乗車記録 〜100回目のおんもへ〜

その2:西海のまほろばを往く(島原鉄道・西鉄宮地岳線 2007.2.9−11)


「100回目のおんも」、2回目の目的地は島原鉄道です。
雲仙の山々と有明海を望みながら島原半島をぐるり半周する風光明媚なローカル私鉄です。
記憶に新しい雲仙普賢岳の噴火など、度重なる災害に見舞われながらも懸命な努力により
運行を続け、車両も観光トロッコ列車に加え懐かしいキハ20が現役で運用されている
事もあり、ファンにとても人気のある鉄道です。
しかし残念ながら2007年3月末をもって末端区間の島原外港−加津佐間の廃止が発表されました。
以前から一度訪れてみたかったこの地を旅してきました。
急な旅立ちだったなりに付加価値を色々と取り入れ、いわゆる「鉄旅」としては
充分満足できる内容だったかな?と思います。ではご覧下さい。


2007年02月9日(金) 天候:曇り

法界院駅 21:52
 ↓       岡電バス
岡山駅  22:10


金曜の仕事から帰って急いで身支度をし、21時半過ぎに家を出ます。
今回は夜行での出発。岡山駅まで出るのに適当な津山線の便がなく、岡電バスにてスタート。
「法界院駅前」バス停、実際は駅前にはなく踏切を隔てた県道沿いにあります。
バスは連休前の金曜夜を人の流れとは逆方向に進んでいき、定時に岡山駅前到着。
予定より1本早く着いたため、駅2階でしばし待機。

岡山駅 23:02
 ↓       31+33レ「あかつき」
博多駅 05:52


当初は土曜朝の新幹線で九州入りを考えましたが、旅の計画を立てたのが数日前だったので、
連休初日の指定券は取れませんでした。そこでひと捻り効かせて寝台特急「あかつき」を選択しました。
関西から九州方面への夜行列車は「ムーンライト九州」しか経験がなく、西へ向かう夜行特急は初乗りです。
とはいえ予算の関係上、寝台ではなく座席車。もっともこちらの指定券もギリギリセーフでした。

(左)ホームの電光掲示。  (右)先頭のEF66。この2枚は実際の48時間後(つまり帰岡時)に撮ったアリバイ写真(笑)

「あかつき」は定刻に岡山駅5番線に入線してきました。岡山駅在来線ホームは線区によって駅メロが
違います。新幹線のそれとは違うアレンジの「いい日旅立ち」が流れ始め、流れ終わると同時にEF66先頭の
青い列車がホームに滑り込んでくる。偶然にしてもかなりニクイ演出で、横で待っていた家族連れの
子供たちもブルートレインの格好良さと乗れる嬉しさとでホームを走り回っていました。

オハ14 303 レガートシート車

最後尾の10号車に乗り込みます。
明らかに夜行バス対策と思える1+1+1=3列のリクライニングシートが並ぶレガートシート。
作者の席は10B。デッキから車内に入るとサロン室があり、その先の扉を開けて車内に入って
すぐ、一番前の真ん中です。
と言うより、驚いたのが車内が完全に真っ暗であること。過去に乗車した夜行座席列車はせいぜい減光
だったのですが…。シートのリクライニング機構やスリッパを探すのも一苦労で、発車後のカレチ氏も
ペンライト検札です(笑)
席はほぼ埋まっています。サロン室も賑わっていますが、既に安眠モードに入っている人が多く、
車内撮影などガサゴソした事はさすがに気が引けました。
時間も時間ですし、持ち込んだミニチューハイとチーかまをそそくさと食べ終え、シートを倒してとっとと寝る事に
しました。


2007年02月10日(土) 天候:曇り→晴れ


博多駅 06:00
 ↓       128M
香椎駅 06:13


発車シーンを流し撮り。テールマークではなくレガートシートの書体に
合ってしまいまいた(これも岡山駅にて)。

おはようございます。目が覚めると「あかつき」は東福間の辺りを走行しているようです。カマは乗車時のEF66から
EF81を経てED76に替わっていることでしょう。
5時52分博多駅に到着。作者を含め乗客の半分が下車します。辺りはまっ暗で、早朝でまだ少し眠いです。
但しレガートシート自体は快適そのもので、格安移動手段としてはお勧めできます。
いったん改札を抜け、券売機で香椎までの乗車券¥220−を買って再びホームへ。
旅の第一目的である島原鉄道に向かうのは午後からとして、それまではかねてより乗る鉄、撮る鉄、見る鉄
してみたかった博多周辺の場所をいくつか訪ね歩くことにしました。
811系の普通電車に揺られて香椎駅へ移動。
これは西鉄香椎駅。少し空が白んできました。

