思うこと 第64話           2006年1月27日 記       

2006年の“年の初め”の読書 −その8− 

小泉改革の評価


 新春読書で読んだ17冊の本のうち、小泉純一郎首相の改革に対する評価で私が注目した7冊を紹介し、最後に私自身の考えについて述べたい。

1.小泉改革に極めてきびしい評価を下している本

 『小泉純一郎と日本の病理』(左写真の本)(光文社より2005年10月30日初版発行)の著者の藤原 肇(はじめ)氏は、氏のHP( http://www2.tba.t-com.ne.jp/dappan/index.html )によると、1938年に東京の神田で生まれた江戸っ子。埼玉大学で地質学を専攻した後、フランスのグルーノーブル大学に学び、アルプスの構造地質学を修めた理学博士。 現在はカリフォルニア州のパームスプリングに住み、そこから国際的視点でのさまざまな情報発信をしておられる。
 さすがに自然科学者だけあって、情報収集と分析は徹底しておられる。巻末には、この5年間の小泉語録が収録されており、また、小泉家の人々について過去にさかのぼって詳しく書いてあり、佳代子夫人との離婚とその後の経過まで紹介してある。
 この本の中で、藤原氏は 
『小泉政権は日本を「死」deathに至らせる政権であり、「改革」 reform という名の下に、社会の崩壊を進ませている。』 と、小泉改革に極めて厳しい評価を下しておられる。

 日本経済の破綻を予告している高橋乗宣氏の「2006年 日本経済 日米同時崩落の年になる!」(左写真の本)については、すでに第60話で紹介したが、
『まやかしの改革の裏で国家破綻が近づいている』との小泉改革そのものへの痛烈な批判に加え、今回の選挙で小泉自民党が圧勝した経緯を、『これはまぎれもなくファッショである。−(中略)− それにしても今回の手法は許しがたい。 郵政民営化法案の採決をめぐり、これに異を唱えた自民党議員をことごとく追放したばかりか、造反した議員の選挙区には、「刺客」と称される対抗馬を立てるという徹底ぶりだった。 要するに、小泉カラーさえまとえばいいというのか、実際のところ、自分の思い通りになる親衛隊で陣営を固めただけである。』と述べておられ、憂国の憤懣が読むものに伝わってくる本である。

2.小泉改革を、中間的または中立的観点でとらえているもの

 浅井 隆氏の書かれた「小泉首相が死んでも本当のことを言わない理由」については、これまで繰り返し引用させてもらったが、小泉改革の評価に関しては、微妙な発言をされておられるので、以下に紹介させてもらう。 『私だって改革を望むし、みっともない抵抗勢力の連中と一緒にされるのは甚だ迷惑だ。 私もほかの首相よりは彼のほうがましだとは思う。 しかし、その小泉首相でさえ日本の財政状況を好転させることは難しいのだ。 少なくとも現時点ではほとんどできていない。 それほど日本国政府の中枢部分は腐りきっているのである。』と述べておられる。




 この「自民党を壊した男 小泉政権1500日の真実」は、読売新聞政治部により新潮社から2005年6月12日に出版された。 2004年1月12日から2005年1月30日まで、読売新聞紙上に連載された「政治の現場」を改題し、追加取材により増補したものとのことである。政治部のほぼ全員が追加取材にあたり、与野党と首相官邸クラブ詰めの記者が主に執筆しただけあって、現場から掘り起こされた事実は、極めて説得力がある。
 この本は、小泉首相に対する評価は、読者にまかせて、ただ現場の真実を伝えることに重点をおいてあり、その意味でも貴重なドキュメントとなっている。



3.小泉改革を高く評価している本

 長谷川慶太郎氏の『大展開する日本』については、すでに一昨日の第61話で紹介したが、長谷川慶太郎氏は小泉首相についても、小泉改革の中身についても、最大限の評価をしておられるので、ご紹介しよう。

小泉首相がやろうとしているのは、デフレ時代に対応した新しい制度とシステムづくり
 2005年の9・11総選挙で歴史的大勝利を収めた小泉という男は、何をやろうとして、何をやってきたのか。
ひと言で言えば、日本にデフレを持ち込み、デフレを定着させなければならない。日本の政治、経済、社会から、インフレ時代の制度とシステムを消滅させる。デフレ時代に対応した、新しい制度とシステムに改革する。小泉という男は、そういう仕事を始めた。』

小泉は「麻雀・カラオケ・ゴルフ」をやらず、決して「群れない」
 私は、小泉が登場した当初から、この男は、政治のあり方を全面的に変える能力を持っていると見た。
 小泉という男は、日本の政治家の仲では類例にない強い個性の持ち主で、一人の子分も持たない。
「麻雀・カラオケ・ゴルフをやらない」 私は、そういう題の本を書いていたし、小泉もその本を読んでいて、「私もそうだ」と本人の口から聞いていた。
 つまり決して「群れない」。』


