最新の記事
過去分抜粋
取扱ジャンル以外

トップへ戻る



※創作したり雑談したり、のページ。作品更新は超ゆっくりペースです。すみません。※


11/20
沈艦で短いの→読めてない幕末明治本読みつつ山県と桂で→読めてないry南北朝で

予定。
他犬夜叉で短いのとローマでも何か書けたらいいな。


11/7
あげた。またちょっと整理。

アグリッパ2巻きたー!美少年がおるでー
シスコンブラコンうめえ!

11歳ではあまり濃厚なプレry
だが問題ない!


11/7■「兄」■
ジャンル:戦国 登場人物:竹中久作、斎藤飛騨、安藤守就他


とたとた、と廊下を駆ける音が、一つ所に集まっていく。
「おい見たか、あの御仁の顔をよ。」
「見たとも。飛騨殿が、いつも嗤っておるもの。」
「見ずばなるまい。」
稲葉の城の小姓達が、二人三人集まって、くすくすと笑いつつ、囁き合っている。
「どのような御仁かと思うた。」
「青瓢箪とな?」
「そうかもしれぬが。」
「嫉妬よ、嫉妬。先代の殿が、お小姓であったあの方と飛騨殿とを並べて、えらく片贔屓にあの方のことばかりを褒めたというでは
ないか。」
「怨念が籠っておるものな。ねちねちと。」
「曲事多きお方よのう、飛騨殿も。」
「しかしお気の毒よな、あの御仁……竹中殿もよ。殿の寵が飛騨殿の上にある内は、冷や飯を食わされること必定よ。不思議と、殿
も平素から、竹中殿の話を聞くに冷淡な……嫌っておられるのだろうかと感じ取られる節がある。」
前髪を残した少年達は、まことに姦しい。花びらのような唇をひらひらと、よく動かす。
「やあ、待て。」
世の中の悪意というものを、彼らは知らない。何事に対しても無邪気で、裏側というものがあることを知ろうとしないから、上っ面
だけの行動を取って、だからすこぶる無責任である。
「久作殿だ。」
彼らはみな口を噤んで、自制するかに見えた。久作は、竹中家の家督を継いだ半兵衛重治の実弟だからである。
立ち姿の清らかさは、城中一であろう。兄とはまた異なる芳香を放っていると、褒めそやす口も多いのだが、当人はいたって質朴な
人柄で、鼻にかける風もない。年長者に対しては従順で、少小の者に対しては包み込むように優しい。可愛がられ、慕われる。小姓
達の間でも、彼に悪意を持っている者など、まずはいないと言ってよいのだが。
「久作殿、兄上はもうお帰りか?」
「いや、まだでござる。それがしは……。」
いつも真っ直ぐな瞳が、少し躊躇う。
「や、分かった。」
察しのよい一人の小姓が、これを安心させるように笑った。
「油を売っていつまでも帰らぬ我らを、迎えに来られたのであろう。」
「何、油とな?」
「おお、すみませぬ。我らついつい。」
「久作殿の兄上がお出でになるということで。みなこの場にいる者は、お顔を知りませんでな。」
「飛騨殿がいつも……いろいろと。」
なあ、と少年達は顔を見合す。
久作は、頭を下げた。下げる必要はなかったが、心情として、下げざるを得ないものがあった。その事についてはこれまでに、とい
う程度の意味が、言葉にすればあったろうか。
「飛騨殿は、貴殿にも意地悪なことを仰ったりするのですか?」
「いやいや。」
久作は、苦笑する。中でも幼い小姓の言うことであったから、あまり強(こわ)い態度には出られない。そんなことはない、あの方
は元来、誰に対しても少しく棘を含んだ物言いをされる方だ、意地悪というのではなくて、あれは口癖でいらっしゃる、と言いつつ
みなの背を押し、詰め所へ戻るよう促したのだが、そのように優しい態度であるから、社会性というもののすこぶる未成熟な少年達
には、いよいよ放埓な態度に歯止めがかからなくなる。
「久作殿は、兄上のことをどう思われているのですか?」
「どう、とは。」
「兄の、半兵衛殿と申される方は、病弱で、万事に慎ましい方で、なよやかなご婦人のような……ということを聞きましたので。竹
中家の中で、家督を継ぐのは久作殿の方が良いのではという、そんな話もあったやに、聞いているのですが。」
久作は、笑顔ではあった。年端の行かぬ子達に、怒るつもりはなかった。
「これ、そういう話はあまりしてはならぬと、父上が仰っていた。」
幼い内には幼いなりに、少しは分別臭いことを言う者がある。
「でも。」
「久作殿が如何に立派なもののふでいらっしゃっても、長幼の序を乱すというのは、やはりあまりよくないことよ。」
「兄である人が、阿呆であっても?」
「阿呆であったら……。」
言葉を、失いかける。
「それは、阿呆の度合いによるのだ。」
「度合いとな。」
「そう……。」
久作は、そっと溜息を吐いた。
「さあさあ、戻りましょう。」
久作殿、とまた子ども達は言う。先ほどの問いに対して答えを貰っておらぬという、ただそれだけの、知りたがるばかりの声である。
「兄上のことを、どう思われているのですか?」

兄、半兵衛重治は、ひどく久作のことを可愛がっている……と久作自身、思う。歳が近いために、何か特別に彼の人の琴線を打つも
のがあるのだろうか、と思うが分からない。久作とて、兄は慕わしいが、時折り、戸惑う。
兄、半兵衛は、これは世上に言う如く、婦人の如く優しい容姿をした人である。皮膚は薄く、血管が透けて見える。張り付く骨はと
びきり細く、女といえどもこれほど女らしい姿をした者は、実際のところあまりあるまいと思われる。
(あの人は、綺麗な人だ。)
七つ八つになったころ、突として、そんなことを思った。
兄に馴染むというよりは、兄という名の優美でたおやかな何者かに馴染んでいる、という心境を長い間、持っていた。重治はその頃、
質として斎藤家の居城にあることが多く、あまり会うことがなかった。それに、久作にはもう一人、兄があった。兄という存在は、
その人で、満たされていた。
(あの人は、何だろう。)
兄でしょうか、とある時、そのもう一人の兄である人に尋ねた。
「お前のことを、可愛がっている。」
「嬉しいのですが。」
「兄……という感じはしないかもしれない。婦女のようだから。」
「それも、あるかと。しかし、どうも……。あの人は、わたしの頬を吸ったり、抱きついて、あちこち撫でたりしますでしょう?」
目の前の兄は、それをしない。頭を撫でてくれるくらいだが、それで、久作は嬉しい。
「あまり会わぬから。」
「わたしとて、懐かしくは思います。」
「母上は、幼いお前の口を吸っていたよ。」
「母と兄とは、違うでしょう……。」
このもう一人の兄というのは、大雑把な人で、戦場では勇猛なのだが、館にあってはどこか眠たげで、押しても引いてもあまり手応
えがない。温顔で、何事にもうんうんと頷くから、久作には大好きな兄であるが、この時のように、何か一つの答えを欲する時には、
やんわりとした物言いが、綿の海の中をくぐらされているようで、もどかしい。兄上、兄上、と折々目を覚まさせるように強い口
調で呼んでみるのだったが、変わらず、
「久作、兄と言ったって、いろいろあるものだよ。考えてもみなさい。今我々が話題にしているあの子も、お前も、わたしにとって
は弟ではあるが、いずれもかわゆい弟ではあるが、何とも、違う。そのように、兄と言ったって、違うものだよ。」
正しいことを、言っているには違いない。しかしすっきりとしない。久作にとって、聞かされたいのはそういった話ではない、とい
うことだ。
「兄上は、」
と拗ねた顔で言った。
「久作の言わんとしているところを、分かっておられませぬ。」
「すまぬの。」
「兄上は……。」
言わんとしているところを、分からせたくて、言わんとしたが、久作には結局、聞きたい答えも、何を問いかけたいかということす
ら、分からなかった。兄でしょうか、あの人は兄でしょうか、と最初に問うてはいたものの、それは本当に問いたいこととは違う気
がした。
(年若い故に……。)
久作は、悔しさを感じた。年若い故、物を知らぬ故、自分は問答らしい問答すらできないのだ、と思った。
俯いた久作の、その頃は随分と小さかった頭を、兄であったその人は、優しく撫でてくれた。次兄とは違った、ぎゅっと弾力のある
温かい掌を、久作はいつまでも実感を持って思い出すことができた。
竹中重隆。
半兵衛と久作の、二人ともにとっての兄であったその人は、ゆくゆく、竹中家の家長の座を継ぐはずであったが、争闘にまみれた世
の中にあってはありがちなことではあるが、父よりも先に、死んだ。