JR香椎駅といえば、旧線時代で登場する「電車でGO」にて進入時のハードブレーキングが要求される駅。
実際は勿論そんな事は無く(笑)駅前はいかにも大都市近郊の佇まい。駅前にて朝○ック(伏せ字になってない)
と歯磨き洗面を済ませ、向かいのコンビニでスポーツ紙を買います。日本は狭くなったと良く言われますが、
確かに全国どこへ行ってもファーストフードやコンビニに困らない昨今、「あー○○地方に来たなぁ」と
思わせられる貴重なものが新聞(愛読のデイリーが無く九スポを購入)と中身の記事(ご当地ホークスが中心)
でありますな。
西へ歩くこと数分、西鉄香椎駅に到着。

西鉄香椎駅 06:56
 ↓        西鉄宮地岳線
宮路岳駅  07:27


民鉄ファンに人気の西鉄宮路岳線ですが、ここも末端区間の新宮−津屋崎間が3月いっぱいで廃止されます。
地味ながらもイエロー基調の古めかしい電車がコトコトと走り、前々から乗車してみたかった線区でした。
宮地岳線は全線が単線。廃止対象線区とはいえ電車は高密度で運行されています。やって来たのは
600系の2連。
香椎を出ると暫く市街地の中を走ります。香椎花園では隣接する遊園地の観覧車が見えました。
新宮からは廃止対象区間に入り、少し郊外風景となりました。乗客の少なさが何とも寂しいです。
約30分、終点の1駅手前、線名の由来となっている宮地岳駅で下車。

(左)津屋崎方面行きの車内の乗客は少ない… (右)宮路岳駅にて下車。

宮路岳駅 07:40
 ↓        西鉄宮地岳線
津屋崎駅 07:43


駅から1キロ弱歩いたところに宮路岳神社というお社があるらしく、かつて多くの乗客が歩いたであろう
臨時改札と広い駅前広場が特徴です。駅舎もなかなか風情のあるものでした。
次の電車に乗ってもう1駅。終点の津屋崎を目指します。

(左)宮路岳駅舎。  (右)ホームから駅舎を見たもの。宮路岳線の駅は全て有人駅です。


(左)終点津屋崎に到着。  (右)駅舎。

因みにこの線区ではチューリップのヒット曲「心の旅」がチャイムとして使われているのが
感動的です。「あー明日の今頃は僕は汽車の中♪」ご当地ソングですね。

駅前はお店などは少ないものの、道が通っていて公園があり、少し開けていました。

(左)車止めの向こうにある道端からホームを撮影。  (右)折り返し準備にかかる313系と乗務員。

発車間際になってポツポツと乗客が集まってきます。学生の姿も多く目に付きました。
ただ廃止対象というイメージほど廃れてはいない、という印象で、この区間がなくなってしまうのは
少し残念な気もします。やはり採算の問題なのでしょうか?

津屋崎駅  07:59
 ↓        西鉄宮地岳線
貝塚駅   08:41


帰りの電車は古豪313系の2連。2枚窓のかわいい電車です。
貝塚を目指してコトコトと走り、途中駅で次々に福岡市街地方面の乗客を拾い、宮路岳線の起点となる
貝塚には満員で到着。
西鉄と地下鉄は同一ホーム乗り換えなどの便宜が図られているかと思いきや、それぞれ別の改札となっていて、
殆どの乗客は小走りに前方の地下鉄乗り換え方面へ消えていきました。

(左)貝塚駅。乗り換えが主目的のようであまり人通りはありません。  (右)凄い自転車の数!ですが整然と置かれています。

作者はここで下車。今回の旅で1発目となる鉄道撮影を行います。
駅から北に10分ほど歩き、多々良川の土手へ。ここには鉄道橋が3本架かっています。
まずは先ほど乗車した西鉄宮地岳線の古風なアーチ橋と古い電車を絡めて撮影。

