涙色の旋律   Melody.1





毎日、毎日退屈だった。
平凡な日常、学校に通って勉強して友人と語り合ってそして、家に帰る。そんな日々の繰り返し。

何か取り立てて不服がある訳じゃない。
家もそれなりに裕福な方だと思うし、勉強もスポーツも苦手じゃない。
学校でもそれなりの成績を取ってるし、友人も沢山いてその関係も悪いものじゃない。
でも、何かが物足りなかった……
それが何なのかは分からないけれど……





小さな頃から僕の世界はこの家の中だけだった。
身体が弱くて病気がちだから僕は家から殆んど出た事が無い。
唯一の外出は月に一度の病院。
僕が普通の身体だったら、学校に通って友達と勉強したり遊んだりいろんな事が出来るんだろうな。
でも、僕にとってそれは叶わない夢。
だから僕はこの自分の小さな世界をピアノで色々な色にするの。
ピアノは僕に色々な世界を見せてくれるから。
……でも…もしもいつか叶うなら自分の目で外の世界を見てみたい―







毎日の退屈な日常の中、それに不満を感じつつもそれでも時間というものは過ぎていく。
それはとても勿体ないことの様に思う。
しかし今の彼、アスランにはそれをどうにかしようとする気力さえ持ち合わせてはいなかった。

 「 ん?」

ふと目に入ったのは小さな公園だった。
アスランは何かに誘われるようにふらりとその足を向けた。
その行動が彼の日常を大きく変える事になるとはその時のアスランには分かる筈もなかった。






誘われるように入った公園は入り口がパッと見が小さく見えたので小さな公園だと思っていたが入ってみれば意外に広く綺麗に整えられた花壇やきっちり手入れしてある木々が広がる遊歩道までもがあった。

 (散歩とかに向いてそうなトコだな…)

そんな事を思いながら歩いていると、やはりそうなのかペットの散歩をしている人やウォーキングをしている人、木々を愛でている老夫婦など等…歩いている最中にいろいろな人とすれ違った。

 〜♪

 「ん?」

特に何をするでもなく歩いているとアスランの耳に微かに聞こえる音があった。

 「ピアノの音?一体どこから?」

アスランは耳を澄ましながら音のする方に向かって歩き出した。
暫くすると公園の敷地の突き当たり付近に辿り着く。
そこで更に耳を澄ましてみるとその音は公園の向こう側の家から流れてきているようだった。

 〜♪♪

 「いい音色だな…」

ふっとアスランの顔に笑みが零れる。
アスラン自身、不思議に思うのだが何故かこのピアノを聴いていると優しい気持ちになっていくようだった。
自分はこんなにピアノの音が好きだったのだろうか?
そんな事を考えながらもピアノの音が流れる家から一番近いベンチに座り込むと暫くの間その音色に聞き入っていた。








                                             





   ◆あとがき◆
ブログで連載中の『涙色の旋律』をやっと移動してきました。最近、ブログをサボり気味で更新が滞っているので
こちらに移動して更新頑張ろうかと思います。このシリーズは管理人の趣味で書いた話(いつもですが)なのですが
好きですと言って下さる方が結構いて、嬉しい限りです。