紀行文・画報 / Documents page4

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ウイーヘルト地震観測所見学

ウイーヘルト地震観測所(Wiechertsche Erdbebenwarte)は、ドイツ中部の都市ゲッチンゲン 市内から3kmほど東の森の中にある。
1898年 ゲッチンゲン大学に世界初の地球物理学研究所が設立。
1902年 地震観測施設が完成。ウイーヘルト(Emil Wiechert)は初代所長の名前。ウイーヘルト地震計を考案した。
振動防止のため付近の道路は大型車通行禁止でバス路線がなく、旅行者には行きにくい所にある。

地震観測の部屋は新しい観測室と、古い観測室の二つある。地表から3mほど地下になっている。
古い観測室入口にウイーヘルト教授の言葉が掲げてある。およその訳は...
「岩の揺れは遠くからの知らせ。信号を読み解け!」


地震計は縦揺れ(P波)用と横揺れ(S波)用の2種類の地震計をセットで使う。 伝達速度はP波の方が早い。P波とS波の記録された時間差から震源までの距離を知ることができる。 ウイーヘルト地震計は装置の動作、信号の記録に電気を使わない完全な機械式地震計で 100年前から使われている。
← 写真は古い観測室の縦揺れ用地震計 1904年製造

静止した重さ1トンの振り子を不動点とし、振り子を吊るした装置は岩盤に固定されている。 地震で岩盤が揺れると不動点との位置変化をススを付けた紙に記録する。
記録紙は錘の位置エネルギーを動力に一定速度で動き、指針がススを削り揺れが記録される。 ウイーヘルト地震観測所とオーストリア ウイーンの同型機は1923年9月の関東大震災の揺れを記録している。

この地震計は現役を引退しているが今も稼働している。 ススを付けた記録紙を作りボランティアの職員が記録紙を交換していた。


横揺れ用ウイーヘルト地震計の説明図
東西方向の横揺れと南北方向の横揺れを記録する。


新しい観測室にはコンパクトな最近の地震計があり、パソコンにデーターが記録されている。 地震観測所で使われていた古い計器も展示されている。


高精度時計(クロノメーター)

各地の地震記録を利用するには振動を記録した正確な時刻が必要。 時報サービスのなかった時代は真南を通過する星の観測で時刻を調べ時計の校正をしていた。


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旧天体観測小屋

南北方向の屋根が開き、専用の望遠鏡で子午線を通過する星の観測から時刻を調べていた。 近年は電波による時報サービスと電波時計が普及したので星による観測は必要なくなった。 現在観測小屋は木々に覆われ星は見えない。


地磁気観測室(ガウス ハウス)

ゲッチンゲン大学天文台長で数学、物理学者だったCarl Friedrich Gauss (1777-1855)が 天文台内に地磁気測定のために建てた地磁気観測の家。鉄の釘は使っていない。
ガウスの死後、市内の天文台から地球物理学研究所へ移築された。
室内には当時の地磁気測定器レプリカが展示してある。


人工地震のデモ

写真内に白矢印で示したミントロップの球(Mintrop Kugel)と呼ばれる重さ4トンの鉄球をワイヤーで巻き上げ14mの高さから 自然落下させ、人工地震を発生させるデモを一般公開時に見学できる。
人工地震から地下の構造を調べ鉱床、油田の探査に利用された。
鉄球は100年前のクルップ社で作られた。


旧地球物理学研究所の建物

地震観測所敷地内にある地球物理学研究所だった建物。
教室はゲッチンゲン大学北部校舎に移転した。
ウイーヘルト地震観測所は2005年運用を終了したが歴史的施設の維持はWiechert’sche Erdbebenwarte Goettingen e. V.に引き継がれた。
月に一度の一般公開時に地震観測所の見学ができる。
旧地球物理学研究所の建物は現在、母子家庭の支援施設としてゲッチンゲン市が利用している。 入口横の壁には歴代の地球物理学者 Emil Wiechert, Julius Bartels, Manfred Siebert 三名のネームプレートがある。

記事内写真は2023年撮影
日本で使われていたウイーヘルト地震計は国内の博物館などで見ることができます。


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ヘンシェル博物館見学

ヘンシェル博物館(henschel-museum kassel)はドイツ ヘッセン州カッセルで設立された車両、機械メーカー 戦前からあるヘンシェル社の工場敷地内にある。
左写真は展示室入口。
マイナーな博物館なので見学を希望するする場合は、HPから開館日を確認して訪問の予定日時をメールで事前連絡することをお勧めします。
展示説明はドイツ語で書かれています。
記事は2023年訪問時の情報です。


1810年設立のヘンシェル社は教会の鐘を作る鋳物工場だったが蒸気機関車の製造が忙しくなり鐘の製造は終了した。
古典SLから戦後製造の車両まで多くの資料が展示してある。

鉄道発達前にできた会社なので引込線ができるまでは工場で作ったSLは荷車に載せ、馬に引かれて駅まで運んでいた。


1930年代からは航空機の製造部門もあった。
第二次世界大戦中ヘンシェル社は戦車製造の重要な企業になった。工場に戦車の走行テストコースもあった。
工場のあるカッセルは連合軍の空襲で街の大部分を破壊された。


製造した機関車の図面は古典SLまで保存されている。
部品寸法の問い合わせに答えることができるそうです。 古い資料のデーターベース化を進めている。


ヘンシェル社は、各時代で最高技術の試作鉄道車両を開発してきた。
4動輪独立駆動の蒸気機関車(形式 19 1001)1941年
ドイツ最大出力の液体式ディーゼル機関車(型式 V320)1962年
世界初の三相交流モーターを使った電気式ディーゼル機関車(型式 202 003)1973年
左写真はドイツ技術博物館に展示されている202 003ディーゼル機関車。
VVVFインバータ制御技術はパワー半導体の進化で世界中の電気機関車、ディーゼル機関車、電車で実用化されている。
この機関車の片方の先頭部は流線形に改造されドイツの新幹線ICEの開発にも利用された。


ヘンシェル社敷地にはTechnik-Museum Kassel(カッセル技術博物館)もある。
2010年開設、今も少しづつ展示物を増やしている。


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ゲッチンゲンの自然史博物館

ドイツ ゲッチンゲン駅のすぐ横に、古くからある大学施設を改修し新しい博物館 (Forum Wissen Goettingen)が2022年6月オープンした。
ゲッチンゲン大学の自然科学の古い資料、標本を展示する博物館です。
建物の1〜2階が展示スペースでショップ、カフェもあります。


100年余り前に作られた剥製、昆虫標本、古代遺跡の収集品などが少数づつ展示してある。
左は18世紀の機械式計算機


2023年はトビアス・マイアー (Tobias Mayer)生誕300年で記念講演が開かれた。
Tobias Mayer (1723-1762)は天文学者、数学者、物理学者、地理学者でゲッチンゲン天文台初代台長でした。
左スケッチには1749年11月17日と日付が読める。
色消し対物レンズの望遠鏡が作られる前の月面スケッチである。
マイクロメータ付望遠鏡で月の正確なスケッチから作った月面図はトビアス・マイアーの死後発行された。
その月面図は世界初の経緯度線が記入された印刷物です。


トビアス・マイアーが描いた多くの月面スケッチ、複製された月球儀が展示されている。
2023年訪問時に撮影。


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