(兄上は、泣かなかった。)
重隆の遺骨を前にして、正座し、ぴんと背筋を伸ばして深く沈む風であった次兄半兵衛の長い睫毛に縁どられた目許、肩から腕、両
手の指に至るまでの、痛々しいまでにか弱げな様子を、久作は覚えている。
「お泣きになればよいのに。」
気付けば、声を掛けていた。
「疲れてしまうと、少し楽になります。ずっと悲しみの中にあるのは、身体が健康でなくてはできません。」
「精力を消耗するということだ。悲しみというのは、それだけで。泣くことは、必須ではない。」
「でも……。」
「父上は、この数日の間に、老いてしまわれたな。」
久作は、大いに泣いた。重隆の死から、泣かずに過ごした夜はない。今また、眼球がじわりと濡れた。止めることはできなかった。
「兄上。」
席次が、繰り上がった。自分は、二番目の男子になったのだ。
「父上を、お支えしていかねば。」
この白くてほっそりとした人が、いつか竹中家の当主になるのだと、久作は想像した。実感を伴わない、何らの情動も伴わない、酷
く薄い想像であった。
「分かっている。」
「兄上の片腕となるように、励みます。」
「半身となれ。」
お前は、もっとわたしの近くにいてよい。
どういう思いから、兄がこれを言ったか。久作には、いまだに分からない。抱え込むようにして触れてきた兄の身体は意外な温かさ
で、またひたむきさを感じさせる息遣いから、この兄も寂しいのだろうか、とぼんやりとした中に思った。

たった一人の兄とはなったものの、兄であると思う気持ちはまだゆるやかで、相変わらずどこかでは、誰であろう、という疑問を持
ち続けていた。重隆の死により、家督継承予定者となった半兵衛は、間もなく人質としての任を解かれ、代わりに久作が、稲葉の城
へは遣わされることとなる。要は、この兄弟は、あまり接触が密でなかった。
「うらなり殿が、嫁をとるそうな。」
城中でそのように声をかけられたのは、今から半年ほど前のことになろうか。
「飛騨殿。」
「知らぬか。熟れておらぬようでも、男ではあるということか。」
ひどく卑猥な様子で手を動かし、斎藤飛騨は薄い唇をにやりと吊り上げて笑った。この男は、よく半兵衛重治の男として未熟らしい
ところを嗤う。が久作の目から見れば、それは己の姿を嗤っているようなものであった。ひょろりとして、青白い。飛騨守を名乗る
この若者を、男として立派に成長したと褒めそやすものも、あるまい。
久作は、知らなかった。
「そのような話が……?」
と首を傾げた。
「俺の耳はようく聞こえる。」
聞き耳を立てながら生きているのだろう、と幾分冷笑的に思ったが、裏腹に、久作の表情には世間擦れとは無縁らしいひたすらな困
惑の笑みが浮かんで、「わたくしは身内ですので、そうしたことがあるなら、近々知らせが参りましょう。」それまでは……、と頭
を下げた。
結婚。
兄が、と思うと信じられぬような気もするが、年齢を考えれば自然と言える。
(いつかは、あること。)
飛騨守の話は、ただの虚妄ではないかと思った。飛騨自身は本当にそうした話を聞いたにせよ、根はないこと、という気がした。
忘れていた話が、父が死に、兄が家督を相続してこの程、再び現れてきた。相手の娘の出自を聞いて、やはり飛騨の耳が早かったと
いうことだろうか、と驚きとともに思った。
(殿を介して進められていた話なのやも。)
それにしても、肝心の竹中の家からは、何も久作に知らせてこない。
噂は、現実味を帯びていくようだった。そんな中で、渦中の一人と言ってよいであろう人物に、久作は城中で接する機会を持った。
美濃斎藤氏においての重鎮である。安藤伊賀守という、すでに人生の終局に差し掛かった男だ。が、さすがに乱世に生きる男である。
己の種を残すことには本能的に発奮するらしく、稚い娘がいる。これが今まさに、久作にとっては義姉になるかならぬかという、
そういう話柄の大中心となっている人なのである。
「安藤様……。」
「おお、竹中の。」
今来、特段に話し込むということもなかった二人だが。いやこの時とて、さほどに話し込んだわけではない。
「ご機嫌伺いには、もう……。」
「今、済ませて参ったところ。」
「お帰りに?」
「いや、二、三日、逗留を。慌ただしいのには、なかなか身体がついていかぬようになった。」
「何を仰います。」
正面切って、尋ねてみたい。話があるのは、間違いないのだ。その話が、まとまったかどうかが、知りたい。
久作は、ほとんど確信していた。そういえば、思い返せば本当にそういえば、ということであるが、伊賀守は久作と話すに際して必
ず半兵衛重治のことを持ち出した。愛想として言うのではなくて、真実興味を抱いているような口振りだった。この人は兄のことをv
評価しているのだと思い、非常に不可思議なことのように感じた、その感覚を、思い出す。
安藤伊賀守は、竹中半兵衛重治という人物を見込んで、娘を嫁がせようとしているのだ。
(そうなのだろうか?)
確信を持った、と思ったそのすぐ後から、久作には疑念が湧く。

自分は兄を知らぬ。
他人の口から語られる兄は、なおさら知らぬ顔である。
兄とは言いつつ、男とも思われず、安藤伊賀の話は、それ故に不思議であった。
(女は、ああいった人を、好くのだろうか。)
久作は、恋を知らぬ。女の情感の微妙さなど、さらに見当もつかない。
「半兵衛は、面白き子であった。」
いつのことを思い出してか、安藤はそのように述懐した。
「頭の回転の速い子で、よくひやりとした。あの半兵衛を知って、今の飛騨のように、ただ外見だけで女のようだと嗤うことのでき
るものはあるまい。」
久作は頷いた。そうに違いなかった。やはりそうなのだ、と思って口許が綻んだ。
安藤は、兄半兵衛を買っている。だから娘を嫁がせようというのだ。そう合点して、久作はまた頷こうとした。
「だがな。」
それだけではない、と安藤の目は遠くを見る。
「娘が言いおった。」
「何と。」
「竹中半兵衛に嫁ぎたい。」
「……稚い姫と、聞いております。」
「小さい。」
「小さき姫が、そのようなことを口にされるものですか。」
「女とは魔であると、思ったわ。」
呵呵、と安藤は笑った。
それでやはり、安藤の娘は兄半兵衛に嫁ぐと、決まったのだろうか。それを久作は聞きたかった。しかしそうだとしたら、自分には
いっさいの知らせが来ないというのは、どういうことだろうか。正式に決まっておらぬからか。しかしいっさいが決まってから知ら
せが届くというのも、何やら寂しい。
(兄上は、竹中家の当主であり、わたしはそのすぐ下の弟……。)
最も近しい者、頼られるべき者、ではないのだろうか。
年若いからか。
「それで兄は、姫君を、お迎えすることに?」
「それが……。」
決まっておらん、と安藤は唸る。
「決まっておらぬ、とは。」
「致し方ない。」
「まさか。」
家格、というものがある。安藤は美濃の顔である。斎藤家当主の年若さを考えれば、美濃豪族達には安藤は自然、これまでより重き
を加えるものと感じられるのである。
竹中は、木っ端とは言わぬまでも、大河の流れに翻弄される葉舟でしかない。口惜しさを感じつつも、久作にはそのように判じざる
を得ない。大船が、葉舟の如きものに目を留めて、拾ってくれようとしているのだ。
垂涎。
という言葉が頭に浮かぶ。事が決まれば、美濃の零細諸族はこぞって竹中の家に羨望の眼差しを向けるであろう。
断るものか。
とそう思う。
だが兄は、決めておらぬと言う。戸惑って、尻込みしているとも思われない。躊躇いを見せる兄など、この目に映した記憶がない。
「まとめてはみせる。」
「もちろん。」
「娘の、ひたむきさを見せられては。」
「…………。」
それほどまでに、と久作は瞠目する。女は、ああいった人を好くものなのであろうか。

