顧問秘書の嘆き

〜第5章〜     

 前回の観測は定時制用照明と、雲のナイスなコンビプレーの前に撃墜された。しか〜し、今回はそうはさせんぞ!! (ちなみに、先生の都合上、観測日が20日に変わった)そうそう我等の崇高な野望が邪魔されてたまるもんかっ!!そんなのはまっぴら 御免だい!!といって、いくら気合を入れても曇るのは、もはや完全に自然の原理と化している。それが、もし、天気予報が『明日が晴れ』 であっても、である。この確率の偏りを宝くじにでも活用したらどんだけのカネが入って来ることか。今考えてみるとすごく自分らの才能 (?)を無駄にしているような気がしてならない。おっと、話が脱線してしまった。記念すべき(??)公開観測会の第2回である。それに あたって言う言葉はただ1つ。晴れろおぉぉぉ!!!!!

そして放課後になった。まさか………、いや、やはりというべきか、案の定曇った。この雲は相当厚く、唯一雲が切れている天頂付近も すぐに覆いそうな勢いだ。大丈夫か?とりあえず地学室へと行った。あれ、電気が点いてないぞ?まさか今日は雲天中止?鍵が開いていた ので中に入ってみると鈴木先輩がいた。先輩がいるところをみると、どうやら中止ではないらしい。よかったよかった。って、この雲じゃ 全然良かないな。

    鈴木先輩 「少年―。望遠鏡上げといたからー」
 へえ。あの重〜〜〜いやつを2つもですか。ご苦労様です。
 

しばらくして3年生の先輩がゾロゾロと来た。センター試験が終わってほっとしているのか、表では陽気な声でいつ終わるとも知れない エンドレストークが始まった。内容はちょいとハードだったが。こっちは所詮1年ボーズなので大学の話にはついていけず、1人でぼーっと していた。ちょっと雲の様子が気になったので空を覗いてみるとやはり一面のくも・クモ・雲!晴れるように念力を送ったり、小声で 奇々怪々な呪文を唱えたり、いろいろやったが効果が現れるわけもなく、余計にドンヨリとした雲が………。
 再び念力を送ろうとしたがハッとあることに気付いた。そういや望遠鏡組み立てるの忘れてた!鍵を持って階段を駆け上がってドアを 開けようとしたがなかなか開かない。5分くらいドアと格闘していたが、ふと見ると鍵違うじゃん!どーりで開かないわけだ。鍵を変えると ドアはなんなく開き、屋上の突風の洗礼を受けた。寒いわ!誰かシベリア気団に有給休暇出してやれ!!ついでに小笠原気団叩き起こして こ〜い!!(わかりにくい表現ですいませんでした)  風がビュービュー吹く中、望遠鏡は鎮座していた。まぁ、雲がどっかいかなきゃしょうがない………って雲無いよ!?やったー! 効いたのは念力か?それとも呪文か?そんなのはどっちでもいっか。
 さっさと組み立てて終わりにしようと思ったが、考えてみるとこいつらよりも天文台の方が使用頻度ははるかに多い。鈴木先輩と三田崎で 望遠鏡は組み立てられるからオイラは天文台を整備しておきましょうかね。といっても前回の観測で先生がやって下さったからほんの少し 微調整するだけでよかった。ついでにEM−10もやった。おそらくこれも多用することになるだろう。これでとりあえず一安心。一息 つこうと下に下りると、鈴木先輩と三田崎が望遠鏡を組み立てている最中だった。どうやら休めそうにないな。

  鈴木先輩 「少年―。2人じゃキツいから手伝ってよー」
  三田崎  「そーだよー。どうせ暇なんでしょ」
  塩野   「無茶言わないでくださいよ〜。たった今やったばかりなんですから」
  鈴木先輩 「お疲れー。でも手伝ってね〜」

 異議を唱えたものの、言った直後に棄却され、あえなく駆り出されるハメとなった。マジっすか?おそらくフツーの方々なら 「そう?じゃあ休んでていいよ」のような事を言うと思いますが、この部活の方々はフツーではないのです。まあ、この文章をここまで 読んで下さった皆様なら察しはつくと思いますがね………。
 その後鈴木先輩はブルーシートを取りに戻り、寒い中黙々と望遠鏡を組み立てていた。ブルーシートが来た後はその上でやっていたのだが、 時間を聞いて驚いた。え!?もう5時半!?あと10分位で始まるじゃん!ぜってー間に合わねー!いやー最初に天文台とEM−10を やっといてホントに良かったー。
 
  鈴木先輩 「少年!時間無いからとりあえずそれだけでも完成させて!」
  塩野   「あとはこれ(光軸合わせ)だけですから……………よし出来た。先輩確認してもらえます?もう目が痛くて判らない………」
  鈴木先輩 「おー、合ってる!」
  塩野   「そっちはどう?」
  三田崎  「間に合わなそう」
  塩野   「そうすると後は天文台だけか………やっときましょうか?」
  鈴木先輩 「それより、部員も地学室にいたほうがいいんじゃない?」
  三田崎  「そうですね。少年、先行ってるよ」
  塩野   「あいよ〜」

