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楽   書   帳たのしみつつかきしるすノート 8




八 方 尾 根 に遊ぶ


(平成14年9月18日)

(本文は、平成14年の夏休み白馬紀行の第3日目で
あるが、前後の関係もあり、全文を載せることにした。)

9月16日9月17日 9月18日



9月16日(日・祝)
第1日目 勇躍白馬村へ ラ・ネージュ東館に泊まる

 定通り朝6時に自宅を出発。駅前のローソンでお握りや飴などを調達してから一路白馬へ向けてスタート。宝塚IC−多賀SA−小牧JCT(内津峠PA)−恵那峡SA−駒ケ岳SA−梓川SA−豊科ICを経てR147、148をひた走り午後3時40分頃にホテルに到着した。道中大体前記のSAやPAで一息入れながらだから、走りずめでバテるということはなかった。
  那峡あたりから少し前から降り出した雨がひどくなり、ガスもかかって少々走りにくかった。岡谷JCTまでが中央道でそこから長野道となり、程なく高速は豊科ICで降りた。その頃には雨も上がり少し暑い位になった。安曇野松川という道の駅で一休みして、しばらく行くと仁科三湖にかかった。文字通り湖が三つ続いているところだ。手前からレジャーの木崎湖、釣りの中綱湖、思索の青木湖といって、なかなか良いところのようだ。ここを過ぎると白馬村になり、直ぐに又道の駅があるので入る。このところ桂子は猪名川のそれに何回か行って味をしめて以来、道の駅ずいているので仕方ない。この辺りからカーナビに頼ることにしたが、東急ホテルと入れたのに変な方向に誘導されてしまい、しばらく狭い道の、建物が立てこんだところをうろうろさせられた。  生憎 雨模様で、少しかすんでいる。森の中のロケーションは、素晴らしい。
 れをやっと抜け出し、今日のホテルのラ・ネージュ東館へは予定より少し遅れたが、まずは無事到着。思っていた通りのなかなか瀟洒な外観で、かなり高い立ち木の中にある。洒落ていてかつ落ち着きのある建物だ。付近全体が森で、その中なので雰囲気は誠に申し分無しだ。
 に入ると正面のロビーに通され、まずクッキー付きの紅茶の接待をしてくれた。インテリアはシックな感じでまとめられ、調度品はそれなりにいいものが揃えられているいるように見受けられた。
 の女性が言うには、たまたま団体が入ってしまったので、申し訳ないが料金は同じで、上のランクの部屋に変って欲しいとのこと。ただしコテージで本館とは別棟になるが、設備はいろいろ付いているとのこと。別に断ることでもないので、OKした。この時桂子が思いがけない一言を発したので、ビックリした。「お宅は、確か団体は取らないことになっているのではありませんか?」とかましたのだ。そう言えば確かにパンフッレトにそんな文字が、見えていたのを頭の隅で思い出した。お主、なかなかやるじゃないか、と感じいった次第。先方は一瞬詰ったが、何とか言い繕っていた。要するに、何処かの新車の発表会の客をまとめて入れているらしい。翌朝分かったのだが、20人足らずのようだった。
 テージは6〜70m離れた所にあった。ここは敷地全体が林に中で、その中に本館及び1棟の別棟と数棟のコテージがあり、あたりの景色はなんとも云えないいい風情を見せている。案内されて入ると、入り口の左側に按摩器がおいてあるりビングルーム、反対側にダブルベッドの寝室、更に奥にツインの部屋とその間を挟んでバス洗面所とトイレがある。バスはジェット噴流付きで広くて綺麗で言うことなし。テレビは勿論各部屋にある。
 っては見たものの、こんな山小屋風マンションでは正直なところ、あまり落ち着かない。仕方ないからリィビングでテレビを見ながら按摩器をかけたりお茶を飲んだりした。夜寝る時は自分がダブル、桂子がシングルの一つを使用。不満だったのは各部屋とも少し暗い感じがすることだ。バス・トイレが異様に明るいのに対して、居室は明るさが足りないと思った。特にリビングはせいぜい明るくして楽しさを演出して欲しいものだ。
 沢なこれらの施設を使って見た感想だが、夜は一寸寂しく感じることだ。林の中だから物音一つしない。そんな時に何かの拍子に小さくても音がすると良く聞こえてしまい、少し気味悪く感じた。やはりこう云うタイプは値段とは関係なく、あまり選ばない方がいいかなと寝ながら考えていた。特に二人だけの小人数では使い様がなく、あえて希望するものではないだろう。この時は丁度幸いと言うべきか、夜半から雨が降りだし、殆ど一晩中かなり強く屋根を叩いていたので、その音に紛れて他はあまり気にならなくなったが。
 テージで一服してから散歩に出た。和田野の森という地名だけあって、付近一帯は森である。そこを開発してホテルやペンションを作ったようだ。ただ少しシーズンを外れている為か、殆どが人影はなく、開店休業の感じで、中には文字通り裏寂れた気味の悪いのもある。このような状態を見ると、選ぶ時には慎重にしないと、とんでもないのが当たる事もあるから注意が肝要だ。今回ラ・ネージュを予約したのは、極めていい選択だったと云えよう。1時間程歩いて戻ってきた。
 時から夕食は食堂で取る。なかなか立派な食堂でテーブルは20も並んでいるだろうか。数組が既に食事をしていた。例の団体は別室らしく、辺りは至って静かである。メニューはフランス料理のコースで味・量ともマアマアと言うところか。パンは硬いものの他に二種類あったが、桂子の評価ももう一つと言うところのようだった。食器類はやはり吟味されていると見た。残念ながら、その良さが分かるだけの力を持っていない。飲み物は麒麟の他に、地ビールを飲んでみたが、やはり飲み慣れたものが一番美味いように思う。地ビールはどこで飲んでもそうだが、高くて今イチのように思うが、他の人達はどう感じているのだろう。
 後はロビーで新聞をよんで、寛いだ。ロビーに限らず、室内の調度品はどれも凝っていて、いかにも高価そう。独特なシックな雰囲気を醸し出していて、素晴らしいと思う。
 屋に戻り、翌日の弁当にお握りを頼み、少しテレビを見てから寝た。静寂そのものである。コテージの夜の印象は前記の通り。雨が降り出してからは、その屋根を打つ音が耳に付き、余りよく眠れず。


