「 あのね、アスラン 」

キラがそう言った時、二人は自宅前に到着した。
アスランは再び足を止めてキラの方を向く。そしてキラを家に入るように促した。

 「 さ、話はまた家の中で聞くから 」

そう言いながら玄関の扉を開けようとするーが、その行動はキラがアスランの制服のシャツの袖を掴んだ事で拒まれる。

 「 キラ?」

キラの不可解な行動にアスランは再びキラの方に目を向ける。
すると、先程は薄っすらと赤く染めていたキラの顔が耳まで真っ赤に染まっていた。




       世界中の好きよりもたったひとつのありがとう 2    Vol. 6



 「 ど、どうしたんだっキラっっ 」

今までキラがここまで赤面しているのは見たことがなかった。
照れた時にほんのり頬を染める程度の事は日常的によくあったけれど。今回のはいつものとは比ではない。
アスランが慌てるのも無理はなかった。

 「 あ、あのね…カガリが今日はバレンタインの時の感謝の気持ちが本当に嬉しかった人がお返しをくれる日だって言ってたんだ 」
 ( アイツ…またいい加減な事を… )

アスランは心の中で一人ごちる。
そうしている間にもキラの話は続いている。アスランも慌ててそっちに意識を集中する。

 「 だから、アスランが僕にコレをくれたのがホントに凄く嬉しくて… 」

大事そうにアスランが渡した箱を抱えているキラを嬉しく思う。
しかし、正直、今キラが何をしたいのかがアスランには分からず困惑気味だった。

しかし、其れは次の瞬間に起る。

 「 !!」

ぐいっとキラが掴んでいた袖ごとアスランの腕を下に引いた。
意表をつかれたアスランは思わず屈んでしまう。その次の瞬間、目の前に亜麻色の髪と甘い匂い。
そして、柔らかいモノがアスランの頬に触れた。
アスランは突然の事で何が起こったか分からず呆然と立ち尽くす。

 ( 今のって… )

そう、キラは突然アスランの頬にキスをしたのだ。アスランはゆっくりと感触の残る頬に触れる。
僅かに残る柔らかな唇の感触と甘い香り…じわじわと自分の身に起こった事に実感が湧いてきてアスランは顔を赤面させる。

そして、一方キラはと言えばやはり相当恥ずかしかったのか一瞬唇を触れさせると
すぐに離れ、アスランとは若干距離をとってこちらもアスランに負けないくらい真っ赤な顔をして俯いていた。


顔を赤くした男子高生が二人、自宅の前で…傍から見ると可笑しな光景この上ないのだが
今の二人には回りを気にする余裕は有りはしなかった。





 「 …キ…ラ… 」

最初に沈黙を破ろうとしたのはアスランだったーがそれと同時にどこからか声らしきモノが聞こえてきた。
そしてそれは段々と大きくなってきていた。

ドドドっと暴煙と共に見えた人物にキラが先に気づく。

 「 カ、カガリ?」

キラが名前を呼び終わるより早くカガリは飛び上がっていた。
そして、アスランの頭に飛び蹴りがクリティカルヒット。アスランは衝撃で吹っ飛ばされる。

 「 くはっっっ!!

見事に着地に成功したカガリはキラの前に立ちはだかり守るように手を広げる。

 「 私のキラをどこに連れ込む気だ!!この変態っ」
 「 あ、アスラン!!大丈夫?」

キラとアスランが同居している事を知らないカガリからしてみればアスランがキラを部屋に連れ込もうとしているように見えたのだろう。
まあ、普通の男友達同士なら連れ込むも何も遊びに来ているだけのいたって普通の事なのだが。





 「 アスランっ 」

キラはカガリを押しのけアスランに駆け寄る。
元々身体能力には自身があるアスラン。いつもなら余裕でかわしていたところだろう。
しかし、今はやはり先程の事に動揺していたのか予期せぬカガリの攻撃に受身すら取れていなかった。

 「 もう、カガリいきなりどうしたの?」

アスランを助け起こしながらカガリに目を向ける。
元々、暴力とか喧嘩が好きではないキラは僅かに怒り気味な様子だった。
カガリもはっと我に返りキラに詰め寄る。

 「 どうしたじゃないっキラ。お前、私が友達と話している間に急にいなくなるから 」
 「 え?だって僕がいたら邪魔かなって思って… 」
 「 そんな事ある訳がないっっ…全く、お前は変なところで気をつかうんだから…」
 「 ごめん… 」
 「 それにお前、私たちの話を勘違いして言ったんじゃないかと思って… 」

