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このお話は、ジャージレッドさん作『妖精的日常生活』の設定を基に使用しております。
しかし、一部で作者独自の設定があり本編とは離れております。その所をご了承下さい
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夏にも近づく暖かい日、やっと学校にもなれて気の緩み始める時期
朝の通学路を僕と一人の女の子が学校に向かって歩いていた。
「ねぇ、
先を行く女の子が、僕に向かって語りかける。
僕の名前は、
この春から高校に通っている高校生だ。
勿論、男に決まってるさ。まあ周りはそうは思っていないようだけど(汗)…………
なんせ僕の身長は153cmしかない上、『僕』って言葉を使っている、そして細い顔立ちとくれば仕方ない。
ボーイッシュな女の子みたいといわれ、しかも男からラブレターなんてもらう始末。
思わず『僕はノーマルだぁー! 』なんて叫んでしまったぐらいだ。
え?だったらなんで、『僕』って言い方だけでも変えなかったか?
その原因は隣にいるブツブツと「いいんだ、どうせ言っても聞いてくれないんだもん、朋夜ちゃん」などとぼやいている女の子。
僕の幼なじみでお隣さんの『
結構おとなしいタイプで、触ると折れそうな細い線を持った京人形みたいな女の子。
つやのある黒髪が切りそろえられ、見た目守ってあげたくなる。だから学校内じゃ結構人気があるらしい。
らしいというのは、僕がまったく気にならないからで……………
特筆すべきはその性格。唯我独尊、天然ボケ。
この『僕』という言い方もその一つ。一時期、俺という言葉遣いをしていた。
彼女曰く、「朋夜ちゃんにその言い方は変だよぉ〜」と元に戻されてしまった。
こうと決めたらそれを押し通す。それも変なところで使うから天然ボケ。
本人自覚なしときたもんだから舘 ひろゲフ、ゲフン、タチワルシ。
といっても、それ以外は普通の女の子だ。普通じゃない女の子ってどんなの? って突っ込みたくなるが。
だから、下駄箱の中にはお約束が多いのも事実。僕はそれを奇跡と呼ぶ。
「なんか失礼なこと、思ってない? 」ギク! お前はテレパシストか! なぜ考えてることがわかる?
なるべく、平静な振りをしながら、
「どうしたんだ? 香奈」
と聞いた。
しかし香奈は答えない。?、何、何。
そう思い、前を見ると、小さい子みたいにむくれている香奈がいた。
「うぅ〜 香奈って言った〜」
ヤバ! 僕は冷や汗を流しながら、
「えっと、香奈ちゃん?(^_^;)」
「…………………」
「おーい、かーなちゃん」
「……………………」
「…………ごめんなさい」
「宜しい」
彼女は『ちゃん』付けしないと答えてくれなくなる。
しかも、これが厄介できちんと言い直さないといつまで経っても口を聞いてくれない。
「…………で、香奈ちゃん。どうしたのいったい? 」
香奈は言いづらそうに
「ううぅ〜 実は、この前の手紙のことで………」
「ああ、あのラブレターの事? 返事をくれってやつ?」
その問いに香奈はうつむいて
「断りたいんだけどね………あの…その」
「つまりは。また僕に付いてきて欲しい、と」
香奈は無言でコクンとうなずいた。
嫌なのは分かる。表面上しか見ていない奴ばかりだからな。
言い方は悪いがまずは友達から始めるのが当然だろう。あくまで個人的な
だからと言って、
「なんでいつも僕なんだ?たまには香奈ちゃんが一人で行けばいいじゃないか!
大体…………えっ? 」
そこまでいった僕は体が変な浮遊感にとらわれた。
体勢を整えようとしてもままならない。そして目の前が暗転した。
目の端に叫んで駆けてくる香奈を見ながら…………
「はぁ」
僕の溜息は白い天井に消えていった。かといって見慣れた天井でもない。
ここは、病院。すでに入院してから一週間が経っている。
あれから毎日、目まいが続き、結局、原因不明のまま。
学校行けないのが辛いが、かといって暇でもない。香奈やその他友達が見舞いに来てくれるからだ。
その中で気になっているのが加奈の元気のなさ。
幼なじみが倒れたのだから心配なのは当然だが、目の前で無理して笑顔を作っている。
? 何で?
ボーっとした頭で考えながらウトウトとしていた僕の耳に偶然というか、お約束というか。
看護婦の話が飛び込んできた。
『404号室の霧斗さん、原因不明の病気ですって? 』
『ええ、持ってもあと一ヶ月ですって、まだ若いのに可哀そうねぇ』
まさか、僕があと一ヶ月の命だって?
