■淋しがり屋の君に桜色の祝福を■ その1
「あれ?今日はもう帰るのか?」
「ああ。今日、面接があるんだ」
「面接?何だバイトでも始めるのか?アスラン」
「あー違う、違う。俺が面接を受けに行くんじゃなくて、面接に来るんだよ」
「もしかして、あれか?結局頼む事にしたんだ?」
「ああ。もう自分の力じゃどうにもならないんでな…」
ふう、と溜息を吐いた少年― アスランは同情の眼差しで見ている悪友のラスティに苦笑を返した。
「ま、美人だったら紹介してくれよ」
人事だと思って気楽なことを言ってくれる。アスランは更に重く溜息を漏らしてしまう。
先程からこの二人が何の事を話しているのか?
それは、現在高校一年生の彼、アスラン・ザラは三年前に不慮の事故で両親を亡くしその際自分を引き取ると申し出てくれた親族に
無理を言って両親と暮らしていた家に一人暮らしをしていた。
幸いにも両親が多額の遺産を残してくれていたお陰でこうして高校にも通えているし、日常生活に何一つ支障なく暮らしている。
しかし、たったひとつ問題があった…それが……
「そんなに嫌そうにするなって、仕方ないじゃないかお前家事全般できないんだから」
品行方正、成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗。全てパーフェクトにこなしてしまうアスランだったが何故か家事全般だけは全くできなかった。
普段なんでも器用にこなす彼が、家の仕事となると一変して不器用になってしまう。
最近では素手に諦めてしまって完全放置状態だ。その為、家が大変な惨状になっていてアスランにはどうしようもない状況にまで陥っているのだ。
よって、彼は覚悟を決めざるをえなかった。家政婦を雇うという事を。
「この前お前の家に行ったけど、あれはヤバかったもんなー」
「…………」
「あんなのお前のファンの子達が見たから卒倒するだろうなー百年の恋も冷めるっての?」
「……………………」
「俺でもあそこまでになんてできないぜ」
― プチッ ―
「だから!自分でも流石に拙いと思ってホントは気が進まないけど覚悟を決めたっていってるじゃないか!!」
「うおっ」
からかわれていると分かっていても、彼の言っているのは事実なので耳が痛いのだ。
そして、アスラン的には苦渋の選択ともいえる事を実行せざる終えない状況に陥っている現状も合間って
いつも程我慢ができる忍耐が残っていなかった。
アスランは勢いのままにラスティに詰め寄る。
「俺は、本当は嫌なんだよっ知らない人間に家の中を勝手に弄られるのはっっしかも!しかもだぞっっっ!!!」
既に興奮状態に陥ってしまったアスランを止める術がないラスティにアスランを宥める様に声をかけながら話を聞いてやる。
「わかった、わかったから落ち着け。な、アスラン」
「…しかも、住み込みだって言うんだぞっっそんなの俺には耐えられないっ」
「そんなに言うなら、雇うの止めればいいじゃないか?今日の面接でごめんなさい。それで今までの日常に戻れるのでは?」
「……それじゃ、家の惨状が解決しない……」
その時点でアスランには選択肢は残されてはいないのだ。
少しずつ落ち着きを取り戻し始めたアスランからはまたしても重々しい溜息が漏れる。
「せめて、可愛い子が来ることを俺も祈っててやるよ」
「あほ。家政婦なんだからきっと中年のおばさんだよ。せめて気さくな人だといいんだけど…」
「なんだよお前夢がないな。分からないだろ、家政婦ってメイドだろ?俺達と同じ歳くらいの可愛らしい子が……」
ラスティが目をキラキラさせながら熱く語りだす。それをアスランはハイハイと軽くあしらってしまう。
「お前はその手の本とかを読みすぎなんだよ、メイドじゃなくて家政婦だって。きっと俺達の母親くらいの年齢の……」
不意に視界の隅に時計が移り、視線をそっちに遣ると今日面接に約束した時間が迫ってきていた。
「うわっ拙いっっじゃあ、俺もう帰るから!」
「明日、どんなヤツだったか聞かせろよーそして美人だったら紹…」
「し・つ・こ・いっっっ」
途中で止まっていた帰り支度を手早く済ませるとアスランは足早に教室を後にした。
◆あとがき◆
はい。他に連載中のモノがあると言うのに突然また別な話に手をつけてしまいました…(汗)
いや、春だし何か真新しい事にも手を付けないなーなんて思ったりしちゃったり………
この話は某アニメのパロです。既にアニメ、原作共に終了している作品なのですが、きっと種ジャンルにいらっしゃる方に
知っている方はいないだろうと思います。でも、もしいらっしゃったりしたらいろいろ見逃してくださいね!!(苦笑)
殆ど、基本的な設定を使っているに過ぎないのでストーリーとかは完全に別物になっていくと思います。
今回はアスランとラスティしか出てきませんでしたが、アスラン宅にやってくる家政婦は勿論、あの人ですvvv
どーでも良いですが、はるか的にはアスランか家事全般得意派なのが良いです。よってこの話は完全に別モノなのです。