楓観察記
〜 出産・入院編 〜
 
         
    出産 2010年11月  
   
楓の出産は日曜日の午後3時、破水から始まった。
破水した場合はすぐに病院へ連絡、と言われていたので急いで電話すると、
「今ちょっと忙しいから1時間後に来て」と言われる。そんなに緊急でもないらしい。

余裕ができたので、のんびりシャワーを浴びる。夫はその間、本やDS、デジカメ、
ビデオなどをせっせとカバンに詰めていた。バカンスか。さらに時間が余ったので、
鮭と明太子のおにぎりを作り、おやつを見繕ってカバンに入れた。ピクニックか。

病院に着くと、出産病棟にある入院用個室に通された。陣痛が来るまでここで待機。
まだどこも痛くないので旅行気分でのんびりと過ごす。夫のバカンス荷造り、正解。
時おり他の部屋から絶叫が聞こえてきて怖い以外はとても快適だった。

翌朝になり、陣痛を促すためのアロマテラピーやホメオパシー、鍼治療を試したが、
効果なし。そのまま午後3時になり破水から24時間経ったが何も起こらないので、
陣痛促進剤を飲む。が、効かない。酒呑みに薬が効きづらいという噂は本当か。

夜の9時に促進剤を追加。すると、急に激しい陣痛が始まった。無痛分娩の麻酔は
お産がある程度進むまで打ってもらえないので、それまでは普通に陣痛と戦う。
バランスボール、アロマテラピー、ホメオパシー、ホットタブ、ペインキラー、と
痛みを和らげる方法をあれこれ試みたが、どれも効き目は殆ど感じられなかった。
結局、助産師さんの手でさすってもらうのが一番効いた気がする。

明け方に分娩室へ移動。待ちに待った麻酔医がやって来た。
これで激しい痛みからやっと解放される。麻酔医はごついおじさんだったが、
その時は後光の差した天使に見えた。しかし、この天使はとても礼儀正しかった。
「Hello, my name is...」 まずは自己紹介。そして右手を差し出し、
「Nice to meet you.」 って、にこやかに握手してる場合じゃないんですけど!
「では麻酔をします。副作用は・・・」 その説明は昨日聞きました!
「ところで持病やアレルギーは・・・」 その質問にも昨日答えました! 
「針を刺すとき痛いと思いますが・・・」 いいから早く打って〜!

麻酔を打って30分、ようやく痛みが消えると、役目を終えた天使は
「Have a nice day.」と最後まで礼儀正しく挨拶して去って行った。
朝の6時を過ぎたので、自宅待機していた夫を電話で呼び出す。7時前に夫到着。
分娩室の場所を伝えていなかったため、昨夜までいた入院用個室のほうに行って
しまい、ドアを開けたら知らないインド人が寝ていたのでかなり驚いたらしい。
向こうも驚いたと思う。

ここで麻酔のせいか寝不足のためか眠くなり、分娩台で爆睡。
10時ごろ助産師さんに「そろそろ生まれますよ」と起こされる。
そうだ、まだ産んでなかった。

普通は陣痛の波にあわせていきむらしいが、無痛でわからないため助産師さんが
機器のモニターを見ながら「Push!」とタイミングを指示してくれる。数回いきんだ
ところで、赤ちゃんが出てきた。痛み無し、絶叫無し。無痛分娩って素晴らしい。

出産後すぐに、助産師さんと夫のやりとりが聞こえた。
「Do you want to cut the cord?(へその緒を切りますか?)」
「No! Please.」ものすごい即答だった。

というわけで助産師さんが手際よく楓のへその緒を切り、バスタオルで全身を
きれいに拭いて私の胸の上に置いてくれた。いわゆるカンガルーケアというやつだ。
ようやく会えた我が子の顔を見ると・・・安部譲二に似ている。
まあ健康ならいいよね、と夫と励ましあう。

その後、助産師さんが楓をひきとり全身を簡単にチェック。
どこも異常はないと思いますといって洋服を着せてくれた。
夫が楓を抱いている間にベッドで昼食をとり、食後はベッドごと病室へ移動した。


はじめての体重測定