(左)いきなり宮地岳線電車とED76貨物との競演が。 (右)体の向きを90度こう変えるとJRも撮影できるのがいいですね。

その後、50m程上流に架かるJR鹿児島本線の鉄橋に移動し、「ソニック」「はやぶさ」などを撮影。

(左)白いソニック。かなり高速でやって来ます。       (右)足場はこんな感じ

天気が今ひとつでしたが、それでも充分満足の成果。撮影後、急いで駅に戻ります。

貝塚駅    10:34
 ↓         福岡市営地下鉄 箱崎線
中洲川端駅  10:44

貝塚からは地下鉄箱崎線に乗車。中洲川端で下車し、一段下の空港線ホームへ向かいます。

中洲川端駅  10:46
 ↓         福岡市営地下鉄 空港線
福岡空港駅  10:56

中洲川端から博多駅、福岡空港駅へ向かう空港線。車内は満員で、大都会の鉄道らしくなってきました。

福岡空港    11:00頃
 ↓           タクシー
志免鉄道公園  11:15頃


博多駅で乗客が入れ替わり、終点の福岡空港へ到着。殆どの人が空港連絡通路へ向かう中、作者一人だけ
まっすぐタクシー乗り場へ向かいます。次の目的地は志免鉄道公園。
空港から路線バスの便もあるようですが、時間の都合でタクシーを利用しました。
鉄道公園までは5kmほどで¥1,390−。

(左)空港。 (右)志免鉄道公園の入り口。

昭和60年に廃線となった「勝田線」と聞いてピンと来る鉄道ファンは、かなりベテランの部類?
ここ筑豊地区はかつて石炭産業で栄え、多くの鉄道が走っていました。
今では福岡近郊の都市風景が広がる志免町ですが、かつての勝田線志免駅の跡地を整備して
公園としています。

(左)ホーム跡。公園の間を道が走っています。         (右)かつての隆盛を偲ぶ写真パネルが。

当時の主力機だった9600が保存されているとの事でしたが、少し離れた場所にあるとの事で、
残念ながら逢えませんでした。

(左)線路跡は遊歩道になっています。     (右)やっぱりコレが気になりますよねー

しかし、志免町の名所と言えば、やはり旧志免鉱業所竪坑櫓(跡)を抜きには語れません(ですよね?)。
鉄道公園の裏山にそびえているこの竪坑櫓の近くまで行ってみる事にしました。

(左)公園から徒歩数分で到着。 (右)現在は勿論立ち入り禁止です。

これは昭和18年に造られたもので、当時の石炭産業が国家にとっていかに大きな存在であったかを
静かに物語っています。ここから地下600mもの炭坑が掘られていたそうです。
立ち入ることは出来ませんが、離れたところから見てもかなりの迫力。一度見ておきたい巨大遺構でした。

(左・右)見上げるとそのブルーカラーな迫力に圧倒されます。


(左・右)近くには坑道入り口跡らしきものも残っていました。入り口は鉄骨で塞がれています。


現在は近くに公園やスポーツ施設のようなものが作られていて、地元住民の憩いの場となっているようでした。

志免鉄道公園 12:07
 ↓         西鉄バス(約10分遅れ)
宇美町役場前 12:29



(左)鉄道公園前バス停。竪坑櫓も見えます。 (右)やっと来たバス。

約1時間の志免鉄道公園と竪坑跡での滞在を終え、公園前のバス停から西鉄バスの宇美営業所行きに乗り、
宇美駅方面へ移動します。
ところが、途中で渋滞している模様で、なかなかバスがやって来ません。
後の接続を考えて心配になった頃、やっとバスが来ました。
またこの西鉄バスの運転手さんはとっても丁寧で、バス停や交差点、発車停止の際に全て
マイクで乗客に注意説明や案内を欠かしません。「次は○○バス停です。お降りの方いらっしゃいませんか?
いらっしゃいませんね?では○○バス停、通過します!次は△△、△△です。」や、
「踏切ですので一旦停止します。右よし、左よし、もう一度右良し!発車します。バスが揺れますのでご注意ください」
など、運転も超が付く安全運転。まさか宇美から香椎線に乗り継ぐ客が居るとは思いもしていないでしょう。
作者一人やきもきしていました(苦笑)

とはいえ、元勝田線の旧線跡を辿るようにバスは走り、約10分遅れのまま宇美役場前に到着(¥320−)。
約400m離れた香椎線の駅目指してダッシュします。

宇美駅 12:49
 ↓      748D
香椎駅 13:16



(左)宇美駅。八幡参宮を意識しているのでしょうか。  (右)宇美駅で客待ちのキハ47。

香椎線の終点ですが、昔は勝田線の駅もありました。両線はそれぞれの生い立ちが異なるため、
駅は離れた場所にあり、同じ国鉄でありながら2つの顔を持つ変わった駅でした。
現在の駅は宇美八幡宮に因んだデザインの駅に建て変わっています。キハ47系2連の748Dは定時に発車。
沿線は梅の花が咲き、2月とは思えません。途中長者原で篠栗線に殆どの乗客が乗り換え、
車内は閑散としたまま香椎に到着。

