世界中の好きよりもたったひとつのありがとう Vol.3
その日の夕食は最悪だった。
何故か怒っているアスランが食事の間中無言、無表情。全身で自分を拒否していた。
最初は自分が帰りが遅くなる事の連絡を怠ったからだと思った。
しかし、自分も高校生だ。しかも、ホントにほんの少し遅くなったたげなのだ。
いつものアスランなら少しお小言は言うだろうが自分が素直に謝れば許してくれていた。
なのに今日は違う…と言う事は怒っている原因は別にあると考えるのが自然な事だった。
「 …あの…アスラン 」
今のこの現状に限界を感じたキラが沈黙を破った。
いつまでもアスランとこんな風になっているのは嫌だった。
もし、アスランの怒っている事が自分に非のある事ならちゃんと誤りたいし、仲直りしたい。
喧嘩したつもりはないから何だか変な感じではあるけれど。
キラに声をかけられたアスランは食事の手を止め、ゆっくり顔を上げる。
「 ・・・・・・ 」
この時、アスランは内心ほっとしていた。
実は別にキラに怒っていた訳ではなかったのだ。昼間見た箱の件についてキラに聞く為に待っていたのに
キラの帰りが遅く心配したし、その理由が友達と言うのに苛ついたのも事実だが
最初にキラが誤っている時点でアスランの中で一応終わっていた。
しかし、例の箱の事と自分の知らない友達という単語がアスランに要らぬ想像をさせてしまい
結果、キラに素っ気無い態度を取ってしまった。
その後は場の空気が一気に悪くなり、どうしたものかと延々と考えていたのだ。
その様子をキラが何故かアスランが怒っていると勘違いしたっというのが事の真相だった。
「 あのね、アスラン…何をそんなに怒っているの? 」
「 え? 」
真実を知らないキラは意を決して訊ね、じっとアスランを見据える。
一方のアスランはキラが話しかけてくれた事にほっとしたのも束の間、キラの発言に驚きで目を瞠る。
キラが何を言っているのか分からない…
「 だって、僕が帰ってきてから様子が変だったし…今だってずっと僕と目を合わさないで黙ったままだったし… 」
「 いや…それは… 」
( この状況をどうしようか悩んでたーなんて言えないよなー)
「 アスランっ!! 」
「 はいっ 」
アスランが余所事を考えてる間にキラは感情が昂ってきたのかテーブルに些か強く手を置いて立ち上がる。
そしてアスランに詰め寄り二人の距離をぐっと縮んだ。
アスランは余りにも近くにあるキラの顔にドキっとする。
でも、キラにはそんな事を気にしている余裕など無く、片手をきゅっと握り締めて自分の胸元に当てて俯いた。
「 …僕、アスランに何かした?僕…アスランとこんな風になるの嫌だ…よ…」
「 っ!! 」
最後の方はもう聞き取れない位の小さな声だった。
よく見ると俯いているキラの肩は小さく震えていた。アスランは慌てて俯く顔を覗き込む。
すると、その大きな瞳には涙が溜まっていた。
「 …キラ… 」
しまったーっとアスランは思った。
元々キラは泣き虫だ。それは高校生になった今でも変わることがない。
でも、今泣いているのはいつものとは違う。自分の心無い態度のせいで心を痛めて泣いている。
キラは優しい…だから幼馴染であるアスランとこんな喧嘩みないな状態でいるのが悲しくて仕方ないのだ。
( ほんと…敵わないよな…キラには… )
アスランはふーっと深く息を吐くとキラを見つめ、そっと指先で涙を拭う。
顔を上げたキラに優しい眼差しを向けると、ゆっくりに語り始めた。
Vol.4へつづく★