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2m反射鏡の鏡材見学

大阪府池田市の産業技術総合研究所(旧、大阪工業技術試験所)に国産大型反射望遠鏡製造のため試験製造された直径206cmの鏡材が屋外に展示してある。 展示品の説明書きには、「当時の大阪工業技術試験所で1958〜1964年まで50〜200cmまでの大型反射望遠鏡用鏡材の試験製造をしていた」と、書かれている。
芝生に50cm鏡材3枚、206cm鏡材1枚が置いてある。


上に置いた腕時計と比較してわかるように、中央のカセグレンの穴が約20cm、鏡材の厚みは約35cmある。
岡山の188cm鏡はイギリス製パイレックスガラス、厚み27cm、重さ1.7t あるので、この鏡材は約2t程度と推測される。
ガラス表面のまだら模様は小雨で濡れたため。

ここで製造したガラスで補正板径40、主鏡径70、焦点距離120cmシュミット望遠鏡が作られ、1972〜1987年まで京都大学付属の観測所で使われていた。


研究を始めた当時は1960年英国製188cm反射望遠鏡据付。1962年と1964年 国産91cm反射望遠鏡据付。 大型望遠鏡が次々と国内に据え付けられた。 2m級国産望遠鏡製造のための研究がされていたと思われるが、国内に大型望遠鏡が据え付けられることは長らくなかった。
1980年代より国内に60cmを超える反射望遠鏡を持つ天文台が作られたが、ガラスの製造、研磨は外国製が多い。 口径8.2mすばる望遠鏡はガラスの製造、研磨はアメリカ製。口径2mなゆた望遠鏡はドイツ製ガラスをフランスで研磨。 1980年代の公開天文台開設ブームのずっと以前に60-70cmクラスの望遠鏡数台を作ったが、その後の活動は聞かれない。
(2009年6月 記)

注:施設内は一般公開があれば入場できるが普段は非公開

参考資料
天文年鑑1974年版 ; 京都大学 理学研究科 宇宙物理学教室 HP ; 国立天文台 岡山天体物理観測所 HP


阪鶴鉄道の古レールと双頭レール

阪鶴鉄道は大阪−舞鶴を結ぶ鉄道として出願したが、尼崎−福知山間のみ認可された。JR福知山線の前身。
1895年設立
1897年摂津鉄道を買収し尼崎−宝塚間開業
1899年全線完成
1907年国有化される

100年以上前に消えた鉄道会社のレールを旧福知山線廃線跡で発見した。
複線電化前の「宝塚」−「道場」間旧線は武庫川渓谷を通る単線で車窓からの景色が良い区間だったが、 渓谷に沿って走る線路は曲線が多いため速度が出せず、崖と川に挟まれ複線化は困難な区間だった。
この区間に古いレールで作られた落石防止の柵があることは廃線前の車窓から何度も見ていた。 しかし渓谷の線路近くへ行く道がないため見に行くことは無理だった。

1986年8月「生瀬」−「道場」間は新線へ切り替わる。「宝塚」−「新三田」複線電化
1990年代より新線切り替えで廃線となった渓谷区間はハイキングコースとして利用され始める。 かつて車窓より見ていた所へその気になれば行けるようになった。(文末注*1参照)
1990年代末から数回の調査を実施。 2009年6月デジタルカメラ持参で古レールを写した。

木々で薄暗い斜面に落石防止の柵がある。
この柵はデジカメの普及していない頃にフィルムカメラで写したが暗いため、うまく写せなかった。
縦と斜めの古レールは平底レール、横の古レールは双頭レールが使われている。


柵の端から双頭レールの断面を写す。
双頭レールの上面は使用による磨耗がわかるが、下面は磨耗していないように見える。 うっそうとした新緑と谷の乏しい光量のためカラーバランスの悪い環境で撮影。
廃線からでも23年経過、鉄道防災の柵が作られて何十年と無塗装のまま雨風にさらされているが鉄の状態は良好に見える。 上下対称の双頭レールは平底レールより柵に組み付けやすい。


平底レールに文字があるのを発見。
下から上に HANKAKU と読むことができる。
旧福知山線に使っていた阪鶴鉄道時代のレールを再利用したと思われる。 伊丹市博物館(下注*2)の資料より、このレールは1890年代に米国カーネギーで製造と思われる。 

阪鶴鉄道ではアメリカとドイツから購入したSLが使われていたのでアメリカ製レールを使っていたのは理解できるが、 平底レールが普及するまでの明治の短期間のみイギリスから輸入された双頭レールが阪鶴鉄道で使われていたとは思えない。 この双頭レールは阪鶴鉄道が国有化後、柵を作るため官営鉄道の古レールを持ち込んだと思われる。
(2009年7月 記)


上記取材から15年後の2024年撮影。柵に使われている縦材の古レールから別の刻印を発見した。
分かりにくいが CARNEGIE 1896 IIIIIIIII HANKAKU と読める。
写真は上側を横にしている。(右が上)


注 *1:「武田尾」−「生瀬」廃線跡はハイキングに利用されているが、柵は見学コースではない。山歩きのマナーを守り自己責任で歩くこと。 旧線に併走する道路は無い。途中で歩くのをやめて車で帰ることはできない。

注 *2:伊丹市博物館には阪鶴鉄道に関する資料が少し常設展示してある。
カーネギー製古レールは福知山線柏原駅ホームに使われているのが観察できた。
京都鉄道博物館の明治時代のSL展示で枕木へ取り付けた双頭レールを見ることができる。


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