 そうして2人は校舎に入っていき、1人ドームの中にいた。(今だから言うが、実は下に下りるのが面倒なだけだった)こぢんまりした ドームにポツンといるのはちと虚しいので、外に出て星を観ることにした。すると1つ奇妙な星を見つけた。ふたご座のボルックスと カストルの近くに、それらよりも明るい星があったのだ。いつもこんな星は無いのに………。そのとき、名探偵コ○ンの如く直感が閃いた。 もしや………。そう思って天文台の望遠鏡を向けてみると………。なんと土星!いやっほー!ワシの直感もたまには役に立つのお。

 土星に合わせた後、さすがに戻った方が良いかと思い、戻ろうとしたが、階段を下り始めたところで上ってくる鈴木先輩と鉢合わせに なった。てことは説明は終わったのか。よおし、いよいよ観測開始だ!!

 風はなく、天気は快晴。これがホントに地学部かい?何かあるな、こりゃ。1つ問題なのはこの最高の天気に傷をつけている前回と 同じく夜間照明!国会で公害ならぬ光害対策基本法でも制定して欲しいぞ。
 実際、土星はスゴかった。ちなみに、環っかが見えてスゴイとか、タイタンが見えてスゴイとかでは無い(と言うか見えなかったし)。 俺がスゴイと言っているのは韋駄天クラスの移動速度である。なんせ月と違って小さいから望遠鏡の 視野に入れるのすら困難な上に、仮に合わせてもメチャクチャ速いのですぐ行方不明になる。(時間を計ったところ、望遠鏡の端から端まで 約20秒だった)何モンだ、こいつ?
 しかし、前回と違って晴れているからまだ観測のし甲斐があるというものだ。会計もちょっとは頑張ってくれるかな〜、と思っていたが、 お門違いというところか、何をするでもなく隣で何かしていた。んで「たまには自分で合わせてみろよ!!」と一喝し、やらせてみたが 土星と全然違う方に向けていて、あげく、違う星を土星と勘違いして合わせようとしていた。 練習しておけよ。今まで約1年間も地学部やってたんだろうが。
参加者は一通り土星は観たようなので、下りて少し休憩することにした。そこには小林先輩と小野木先輩と古川先輩がいた。なんか奇妙な トリオだなぁ。

   小林先輩  「お〜、晴れてるねえ〜」
   小野木先輩 「寒いよ〜」
   塩野    「まあ、寒くなきゃ晴れませんからね」
   小野木先輩 「なんか見える?」
   塩野    「今は土星が」
   小林先輩  「へぇ〜」
   小野木先輩 「じゃあ、カフェオレ1杯飲んで帰ろうか
   小林先輩  「そうしようか」

 えっ?もう帰るんですか!?しかも“カフェオレ1杯飲んで”って、あなた達は一体何しに来たんですかー!!せめて土星ぐらい 観てから帰ってくださいよー!でも、3年生だからいいやな。もっとも、三田崎が同じ事を言った日にはお空の星が1つ増える事になるが。

 夜間照明に悩まされながらも観測を続け、そろそろ7時になる。待ちに待った照明の消灯時間だ。これで天文台とEM−10も 本領発揮!と言う予定だったのだが全く消える気配が無い。しかも、今回は10分になっても消えなかった。発電所に雷の一つでも 落ちてくれないかと考え始めた頃、ようやく照明が消えた。時計を見ると7時15分だった。このせいで一番観測のしやすい時間帯が たったの15分だけになってしまった。まあ、私は寛大ですからこの位は大目に見てあげましょうか。でも、最も災難だったのは これからという所で帰らなくてはならなかった参加者だったのかもしれない。

 とはいえ、絶好の条件下での観測はかなりよかった。どれくらい良かったかというと、川越街道のド真中でオリオン大星雲が 見えるほどの環境といったらいいのだろうか(わかる人はわかりますよね)。で、我々地学部はというと、7時半をまわっても観測を続けて いた。前回と同じように許可をとっているので8時ぐらいまでなら大丈夫だろう。残っているのは先生と部員とそのほか2名だけ (1人は次期部員)だったので、意気込んで合わせる必要も無く、しばらく双眼鏡で、マックホルツはどこかな〜と探していた。しかし、 さすがにこの天気でも4等級はキツい。双眼鏡を使っても見つからなかった。まあ、どちらかというと探し方が悪かったのだろう。 見てみたかったな。

 8時になったので望遠鏡を片付けて地学室に下りた。下りた後は、これまた前回と同じく下らない話ばかりだったのでここでは割愛 させていただきます。そうすると、書くことが無くなっちゃうなぁ。ははははは。

 ………とまあこんな感じで今回の観測会は地学部にしては珍しく成功を収めたのだった。俺の予想では、これ1年分の運を使い果たした ため、あとはほとんど晴れる事は無いだろう。でも、参加者の皆さんには楽しんでもらえたので、それはそれでよしとしましょう。





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