ブックマンの魔法によってお城へ移動した。
果たして、お城でを待ちうけているものとは…?
小さな恋の物語? ―後編―
一方、一足先にお城へ行ったコムイとリナリー。
『室長室』と書かれた部屋で、何やら密談をしていました。
「何とかを説得できて良かったわ」
「そうだね。くんが一緒に来たら、計画が台無しだよ」
何やら、ホッとしている様子のリー兄妹。
計画とは一体何なのでしょう…?
「でもまだ第一段階が終わった所だよ。これからが肝心なんだから…」
「えぇ。慎重にいかなくちゃ駄目ね」
「何としても…」
「を守らなくちゃ!」
リー兄妹が密談をしていた頃。
漸くお城に到着したは、大切な家族を探していました。
ですが初めて来た上にお城が広すぎて、何処にいるか判りません。
華やかなBGMが流れる中、は不安そうに歩いていました。
「どうしたんだい?お嬢さん。何やらお困りのようですが」
「え?」
いきなり声をかけられ、驚く。
声の主は、優しそうな笑みを浮かべた銀髪の青年でした。
青年は、一瞬品定めをするようにを見ましたが、すぐに笑顔を浮かべました。
「パーティー会場はここじゃない。向こうだよ」
「パーティー?」
「あれ?知らないで来たのかい?今日はこの国の王子が花嫁を決めるパーティーが行われるんだよ」
「そうなんですか?」
は全くの初耳でした。
コムイもリナリーもお城のパーティーに行くとは言っていましたが、何のパーティーなのかは言ってなかったのです。
しかーし!この国の王子に、は特に興味を持っていませんでした。
そんな事よりも、は早く家族を探しに行きたくてたまりません。
「あの…私は王子様も、その婚約パーティーにも興味はないんです。ただ家族を探しに来ただけで…」
「だったら私と一緒に今宵はすごさないか?貴女みたいな美しい人は、初めて見たよ」
青年はの手を取り、その甲に口付けました。
初めての体験に、真っ赤になって動揺する。
けれども、青年より家族を探しに行きたいは、必死で断りました。
「あの…私は家族を探しに行きたいんです…お願いします、離して下さい…!」
「家族を探すって…今日は凄い人なんだよ?この人じゃ見つからないよ。それよりも私と…」
「いや…っ!離して下さい!!」
青年の手を振り切ろうとした時。
「やめろ。嫌がってんだろ」
長く美しい黒髪の青年が、の手を握っていた青年の手を退けました。
手を払われた青年は、文句を言おうと口を開きましたが、相手が誰か判り慌てて去って行きました。
急な青年の登場には呆然と見ていましたが、助けられた事が判ると御礼を言ったのです。
「あの…ありがとうございました」
「別に、礼を言われる事じゃねぇよ。それよりも、こんな所でうろうろしてると危ないぜ」
「はい…その事なんですが…お尋ねしても宜しいですか?」
「あ?あぁ…何だ?」
「私、コムイ・リーと言う人の所に行きたいんです。ご存知でしょうか?」
「知ってる事は知ってるが…アイツの恋人か?」
「え!?違いますよー。私は居候なんです」
黒髪の青年のとんでもない発言に、は笑みを浮かべました。
その笑みがあまりにも可愛らしく、青年は柄にもなく頬を染めました。
「俺の名前は神田だ。アンタは何て言うんだ?」
「あ…申し遅れました。私はと申します」
「ふーん…コムイの所の居候の…ねぇ」
「え?神田様は何か仰いました?」
「何でもねぇ。俺もコムイに用がある。コムイの所へ案内してやるぜ。それと俺の事は神田でいい」
「ありがとうございます!!神田」
神田の提案に、花のように微笑む。
その誰もが見惚れる笑顔を見ながら、神田はある計画を瞬時に立てたのです。
はそんな事には全く気付いていません。
コムイ達に会える嬉しさからいつもの可愛らしい笑顔を浮かべていました。
神田は、の笑顔にますます興味を持ったようです。
そんなを見ながら、次の角を曲がろうとしたとき。
「ちょっと待て、そっちじゃねぇよ」
「へ?」
違う方へ歩いて行こうとするを、神田は慌てて止めました。
とかく、目を離すと違う方へ歩いて行こうとする。
神田は軽く溜息をつくと、の手を取りました。
「か…神田?」
「こうしてれば逸れないだろ?」
「ありがとう///神田って優しいね」
「ま、限定だけどな」
「??」
何が限定なのかには判りませんでしたが、神田が嬉しそうなのであえて何も聞かない事にしました。
手を繋いでから、更に3つ角を曲がったとき。
今までとは明らかに作りの違うドアがありました。
それはとても豪華なのですが、作りがしっかりしています。
