Child Panic 




 任務を終えた私と神田は、報告のために教団へ戻ってきたわ。

 その日は珍しく、アレンやリナリー、ラビも居たの。

 みんなに挨拶をして、コムイさんへの報告が終わった後の事。

 廊下を歩いていた私は、ドンっと背後に衝撃を受けた。

 吃驚して後ろを振り返ってみると、小さな男の子が私に抱き付いていたのよ。

 年齢は3〜4歳くらいよね。

 何で教団に子どもが?誰か連れて来たのかしら?

 疑問に思いながら、その子と目線を合わせるために座ったとき。



「ママ!!」

「………………はっ!?」



 えっと…私の聞き間違いかしら?

 うん、そうね。聞き間違いよね。私に子どもはいないもの。

 そうよ。聞き間違いよ。吃驚したわ。

 さて、気を取り直して。もう一度この子に尋ねよう。



「ねぇキミは…」

「ママ!あいたかった!!」



 ………聞き間違いじゃないようね。

 どうして良いのか判らず、神田を見上げたんだけど…

 彼もまた驚いているようだったわ。



…おまえいつの間に子どもを?つか何で言わねぇんだよ」

「ちょっと待って。ありえないから。ずっと一緒にいたでしょ?」

「…そう言えばそうだな」

「しっかりしてよ神田…驚く気持ちは判るけど」

「じゃあコイツは誰なんだ?」

「それは今から聞くから睨まないで。怖がってるじゃない」



 神田の目線に怯えたこの子が、涙目になっている。

 私は安心させるように彼の頭を優しく撫でた。



「ボク、お名前を言えるかな?」

「ママはぼくのなまえをわすれちゃったの?ぼくはだよ」

「そっか。だね。私はキミのママじゃないのよ」

「?ママはママだよ」



 きょとんとした顔で答える

 これじゃ話が進まないわねぇ。

 のママの名前を聞けば何か手がかりが掴めるかしら?

 そう考え尋ねたんだけど、彼の答えは更に驚くものだったの。



「ママはっていうんだよ。きゅうせいは・カーティスだってママがいってた」



 それは………もしかしなくても私ですか?

 いやいやいや。同姓同名がいるかもしれないわ。

 もう少しに聞いてみよう。



「ママは何してるの?」

「むかしは『れんきんじゅつしでえくそしすと』だったんだって!」



 一体どう言う事ですか!?

 この発言に神田もに視線を合わせた。



「本当にお前の母親は『』って言うのか?」

「そうだよ。ママはだもん」

「なら、ソイツは何処にいるんだ?」

「ママはここにいるよ!!」



 はそう言って、私にしがみついた。

 困ったわ…は本当に私を母親だと思ってるみたい。

 このままという訳にはいかないし、コムイさんに相談してみよう。

 立ち上がり、を抱き上げる。

 するとは嬉しそうに私の首に手を回した。

 やっぱり子どもは可愛いわね。

 いきなりの事で驚いたけど、子どもは嫌いじゃないわよ。

 嬉しそうに笑うを見ると、自然に笑みがこぼれた。



「そうやって見てると、は似てるな」

「そう?やっぱり私の子ども…なのかしら?」



 腑に落ちない事も沢山あるけれど、私と神田はとりあえず科学班へ向かった。












































 † † † † †



 部屋にはリナリーだけじゃなく、アレンとラビもまだ居た。

 私と神田が子どもを連れて入ると、みんなが驚いたの。

 ………絶対勘違いしてるわね。



「「「「!?」」」」

「言っておくけど、みんなが想像してる事と違うわよ」



 ん?は私を母親だと思ってるから、半分はそうなのかしら?