昨日のことである。斎藤飛騨が、拗ねた口つきで久作に絡みよってきた。お屋形は不機嫌でいらっしゃる、そなたの兄がために、す
こぶる不機嫌でいらっしゃるのだ、と言うのである。
「分かるか?」
「いいえ。」
「何と!」
飛騨守は、パン、と両手を打ち合わせた。
「まこと、行き届かぬ兄弟よ。」
「何が行き届かぬと仰せか。」
思わず、久作は声を高くした。
「そなたの兄がよ、今誰と、」と飛騨は己の細長い指を絡み合わせる。「深う、混じり合うていると、思うかよ。」
どういった意味か。
久作は、眉根をぎゅうと寄せた。
どういった意味か。
飛騨守に、質そうと思った、ところを、はっしと両腕を掴まれて、胸の前で束ねるように、痛いほどに押さえ込まれた。飛騨守が、
と思った。腕力がある。全力であろう、腕にすべてを籠めていて、足などは、払ってやれば簡単に転ぶであろう、とも思った。が、
払えなかった。すでにいっぱしの男と自身では感じていても、久作は、まだ背も伸びきらぬ、声も変わりきっておらぬ、赤ん坊のつ
ややかさを肌に残した、少年であった。
「俺も分からぬ。」
飛騨守の声が、久作の耳底を震わせる。
「それは分からぬ。千里眼ではないからの。が、一つ……知っている。」
「何を。」
「声が掠れておる。よい声だ。怖いか。」
「何をご存じだ。」
久作は身をよじった。
飛騨は、皮肉に笑った。腕の力が、不意に緩む。久作はつんのめるように、飛騨から逃れた。骨が、軋みを上げていた。
「つまらぬことよ。お前が知ったとて、何も知っておらぬのと、同じことよ。」
「どうして……。」
顔を上げた久作の上に、飛騨がいた。その後にあったことを、久作は理解しかねた。
唇が、合わさった。飛騨の舌が、久作の口の中にぬめりと入った。
予想もしない。
(唇を……。)
どう逃れたらよいのか、逃れるべきであるのかも、よく分からず、抗おうとする手に力がこもらない。
(唇を吸うというのは……兄が、母が、するのと……。)
剣呑だ、という感じがした。
(嫌だ!)
力を込めて、飛騨の身体を押すと、意外にあっさりと、離れて行った。彼の唾液が、口の中に残っていた。それを、思わず飲んだ。
ああ、と声が出た。その瞬間、なぜか涙腺が緩んだ。
潤んでいく少年の目を、飛騨は、さも当然であるかのような落ち着きをもって、見ていた。
飛騨の手が、久作の頬に触れた。ずいぶんと優しい触れ方で、それによって、久作の心にはざあっと大きな音が立った。
「程もなく、分かるさ。」
飛騨の目は、久作を突き放そうとしている。
「歳月は、その流れを止めぬからの。じき、お前は、男になる。すでに……とは言うなよ。笑ってしまうぞ。そのゆらゆらとした頼
りなげな眼で、男だなどと、認めてもらえると思うなよ。」
すんでのところで、漏れそうになった泣き声を、久作は胸の奥に叩きこむように沈めた。
「兄上は……!」
代わりに、ただ大きいばかりの声を上げた。
「わたくしの兄は、妻を娶るのですか?一番にその話をわたくしになさったは、貴方です。わたしはまだ……何も知りません。知り
たいのです。安藤様の末の姫君と、我が兄とは、夫婦(めおと)となるのでしょうか?」
「久作。」
飛騨の眉間に、皺が寄っていた。針のように鋭い、まっすぐな皺であった。
「そのことはな、申すな。」
「なぜです。」
「あれもこれも、絡み合って、身動きが取れぬ。絡み合っているものの元をたどっていけば、どうやら因となっていると思しきもの
が見えてくる。それが、それよ。」
「はあ……?」
久作の眉根も寄る。困惑を表すその根元から、眉毛が八の字に降りている。
「さっぱりだ。」
と飛騨は天を仰いだ。
「俺は分からぬよ。」
久作は、さらに分からない。
「悪い結果となるのだろうか。」
「…………。」
「俺達は蚊帳の外よな。うむ……そうだ、そなた、兄にはな、何も言ってやるな。いよいよ祝言を挙げるとなったら、さすがに使い
を寄越すだろうさ。文字通り、その当日に寄越すかもしれんがな、あれは、型にはまらぬところが、何とも好かん。頭はいい、恐ろ
しくいいが、何かそれで、この塵界を思うがままに操れるとでも思っているのなら、その鼻っ柱、叩き折ってやりたい。」
久作は、ゆっくりと首を傾げた。飛騨の顔を覗き込む。
飛騨は本当に、半兵衛重治という、竹中久作にとっての兄である男のことを、嫌っているのだろうか?とふと思った。そのような疑
問をどうして持ったかと問われれば、感じ、としか答えようはないのであるが。
久作は、問うた。
「兄のこと、お嫌いですか?」
「嫌いだ。」
簡潔に、飛騨は答えた。

尖って見える背中。常に嫌味を言いたいような首筋。飛騨の言葉とその去って行く後ろ姿とは、久作の中にある幾多の疑問のどれに
対しても、解消あるいは低減のきっかけにすらならなかった。むしろ、それらは徐々に、肥え太ってきているのではなかろうか。
(ああ、何だって?)
少年達の声は、まるで少女のように高くて、子供というものに、性別などあってないようなものなのだと、苦味のある酸っぱい唾を
飲みつつ、久作は笑った。
「お笑いになるのですか?どうしてですか?」
「いいえ。」
首を振る。
「兄のことを訊かれたが。」
「どう思われているのですか、と。」
「そう。」
安藤の娘に、慕われている。女性のような風姿であるのに?
恐ろしく頭の良い子供だったと。
(それは今も、変わらない。)
飛騨に嫌われているようで、本当に嫌われているのかは、分からない。
不意に、飛騨の声が、まるで耳に口をつけて囁かれでもしたように、肉感的に、頭に響いた。
「そなたの兄が今誰と、深う混じり合うていると思うか。」
そんなことを、言っていた。
(誰と?)
安藤の末娘と?
(まだ稚い姫であると……。)
久作は、ほんのりと赤くなった。
(飛騨の言葉は、真実ではない。いつも、人を嬲る。どう嬲ろうかと、本当のことと、誇張したことと、まったくのでっちあげと、
混ぜ込んで、こちらが驚いたり困ったりしているのを見て、嗤っているだけだ。)
そうして生きることしかできぬのだ。
飛騨について、久作はそう思っている。だから、軽んずる姿勢を持っている。
だが飛騨は、まったく愉快ではないらしいことについて、きりりと眉間に皺を寄せて、久作、俺は分からぬよ、などと妙に柔らかい
声で言ったりする。あれは、なんであろう。嗤う準備であろうか。あの顔が、やがていつものように高らかに、嫌味たらしく嗤う飛
騨の顔へとなるのであろうか。どんな過程で、なるのであろう。
(なるものか。)
では飛騨は、嬲ることに日々を費やしているだけの男とは違うのだろうか。

