Theater Ticket  ―後編―



「こういう楽しい事は俺に任せろ!!」



 マース・ヒューズ降臨☆

 飄々とした態度でマイクを持ち、頭にわっかを付けています。

 驚いているエドに笑いかけ、の方へ近付いてきました。



「久し振りだな〜〜。元気にしてたか?」

「はい!ヒューズさんもお元気(?)そうで」

「ははは。俺は何時でも元気だぞ。
 特にエリシアちゃんの可愛い可愛い可愛い
KAWAII笑顔の写真があるからな。元気百倍だぜ☆」



 まぁ!なんて迷惑なアイテムなんでしょう!!

 しかも、更に愛娘の話をしようとしています。

 ここでヒューズの話を聞いていると次に進めません。

リザは強制終了させました。

いよいよクイズ大会の始まりです。



「レッディース&ジェントルメン!!今日はめでてぇ日だぜ!何てったって…」

「ごたくはいい。さっさと始めろ」

「えー?折角エリシアちゃんが…まぁいい。早速クイズ大会を始めるぜ〜」



 厳しいロイのツッコミに不満の声を上げるヒューズ。

 が、そこは彼の性格上気にしないみたいです。

 さくさくとクイズ大会を進行させています。



「ルールは簡単!最高得点者が優勝だ!んでもって、優勝商品はコレだぁ!!
 
我らがアイドル、嬢と行く今人気の演劇鑑賞会!!

「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」」」」」



 ヒューズがを指した途端、観客達から一斉に歓声が上がりました。

 恐らくは、騒ぎを聞きつけて見に来たのでしょう。

 中央司令部って暇なのでしょうか…?



「現在の参加者は、万国人間ビックリショーの三人!!他に参加したい奴はいねぇか?
 ………どうやらいないみたいだな。よし!じゃあ始めるぜ☆まずは優勝商品のから一言!」



 話題を振られると同時に、アルから練成したマイクを渡される

 戸惑いながらも「えと…頑張ってね?」と答えました。

 けれども心の中では

 (演劇に行きたいなら、チケットを譲るのになぁ)

 と的外れな事を考えているのでした。

 さて、そんなは置いといて。

 司会のヒューズに目を向けると、彼はルールの説明をしていました。



「クイズのルールは簡単!より多く正解した人が優勝だ。次に気になるクイズ問題について説明しよう。
 今回は『と行く』演劇鑑賞会だ。そこでについて一番詳しい者に行く権利がある。
 詳しい事は…アルフォンス!!」

「了解しました〜。答えはこのボードに書いてもらいます。に関する事なら何でもOK



 アシスタントのハボック少尉(無理やり任命)が、三人にクリップボードを渡します。

 それを受け取りながら、エドは内心ほくそ笑んでいました。



(身長や生年月日、血液型なんかはこいつ等も知ってるだろうけど…この勝負、オレが有利だな。
 何てったって小さい頃のを知ってるんだ)



 エドは幼い頃、と一緒に暮らしていました。

 それこそ神田やロイの知らない事まで知っています。

 心の中で、何から書こうか考えていた時。



「例えば――名前は・カーティス。肩より少し下の黒髪。生まれ
 幼い頃に両親を亡くし、ダブリスの師匠の所で暮らしてたんだよね?」

「えぇ、そうよ」

「ボク達と再会してからは一緒に旅をしていたんだけど、アクシデントがあって異世界に飛ばされてしまう。
 その世界ではエクソシストとして大活躍。得意な錬金術は、実の両親が教えてくれた治癒錬金。
 あ、って錬金術も凄いけど体術も凄いよね!」

「このご時勢、何があるか判らないって先生に言われたもの」

「内乱が終わったばかりだったもんね。サボると師匠怖いし…」

「うん…でも先生のおかげで今戦えるから、感謝してるのよ」

「それはボクも同じだよ。師匠を尊敬してる。って…話が逸れちゃった。因みにの身長は…」

「あら…よく知ってるわねぇ。全部合ってるわよ」



 アルが次々にの特徴を答えます。

 皆が知っているような事から、この中ではエドしか知らないような子供の頃の事。

 そして、エクソシストになってからの事まで。

 何故アルがその事を知っているのでしょう…?