ギロっとアスランを睨みつける。

 「 勘違い??」

キラはきょとんとしてカガリを見る。カガリもキラに視線を戻しキラに再び詰め寄る。

 「 ホワイトデイのお返しを貰った後の話だ!!まったくあいつ等ときたら… 」

カガリ曰く、今日の放課後に例の如く女友達と話し込んでいたカガリとその傍にいたキラ。
その時にホワイトデイの話になり、一人の友達が『お返しなんて貰えたら嬉しくてキスくらいしちゃうかもv』と言っていたらしい。
もちろんそれはその子が憧れている人に対しての話で、そもそもその場の乗りで言った冗談めいたものである。
しかし、話の途中で居なくなったキラは最後まで話を聞いておらず、もしかしたらまた可笑しな勘違いをしていないか心配だったと言う事だった。

 「 じゃあ、お返しを貰って嬉しかったらキスするんじゃない…の?」
 「 当たり前だ!!大体、お返し貰う度に好きでもない人間にキスするなんておかしいとは思わないか?」
 「 う゛っ!確かにそうだけど… 」

よくよく考えて見ればそれは当たり前の事で。では、さっき自分がしてしまった事は…
ちらっとアスランに目を遣ればアスランもキラを見ていたようで二人の視線がばちっと合ってしまう。
かああと頬を染めて思わず目を逸らしてしまった。
アスランもアスランでさっきのカガリの攻撃でダメージを受けて地面に座ったままの状態だがキラと同じく顔を赤らめ目を泳がしている。
二人の間に何とも言えない空気が流れていた。

そんな二人の雰囲気にカガリが気づかない訳も無く。先程からの二人のやり取りを一部始終見ていたカガリはぴきっと血管を額に浮かばせる。

 「 キラ…?まさかとは思うがもしかしてお前… 」
 「 ……… 」

キラはカガリの問いに答えない。しかし、さっきよりも更に顔を赤くしている様子は語らずとも全てを物語っていた。

 「 !!」

カガリの中で何かの箍が外れた。
がっくりとうな垂れたと思うとゆっくりとアスランに向かって歩み出す。
キラは何かを感じ取ったのか慌ててカガリを止めに掛かる。

 「 か、カガリ落ち着いて!! 」

しかし、今のカガリはキラでも止める事は叶わなかった。
カガリはアスランの目の前に仁王立ちして未だに座っているアスランを見下ろす。

 「 よくもキラを傷物にしてくれたな… 」

凄みを効かせた笑顔は普通の人なら見た途端平謝りしてしまうくらい恐ろしい形相だった。
しかし、アスランは平然と彼女を見上げキラから口付けされた頬に手を当てるとにやりと笑う。

 「 ちゃんと責任は取るさ 」

  - ぷち -

カガリの中で最後の理性が事切れる。

 「 アスランーーー!!貴様そこになおれーーーー!!!明日の太陽が拝めなくしてやるっっっ」

 「 望むところだっさっきは不意を付かれたからやられたが、真っ向勝負なら相手にもならないだろうがなっ 」

 「 二人ともいい加減にしてーー!!」





                  こうして、アスランとキラのホワイトデイは幕を閉じていった。


                                                   
HAPPY ENDvvv???

■追記■
   今回のアスランの収穫。
 ・ キラからキスをしてして貰う。
 ・ キラに少し意識して貰えた。
 ・ キラにプレゼントを喜んで貰えた。
以上。しかし、数日前から練った計画は全く実行されず、結局根本的にキラとの関係の進展は無い。。。


★おしまいがき★
お、終わりましたー!!ここまでお付き合い下さった方、お疲れ様ですっそしてありがとうございますvvv
こんな終わり方で申し訳ないです…アスキラっぽくないですか?そうでうよね…;;
拍手のお礼小説なのに無駄にだらだら長くてすいません…
バレンタインでアスランが少し可哀想な気がしたのでホワイトデイは少しだけ幸せにしてあげましたvv
彼はこれからまだまだ頑張って貰わないといけないので!!たまにはね★
はるか的にキラを巡るアスvsカガは大好きなのでいつもこんな感じになってしまいます。
お姉ちゃんはキラが大好きなのですよvvアスランも負けてはいませんがね★★