「兄のことは、支えていかねばならぬものとして、思っていますよ。」
「そうですか。」
「みな、そうでしょう。一族の結束こそ、恃みではありませんか。」
「そうです。」
「兄は、頭がよいのです。」
「ああ……。」
「それはそうでしょう。」と一人の小姓が知った顔をする。「でなければ、どうして先代の殿が彼のお人のことを、ひどくかわいがっ
たなどということがありましょう。それに……。」
久作は、その小姓の肩に手を置いた。
「ええ、そうなのです。」
一人一人の肩、小さな頭(つむり)、あるいは背中へと触れていく。
「わたくしの兄は、わたくしにとっての、恃みです。」

口許に張り付いたままの笑みが、寂しかった。
久作は、兄に会おうと、待っていた。斎藤家当主龍興の前を辞してきたところを、捕まえることは難しくないはずであった。下がっ
てきさえすれば、容易に見つけられるはずであった……が、来ない。
(裏から忍んで行くわけもなかろうに。)
外に出て、門の通行を管理する役人に尋ねた。
「竹中の家督を継いだ半兵衛重治殿は、すでに帰途につかれたのでございましょうか。」
「いや、まだでござる。」
そうであろう。そのはずだ。
何を話したいのか、確たるものがあるわけではなかった。家のことや、妻取りのことや、飛騨のことも、聞いてみたい気がした。龍
興とはどうなのか。一城の主となったものとして、どういう思いでいるのかとか、弟である自分は、何かせねばならぬのかとか。妻
を取るという話が、どの程度固まってきているものか知らないが、これまで一度も自分に知らせがなかったことは残念である、とそ
ういったことも、伝えたい気がした。
(わたしは、拗ねているのか。)
詰め所に戻ろうと、廊下を歩いていると、ばったりと、飛騨守に出会った。それは、偶然ではなかった。飛騨守は明らかに、久作を
探していた様子であった。
「いかん。」
と彼は言った。
「まったく、何ということだ。」
「兄は。」
「そなたは子供だ。」
久作は、かっとなった。
「いいえ。」
「後で使いをやれ。書状で、訊きたいことは訊けばいい。何を訊きたいのかは知らぬが。」
「あなたに何が分かると。」
飛騨の脇をすり抜けようとした、その身体を掴まれ、手荒く引き戻された。危うく、久作は壁にぶつかるところであった。
飛騨守は、機嫌の悪そうな顔をしていた。歪んで見える口元からは、幾らでも嫌味が溢れ出てきそうであった。が、彼は、ため息を
一つ吐いただけで、押し黙った。
(怒ってもいいはずだ。)
年長者とはいえ、このように手荒くされて、しかも詫び言の一つもないとなれば、抗議すべきである。武家に属するものだ。竹中の
家を支える、柱の一つとなるべき身なのであるから、断固として、その矜持は表さなければならない。
久作は、口を開いた。強い言葉を、発しようとした。その肩を、はたかれた。衝撃としては弱い、ほとんど撫でて行くようなはたき
方で、諦めのようなものが感じられた。
「行くな。」
と飛騨守は言った。
「後で使いをやれ。」
それは投げやりな調子であった。だが奇妙に、近しさを感じさせる物言いでもあった。

(子供だからか。)
久作は、稲葉山城にいる。
(隔たりがあるから。)
だから、無理がある。
久作は、自身のすべきことを思った。兄を、補佐しなければならぬ。
子供故に、そう思われているが故に、補佐する者としての役目を果たす機会を与えてもらっておらぬのだ、と思った。質は質として、
大切な役目であることは分かっている。だが補佐役を期待される者の役目ではない。それを今自分が負っているのは、ひとえに、
自分が子供だと、それ以外ではまだ役に立たぬであろうと、思われているからなのだ。
(それは違う。)
広げた紙に、墨を吸わせた筆を置く。
このように、己の責務というものを考えている。それを果たせぬことをもどかしく感じている。兄のことを、分かっておらぬと感ず
ることがつらい。あまりにも、我ら兄弟には共に過ごした日々の記憶というものがない。最も支え合っていかねばならぬ、我ら二人
ではなかろうか。我ら二人の下には、他に弟妹があるのだから、質の役目はそれらに譲って、この久作は、兄の傍らにあるべきでは
なかろうか。
(わたしが……すでにこのようなことを自ら考え、兄上に申し上げようとしているこのわたしが、子供だなどということは、絶対に
あるわけがない。)
筆を置く。砥石を手にして、ゆっくりと、丹念に墨をする。
飛騨が言ったのは、単に女を知っているかそうでないかということだ、と思った。それ以外のこととは、思われなかった。
(飛騨も、分からぬ。)
だがそれはきっと、女を知れば同時に理解できる程度のものだ、と思った。
(飛騨など……。)
小者を呼ぶ。
「使いを。」
書状を手渡した時、一瞬、兄に直接手渡したかのような錯覚を覚えた。その時に抱いたのはやはりあの、兄なのだろうか?と問わず
にはいられない感覚。竹中重隆というもう一人の兄に対して持っていたのとは異なる、距離のある、温かさの感じられぬ、曖昧な位
置づけのままの人に対する感覚だった。
(よくない……。)
瞑目する。強く、何かを見んとするかのように強く、瞑目した。
わたしはあの人の弟なのだから。あの人はわたしにとって、いまやただ一人の兄なのだから。
(よくない。)
よくないのだ……、と久作は思った。





11/4
ちょっと整理。

やっと書けたー。
んで近日中にあげますね。


10/9
八月九月にもそれぞれ一回くらい記事あげてると思ってたのは嘘記憶だったのか…

すみません!!
できるだけ作品による更新をしたいと思ってるのですが。まだ上がりませず。お待ちください…

しょーもない近況↓

アニメが終わってから「青の祓魔師」を買う。結果出た症状、
・メッフィーかわいいよメッフィー
・京都萌え!京都萌え!
・蠎さん美人だろおおおおおお(煉骨どはまり前後から続く坊主萌え傾向は健在でした)

ぴくしぶさんでメフィスト絵漁ってたらちょこちょこ一緒に書かれているベルゼブブ優一なるキャラが気になり…
「よんでますよ、アザゼルさん」を全巻買う。。結果出たry
・べーやん!べーやん!べーやん!
・もっさん!もっ
・ル シ フ ァ ー く ん

へうげアニメは安定してる。右近ちゃんさらば。ぐしけんコラぐしけん
ハンター再アニメ化!わたしの住んでる地域では明日から放送開始です!
○HK萌えが相変わらず…なんだろうね、いろいろと特殊性というのか、中の人達も変わってる人が多くて楽しいよ。


7/18
かるーくGAGA様きゃわいい症候群に…
節電はほどほど


てか「アグリッパ」にオクタヴィウス来たこと確認きゃー

え、五月に来てた?
おせええええぇえええ…


いやいやすみません。○HKやら○AGAちゃまやら刺激の多い昨今…

てか美少年なんね。ありがとう内水ありがとうジャンプスクエア
早くコミックスで見たいよ!ひゃっほーい


6/30
ちょっと暑くなるの早い…


「ばくだん!〜幕末男子〜」加瀬あつし作

ということで。
ありがたい情報。幕末は正直すべてを追い切れない…新撰組はなおさらですね。
タイムスリップものは実はちょっと苦手だったりするのです。歴史人物よりもオリジナルのキャラ中心になるのが多いというか、わ
たしが読んできた中ではですね。ちょっとあんまりだったかなあ、というイメージがあるんですが。

8月に一巻発売!
ほんと新連載ですね〜。公式サイトで1話見てきました。そしてネット上いろいろ見てきましたが…む、桂が出そう?
そっちちょっと確認してから…

作品が多い時代になると、自分の好きな人物の扱いを調べてから購入、ってことが多いですかね、正直。
自分の目でぜんぶ見なきゃだめよ!と思いつつ…

幕末はなまじ取り上げられることが多いゆえに、正統派というのか、真正面からこの時代を取り上げたものがほとんどなくなってる
気がします。素材の一つとしていろいろこねくりまわされてるといいますか。ちょっと違った切り口で…と言いつつ、それもまたどっ
かで見たような…というやり尽くされた感があるのがすごいところ。


即お買い上げ!!…とはいかないですね〜うーん

発売日までにものすごいオタ心を刺激されるような情報が出てくれば分かりませんが(笑)
週刊雑誌での連載で、作者さん知られた方ですから、コンスタントにいろんな感想読めるんじゃないかと。そういうところで読むか
どうかは判断していこうと思います〜。

ちょっとずるいですが…
また何か「おっ」という情報ありましたら教えてくださいね〜!


