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小さい子を連れていると、人様に親切にしてもらう場面がよくある。
そんなとき、親だけでなく子どもの口からも「ありがとう」と
言わせたいところだが、「ほら、ありがとうは?」など促しても
楓はなかなかありがとうが言えるようにならなかった。
そんなある日、楓が初めてひとりで靴下をはいた。

あれは秋のころじゃった・・・
「すごいねー!上手にはけたねー」と拍手で大絶賛していたら
楓がおもむろにたちあがって「ありがと」と頭を下げた。
まるでカーテンコールに応える大物女優のようだった。
「ごめんなさい」もなかなか言えるようにならなかった。
何かで叱って「ごめんなさいは?」と促しても決して言わない。
技術的には絶対言えるはずなのに、頑なに言わない。
それがある日の朝、いつものように保育園に向かっていたら、
公園を通り過ぎたところで楓がおもむろに言った。
「おかしゃま、さっき、ウキウキしちゃって、ごめんね。」
謝られるような心当たりがさっぱりない。

ウキウキしちゃって、いいんだよ
文章の長さで言うと、この5語文が今のところ最長記録なんだけど、
そんなにがんばって何を伝えたかったのか・・・不明です。
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