でも、それなら香奈の無理した態度も納得できる。
っっていうか、お前ら看護婦だろ?人の病室の前で大声で話すなよ…………
なんか妙に落ち着いているな。
そんな時に相変わらず無理をして元気のない香奈が入って来た。
「朋夜ちゃん、元気してる〜?」
「ま、何とかな。学校の方はどうなってる?」
なんとか、平静を装いながら話せているみたいだ。
「相変わらず。やっぱり朋夜ちゃんがいないとつまんないよ」
などと下らない話をしてる内にお互い、話す事がなくなってしまった。
僕は思い切って聞いてみる事にした。
「香奈ちゃん。僕、ナガクナインダロ? 」
しまった。自分の声がロボットみたいだ。
その言葉にピクリと肩を震わせる香奈。見ると顔が蒼ざめている。
おいおい、香奈。そんな顔をされた日にはこっちが冷静になるだろう?
「そっか。しょうがないな。ま、残りの時間せいぜいあがいてみ『……何でそんなこと言うの? 』………」
僕の言葉は香奈によってさえぎられた。
そ、そのセリフはまずいって! 著作権の問題が!(笑)
「朋夜ちゃんがいなくなったら、私は誰を好きになればいいの? 誰も好きになれないよ! 私は朋夜ちゃんが好きなんだから! 」
「香奈ちゃん…………」
幼なじみの突然の告白。答えることが出来なかった、答えられるわけないじゃないか!
死にゆく人間に答えられる筈もない!答えることも出来ないままに…………
僕の体は………弱っていった。
2週間後、僕は白い病室の中、意識が朦朧としていた。
そばには泣いている気配の香奈が手を握っている。隣には家族もいる。
「香奈ちゃん。いるかい? 」
「…………うん! うん! ちゃんと傍にいるよ! だからしっかりして! 」
時折、途切れそうになる意識を無理やりに繋ぎ止めて言葉をつなげる。
「香奈ちゃん、僕も香奈ちゃんのことが好きだ。」
それが、彼女にとって辛いこととなっても僕は彼女に伝えたかった。
家族に向き、続けて言う。
「父さん、母さん、それに、有貴(ゆき)。親不孝の息子で悪かったね。香奈のことを頼んだよ。」
「何を言っている! だったら生き延びて親孝行ぐらいしてみろ! 」
「朋夜! 」
「お兄ちゃん! 」
「意地でもそうしたかったけどね………ちょっと疲れた…………よ……」
そうして意識が途切れそうになる瞬間、医者の
「昏睡状態に入りました」
の言葉とともに意識を失った。
僕は暗闇の中にいた。
ただ、浮かんでいるだけ。死後の世界?なんちったりて。
こんな事態になったのに結構、落ち着いているもんだ。
香奈に好きだって言えただけいいかな?
などと考えていると、
『ずい分と落ち着いていますね♪ 』
何処からともなく、歌うような声が聞こえてきた。
辺りを見回すが姿は見えない。
「誰? 」
『始めまして♪ 私はアクエスと申します♪ 同じ魂の波動を持つ方よ♪私は異なる世界より呼びかけております♪
私はあなた方の世界でいう妖精と呼ばれるモノです♪ 』
妖精?妖精なんているはずが………そういえばテレビの【奇特情報 あなたは見た!】って番組で
妖精になってしまった人達を紹介してたっけ。妖精アイドルの坂牧深雪ちゃんが特別ゲストで来た奴。
でも詳しくは知らないもんな。
『納得して頂けましたか♪ 』
はい♪ って合わせてどうする!
『…………面白い方ですね』
い、今、本心から出たろ!
『もうすでにご存知とは思いますが、私たちの世界は侵略者の手によって
誤魔化すな!