…にしても、この作品について調べる間にもほんと幕末物は次から次へと新しいものが…
○○のことが好きなあなたにはこれ!!!みたいななんか便利な一覧誰かつくってくんないか。


5/30
今度は「大漢風」
お金はこっちの方がかかってるよね?俳優さんの質が全体に高いもの、見た目。虞姫もこれなら絶世の美女と言われても納得できる
し呂后は凄みのある美しさだし、なにげに妹もめちゃくちゃかわいいと思うんだー。日本の女優さんでいうとミムラに凄い似てるん
だが…。もうちょい婀娜っぽくした感じかなあ。正直ドラマ中の女子の中では一番好み。

戦闘シーンとか、群衆大歓迎のシーンとかがしょぼいのはどっちも共通…なんであんな人少ないんだ(笑)

腐的な萌えとしてはですね、項羽と韓信が…
なんかちょっとエロいんだよ関係。項羽は韓信眼中に入れてないんだけども、とりあえずいつでも殺す気でかかってこいや、相手し
たるわな感じで。韓信かかっていくたび押されてんのがね。そのまま変な態勢になってしまって中学生みたく慌ててくんないかなと…
項羽、韓信のこと取るに足らんとは言ってるんだけども、ちゃんと存在を認識しててそばにおいてやってる風なのが。韓信は韓信で
変な憧れみたいなもん持ってる時期あるし。
基本的に武の才能を念頭に置いて互いを見てるのが、まあ一種のストイックさと言いましょうか。触れてんだけども触れてないとこ
ろでのエロさがあると思う。

項羽は色恋にはうぶだと思うんだけど、このドラマでも。武ということになるとおれおれな鬼神だから、そっちの勢いが余っちゃう
感じでのあの韓信どーにかしてくんないかなと。思ってたら韓信楚軍離れちゃったけど…。陳平め余計なことを…

しかしどっちのドラマを見てても思うことですが、
何 で 韓 信 は あ ん な 自 分 の 才 能 に 自 信 持 ち ま く っ て ん だ ろ う   



青二才で空気読めないからとか、それだけで片づけちゃいけない気がする。 


5/23
「歴史街道」6月号表紙“織田信長と松永弾正”

だっけか。
本屋さんの前通り過ぎる時に見えた。今度読もう。

ドラマ「項羽と劉邦」
亜父と項荘の仲は、ほんとちょっとおかしいんじゃないのか…
このドラマの中で項荘はなんか、美少年的ポジションというのか、ちょっとなよっとした女性的な華を持った存在、ということなん
だろうが。


5/20
へうげものアニメ秀長様きたー

んだけど声が違うなあ…秀吉も違和感残ってんだけど、秀長様はそれ以上の違和感。ちょっと慣れそうにもないのが残念。声…とい
うか喋り方なのかな。なんか軽い。もっと落ち着きを…!
ただ見た目の美しさは言うことないわあ〜もーそれだけで満足してしまいそうな自分が情けない。お姿にうっとりしすぎて声が耳に
入ってこないよ!!

しかしアニメスタッフ…秀長様に力入れ過ぎて右近ちゃんがおろそかになってないか。ちょっとおかしかったぞ今回。せっかくほひょ
んさんと同じ画面に映ったというのに、顔が違ってては萌えていいのかどうか迷うわ。

光秀とか上様は安定してるよなー
宗匠も。
そして徳川様が来たよ!権現様が!!!


原作で見てた時以上に古佐ぁの道化っぷりがはっきりくっきりしてて、いい意味で切ないです。この人の知らないところで歴史の本流
は動いてんだなあ…て感じが。いい意味で、この物語のスケールのでかさみたいなんを教えてくれます。


中国ドラマ「項羽と劉邦」
第14話がいろいろとおもしろすぎたw
咸陽に入って大はしゃぎの劉邦とその一味。夏侯嬰の馬車で財宝いっぱい持って帰るぞー!と部屋に入ったら百往復しても持ち帰れ
なそうなお宝の山が。

劉邦咸陽に入る、の報を得て怒って英布と龍且派遣する項羽。派遣軍の尻にくっついて鍋持って走ってる韓信。なぜか虞姫発見。
虞姫を餌にして項羽へのとりなしを企む韓信…
前回の反省からか、まったく大言を吐くことなく…空気を読んでみたつもりが項羽のお気には召さずしつげきろう。ちょっとかっこ
よくなった装束でぶつぎれてみる。「項羽なんぞ俺の脚元にも及ばんわ!」
鐘離昧さんがなだめる。美人さん。思えば大したことないきっかけでずいぶんと韓信の身近な人みたいになってしまったもんだ。お
兄ちゃんの亡きがらを探してるところにまといつかれただけなのに。どうしてこうなった。

陳平さんが、俺は項羽のことよく分かってるぜ、お前(韓信)を試してるんだ、腐らずに頑張れ、とか何かめっちゃいい人。
背後から現れる項羽…恐怖展開…
だべってねーで仕事しろよ!と部下を叱りつける項羽。
「なんて傲慢なやつだ!!!」となぜか陳平さんに評価下げられまくる項羽…

ああ忘れちゃいけない。前代未聞の亜父×項荘の超激烈なSMショー
あああ頭おかしいのかと思った、真剣に。ついにぷっつんしちゃったのかと落ち着いて亜父…そんな亜父見たくない。
おもいっきりぶたれまくった後なのに、いやだからこそか、亜父の後をしおれきったわんこみたいについていく項荘…ドMか…暴力
に支配されてしまうタイプか。暴力夫に尽くしてしまう、いたぶられないと満足できない身体だとかそういう。

うめき声がまじでやばかった。

鴻門の会直前。項伯さん張良を訪れる。
劉邦一派猿芝居開始。レキ食其先生や蕭何さんも大熱演。張司徒の両手がぶるぶる震えてるのは…大爆笑をこらえてるのか。あっさ
り信じちゃう項伯さん。ええ人や…


5/7
↑今後は日付だけで。
最近は某公共放送アナ達の魔力に…
あとちょこまかと萌えとか

へうげ
アニメに右近ちゃんとうじょー美形臭がする。なんとはなしキラキラしているように見える…
OPとEDの絵変えてくれんかなー。今のも結構いいと思うけど、やっぱいっぱいのキャラで賑やかなのがオタ的には楽しい。
秀長様のお顔がついに映らなんだ…あれは作為だな。なんだ、美形っぷりに注目されたらこの場合困るよね、とかそういうことか。

へた
ひまさんサイトでちょろっと古代ローマ漫画あげてらっしゃるのにうきうきする。
ノマルさん漫画はもうノマルさんはみんなの嫁という結論でいいんだなと。

落乱
あれ新刊出ないなーなんでかなーと思ったら…6月ですと…!?あまこ先生体調崩してらっしゃるとか。心配だ。
アニメは会計委員の回のをばっちり保存。もんじかわいやー

ワンピ
しらほしたんかわいーちょーきゃわ
ペンギンがペンギンだった。
赤犬さんマグマグの実やとー

えーとあとDVDで「項羽と劉邦」と「大漢風」をまぜまぜで見てます。全体としては今んとこ「項羽と劉邦」に軍配。韓信はどっ
ちもかわいい。鐘離昧は項劉、項荘はどっちもきゃわいすぎて困る。でも出番は項劉の方が多いからなー。蕭何たんは項劉、虞姫ちゃ
んは「大漢風」のが美人。呂后はどっちもステキ。しかし中国ドラマっていろいろ演出が面白いのな。