「何でボクがエクソシストのを知っているか?フフフ…それは秘密だよv



 とりあえずアルフォンスさんの周りにある黒いオーラは見なかった事にしておいて。

 また三人に目を戻してみると………

 エドが拳を握り締め、プルプル震えていました。



「っんのバカ弟ー!!こいつ等の知らない事まで言ってどうすんだ!!」

「ヤだなぁ兄さん。ボクがすんなり兄さんとを一緒に行かせると思った?」



 黒い笑顔で「兄さんもまだまだだね」というアルに肩を落とすエド。

 「オレが兄なのに」と呟いています。

 さてさて、アルの例えに困ったのはエドだけではありません。

 神田とロイも言おうと思っていた事を言われてしまいました。

 三人の気持ちとは裏腹に、ヒューズが楽しそうに進めます。



「さあ!早速クイズを始めるぜ☆今言った事以外を答えてくれ。
 因みに、客観的に見た事じゃないと正解にはならないからな♪
 制限時間は3分だ。それじゃスタート!!」



 時間がカウントされ始めました。

 答えは客観的に見た事…つまり解答者の主観ではいけません。

 『天使の微笑み』などもに当てはまりますが、正解にはならないと言う事です。

 困っている三人。

 時間だけが過ぎていきます。

 1分経過、2分経過。

 誰一人アルが言った以外の事を答えられません。

 2分半経過。

 このままサドンデスの突入か?と思われた時、意外な人物がヒューズを呼びました。



「おぉ?何だ何だ?カンダは何か思いついたのか?」

「客観的に見るの事なら何でもいいのか?」

「あぁ!誰もが事実だと確認できるものならOKだ」

「ふーん…ならあの鎧が言わなかった事でに関する事が一つだけあるぜ」



 口の端を上げながら、神田はエドとロイを挑戦的に見ました。

 神田の態度に眉を顰めるロイと、あからさまにムッとするエド。

 それでも何も言わないのは、神田が何を言うのか気になっているからでしょう。

 何もそれはロイやエドだけではありません。

 この会場にいる全員が、神田の答えを気にしています。



「で、お前さんは何を言うんだ?」



 ヒューズが神田にマイクを近づけました。



「あの鎧は、の事で最も大事な事を忘れてるぜ。












 

は俺の恋人だ












 

 この直後、ブーと終了のブザーが鳴りました。

 神田の爆弾発言に会場はしん…と静まり返っています。

 最初に動いたのはヒューズでした。



「おーい、カンダが言ったのは事実か?」

「え///えぇ///事実ですよ ///

「そうかー。よし!優勝はカンダだ!!



 ヒューズの宣言に、当然だと言わんばかりに頷く神田。

 けれども納得しない人達もいる訳で…



「ちょっと待て!!オレはそんなん認めねーぞ!!」

「私も賛成できないな」

「はっ!テメェ等が認めなくても事実は事実なんだよ」

「どうせアンタが睨んで脅したんだろッ」

「もしくは弱みを握ったか…だな」

「はぁ?寝言は寝てから言えよ。俺達は相思相愛だぜ」

「ぜってー認めねぇ!こうなりゃ実力行使だ!!」

「鋼のと同意見と言うのは納得いかないが…欲しいモノは自力で手に入れるまでだ」

「エクソシストに勝てると思ってんのか?」

「錬金術師を舐めんじゃねぇ!!」



 エドは地面から槍を練成し、ロイは発火布をはめました。

 その二人に対し、神田も六幻を構えます。

 ………クイズ勝負はどうした、おまいら(汗)

 殺気を放ちながら睨み合っている中、ギャラリー達は逃げて行きます。

 残っているのは、とアル、リザ、ヒューズだけです。

 ヒューズはワクワクしながら、リザは呆れながら成り行きを見ていました。

 アルはというと、全く興味なさそうです。

 だけが、三人の様子を不安そうに見つめていました。

 最初に動いたのはロイです。炎を練成し、爆発を起こします。

 神田とエドはそれを避けましたが、爆発により煙幕が立ちこめ視界が悪くなりました。

 これでは、誰が何処にいるかわかりません。

 その上ロイはまだまだ炎を練成しています。



(チッ。この煙幕じゃ何も見えねぇな。ここは相手を動かして場所を見定めるか。確かヤツは…)



