キミと見上げた空の先 第1話
「キラー!キラー!!」
バタバタと盛大な階段を上る音共に聞こえる聞きなれた声。そのまま予想通り、ノックもなしにバターンっと部屋の扉が開く。
「カガリ…いきなり開けないでっていつも言ってるでしょ?」
「そんな事今はどうだっていいんだ!」
ちっとも良くない。いくら家が女しかいないとはいえ、自分は今着替えている真っ最中で上半身は下着姿なのだ。
カガリも自分と同じ中二なのだからその辺の乙女の恥じらいを理解して貰いたいものである。
「お、お前、ラブレター貰ったって本当か?」
「!!」
着替えを再開させていたキラの動きがピタリ。と止まった。その行動を肯定ととったカガリの眉間が皺を寄せる。
「か、カガリっっ落着いて!ね。ほら、まだラブレターだって決まった訳でもないしー」
キラが慌ててカガリを宥めに掛かるがその行動がかえって逆効果になってしまっている。
「でも手紙を貰ったのは事実なんだな…」
「……う……ん………」
まるで地を行くような低い声で聞かれてはキラも素直に答えるしかない。
ここで下手な嘘を吐くとかえって拗れることは長年の経験で知っている。
キラとカガリ、そして二人の三歳上のラクスの姉妹は三年前に両親を事故で亡くし、今は姉妹三人で暮らしている。
元々、仲の良い姉妹だったのだが両親の事故以降は姉妹の絆は確固たるものになった。
その中でもカガリとラクスは末っ子のキラの事を溺愛していて目に入れても痛くない程可愛がっていた。
キラとカガリは双子なのだが生まれたばかりの頃からキラだけが何故か病弱ですぐに熱を出したりしていた。
でも成長するとともにキラの身体も健康になっていき今では元気そのものだ。
しかし、カガリやラクスしてみたら心配で堪らないらしくカガリに至っては健康面以外にも超が付く程過保護になっていた。
(心配してくれる気持ちは嬉しいんだけど…)
幼い頃自分が姉達に心配をかけていた事はキラも分かっている。だから、キラも素直に彼女達の言う事を聞いてきた。
でも、キラも中学二年生。14歳だ。いわゆるお年頃と言うやつで。色恋に憧れてしまう時期なのだ。
それを言えばカガリもキラと同じ年なんだから。と思うのだがカガリはこの手の話題にはキラ以上に疎かった。
目の前の彼女の目には『可愛い妹に手を出そうとする不埒な奴』への怒りしか見えない。
キラはカガリに気付かれないように溜息を吐いた。
(いつか、僕に好きな人が出来た時はもっと大変なんだろうなぁ…)
いつか来る筈のそんな未来にもキラは重々しく溜息を吐きたくなる。
自分を攫ってくれる勢いがあるくらい自分を想ってくれる人だったら…なんて少し怖い事まで考えてしまう。
(でも、いつか本当にそんな人が現れたら……)
キラはそんな夢に思いを馳せながらカガリの熱弁を聞き流し続けた。
結局、カガリの語りはラクスが帰宅するまで続いた。
ラクスがカガリを何とか宥めて取り合えずその場は落着いた。やっと開放されたキラはやはりラクスには敵わないなと思う。
自分がどれだけ言っても聞く耳を持ってくれなかったカガリをあっと言う間に落着かせるのだから。
未だ納得いかない顔はしていたが渋々自室にカガリが戻った後、しっかりと後で事情の説明はするようにと言われてしまったけど。
ラクスもカガリほど度は過ぎてないがキラが可愛くて心配で仕方がないのだ。
それが分かっているキラは素直にはい。と返事をした。
◆あとがき◆
新年あけましておめでとうございます。昨年は当サイトに足を運んでくださりありがとうございました。
今年も何卒、宜しくお願い致します。
さて、唐突に始めてしまいましたこのシリーズ。元ネタは『みなみけ』です。知らない人の人が多いとは思いますが…
中々いいノリのアニメで好きなのですが観ていてこれを種に変換できないものかと考え始めたのが事の発端です。
しかし、蓋をあけてみれば全然違うものに……。本当は高校生と中学生と小学生の三姉妹のお話で、長女を三女が崇拝(笑)していて
三女は次女の事は馬鹿野郎扱いしているが根本的に姉妹の仲は良いという関係の三姉妹。
しかし、いざ種に変換しようとするとかなり難しくて長女ラクス、次女カガリ、三女キラというのはすぐに決まったのですが
性格上アニメそのままの設定でいくとキラがカガリの事を「ばかやろう」と言わせなくてはいけないので流石にそれはキラの
イメージから外れすぎると思いまして、三姉妹の設定だけを貰って性格や関係性は勝手に改ざんしてしまおう!というところに
落着いた訳です。(説明長くてすいません…)
まだ、いろいろなシリーズを掛け持ちしている状態に新たなものを加えるのはかなり悩んだのですが今書かなければ多分書かないだろうと
思ったのと、新年の始まりを新しい事から始めたいという気持ちもありまして連載に踏み切りました。
他のシリーズ共々これからペースは速くはないと思いますが宜しくお願いします。