地デジ化しました。

あとなんだあと
ああ、テルロマ三巻はまだ買えてないのです…余裕ぶっこいてたらなんかなくなってた。

大河
公共放送アナ萌えの流れでオープニングのナレに大注目するようになったこの頃
井上二郎ちゃんですよ。絵(漫画っぽいイラスト)がめっちゃうまい背の高い人です。テンションあげてないと低音美声


…こんなもんかな。近況ですね。萌え語りすればおのずと近況報告になるという…
あー暑くなる前に一本あげたひ。頑張る。


4/10■一か月経つのか…■
一年の十二分の一が凄い早さで…

ニュース見てたらN○Kのアナウンサーに妙に詳しくなってきたこのごろ。萌えと切り離せないのは性なのか…
あの若白髪の方は一年も全国から遠ざかってたんですね。知らんかった。何か毎日見てるような気がしてた。大阪時代からほんのり
好きで、この頃めっきり好きになりました。
あとはとも…智之が好きで、横尾っちも好き。


テルロマ実写化…
む、無理があると思うんだぜ。無理が
誰も止めないのか。あべちゃん好きだけど、大好きだけど、無理がある…


へうげ
いい感じだろこれ合格ライン突破だろこれええええええええ
OPとEDがちょっと寂しいかなと思いましたが。
信長さまかっこよすぎる。こんな色気が出せるのか。へうげものならアニメ化より実写化かなあと思ってましたが、これならアニメ
化でいい最高。
佐介はイケメン度が上がってました。
松永たんの自爆効果はもっと盛大なものでもよかったな!天守閣めっちゃ無事すぎる!!!
信忠かっこよかった〜かわいい〜

おまけ番組のつくもがみの愛らしさに萌えた。
歴代の権力者達がこの子をなでなでして可愛がってたのかと思うと…



三テレビで蒼天航路のアニメ見られることに気付いた!遅すぎる!でも見る!!!!!


3/14■いやもう■
大変な状況で。
仕事帰ってニュース見て仕事行って帰ってニュース見て、でここ数日過ごしておりまして。
わたしは無事というか、というか、別に全然揺れとか津波とか関係ない地域の人間ですので大丈夫です。
ちょっと揺れたらしいんですが、わたし気付かなかったんで…

被災された方には本当に大変なことです。お見舞い申し上げます。根っこから町がなくなるなんてことがあり得るもんだと、初めて
知りました。

このサイトの更新自体は特に変化なく、これまで通りのペースと傾向かと思いますが、ただしばらくは地震の情報に釘付けかと思い
ますので、沈黙が長くなるようでしたらお察しください。


2/26■「その日の朝」■
ジャンル:楚漢 登場人物:灌嬰、韓信、蕭何


目の前に立った人物について、灌嬰は人から聞いた評価を思い出す。
「いい奴だ。俺が、お前が股夫だなと訊くと、曖昧に笑っていた。あの顔は、いい奴だ。」
そう言ったのは、盧綰だ。
「ぼんやりとしているから、悪童に絡まれたのだろう。実際股をくぐったのかは知らんが、多勢に無勢であったならば、それは一つ
の手だ。」
と言ったのは周勃である。
犬肉屋をやっていた樊カイは、こう言った。
「人を殺せるのか?無理だろう。犬も殺せないぞ。」
劉邦はどうだろう。この男、韓信という男を、大抜擢した当人ではあるが。確か、こう言っていた。
「あの目はな、何を言われても従うんだ。俺には、分かる。」

灌嬰は、遠目に顔を見たことがあるに過ぎなかった。口を利いたことがない。声を聞いたことも、おそらくないような気がする。思
い出せないのだから、実際聞いていたにせよ、同じことだ。
印象は、はっきりとしない。今、目の前にその人物を見ていても、どうにも記憶しがたい。ふっと目を逸らして、その顔を思い出そ
うと努めて、果たして思い出せるだろうか。
(目鼻は整っているのに……。)
変な顔だ、と思った。
この男が、大将軍となるのだそうだ。蕭何が言った。それを聞いた。
早朝、騎馬隊を引き連れて、大将軍となる男を迎えるために現れた灌嬰を、蕭何は出迎え、にこやかに言った。
「やあ、実に賑々しい。この年齢に至るまで、役所の片隅で木簡を削る以外為すことを知らずに生きてきた身には、眩しい限り。」
灌嬰は、何か言いかけた。蕭何という男を褒める言葉ならば幾らも見つかる気がしたが、真剣に語り過ぎてしまうように思って、止
した。親愛の情を余すところなく伝えながら、あくまで軽やかに、楽しげに響く言葉を紡げたら、どんなによかったろう。
ほんのりと赤らんだ灌嬰の顔に、蕭何は一つ頷いた。
「やはりあなたでよかった。あなたは己を偽らず、しかもその偽らない姿が魅力的です。この南鄭に住まう女子達が、あなたに胸と
きめかすのも仕方のないこと。ああ、そうして、いささか迷惑そうに視線を避けるのが、何とも、恥じらいの多い若者らしく……。」
笑いつつ、蕭何は背後を振り返った。
「彼です、大将軍となるのは。」
出てきたのは、どこか見覚えのある若者だった。
「治粟都尉の職にありましたから、御存じでしょう。姓は韓、名は信。」
「ああ……。」
思い出した。が、あまりはっきりとはしない。
蕭何の顔つきは、張りつめていた。口辺には柔らかさを見せつつも、瞳には爛として漲るものがあった。
「灌嬰殿。」
揺るがぬ意志の下に、蕭何は一言一言を発した。
「この方は、玉です。」
「玉。」
「劉邦党の行く道に光が射すかどうか、わたしは、この玉にすべてを賭けた。」
「つまり……。」
ここに至るまで、灌嬰の頭の中で、彼が大将軍になる、という蕭何の言葉と目の前の韓信青年とは、まったく繋がっていない。つま
りどういうことか、と問いかける彼の頭の中は、常にもなく曇っている。まさか、と思っている。蕭何の言葉を聞きつつ、まさかと
いう思いに、灌嬰はあまり見せない顔をした。
「あなたも、彼に託してください。皆が、委ねる。」
「命を?」
「そう。」
「彼が……。」
「上将軍の印は、この手に委ねられるのです。」
韓信の手を取り、蕭何はそれをまことに丁寧に扱って、灌嬰に示した。二つの手を、灌嬰は放心の内に見る。
「玉です。」
なるほど、玉のような手だ、と灌嬰は韓信の手を見て思う。
「丞相、つまり、この手に印が……。この手に印を握る男が我らの上に立ち、関を越えて中原を、獲ると……?」
「そうです。」
「本気で。」
「そう思っているのか、と問いたいでしょう。そうでしょうとも。けれども、わたしは戦場で権を振るったことなどないのですよ。」
「つまり。」
「灌嬰殿。」
韓信の手を強く握って、蕭何はそれを揺する。
思えば、この年長者を、ここまで間近に見た試しはない。主君たる劉邦とは、また違った幅の広さを持つこの男を、灌嬰は信頼しきっ
ている。親を思う時よりも、遥かに甘ったるい感情が湧く。
「この男を、買っているのですね。」
そう言った声は、少し強張っていた。耳の辺りに熱さを感じる。
「わたしは、あなたこそが玉ではないかと。」
そっぽを向く。俺は拗ねているのだろうか、と思ったけれども、分からない。
蕭何は一瞬、ぽかんとした。彼ほど、自分は馬車馬だ、と素直に信じ切っている男もいない。卑下しているのではない。そうあるこ
との価値を、認めている。
緩やかな声で、蕭何は笑い、少し困ったように髭を弄った。
「灌嬰殿。」
韓信の手を引き、その身体を前へ促す。
灌嬰は、背が高い。頭のほとんど頂近くで髪を結んでいるから、余計に高く見える。それを、蕭何は見上げる。彼の眼差しは、深い。
常に何かの思いを持って、それを全力で差し出してくるかのようである。彼は、自分を馬車馬だと思っている。多くのことはでき
ない。だから多くの人々に、共に道を歩んで欲しいと願っている、天下のために。
「天下の、ためです。」
そう思っている。
「天下の……。」
「どうか。」
涙を湛えたように、蕭何の目は潤んだ。
(ああ、だから、玉というのだ。)
灌嬰は、見た目からは推し量れないが、激情家と言うべきである。己の好みに当てはまった事象を前にして、何もしないでいるなど
考えられない。蕭何が、この韓信という男を、俺よりも高く買ったのだろうな、などと、先ほどちらっと掠めた後ろ向きの意識など、
蕭何という男の美しさを前にしては、激流に押し流されてゆく小枝の一片ほどにも、価値がない。
灌嬰は、韓信を見た。思えばこの青年はこの場において、まだ一言も発してはいない。
(どうでもよいことだ。)
と灌嬰は思った。
(蕭何殿が、この男に価値があると認めたのだ、大将軍となるほどの。)
そう思っていると、韓信が、口を開いた。何を言うのか。灌嬰は、少しぼんやりとなって、おそらくは年下であろう青年の、小さく
覗いた歯列を眺めた。
「頼みます。」
と韓信は言った。それだけだった。
感想を述べるならば、よい言葉で飾ることができる。耳触りがよいし、思考は簡明であろうと思わせる。
ああ、と灌嬰は頷いた。まだ、ぼんやりとしていた。
「いや。」
大将軍となる相手だ、と思い、
「微力でありますが。」
と両手を組み合わせ、礼をした。
「やあ、よかった。」
蕭何は嬉しげに、韓信の背と灌嬰の背を抱いた。本当は肩に腕でも回したかったろうが、決して短躯ではない彼も、二人の若者に並
んでは、まるで小柄な小父さん然としてしまう。
「よかった。」
にこにことして覗きこんでくるその顔に、灌嬰は照れた。ぷいっ、とよそを向く。
さやさやと、風が吹いていた。正面から、さっと一吹きした。高貴な、芳しい香りが、鼻孔に入った。人工のものである。向き直る
と、そこには韓信の顔があった。
(ああ、そうか。)
韓信の姿は、隅々まで洗練されていた。文字通り洗われもしたろうし、整えられ、飾り立てられていた。
(大将軍となる……。)
治粟都尉から、大将軍となる。もう少し以前を思えば、一兵卒に等しかった。
反発があるだろう。だから、飾り立てたのだ。どれほど頑張ったろうか、と蕭何の精力を傾注する様を思うと、お洒落など全然しな
い廉潔な士のことであるから、灌嬰は可笑しくなってしまうし、同時にその激情家としての性質を、むず痒く刺激されもするのだ
った。
「丞相。」
蕭何を見、そして韓信を見た。
「わたしは、この人の手となりましょう。」
蕭何は、どんな顔をしただろう。灌嬰からは見えない。ただ少しして、そうですか、と小さく聞こえた。
「そうです。」
頷きながら、
「天下のため、ではありません。そうした言い方をしてもいいが、面映ゆい。わたしにはそれほど広く物事を捉える目はありません。」
「では……。」
「あなたのためです。」
にっこりと、灌嬰は笑った。韓信を見ながら、笑ったのである。





