『あのね、人はこの世界に生まれる時に心を半分にされるんだって』

『半分に?』

『うん、人は心の半分を探す為にこの世界に生まれてくるんだよ』

『じゃあ、二人で心の半分探そうか?』

『え?』

『競争しよう!どっちが先にみつけるか』

『うん!探す!!君には絶対負けないよ』

『僕だって負けないさ。じゃあ、約束しよう見つけたら絶対一番に教える事』

少年は優しく笑いかけて小指を差し出した。少女もにっこり微笑んで少年の小指に自分の小指を絡めて頷いた。

『うん、約束!!』



小さな頃の小さな約束。この頃の二人にはこの小さな世界が全てでこの幸せな時がずっと続くのだと疑いもしていなかった。








     CHOCOLA  ACT.1


大きな森の奥深くには大きな湖があった。そして湖の側らには美しい城が建っている。
存在こそ知ってはいるが、森の結界に守られている為入る事のできない神聖な場所とされていて
この国では見た事もないその城を只の噂だと話す人も少なくなかった。
元々、この国には王都に立派な城がある。故に余計に噂話という事に信憑性が出てしまっていた。
しかし、この噂話には続きがある。
この神秘の城は王都にある城の対になっていて二つが揃っていてこの国を守っていると言う噂。
そしてその城には公けには一度も姿を見せたことの王都にいる姫君の妹姫が住んでいて、
その妹姫は見たものが心奪われる程に美しく、可憐であるという噂だった。

しかし、その噂話は作り話でも何でもなく100%事実で森の中の神秘の城も、王都の対になっている話も
そして美しく可憐な姫君が暮らしているのも本当のことだった。
それを知るのは極々一部の人間のみで国民の中では只の噂話としてその事実を確認しようとする者もいなかった。





「姫様ーどこにおいでですかー」

城の側らにある大きな湖の周りでは城の侍女たちであろう女性たちが困った顔をしながら走り回っている。
中には青い顔をした者もいて必死に声をあげて探している。



侍女たちが探し回っているその遥か上、木の枝に座りながらクスクスと笑っている少女がいた。

「人って自分の目線より上を探さない事が多いって本に書いてあったけど本当だったんだ」

そんな呑気な事をいいながら笑う少女はどこか幼く見える。
年の頃は十五、六歳。ともすればもっと幼いと言っても通じるような容姿をしていた。腰まで伸びた亜麻色の髪は風に揺れてキラキラと輝いている。
神秘的でアメジストを思わせる大きな紫の瞳は見るものを虜にしてしまいそうで…
同じ年頃の少女と比べるとその体は華奢で儚いイメージを感じさせる少女。そう正に美しく可憐な姫君がそこにいた。
そんな可憐な姫君が何故か木の上で足をプラプラさせながら下の様子を伺っていた。
下では侍女達が必死に自分を探している姿が見える。

「どうしようかな…これから」

彼女たちに迷惑をかけるのも申し訳ないとは思うのだが、やはり窮屈なお城の部屋に閉じ込められっぱなしもつまらなくて。
よっと立ち上がると美しい景色が視界に広がる。

「うわあ…」

上った時には気づかなかったかった、目の前に広がる美しい景色に感嘆の声をあげる。
いつもは城の部屋から中々外に出して貰えなくて、ここ数年部屋の窓越しの景色しか見れなかった。

「凄いな…」



「キラ様」

景色に気を取られている間にみつかったのか不意に声をかけられてびくりと身を竦ませる。

「え?」

瞬間、キラは自分の体が傾くのに気づく。
突然視界が一変し周りの景色がスローモーションで見える。


 -落ちるっ!!-


キラは来るべき衝撃と痛みにきゅっと目を瞑った。


 -ドサッ!!-


(あれ?)

衝撃は少しあったものの、痛みが全く無い。

「まったく、貴女って人は…」

小さく溜息が漏れるのが聞こえた。その後どこか呆れた声がキラの耳に届く。
聞き慣れた声にキラはそっと目を開ける。キラの瞳に映ったのはキラの良く知る人物だった。


「…アスラン」






                                 




   ◆あとがき◆
はい、始めてしまいました長編です。やって見たかったんです、長編モノ。そして女の子化。
姫って良いですよねーえへへ★そしてタイトルに深い意味はありません。
感想とか下さると嬉しくて更新が早くなるかもです(笑)