 神田は昔が言った言葉を思い出しました。

 それを利用すれば、上手く陽動出来るかもしれません。

 考えた神田は、早速行動にうつしました。



「さっさとかかって来いよ、チビ」

「どぅわぁ〜れ〜が針の穴も通る程のどチビだって〜〜!?」



 煙幕の中、エドの姿を確認できた時。



「イノセンス発動。災厄招来 界蟲『一幻』!!」

「どぉわっ!!」

「チッ。避けやがったか」

「あっぶねーな!オレを殺す気か!!」

「ふ。お喋りしてる暇はないと思うのだがね」

「厄介な炎だな。先にヤツをつぶすか…いや待て………」

 

 神田は少し考えたあと、ロイへ向かって行きました。

 ロイへと六幻を振り下ろすも、ロイは簡単に避けます。

 六幻を振り下ろし神田の隙が出来た所で、エドが練成した甲剣で斬りかかりました。

 エドに気付いた神田は、攻撃を避けつつ回し蹴りをしました。

 エドが避けたのを見計らって、ロイが炎で攻撃します。

 三者三様の攻撃で、辺りは既にボロボロです。

 下手をすれば、中央司令部が破壊される勢いです。



「リザさぁん…どうしましょうコレ(汗)」

「止められるのはしかいないわ」

「うん、だけがこの争いを止められるよ」



 リザとアルに言われは戸惑いました。

 止められると言われても、激しく戦っている彼らをどう止めていいのか判りません。

 良い案がないかと思い、リザとアルの方へ向いたのですが…



「「頑張って」」



 と、遠くの方から言われただけでした。

 この二人は何時の間に逃げたのでしょうか(汗)

 こうなったら、自分で何とかするしかありません。



(とりあえず、前の時みたいに叫んでみようかな)



 覚悟を決め、拡声器を練成しようとしたの腕を誰かが引っ張りました。



「え―?か「しっ!黙ってろ」



 戦っているはずの神田が、の口を掌で押さえていました。

 どうして彼はここにいるのでしょうか…?



「演劇のチケットは持ってるか?」

「(コクコク)」

「なら行くぞ」



 神田はの手を引いて、錬兵場から出て行きます。

 その様子をロイとエドは気付いていないらしく、未だに戦っていました。







































 † † † † †



 中央司令部から出て、と神田はセントラルの街を歩いていました。

 二人の指は、しっかり絡まっています。

 それは誰が見ても、仲の良い恋人でした。



「それにしても吃驚したわ。決着がついたの?」

「ついてねぇよ。煙幕に紛れて抜け出した」

「抜け出したぁ!?」

「あぁ。いちいち戦ってられるかよ。クイズで優勝したのは俺だぜ。
 つかは俺の恋人だ。恋人同士が一緒に演劇を見に行って何が悪い」

「ふふvそうよね。私も本当は神田と行きたかったの。
 あんな展開になった時は焦ったわ。大佐やエドには悪いけど、神田と一緒で嬉しいv」

「あぁ。俺もと一緒で幸せだ。あいつ等が諦めてくれればもっと幸せだけどな

「え?何か言った?」



 聞き返すに「何でもない」と答えると、神田は急ぐかのように足を速めました。

 恐らくロイやエドが気付かない内に、少しでも遠くに離れたいのでしょう。

も神田に合わせて速度を上げました。

 それでもの苦痛にならない速度で抑える辺り、を大切にしている事が伺えます。

 早足で歩きながら、は考えていました。

 どうして神田とロイ、エドは喧嘩するのだろう…と。

 思い切って神田に尋ねてみました。



「何でって…人の恋路の邪魔をするからだろ」

「エドも大佐も…何で邪魔するのかしら?」

「………それマジで言ってんのか?」

「へ?何で?」

「もういい………」



 のあまりの鈍さに、神田は溜息をつきました。

 エドもロイもが好きなのですが、神田は敵に塩を贈るつもりはありません。

 この話は終わりだと言うかのように、繋いだ指先に力をこめました。

 まるで、は誰にも渡さないと誓うかのように。



「ねぇ神田。ずっと離れないから」

「あぁ。離さねぇよ。もう二度とを一人にさせない」

「約束?」

「約束だ」



 その後、彼らは夜の帳が訪れた後も二人だけで同じ時間を過ごしたそうです。








後書き
漸く終わりました!!
如何だったでしょうか?意外な決着のつき方…だったかな?
実際なら、ロイはこんな簡単に引っかから無いと思われた方!!
それは言わない方向でお願いします(マテ)
今回は神田オチと言う事で大目に見てください
桜簪様、こんな作品で宜しければ前後編ともお納め下さい。

桜簪様のみ転載可でございます。

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