神田はの手を繋いだまま、そのドアを開けました。
中に居たのはリー兄妹。
ここは室長と呼ばれるコムイの部屋だったのです。
いきなりの訪問者に驚くコムイとリナリー。
「王子。これは珍しいですね。ボクの部屋に尋ねてくるなんて」
「本当。どういう風の吹き回しかしら?王子」
「え?王子…?」
「「え!?」」
そう。神田はこの国の王子だったのです。
が、リー兄妹にとって、そんな事は何の問題もありません。
二人が驚いたのは、神田王子の背後から聞こえた可愛い声。
聞き覚えのある…と言うか、溺愛している愛し子の声に、二人は嫌な予感を感じました。
「もももももしかして…王子の後ろにいるのって………」
「ま…まさか…?」
二人の声を聞いて、は神田王子の後ろから恐る恐る出てきました。
「ごめんなさ…来ちゃいました」
「くん!何で来たんだい!?」
「そうよ!お城は危ないって…!」
「だって…二人の事が心配だったから…」
俯き、涙を浮かべるを慰めたのは神田王子です。
安心させるように頭を撫で、目に浮かんでいる涙を指で掬いました。
「来たもんは仕方ねぇだろ。それに城が危険ってなんだよ。
今日は特に警備を強くしてあるのはコムイも知ってんだろ」
「いや、危険だよ。特に王子みたいな人がいるからね」
「それはどういう意味だ…」
睨み合ってる神田王子とコムイ。
そんな中、リナリーは神田王子の傍からを連れ出しました。
「リナリー、神田が王子様って本当なの?」
「えぇ。もしかして…知らなかったの?」
「うん。王族に興味なかったから。
それに今日は王子様の婚約者を見つけるパーティなんでしょ?
主役の王子様がここに居ても良いの?」
の質問に、神田王子は「興味ねぇよ」と答えました。
「あれはコムイが勝手に開催したんだ。俺には関係ない」
「いーや。王子には必ず出席してもらう。ボクの可愛い可愛いくんやリナリーに手を出されちゃ、堪らないからね」
「チッ。そう言う魂胆か…このシスコンが」
「ふふん。何とでも言うが良いさ☆言っておくけど、王子が相手を決めるまで、このパーティは続けるからね」
「だったら、すぐにでもパーティをやめて良いんだぜ(黒笑)」
神田の発言に、嫌な予感をますます深めるリー兄妹。
二人の一瞬をついて、神田王子はの腕を引っ張りました。
神田王子の力に逆らえず、はそのまま神田王子の腕の中に収まります。
驚いたですが、自分の置かれている状況を把握すると、顔を赤くしました。
「お…王子!を離しなさい!!」
リナリーの怒鳴り声に、神田はニヤリと黒笑を浮かべました。
「今日は俺の婚約者を見つけるパーティーなんだろ?俺はを婚約者にする」
「えぇ!?」
神田の発言に、一番驚いたのはでした。
家族を守りたい一心で来たのに、まさかこんな展開になるとは思っていなかったのでしょう。
「ほ…本気なのですか?」
「俺は冗談なんか言わねぇよ」
「でも…私まだ王子様の事を知らないですし…」
「神田で良いって言っただろ。それに、これから俺の事を知っていけば良い。
それとも、は俺と一緒になるのは嫌なのか?」
「嫌と言うか…その…」
「だったら「ダメーーー!!」
神田の声を遮って、コムイが叫びました。
そして、急いで神田王子の腕の中からを取り返します。
「王子と結婚なんて駄目だ!王子と結婚させるくらいなら、ボクがくんをお嫁に貰う!!」
「えぇ!?」
「冗談じゃねぇ。は俺が貰っていく」
「そんな事は絶対にさせない!!」
は頭上で行われている言い合いに、困ってしまいました。
何とか止めようとするが、二人とも聞く耳を持ちません。
おろおろしているを助けたのはリナリーです。
「リナリー…どうしよう?」
「王子も兄さんも気にしなくても良いわ。それよりも、もう戻る?それとも、城の中を案内し欲しい?」
「良いの!?じゃあ、お城の中を見てみたい!!」
「うん。じゃあ案内するね」
とリナリーは、にっこり笑いながら室長室から出て行きました。
神田王子とコムイは、二人が出て行った事にも気付かず、言い争いをしていたそうです。
え?結局は誰と結婚したのか?
それはまた、別のお話(笑)
後書き
………プ(笑)
神田王子だってー!
自分で書いておきながら、笑っちゃいました(#^.^#)
リクエストは神田夢だったんですが、何故かvsコムイちっくに。
紫青様、こんなので宜しければ、前後編ともお納め下さいませ。
紫青様のみ転載可でございます。
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