(左)九州のキハ47は未だサボ使用。  (右)ボタ山。かつてこの地に石炭産業の栄光があった事を今に伝えるエピタフか。

香椎駅 13:23
 ↓      157M
博多駅 13:36


香椎に到着。この駅を中心に約7時間掛けて変則的な一周旅行をした格好です。
いやー充実した鉄旅行でした!
…って、メインイベントは島原鉄道のはずなんですけど???(笑)
という事で、いよいよ島原半島方面に向かうべく、普通電車に乗り換えて博多駅へ。

博多駅 14:02
 ↓      2025M「かもめ25号」
諫早駅 15:32

博多駅は連休初日で大賑わい。駅弁「かしわめし」と飲み物を買い「かもめ25号」に乗りこみます。
作者は「かもめ」は485系で、885系は「ソニック」で経験していますが、「白いかもめ」は初乗りです。
指定席の乗車率は100%。自由席は通路まですし詰めで、溢れた客が3号車のロビー兼売店に殺到して
指定席の通路まで通れなくなってしまっています。
 
お馴染み「白いかもめ」

発車後、遅めの昼食として「かしわめし」の包みを開くと、そぼろではなく煮鶏の身が入っていて、
鳥スープで炊いたちょい辛めのご飯がなかなか美味しい。元祖折尾駅の甘辛い味もいいですが、
こちらもなかなか。ボリュームもあり、値段的にも満足でした。
いつの間にか雲が切れてすっかり良い天気となりました。「かもめ25号」は鹿児島・長崎本線をびゅんびゅん
走り抜け、1時間半で諫早に到着。ここで多くの乗客が下車しました。
作者はJR現行の特急電車車両では787系が最上と思っていますが、885系も上品な車内演出と
コーナリングスピードの高さで、いいクルマですねー。

諫早駅  15:50
 ↓       島原鉄道129列車
釜の鼻駅 16:08


改札には向かわず、すぐに島原鉄道の乗り換え口へ。
本格的な乗車と撮影は明日行うとして、まずは夕方に軽く列車撮影しておこうと思い、50分発の車中の人と
なります。単行なので車内は地元の人や学生、観光客で超満員。

(左)諫早駅に停車中の2500型。現在の主力車両。     (右)沿線図。島原以遠はバスに分がある事は明らか。


時間的にあまり奥には進めそうにないので、干拓地の風情があって光線状態も良さそうな釜の鼻駅で下車。

(左・右)釜の鼻駅。駅前を走る国道の交通量の激しさに比べて、ひっそりとしています。

鉄道に並走する国道に沿って歩くこと数分、田んぼの中から17時の下りキハ20の運用を撮影。
もう少しで日が陰るところでした。構図もフレームアウト寸前。
雲仙が綺麗に見えて欲しかったですが…まぁ贅沢は言いますまい。
お目当てのキハ20雲仙バック。山が霞んでしまっています。

釜の鼻駅 17:30
 ↓       島原鉄道132列車
諫早駅  17:52


撮影後、諌早駅に戻り本日の行程は終了。まだ周辺は薄明るく、少し早いですが今日のホテルへ。
駅から歩いて7,8分くらいに位置するビジネスホテルが今日の宿。直前でのネット予約でしたが、
¥4,700−は貧乏旅行の身には嬉しい。サウナが売りとの事ですが、ちゃんと大浴場もあります。
チェックイン後、夕食でもといったん外出し、周辺を物色しましたが、靴ズレ気味で少し足が痛いのと、
どうも食指が動く店が見つからず、結局コンビニと「ほか弁」にしました。
今回の旅は「食」については全く贅沢する気もなく、これで十分。
明日も一日乗り歩き&撮り歩きで食事時間は取れそうにないので、車内や撮影地で食べるつもりの
パンやおにぎりなど食料を買い込み、ホテルへ帰りました。

(左)市内を流れる川の橋上からホテルを。  (右)部屋。大浴場付き¥4,700−なら上等か。

部屋で弁当を食べ、立派な大浴場にゆっくりつかった後は、明日に備えて早めに寝る事にしました。
さすがに夜行移動と歩き詰めは疲れます(苦笑)明日も早いですし。

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