『そして、私たちもこの危機を乗り越えようと戦いに出ました♪ しかし、私たちが侵略者に近づこうとするとその活動が低下してしまいました♪ 』
まぁ、いいや。おとなしく聞いてあげるよ。
『ありがとうございます♪私達自身は非力なのでこのような状態に手を打つベく、召喚の技術を使って様々な世界より生き物、
それも力があり出来るだけ高い知性を持つ存在を呼び寄せ侵略者と戦おうとしました♪ 』
じゃぁ、戦いは優勢なんだ。
『いいえ、どの生き物もその侵略者の前に出ると活動が低下してしまいました♪ そして、私たちは最後の手段として伝説の中にある人間を召喚することにしました♪ 』
人間が伝説の存在だなんてどういう世界だよ。
『さすがといっては何ですが、伝説の存在だけにさまざまな世界に意識を飛ばしてやっとの事で人間を見つけることが出来ました♪
私どもは喜んで魔法を行おうとしました♪ 後は召喚の呪文を唱えるだけ済む筈でした♪
しかし妖精の中でも最高とよばれる使い手でも人間を召喚することが出来ませんでした♪ どうやら人間はその意志により召喚の魔法を
キャンセル出来るようです♪ 』
へえ。
『そこで、夢や枕もとに立つ等の方法を使い、私たちの危機を知ってもらい協力を仰ぐことにしました♪ そうして新たに召喚をしました♪ 』
まぁ、当然だな。
『召喚は成功しました♪しかしそれは一部分のことに関してでした♪ なぜなら召喚できたのは人間の肉体のみでした♪私たちは不幸な事に協力して頂いた人間を殺してしまったのです♪
これでは、侵略者と戦うどころではありません♪ 苦労を重ねた上私たちはお互いの肉体を交換することでその問題を解決しました♪ 』
えっとつまり………
『そうして手に入れた肉体はほかの生き物よりは脆弱でしたが侵略者のそばに行っても其の活動が低下することはありませんでした♪ ただ、残念なのが肉体を交換した妖精は召喚術を使えなくなってしまうということです♪ 』
それって、元に戻れないって事?
『はい♪ また人間の脳に残っていた記憶によって侵略者が機械生命体であるという事がわかりました♪ 戦えることがわかり、
私たちは同様の方法によって召喚しました♪ 』
………………
『戦況は相変わらず苦しいもので、中には詐欺まがいの方法を使う人もいましたが♪ 』
おひおひ(汗)
『私たちは追い詰められています♪ 最近は民間妖精だけに留まらず、王族や貴族などの位の高い妖精も召喚を行うようになりました♪ そこでお願いがあります♪ 』
まさか…………
『はい♪ この召喚はお互いの魂の波動が合うものでないと成功しません♪ 私、アクエスはあなたの肉体を侵略者と戦うために希望いたします♪
もしもよろしければあなたのお名前をお聞かせください♪ 』
ち、ちょっと待って!
『はい♪ 』
君の言うことが正しいとして、それならこんな原因不明の病気で死にかけの肉体じゃ困るんじゃない?
『原因不明ではありません♪ それは魔力の暴走によるものです♪ 』
魔力の暴走? 人間に魔力なんかある訳ないじゃない!
『いいえ、たとえどんな生物にでも魔力は存在します♪ ただまれにその力が大きな方がいます♪ 』
それが僕?
『はい♪ しかし、人間の体は妖精と違い魔力をうまく扱えるようには出来ていません♪ その為に魔力が暴走を起こしすぐに亡くなってしまいます♪ 』
しかしそれなら僕はすぐにでも死んでもおかしくないんじゃ。
『普通だとそうです♪ でも心当たりがありませんか♪ あなたは水を自由に出来るじゃないですか♪ 』
なぜ、知ってるの?
『しかし、このままではあなたの肉体が滅んでしまいます♪ その為取り急ぎ召喚を行いました♪ 私ならばその暴走を抑えることが出来ます♪ 』
どうしてそこまで………
『二度と会えるかわかりませんが、気に入ったでは駄目ですか♪ 』
……………ありがとう。僕の名前は霧斗朋夜。
『有難うございます♪ 霧斗朋夜様♪ 』
『我、妖精族のアクエスおよび人間族の霧斗朋夜は、その互いの肉体を交換し、心を移し替えることに同意せり♪
この同意のもと我は召喚術を行うものなり♪ 異世界の壁を越え、生きとし生けるすべての存在の親であると同時に子である創造者よ♪
我に力を♪ 霧斗朋夜に祝福を♪ いざ来たれ♪ いざ行け♪ 命の入れ物、魂が
『相互換身用召喚魔法陣展開♪ 次元通路確保♪ 召〜喚〜♪ 』
僕の意識が白くなる瞬間、アクエスの本心が聞こえた………
『本当は、一目惚れだったんですよ♪ 』
目を開けると見慣れた病院の天井だった。
「あれ?何か夢を見たような………」
やけに大きく見える点滴…………点滴!?
がばっと飛び起きると目の前に200m走でも出来そうな純白のシーツが広がっている
。いったい何が…………。考え込む僕の脳裏に先程までの出来事が蘇ってくる。
そうか、意識不明になってアクエスという妖精に出会ったんだっけ。そして、僕の命を救うために召喚を……………。
生きているのか。僕は生きていられるんだ。そう思うと自然と涙がこぼれてきた。
アクエスは無事なんだろうか……………、やめ! 今の僕に出来ることはこの体で精一杯生きる事だ!
この体で……………そう言い聞かせながら僕は体を見た。体を?
「何だ!これぇぇぇぇぇぇぇ! 」
僕の体には見慣れないけど見慣れた二つの小さなふくらみがあった。
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