2/21■「アグリッパ」■
ワンピ最新刊に挟まってるジャンパラでこれ見つけた時にはえ…?てなったもんだ。
ヤフーで検索して内容判明するまでの間、どんな気持ちで過ごしたか…お前らに分かるかジャンプ編集部

ジャンプスクエア編集部…?
いやどっちゃでもいい。


どうするこれ
いつかオクタヴィアヌスが出てくるような事態になったら。
タラニス11歳…
な〜…これだって11歳って言われたら。紀元前52年時点で。63ひく52は11じゃないですか〜
タイトルアグリッパだし〜
やっぱな〜〜〜〜
でもとりあえずこの作者さんの場合続かなきゃダメだから。Wikiとか見てると。うおおおおおおい!!!!!てなる(笑)

頑張れ〜

アントニウスかわいいかわいいよ。なにこのエロスなお兄ちゃん。
こういう顔好き!かわいい。
てかこういう前髪が好き!!短いの、かわいい。古代ローマ人はみんなそうだろ、というのは置いといて。
かわいい。いやあ…マルクス・アントニウスという存在を、こうしてジャンプ系列の雑誌の連載漫画で見られようとは、思わなかっ
た。
すごいどきどきする。どうする?これでアントニウスのファンが増えたら。
どきどきするぜ…

次巻辺りカエサル本格登場するのかな?
ラビエヌスも?
いつかは出るよね〜


ああやっぱ嬉しいわこの連載。夢みたいな気がする。
たとえ19話打ち切りになったとしても、それまで夢が見られならうれっ…





いややっぱ続け!!!!


2/16■ちょ、足利■
今本読んでてびっくりした一文

一方京都では、将軍義晴が不可解な行動をとっていた。もともとこの将軍家には精神病の遺伝があることが医学史的にも証明されて
いるが、この時の義晴も異常としか言いようのない行状に出た。


おいおいおいおいまじで
小説とかじゃないですからね。
ちゃんとした、この上なくちゃんとした研究者のおっしゃることだから。
つか医学史的に証明って…どんだけ重いんだよ。その証明についての本をいつか探してみようと思いますが。

あれか、やっぱ尊氏から始まる一連の将軍家の血か。
史書に残る言動を読み解いていったら自ずと出た結論なんだろうとは思いますが。
尊氏についてはまあどう見ても躁鬱病ですよね、みたいなのは別の本で読んだ気がするが。

すごいな…
ばっさり書かれちゃってるよ。
他にも足利幕府については、
「日本史における忌み子的存在」
みたいな表現をどっかで見たような。
萌えるというか、何というか、でもこんな幕府がなんやかんやで二百年続いたんだよなってのが。

あー何か、凄い。


2/7■新撰組局長首座芹沢鴨■
読んでない、と思って手に取ったらところどころ記憶にある文章がありまして。どうも読んでいたようです(笑)そういえば以前に
感想書いたんじゃないかという気がしますが。ああそういや萌えたな、という記憶もうっすら生き返ってきたり。

でも二度目読んでよかった〜。図書館から借りてきたんですが、これはもう買ってしまおうと。
錦がかわいい。
鴨もかわいい。
結局鴨の心をながなが捕らえたという点では錦の死が一番だったんじゃないかと。
鴨さん鴨さんと芹沢のこと呼んだり、芹沢が投獄されたら出てこれるよう動いて、いざ出てくる時には門のところでひとりで待って
たり。そんで嬉し泣きしたり。何このかわいい子。
あと記憶に残ってなくて萌えたのが、錦が小柄だってこと。鴨と一緒に酒屋で飲んでて、店内にいる客はみんな鴨のでかさをまじま
じと見てるばっかりで小柄な新見には気付かない、と。浪人三人斬って外に出てきたところで絡まれて、錦が斬ったのに鴨が「俺が
斬った」っていったら相手側の事情知ってるのが、「いやそっちの小さいの」って錦のこと指すのが。もうね、きゅんきゅんする。

あほというのか無邪気というのか。
そんな外見についてかわいらしい描写があるわけじゃないのに、口調やら行動やらでこの作品の錦はほんとにかわいらしい。
芹沢が錦の身体運ぶ場面があるんですよ!いや一行で済むけど。眠っちゃった錦を寝間へ運んであげる芹沢。ひょい、と持ち上げた
んだろうなと。お姫様だっこだろうか。ちょっと移動するだけならいちいちおぶらないと思うんだ。つまりこう…お姫様だっこ的な
ものだと思うんだぜ…!!!
芹沢先生優しい。
新見は芹沢の前でゆるゆる甘えてるのがかわいい。