 それは兎も角、私はこの部屋に来るまでの経緯を話したの。

 やっぱりみんな驚いてたわ。無理もないけどねぇ。



「やっぱりの子どもなの?」

「まさか。でも『錬金術師でエクソシスト』と言ったら私よね?」

「だよなぁ…けど子どもを産んだ覚えなんてねぇんだろ?」

「えぇ。と言うか任務に行く前は普通だったでしょ?数日で子どもは生まれないわよ」



 みんなが難しい顔で考え事をしていたからかな。

 は不安に思ったらしく、目に涙を浮かべたの。

 あああぁぁぁ…しまった。不安にさせるつもりなんて無かったのに。



「ママ…ママはぼくのこときらいなの?」

「そんな事無いわ!が大好きよ!」

「ほんとう?ぼくもママがだいすきだよ!!」



 穢れの無い笑顔にクラリ。

 最近は黒笑ばかり見ていたから、この子の笑顔が天使に見える。

 黒くないって素晴らしいわ!!

 「ママだっこ〜」と言うを抱き上げた時。



「あら?ネックレス…?」



 彼は銀色のネックレスをしていたの。

 もしかしたら何か手掛かりが掴めるかもしれない。

 に断って、それを見せて貰った。

 そのネックレスのヘッドには………練成陣が彫られていたのよ。



「これは練成陣だよね?くん、何の術か判るかい?」



 コムイさんに言われて、その練成陣を考えてみた。

 それは空間を越える時に使っている練成陣と似ているけど違っていたの。

 何て言うのかしら…?もっと高度な練成陣。

 残念ながら、今の私には理解できない。



「ごめんなさい。私には判らないわ…」

でも判らないなんて…凄い練成陣なんだね」



 アレンが練成陣を見つめながら、感心した声を出した。



「えぇ。とても高度な構築式が描いてあるのよ」

「だが、がいつも考えている練成陣とどこか似てるな」

「それは私も思った。あの練成陣がもっと進化したような…」



 にこのネックレスをどうしたのか尋ねてみた。

 彼曰く、『ママ』のネックレスを着けて遊んでいたらしいの。

 そして気付いたら教団にいて、冒頭に戻るという訳ね。

 ん〜………だとしたら、このネックレスが怪しいわ。



「もしかしたらこの子、未来から来たんじゃないかな?」



 コムイさんの発言にみんな驚く。

 何の冗談かと思ったけど、コムイさんの表情は真剣そのものだったのよ。

 そんな私達に、コムイさんは自分の考えを話してくれた。



「こうは考えられないかな?この練成陣を考えたのは未来のくんで、何かのきっかけでくんは過去に来てしまった。もしかしたら、この子も錬金術が使えて、偶然にも発動してしまったとも考えられる」

「あぁ!それが一番考えられるさ〜」

「そうですね。未来のなら、時間を越える錬金術も使えるかもしれない」



 コムイさんの考えに、リナリーや神田も同意している。

 と言うか…この子は私の未来の子どもに決定なのですか?

 教団内の誰かの子どもとだと考えるのが妥当じゃないかしら…?



「だって…ねぇ」(Byリナリー)

「うん…」(Byアレン)

「なぁ?」(Byラビ)

「だよねぇ」(Byコムイ)

「あぁ」(By神田)

「「「「「(くん)、そっくり(よ)(だよ)(だぜ)」」」」」



 そんな…声を揃えて言わなくても…

 そっかぁ。そんなに私とは似てるのね。

 見つめていると視線に気付いたらしく、が私を見た。



「どうしたの?ママ」

「ううん。何でもないわ」

「ふ〜ん…へんなママ。ねぇママ。いっしょにあそぼう?」



 が手を引っ張って誘うけど、仕事もあるし…

 困っているとコムイさんが助け船を出してくれた。



くん、今日は休んで良いよ。くんの相手をしてあげて」

「良いんですか?」

「こんな小さい子を一人にしておくワケにはいかないでしょ」

「はい!ありがとうございます」



 コムイさんのこの言葉に、私は素直に甘える事にしたの。

 こうして私は子守をする事になりました。









後書き

3万ヒットキリリク夢でございます。
ごめんなさいッ!!
仰りたい事は判っています(汗)
というか…コムリンネタに続いて、子どもネタも好きだな私…
しかも、今回は多分3本仕立てだよ…(またか)
暫くお付き合い下さいませ。

シオン様、相変わらずですで申し訳ありません!!
全て捧げます!!
シオン様のみ転載可でございます。



ブラウザを閉じて下さい。