9月17日(月)第二日目
 白馬村らしさを楽しみ トロイメライに泊まる

 念していた通り、朝から雨模様だった。桂子の寝ている内にゆっくり風呂に浸かる。窓を開けるとたっぷりと湿気を含んだ冷気が、流れ込んできて気持ちが良い。お湯を一杯にして、ジェット噴射を利かせ、寝湯を楽しむ。
 が明けた林に雨が落ちている。コテージの裏側に当たる窓の外も高い木立が続いていて、緑が本当に綺麗だ。普段は使わないホテルのカミソリで顔を丁寧に当った。皮膚がつるつるしてさっぱりした。風呂から外部が眺められるのは、開放感があって一段とゆったりした気分に浸れ、実にいいものだ。 誠にロマンチックな建物。中は古さを補う為、手をかなり入れている。
 脚は弱くなったり強くなったりで、止む気配がない。8時になったので、食事に出る。玄関ドアの横に、早朝に届けてくれたらしい二本の傘が立てかけてあった。なかなか気の付くホテルだ。桂子が傘を持ち込んでいたので、直ぐ近くの本館までだから支障はないと思っていたのだが、一寸した相手の心遣いが嬉しい。メニューは洋食だが、パンの代わりにお粥もあるとというので、それにしてみた。量が少なめで物足らなかったが、ごくさっぱりした朝食となった、こんなものか。
 夜は気が付かなかったが、ここも大きな窓が林に面しており、爽やかな朝が全体に感じられいいムードを醸していた。
 後ロビーで一服し、美佳に四千円の草木染めのマフラーを求めた。コテージに戻るも、依然として降りしきっていたので、結局チェックアウトまで時間一杯部屋にいた。ホテルの方も気の毒と思ったのか、フロントの女性がえらく親切に雨降り時の観光スポットを教えてくれたが、どこもあまりピンと来ず、適当に聞き流した。そして取り敢えず出発するも、雨の状況は変わらず、雨中ドライブということで仁科三湖の内の一つ、青木湖に向った。
 合大きな湖で一周出来る道路がついている(後から分かったのだが。)一回りして見たが、途中「塩の道」と呼ばれる古道が重なってなかなか風情のあるところだった。雨が落ちていなければ、車をやめて歩きたいところだ。この後地図を見ると、国道から直ぐにホテルで教えてくれた「自然探勝園」があったのでので、そこを見る事にした。行く前に車の中でホテルで調達しておいたお握りを食べた。少し柔らかめだが、結構美味しかった。そうこうしている内に具合よく、雨が小降りになったので、靴を山用に履き替えたりして体勢を整えて、国道から直ぐ前の案内標識が出ている小道に降りた。
 然探勝園の案内板を見ると「姫川の源流」「親海およみ湿原」の二つがあるらしい。前者は最後は糸魚川(新潟県)で海に注ぐ川だが、それの本当の始まりとされている地域で、山裾からの湧水が認められ、姫川の源流と認定されている。辺り一帯は木道が張り巡らされ、その状況がよく眺められるようになっている。これだけ源流が明確に捉えられているのは、全国的に珍しいらしい。後者は尾瀬に似た湿原で、同様に木道が一体に張り巡らされていて、湿原特有のいろいろな花や草木の自然鑑賞が出来るようになっている。
  蕎麦は怠け者が、植えると言う人もいるとか。めに姫川源流に足を向けた。小さな山の裾の森の中に、周りが荒れない様に木道が設けられている。それを伝い歩きながら、上から覗き込むようにして見ると、綺麗な水が染み出してきていて、まず極く小さな流れを作っている。小雨と相俟ってしっとりとなかなか落ち着いたいい雰囲気であった。その少し先で、それが小川となり、さらに続いているので、しばらく辿っていった。すると周りが山に囲まれた盆地に出た。かなり広いところで水田のほか所々に白い花が一面に咲いている。いかにも信州の初秋の風景でいい気持ちになる。水田の見まわりと思しき老人と出会ったので、話し掛けていろいろ教えてもらった。白い花はそばだった。手入れが殆ど要らないので、稲作が出来なくなったところに作られているようだ。この人は近くの農家のご隠居らしく、昔満州に兵隊に行っていて、現在その恩給を貰っていると誇らしげだった。
