要求が入れられなければ殺害すると脅迫することは許されない蛮行である。
 日本政府が、拘束された三人の安全と解放のために、あらゆる努力をつくすことを、強く求める。

一、同時に、政府がそうした努力をつくしたとしても、解放が実現されず、政府が自衛隊の派兵継続に固執するなかで期限が切れた場合、犯罪グループの予告どおりに、日本人の生命が犠牲にされる可能性があることは、否定できない。三人の日本人の人命は政府の行動にかかっている。
 私たちは、政府の行動によって、日本人の生命が失われてもやむをえないとする立場は、絶対にとるべきでないと考える。

一、政府は、「撤退する理由はない」としているが、日本人の生命を犠牲にしてまで、派兵継続に固執する「大義」があるだろうか。
 政府は、「人道支援のため」というが、イラク国民への人道支援は、日本もふくむ多くの国々のNGOやボランティアによって、おこなわれていた。そして自衛隊派兵が、イラクで人道支援にとりくんでいるNGOやボランティアを、危険にさらす結果となることは、かねてから強く危惧されていたことである。
 現に、今回の事態は、人道支援にたずさわってきた民間人の生命にかかわる深刻な問題となっている。「人道支援のため」という口実で、人道支援にたずさわってきた民間人の生命を犠牲にするようなことがあってはならない。

一、さらにイラク情勢の劇的悪化によって、政府がくりかえしてきた[戦闘地域には派遣しない」という口実も、適用しない状況となっている。
 現在のイラク情勢は、イラク国民全体が米英軍主導の軍事占領支配に抵抗の動きを強め、占領軍がこの動きにたいして武力弾圧をくわえるなかで、イラク全土にわたって戦闘が広がる、きわめて憂慮すべき状況となっている。自衛隊が派兵されたサマワでも、迫撃砲のような砲弾が打ち込まれるなど、自衛隊を標的とした武力攻撃がおこっている。
 政府は、イラク派兵法の審議のなかで、「近くで戦闘行為がおこるなど、非戦闘地域の条件をみたさなくなったら撤退する」と、くりかえし言明してきた。この言明にてらしても、自衛隊派兵に固執する根拠は、おおもとから崩れている。

一、大義も根拠も崩れた自衛隊派兵に固執するという政府の行動によって、日本人の人命をそこなうようなことがあっては、絶対にならない。
 政府が、すみやかな自衛隊の撤退の決断をおこなうことを、強くもとめるものである。

内閣総理大臣 小泉純一郎殿
日本共産党幹部会委員長 志位和夫

トップページへ  はじめ通信目次へ  らぴっどコーナー目次へ