切腹させられる場面から以後のこの話はもうほとんど錦の独壇場というか、結局鴨と錦って離れがたい仲だったんですねと。思わざ
るを得ない。
鴨がこっち見てくれなくて、見捨てられたのかなと思いつつも「鴨さん、世話になった」って言って腹切る新見。そんな新見の顔を
見られない鴨。死んでから、何で助けられなかったんだ、助けられたはずだ、と己を責める鴨。

「錦はわしの弟のようなものだった」
「あいつはわしのそばから離れてはいけなかった」

もうね、お腹いっぱいになってきて。何度読むの中断したことか。お腹空くの待たないと読んでられないよ。
どうして死んだ、とか、寂しい、とか。
何度も何度も鴨が言ったり思ったりするのがかわいいやら切ないやら。
「お高さんを紹介して嬉しそうだった」
って。嬉しそうな錦の顔思い浮かべてんだろーなと思うとまた切ない。

そして鴨を誘う新見の幽霊。鴨も寂しくて新見も寂しくて。
こっちへこいよ、と言われてそれもいいな、と答えちゃう鴨。
どんだけかけがえがないんですかと。
もう決して埋めることのできない存在が呼んでるから、そばに行っちゃおうかと、そういうことか。まあこの世に対する執着の少な
い迷える子羊である鴨だからこそ、てのもあるでしょうが、それにしても錦が死んだ途端に一気にこの世から魂が離れちゃってるよ
うで…。

鴨死後、生き残った平間談
「芹沢先生は、新見錦さんに誘われたんだ。新見さんは、一人では成仏できなかったんだと思いますよ」

うん…
どんだけ
(あ、やっぱ前に感想書いた気がする笑)


2/1■下の方の記事削除■
作品も倉庫に収めていかないと…

とりあえず一個短いのあげときましたー
楚漢のもこのくらい短くまとめてちゃちゃっとあげてやる!

「チェーザレ」という漫画読んでます。
もう歴史物にしかなかなか食指が動かんようになってきて…いいのか悪いのか。
ミゲル萌えるわー!かわいすぎる。かわいすぎる。かわいすぎる。
Wikiとかで軽く調べてはみたんですが、どうもこれは…最後まで行くのかどうかかなりペースが遅いみたいなんで分かりませんが、
いくとしたら今世紀最大の切な萌えになる予感。


2/1■「待つ」■
ジャンル:古代ローマ 登場人物:オクタヴィアヌス(=カエサル)、マエケナス


「彼我の差は明らか……恐らく、わたしは長いこと耐え忍ばねばなるまい。彼が、急に病を得て死ぬわけもなかろうし。」
「病。」
「何を笑う。」
「いえ、あの男を侵す病の顔を見てみたく。顔が分かれば、見つけ出してくることもできるやもしれませんからな。」
自分で言って、笑う。癖の強い髪が揺れる。少し激しく笑うのでも、彼という男の動作にはどこか甘ったるさがある。ゆったりとし
ていて、重さがあって、それでいて場にそぐわしい調子にはきっちりとはまっている。
ふ……、と余韻を残して、彼、マエケナスは笑いを止める。
「カエサル。」
どうぞ、と促す。
カエサル。
馴染まない名だ。今はまだ、ひどく馴染まない。
「このわたしが。」
と切り出す、可憐なほどの少年。カエサル。ローマ人が、その名を口にする時思い浮かべるのは、陽気で、気安くて、下世話な話も
するのに不思議と品位があって、優雅で、人々を魅入らせる、輝かんばかりの生命力に満ちた、ある一人の男の颯爽とした姿なのだ
が。
このわたしが、と今、口を開いた少年。そのカエサルの、血縁者ではある。
「ただ一人の、頂の上に立つ者となるためには、金、人材、時……。これらを持たねばなるまい。」
「ええ。」
「マエケナス。」
お前は、この内の二つだ、とカエサルの名を継ぐ少年は言う。
「二つ。」
「金と人材。」
「金が先ですか。」
「それは。」
ぷ、と少年は笑った。
「意図した結果ではない。」
「わたしも、良いものを得まして。」
「ほう。」
「詩人達の奏でるアポロンの輝き。それに近侍できる喜びを。」
ほう、と少年は唇から声を漏らす。花のように、白く小さな顔が綻ぶ。
「友でしょうか。上司……。主人、と呼んで、傅くのもいいかもしれません、あなたにならば。」
「主人の手に、このように軽く触れるものではあるまいが。」
いえいえ、とマエケナスは首を振る。
「軽く、ではありません。お分かりになりませんか。わたくしの全身を流れる血潮が、滾っております。声があったならば、叫んで
いるところ。過重なる幸福感に堪えかねて、けれども手にしたい、逃したくはないと、絶壁から身を躍らせるが如き決意です。」
「あはははは。」
少年カエサルは、笑い出す。
「勇者だな。なるほど。」
肘を支えに、くん、と前に乗り出すと、少年は、マエケナスの豊かな巻き毛の一房を、唇の先で軽く摘まんだ。ちゅっ、と音を立て
る。
「勇者となれば、称えられなければなるまい。」
「おや。」
さっと離れて行く少年の身体を、マエケナスは少し追う。
「それきり?」
「うん。」
「残念だな。」
「手がまだあろう。」
言葉通り、少年の手はマエケナスの手によって包み込まれている。
「この手に口付けても?」
少年は、笑っている。
「無論、それで止むわけはありません。」
「まあ、気の向く時もあろう。今は控えておくがよいぞ、マエケナス。」
「仕方のないこと。」
大仰に肩を落とす。手を離す。
「なかなか心地よかった。」
そなたは温かい、と言いながら少年は放たれた手を振る。
「抱きしめられたく思う時もあろう。」
「待たねばならぬというのは、つらいですな。」
「よいではないか。我らは、その求める心を一致させたのだ。わたしは、そなたの財力と賢しき頭を。そなたは、この美と名付くと
ころの単なる目鼻を、気に入ったのだろう?」
何の気負いもない。気取った風もない。自らの美しさを、当然のものとしている。
「それだけではありませんが。」
「けれども、アントニウスの姿をして頭の中身はわたし、というのでは惹かれまい。」
「やあ、いや、アントニウスはあれはあれで、美しい男ではありますが。」
「惹かれるか?」
「さて……。」
「では、わたしの姿をして言葉や行いはすっかりアントニウスだとしたら?」
「いやいや。」
困ってしまう。
「カエサル。」
「マエケナス。」
「お許しください。」
「うん。」
とカエサルは頷く。
「許す。」
「ありがとうございます。」
「マエケナス。」
「はい。」
よいではないか、とこの新しいカエサルは、瑞々しい唇で綺麗な孤を描く。
「みな、待っておる。」
「はい?」
「そなたは、わたしが全てを許す日を待っている。わたしは、あの男が、分をわきまえぬ愚かさ故に、愛らしいほどの稚気故に、滅
んでゆくのを待っておる。思うに、わたしの方が長く待たねばならないと思うのだが、どうであろ。」
稚気、と彼は言った。稚気ならば、彼も持っている、とマエケナスは思った。
「わたしは……あまり待たされては困ります。あなたとて、老いるでしょう?」
どうだろう、と口に出しながら思った。
(老いるだろうか。)
もしかすると、という気がする。
「いやいや。」
笑いながら、マエケナスは首を左右に振った。
「何だ。」
「分かりました。」
「分かったか。」
「はい。いろいろと、待たねばならないということが分かりました。」
「うん。」
「待つ間、何をしましょ。」
「何?」
「そうだ。」
とマエケナスは頭の閃きそのままに、ぱっと表情を明るくさせた。
「一つ、わたしが自作の詩でも詠じましょう。ね、カエサル。」
そう言うと、小さく、こほん、と咳払いをする。
カエサルという名にいまだ馴染まぬ少年は、ふむ、と首を傾げる。
「そなたの作った詩か。初めて聴くな。うむ、よし。」
とかしこまる。
「聴こう。」