 じ方向に行くというので、親海湿原まで案内して貰う。尾瀬より規模が小さく、更に草深くした所で木道が完全に出来ている。可愛らしい花があちこちに咲いていた。一当たり見て戻ってきたが、ものの15分くらいしか掛からなかった。
 うやく雨も上がり薄日も射すようになってきたので、次に温泉に入ることにした。ここに来る時に看板の出ていた、「十郎の湯」に向かう。案内に従っていくと、国道から案外深く入ったところにあった。午後の三時頃になっていたが、駐車場には1台もまだ止まって入ない。自動販売機で600円のチケットを買って入ると、男湯の方はやはり誰もおらず、洗い場の様子から自分が本日のトップの客と思われた。しばらくは一人だけで占領してサウナ、露天も使い、誠にいい気持ちであった。4年前にオープンしたそうで、全体がまだ綺麗で頗る感じが良かった。湯量も豊富で、サラットした感触の湯であった。結局後から若い人が一人だけ入って来ただけで、殆ど貸切り状態を充分に堪能させて貰った。思いのほか、いい温泉だったので感激。
 を流してさっぱりして、国道148号を戻って行くと、遥か向こうに何か緑色の大きな機械のようなものが、見え隠れした。目を凝らして見るとスキーのジャンプ台である。数年前に開かれたな長野冬季オリンピックの会場の一つのようだ。急遽それを訪ねることにした。
 識に従って走ると程なく、ジャンプ台の下の駐車場に着いた。そこから歩いて上がって行くと、文字通り大きな台が目の前に現れた。良く見ると実際に人が飛んでいるではないか。急いで近寄るとサマージャンプの練習で、人工芝のノーマルヒルと呼ばれる低い方で、数人が順に飛んでいるのだった。ジャンパーがスタートする台の直上に立って、見学できるようになっているので、料金を払ってまずリフトに乗り、次にエレベーターで最上階に出た。100mは上がっただろう、眼下に白馬村一帯と周りの山々が一望出来、素晴らしい眺めであった。そこから少し降りていくと選手が、ジャンプを開始するすぐ真上に立つことが出来るようになっており、そこへ行ってしばらく見学していた。ジャンプの助走路は40度位の傾斜がついているので、まっこと転がり落ちていく感覚だ。飛んでいる本人達は見た目には、割合あっさりとスタートして行くが、正直なところやはり怖いのではないかと思う。
 生はやや高所恐怖症の気味があるから、しばらく立ってみているだけで、足元辺りが何となく、ひんやりしてきて、落ち着かなく無くなって来た。桂子はそうゆうことは無いようで澄まして見ていた。時々飛行機などに乗りたそうな素振りを垣間見せるが、高いことの恐怖心をあまり感じない性格であることも初めて知った。むしろこっちで勝手に怖いと感じている筈だ、と思い込んでいた。長い間一つ屋根の下に暮らしていても、案外と分かっていないことがあるものだ。気が付くと5時の閉場時間になってきたので、慌てて又エレベーターとリフトでまた地上に戻ってきた。
 間になったので、本日の予定はこれまでにして、ホテルに向う。少し迷ったが直ぐ近くだったので、案外早く分かりホットした。トロイメライという白馬村のみそら野別荘地内にあるペンションである。宿泊は勿論出来るが、この辺りでは美味しいフランス料理を出すことで、非常に有名らしい。
