未来への序章 後編



 ここ数日、は微熱が続いてるらしい。
 本人は大丈夫だと言っているが、心配だな。
 明日には医者に連れて行くか。
 そう考えながら、俺は家路を急いだ。
 家まであと十数メートルといった所か。
 己に向けられている殺気に気付き、俺は立ち止まった。
 俺に殺気を向けるとは、いい度胸だな。
 余程死にたいらしい。
 俺も殺気を放ち、辺りを警戒する。
 ………来る!!
 俺は今立っていた場所から飛び退いた。
 その直後、『奴』が俺のいた場所へ降って来た。
 すかさず俺は反撃に………ってリナリーじゃねぇか!?


「チッ。外したわね」
「『外した』じゃねぇよ!何でテメェがここにいるんだッ!?」
「あら?私だけじゃないわ。アレン君やラビもいるわよ」
「そうそう。僕達もいますよ、カンダ」
「久し振りさ〜、ユウ。だから一発殴らせろ」


 はぁ?意味判んねぇよ。
 ラビだけじゃなく、リナリーやモヤシまでもが『殴らせろ』と言っている。
 何で俺がテメェ等に殴られなければいけねぇんだよ!?


「何でって…なぁ?」
「理由は一つですよね」
「えぇ。むかつくからよ(黒笑)」


 だから、さっぱり判らねぇよ!
 そもそも、テメェ等がここにいる事をは知ってんのか?
 って…そうだ。はどうしたんだ?
 こいつ等が三人揃う時は、歯止め役として必ず一緒にいたじゃねぇか。


なら部屋で休んでるわよ。医者に行ったから疲れたんじゃないかしら?」
「医者!?は医者に行ったのか!?」


 医者に行くほど、は調子が悪かったのか?
 チッ。俺とした事が気付かなかったなんて。
 何か言おうとしているリナリー達を退け、俺は急いで家に帰った。


!!」


 玄関を開け、の元へ向かう。
 はキッチンにいて、料理を作っている所だった。


「あら?お帰りなさい、ユウ」
「『お帰り』じゃねぇ!何やってんだっ!
「何って…食事の準備よ。久し振りにリナリー達に会えたから、頑張ろうと思って」
「食事なんてどうでもいいんだよ!さっさと寝てろ!」
「え?何で?」
「最近、微熱が続くから病院に行ったんだろ!?」
「えぇ。あ!もしかしてリナリー達から聞いちゃった?」


 あいつ等なんかどうでも良いんだ!
 は何の病気だったんだよっ。
 この世界では治せない病気なのか?
 だったら、『向こう』の世界へ行って治すぞ。
 『向こう』の世界でも無理ならば、医学の発達した世界へ行けば良い。
 見知らぬ土地でも構わねぇ。が死ぬよりはマシだ。


「で、何だったんだ!?俺にも言えないような病気なのか!?」
「えっと…あの…多分ユウは誤解してると思うんだけど…」


 俺の剣幕に驚いたのか、は恐る恐る口を開いた。
 つか誤解って何だよ。は医者に行ったんだろ?


「確かにお医者様には行ったわ。微熱が続いてたのも確か。でもね、病気じゃないの」
「病気じゃない?」
「そう!私達ね、もうすぐに会えるのよ!!」


 って、未来の俺達の子供だろ?
 錬金術を誤作動させて、俺達の所へ来た事もあったな。
 そのに会えるって…また錬金術の誤作動か?
 何でが知ってんだ?


「違うわよ!正真正銘、私達の子供!『未来』の私達じゃなくてねv」


 ………………ちょっと待て。どういう事だ?
 『未来』の俺達じゃなく、俺達の子供…?
 おい、まて…それってもしかして…


、お前もしかして…」
「ええ。お医者様に行って診てもらったの。最近微熱が続いてたのもその所為だったんだって」


 つまり、今の腹には俺達の子供…が?
 は?え?待てよ。落ち着け俺。
 は今妊娠してるって事だよな。
 突然のからの報告に俺は驚き、あいつ等が家に戻って来たのも気付かなかった。


ー、神田に報告したの?」
「お帰り、リナリー。えぇ、今言ったんだけど…」
「見事なまでにカンダはパニックを起こしてますねぇ」
「もしかして、ユウは迷惑だったのかしら?」
の妊娠が?それはないさ〜。ま、万が一迷惑だと言ったら、オレの所においで」
「あ!抜け駆けですよ、ラビ!!
 そうそう。もしカンダがそんな事を言うようでしたら、僕の所へ着て下さい。
 僕は立派なの父親になりますよ」
「あら?こう言う事は同姓の方が相談しやすいのよ。ねぇ、一緒にを育てましょう」


 ちょっと待て、お前等。
 何好き勝手な事を言ってんだ(怒)


「誰が迷惑だなんて言った!は俺の妻だし、腹の子は俺の子供だ。俺達で育てるに決まってんだろ」
「迷惑じゃない…?」
「そんな事思うかよ。大切なとの間に出来た子供だ。大切に決まってんだろ。
 さっきは、まさか子供が出来たと言われるとは思わなかったからな。驚いただけだ」


 さて…と。妊娠してると判った以上、に無理はさせられねぇよな。
 ただでさえ今日は医者に行って疲れてんだ。
 

、夕飯は俺が作るから座ってろよ」
「え?大丈夫よ。ご飯くらいなら」
「良いから座ってろ。医者行った疲れもあるだろ」
「わ!じゃあ今日はカンダの手料理なんですね」
「ユウの手作りだなんてレアだよな(笑)」
「ホント。でも意外と神田って料理上手なのよね」


 お前等も食ってくのかよ…
 どうして俺がお前等の為に手料理を振舞わなくちゃいけないんだ。
 と思うが、今日はめでたい日だからな。
 特別に作ってやるよ。
 俺は『手伝う』と言い張るを説得し、一人で料理を作り始めた。


 とりあえず明日は育児書などを買ってこなくちゃいけないな。







後書き
無事に(?)終了☆
今回は神田さん目線でお送りしましたぁ!
目玉は、さんの妊娠に驚く神田さんです(笑)
きっと神田さんは子どもが出来た事驚くけど、絶対に喜んでくれると思います(#^.^#)
青龍様、リクエスト内容はこれで宜しかったでしょうか?
こんなので宜しければお納め下さいませv

青龍様のみ転載可でございますv