インフレ時代に良しとされた日本人はすべて否定される
日本人は「群れる」ことで強みを発揮するのが、民族の特性だと長いあいだ言われて来た。しかし、インフレからデフレに、180度路線が変わるのだから、これからはまったく逆になる。そう考えて、『麻雀・カラオケ・ゴルフは、おやめなさい。』という本を書いた。インフレ時代に良しとされた日本人は、全部否定される。これはしょうがない。時代が変われば、生き方も変えなければならない。』

私は、長谷川慶太郎氏のこれらの言葉にカルチャーショックを受けると同時に、とても大切な事を教えていただいたのであった。

 この田中直毅氏による『2005年体制の誕生 新しい日本が始まる』は、日本経済新聞社から2005年11月9日に発刊された。 著者の田中直毅氏は、21世紀政策研究所理事長として活躍しておられるが、21世紀政策研究所のホームページによると、氏は「1945年、愛知県生まれ。東京大学法学部卒業の後、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。国民経済研究協会主任研究員を経て、1984年より本格的に評論活動を始める。1997年4月より21世紀政策研究所理事
長。」とのことである。
 著者は、小泉首相が目指している改革と、今回の選挙における小泉首相への国民の支持、その流れを見て、
『日本もどうやら改革の最終列車に間に合うかもしれないという期待をよせつつ擱筆する』という言葉で「まえがき」をしめくくっておられる。 田中直毅氏は保守合同で始まりこれまで続いてきた55年体制は、郵政、道路、農水、文教、厚生の5分野の族議員(著者は「5族」と呼んでいる)に象徴されるような既得権益を守ることから選挙で票を獲得することを主体とする政権体制であったと位置づけし、今回の小泉首相の快挙が、そのような体制に立ち向かう姿を国民が支持したもので、これを2005年体制の船出位置づけ、新しい日本が始まると述べているのである。 私は、この本に心底感銘を受け、田中直毅氏はすごい方であると思った。

 清水真人氏著の「官邸主導 小泉純一郎の革命」は、日本経済新聞社から2005年12月16日に初版が出された。著者の清水氏は、1986年に東京大学法学部を卒業され、日本経済新聞社に入社され、政治部、経済部、ジュネーブ支局長を経て、2004年9月より経済解説部編集委員をされている方である。
 この本は、実に克明に小泉改革の流れをえがいてくれてある。私はこの本を読みながら、これまでいかに私が小泉改革に無知であったか知らされ、愕然とした。 著者の清水氏は、コメント抜きで事実をドキュメントしただけであるが、私はこの本を読んではじめて小泉改革の本質が何かを明確に知る事が出来、その重要性を知る事が出来た。そしてまた、小泉氏が、日本をどういう方向に改革しなければならないかについて、ずいぶん以前から深く検討してきておられた事を知った。清水真人氏によると、小泉氏と竹中平蔵氏との付き合いはけっこう長いという。 1990年の初めごろから、さくら総合研究所社長・大野剛義氏の肝いりで、小泉氏を囲んだ経済の勉強会がはじまり、その会に竹中平蔵氏、ならびに上記『2005年体制の誕生 新しい日本が始まる』の著者の田中直毅氏も参加しておられたとのこと。小泉氏はずいぶん以前から、このようにすごいブレーンとの討議を重ねておられたわけである。 小泉首相は2001年、首相就任直後の首相談話で構造改革の断行を宣言し、
「私は自ら経済財政諮問会議を主導していく。」と述べたという。 事実、その後、小泉改革がこの経済財政諮問会議を中心にみごとに展開されてきている。 その中心的役割を担ったのが竹中平蔵氏と牛尾氏、奥田氏、本間氏、吉川氏の4人の民間議員であった。 さらに、この2001年の首相談話では、「痛みを恐れず、既得権益の壁にひるまず、過去の経験に捕らわれず、『恐れず、ひるまず、捕らわれず』の姿勢を貫き、21世紀にふさわしい経済・社会システムを確立していきたい。」と述べられたとのことである。清水氏のこの本を読むと、小泉首相は、この言葉通りのいばらの道に、ひるまず突き進んで、今、まさに道半ばにあるということがよくわかる。

 さて、ここで、私自身の小泉改革に対する評価についてふれたい。私は、この度の新春読書の前までは、政治音痴で、小泉改革に対して明確な評価を行える知識を持ち合わせていなかった。しかし、今回の読書で、日本経済の現状が、方向を誤ると危機的状況が起こりえる事を知り、そしてまた、小泉改革の内容を知り、この改革を推し進める以外に日本の将来はない、と確信するにいたった。 今年9月に新しく首相になられる方が、今の改革路線を継承してほしいと思う。 もちろん、その新首相が靖国参拝をしないでほしい、と、切に祈っていることをつけ加えて、この項の締めくくりとしたい。