 庭が背の高い松やその他の林になっていて、地面が芝生で綺麗に手入れされていて、第1印象が非常に良かった。この辺りも元々は森林で、それを出来るだけ自然を残して開発したという感じだ。ペンションらしく、入る時はスリッパに履き替えさせる。部屋はごく一般的なツインの作りだ。旧い建て屋だが清潔に保たれているようだ。風呂はユニットだが、最近改造したらしく大きめで、これもまた極めて気持ちが良さそうだ。寝間着が用意されていないので、一瞬シャツのまま寝るのかと覚悟したが、後から確認の為聞いて見たら、浴衣を貸してくれた。部屋には冷蔵庫はあるが、湯沸しはおいてなく熱いお茶は飲めない。この辺がペンションである。どうやらその日は他の泊り客は、殆ど居なそうな気配だった。
 休みして散歩に出た。この辺りが昔森林地帯であったことが、直ぐ分かる。今はペンションと個人住宅が入り混じっている。前者の方は和田野と同様殆ど人気が無い。このような状況を見てると前にも書いた通り、今後こうゆう所を訪ねたりする時は、必ずその地域での一番かその次辺りのホテルやペンションを選ぶようにすべきである。
 1時間位歩いて、また雨になってきたので戻ってきた。ロビーと思わせる小さなスペースがあり、みやげ物やこのトロイメライのことを取り上げた雑誌が頁を開かれたまま、何冊もおかれてた。
 定された午後7時に食堂に降りる。4人掛けのテーブルが二列に並んでいて全部で十数組あり、かなり広い。他に客が居ずガランとしていたが、しばらくして二人ずれがもう1組だけ、席についたので、今晩は二組と分かった。前記の通りここは美味しいフランス料理で、もてなして呉れることで名を馳せているので、楽しみにしていた。
 際に出された料理は、味も見た目もなかなかのものだった。評判通りと言えそうである。自分がグルメとは思っていないが、美味かどうかの判断は、出来る積りだから。一皿ずつ給仕の女性が説明をしてくれるが、これが半分くらいしか聞き取れない。一々聞き返すのも面倒なのでそのままにしたが、もう少し聞き取れるような方法を取ってくれるべしと感じた次第。
 ランスパンが出されたが、適当な堅さ、味、暖め具合など、いずれも良く極めて美味しく、自分好みであった。それでお代わりをして結局三個も食べてしまった。コースの終わりにチーズの盛り合わせが出たので、サービスかと思って、感謝しつつ味わったところ、翌日の請求書にちゃんと何がしかが請求されていて苦笑いした。食事の最初の説明の中に本件もあって、聞き取れなかたらしく、何となく了承してしまった形となったのだろう。ただここはワインも売り物らしく、何回か勧めに来たが、どうせ味も分からないのに高くなるだけと考え、ビールだけしか頼まなかったこともあり、そのことを考え合わせ、よしとしておいた。
 数が少ない分行き届いたサービスが受けられ良かった。シーズンが丁度終わって一段落してる時期に当ったようで、こういう選択もまた悪いものではない。食事が終ったのは九時頃で、2時間の大ディナーではあった。少し時間がかかり過ぎで、皿と皿の間隔をもう少し短くして欲しい。手持無沙汰の為、ついパンを食べてしまうことになる。かかってもせいぜい1時間半までじゃなかろうか。
 屋に戻り風呂に湯が溜まるのを、ベッドで横になって待っている内に寝てしまった。気が付いたら11時になっていた。お湯はまだ冷えてはいず、入れそうだったので直ぐ用意して入った。熱いのを足しながらゆっくりと手足を伸ばし、湯の感触を存分に楽しんだ。前夜のラ・ネージュのそれと同じ位の大きめのバス槽だが、新しいのとこちらの方がシンプルでややこしい突起物がない分、気持ち良く使えた。
 っつぱりした後、ロビーからとって来ていた白馬一帯の案内パンフレット(上手く出来ているのに感心)に目を通したり、整理したりした。小1時間程で入浴後の火照りも取れたので、改めて横になる。桂子は時々軽くいびきをかいて熟睡している風に見えた。どうしたことかそれからはあまり良く眠れず、気持ち良さそうに寝ている桂子が羨ましかった。


