米軍基地を写真に撮ってはいけないの?
2008年7月1日 ブログ『現地闘争本部ニュース』
私たちが、横須賀基地の前に立って基地の写真を撮ろうとすると、基地の警備に当たっている神奈川県警の警察官がやってきて、「基地の撮影は禁止です」と通告し、手や体を使ってカメラを遮ります。警察官に「撮影を禁じる法的根拠はなにか?」と訪ねると、たいていの場合、「あなたの家を知らない人に撮影されたら嫌でしょ」などと答えます。
またキャンプ座間などでは、米軍基地に雇用されている日本人警備員が、カメラの前に立ちふさがります。日本人警備員は、「基地の司令官が撮影を禁じている」ことを理由にしています。
市民が米軍基地を撮影することを禁じる法律は、あるのでしょうか?
日米安全保障条約や日米地位協定などにも、「米軍基地は写真撮影禁止」という項目はありませんでした。
そこで、写真の撮影を禁じる国内の法律を探してみると、次の2つが見つかりました。
1つ目は、「軽犯罪法・第1条・23」です。「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」は、「拘留又は科料に処する」、としています。
2つ目は、「神奈川県迷惑行為防止条例・第3条・1」です。卑わい行為の禁止として、盗撮をあげています。(各都道府県に同様の条例があるようです。)
横須賀基地前の警察官がいうように、「あなたの家を知らない人に撮影されたら」、それは軽犯罪法や県条例に違反するでしょう。しかし米軍基地は、この2つには、当てはまりそうにありません。
一般に、当事者が拒否しているにもかかわらず写真を撮影した場合は、「肖像権の侵害」にあたるようです。しかし「肖像権の侵害」は、刑事罰の対象ではありません。「肖像権の侵害」を受けた人は、写真をとった人を、民事裁判で訴えているようです。しかし、「肖像権」の対象は人物であって、米軍が米軍施設の撮影を禁じる根拠となるのかは疑問です。
また本来、警察は「民事不介入」が原則でから、米軍と私たちの間に入ることはできないはずです。
さて、米軍は、市民が基地を撮影しようとすると禁じます。しかし自分たちは、基地に抗議に訪れた市民を、平気で撮影します。これは「肖像権の侵害」にあたるかもしれません。私たちは、私たちの写真を撮影する米軍兵士や日本人従業員を、民事裁判所に訴えることができるのでしょうか?
米軍基地に反対する運動に参加したことのある人なら、写真を「撮った・撮られた」でトラブルになった経験があるひとは多いのでしょう。
こうした疑問を解決するために、参議院議員の山内徳信さん(社民党)にお願いして、「質問主意書」という形で、政府に対して見解をただしました。以下はその内容です。
■在日米軍基地と市民の示威行動に関する質問主意書
市民団体や労働組合(以下「市民」という。)が、在日米軍基地前や在日米軍基地周辺で、デモ行進や抗議行動(以下「デモ行進」という。)を行う際に、在日米軍兵士や基地に勤務する日本人従業員(以下「米軍関係者」という。)、またその在日米軍基地を所轄する都道府県警察によって、様々な規制や権利侵害を受ける。
この問題に関して、以下の通り質問する。
一 市民がデモ行進などを行う際に、当該の市民が拒否しているにもかかわらず、米軍関係者がカメラやビデオなどを使用して市民を撮影する行為は、違法か適法か。違法であるならば、いかなる罰則が適用されるのか。また適法であるならば、いかなる法律上の根拠に基づくのか。
二 市民がデモ行進を行う際に、米軍関係者が基地警備や交通整理などを名目に、基地の外で市民の行動を規制する、またそのために身体的な接触を行うことは、違法か適法か。違法であるならば、いかなる罰則が適用されるのか。また適法であるならば、いかなる法律上の根拠に基づくのか。
三 市民が在日米軍基地の外から、カメラやビデオなどを使用して基地を撮影することは違法か。違法であるならば、いかなる法律上の根拠に基づくのか。
四 市民が在日米軍基地の外から、カメラやビデオなどを使用して基地を撮影する際に、米軍関係者や警察官が撮影を禁じること、またそのために身体に接触する行為は、違法か適法か。違法であるならば、いかなる罰則が適用されるのか。また適法であるならば、いかなる法律上の根拠に基づくのか。
五 前記一から四の市民への様々な権利侵害について政府は妥当と考えているのか、妥当と考えているのであればどのような理由なのか、明らかにされたい。
右質問する。
この質問に対する政府の答弁は以下の通りです。
●参議院議員山内徳信君提出在日米軍基地と市民の示威行動に関する質問に対する答弁書
一から五までについて
お尋ねについては、個別具体の事実関係に即して判断されるべき事柄であり、お答えすることは困難であるが、一般論として申し上げれば、米軍は、接受国たる我が国の法令を尊重するとの一般国際法上の義務及び日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号)に定める義務に従って活動しているものと承知しており、また、都道府県警察は、警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第二条に定められた責務を果たすため、法令に従い、適切な職務執行を行っているものと承知している。
●原文はこちら
http://www.sangiin.go.jp/japanese/frameset/fset_c03_01.htm
なにを言っているのか、よく分かりません。しかし、米軍関係者や警察が市民の基地撮影を禁じる根拠法や、米軍関係者が市民を撮影することを認めた根拠法を、政府は上げることができませんでした。これは根拠法が無いということでしょう。
次に警察や米軍とトラブルになった場合は、政府答弁をもとに反論してみようと思います。でも最近の警察は、法律の根拠が無くてもすぐに人を逮捕してしまいますから、皆さまにはあまりお勧めできません。
ところで、集会やデモ行進などをしていると、日本の警察も参加者の写真を撮影します。これは、民事や刑事の話ではなく、明確な「憲法違反」です。
●詳しくはこちらへ
http://www.peace-forum.com/mnforce/0706jieitai/00top.htm