9月18日
(火)第3日目 八方尾根(第三ケルン 2080m)に遊ぶ 後帰宝す 

 朝から天気の良いことが分かった。このペンションは西向きに建っているので背後から朝日が射し、前庭の林に陽溜まりを作っている。8時になって朝食を自室か外にするか聞いてきた。寒くも暑くもない丁度いい気温なので外を希望した。
 には真っ白なテーブルと椅子が5,6組並べられていて、その中程のに食事を運んで貰った。清々しい朝の戸外で朝食なんて誠に洒落たもてなしで、グッドであった。ただ食事の内容は簡単で、脂濃いおかずはついていない。フランスパン、クロワッサンとパイが一つずつ他にジュース、コーヒー、牛乳、ミカンで少し貧弱だった。それでもお腹のことを考えて控えめにしておいた。雰囲気は良かったが、肝心の食べ物がこれだけでは楽しむとはいかず、その点が大分マイナス評価であった。
 時にチェックアウト。地図でみておいたセブンイレブンに立寄り昼飯、お茶その他を調達。いよいよ今回のメーンイベントである八方尾根の山に向った。ラ・ネージュのある和田野の森を抜けて登っていく。黒菱林道といってこれを上がりきると、八方尾根の一角に辿りつく。その上方は唐松岳2698mである。所々狭いところもあったが、どうにか上がりきった。車が進むにつれ、かなりの高度になって、下方遥かに麓が見え隠れする時は少し怖い感じだ。途中放牧中の牛が数頭とうせん坊をして道の真ん中から動こうとせず、10分位立ち往生させられた。
 路の終点は多分1000mはあると思う。そこは、黒菱平と言って展望所、広い駐車場や更に上に行くリフトがある場所だ。車を駐車させて、身の回りの用意をして、直ぐ4人乗りノリフトに乗りかえる。 垣間見るのは、白馬鑓ヶ岳2903m 上がるにつれてい今まで良かった空模様がおかしくなってきた。ガスが一面に懸かってきたのだ。気温も大分下がったのだろう、寒くなってきた。何となく心細くなってくる。このペアリフトは10分で終わり、更にグラートクラットと言う4人乗りのに乗り換える。これで着いた所が八方池山荘(第1ケルン)で1850mの標高だ。心配していた天候は悪くはならず、大丈夫そうなので安心した。ガスが薄れると青空が覗くが、またすぐに次の一団が流れてきて眺望はきかなくなる。このような繰り返しが何時まででも続く。ここからが山登りになる。とは云ってもしばらくは観光客が気楽に行ける、という道がついているとの案内だった。
 二ケルン(八方山2005m)を経て第三ケルン2080mの八方池まで登る。道は広い。岩だらけだったり、木道が設えられていたりで、確かに特別の備えも無しに楽に歩ける。周りはさすが木は全くと言っていいほどない。だから見通しはよい。道の両側に緑色のロープが張ってあり、それから外れなければ安全と言う印になっているようだ。
 中からまたガスが懸かり、全体は見えないが白馬三山の一角が見え隠れして、いかにも北アルプスに来たという気がした。一番良く見えたのは天狗の頭と白馬鑓ヶ岳2903mで、右側の杓子岳2812mが時々僅かに顔を出したが、白馬岳2932mはとうとう全く姿を現わしてはくれなかった。
 方池から更に20分程登ったところで昼食にする。殆どが岩ばかりの道であるが、歩くことは問題無い。注意していけば普段の土の山道より、むしろ歩きやすいかもしれない。周りの山山を眺めながらの握りめしは最高に美味しく思われた。ここをそのまま上がれば唐松岳であるが、自分達がいた間にそうしたと思われる人は僅か一人で、後は全員ここから戻ったことになる。この上は岩がゴロゴロしたところを約2時間強上がっていかなければならないようだが、案内によると注意していけば楽に登れるとあるので、何時か一度は行って見たいと思った。
 30分程も飽きることなく山の姿を楽しんだ後、名残を惜しみつつ、八方池の縁を廻って下山した。白馬岳は最後までその勇姿を雲の中に隠したままで、見れなかったのは誠に残念だった。ガスは少し濃くなってきたが、特に危ないことも無く、無事にリフトの乗り場へ戻ってきた。そこの山荘でコーヒーを飲んで一休みした後、来た時とは逆にリフトを二つ乗り継いで駐車場まで降りてきた。
 く時は数台あった車は自分達のを入れて2台だけとなっていた。靴を替えたり、服装を整えたりしてから、ゆっくりと慎重に下山開始。途中トラックと出会いなんとかすれ違い出来たが、それの先導をしていた乗用車のサイドミラーと自分のとが接触して、ごく僅かだがキズがついてしまった。
 15時前に白馬の中心に戻りつき、いよいよ帰ることにする。JR白馬駅の前を改めて通り、建物を確認、昔は「信濃四谷」と称していたようだが、白っぽいいかにも雪国の白馬らしい駅舎だった。しばらく行くと道の駅白馬があったので、おみやげ物を買う。たまたまそこから見た風景は前の日訪ねた姫川源流を下のほうから眺めたもので、広々した田野が太陽に照らされてキラキラ輝いていて素晴らしい風景であった。
 のいい風景とも分かれを告げて、一路宝塚に向う。まずR148、147を通り、豊科ICから長野道に入り、直ぐの梓川PCで給油した後は、殆ど休まず移りゆく両側の山並みを楽しみながら走り続けた。名神に入る前に夕食をと考え、小牧JCT手前の内津峠PAでアッサリ目の夕食を食べた。そこを出たのは7時10分頃で、もう周囲は真っ暗となってしまった。全体に中央道は意外に下り坂の多いことに気付く。ということは往きは登りが多かったはずだが、あまり感じなかった。スピードが出すぎない様に気を付けながらひた走った。名神で一度居眠りタイムを取ったほかは走り続け、渋滞にも合わず、結局宝塚ICには10時半に無事到着。


 日間の短い旅が終わる。総じてなかなか良い旅ではあった。1日は雨に降られたものの、それなりに対応できて無駄にはならず、むしろ思ってもいなかった白馬の違う一面を見ることができたのは、本当に大きな収穫だったと言えよう。出来合いのツアーに頼らず、自分で組み立てた旅行の醍醐味を、充分に味わえたと実感した。家には珍しく陽一、美佳が揃っていた。そこで早速報告を始めた。

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