思うこと 第63話           2006年1月26日 記       

緊急提言: BSE問題の間違いを正す 

 米国からの輸入肉に背骨が混入していたことに端を発して、米国からの輸入牛肉の安全性に関する論議が巻き起こり、昨日の国会質問でも大きく取り上げられた。
 私は、細部にわたって論議するつもりはないが、学問的な立場からBSE問題に関与した者の一人として、この私のホームページの場で、ひと言だけ発言することにした。

 私は医学の分野で、大学で診療と教育と研究を業務としている。 専門分野が神経内科であるため、鹿児島県でヤコブ病 (BSEと同じくプリオンによって感染する病気)の患者さんが疑われた場合、私達のチームが責任を持ってその診療にあたってきている。

 平成13年(2001年)に国内でBSEが発生した際、必要以上の牛肉への不安が国民にひろがり、多くの国民が牛肉を買い控えたため、生産農家は窮地に追い込まれた。正確な知識を持たないための全く必要のないパニックが消費者におこったのである。日本一の肉牛の生産県であった鹿児島県の生産農家の悲鳴を肌で感じ取られた鹿児島大学農学部の岡本嘉六教授は、正確な知識を広く国民に知らせて、間違いを正し、風評被害を防止する必要を痛感し、すぐさま行動に移された。その行動の一環として、医学部で人のプリオン病を担当していた私にも出動の要請が来た。私は当時、鹿児島大学病院の病院長であったため、多忙を極めていたが、状況が状況だけに、市民への啓蒙活動のお手伝いをさせてもらった。私が分担したのは、講演会を通して、市民の方々に正しい知識を持ってもらうことであった。私の市民公開講座は、講演を聴かれた方々からは、これで不安がなくなりましたとの声が相次いだ。 その講演の全てのスライド、動画、そしてお話した一言一句のすべてを私のホームページに掲載して、広く国民の全ての方々に見ていただけるようにしてある(私のこのホームページの「その他の公開講座等」にアップしてある; http://www5f.biglobe.ne.jp/~osame/kouenn-koukaikouza/bse-osame/bse-osame.htm )。 岡本嘉六教授は私の講演のDVDやビデオのコピーを膨大な数(確か3000本以上?)作成され、全国の関係者に配られたと記憶している。 詳しくは、岡本嘉六先生のホームページ(http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/vetpub/ )、あるいは、先生のお話(http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/vetpub/Dr_Okamoto/Forum/HPsum.html )を参照いただきたい。 結局、岡本教授を中心とした私達の努力は、国中に広がっていた無用な不安を沈静化させるのに、大きな役割をはたすことが出来たのである。

 私は、今回の米国産牛肉の件でも、確信をもって言いたい。 現在、米国民が食べている米国産の牛肉は、特に処理しなくても極めて安全で、何の心配もないと。 日本が米国に要求している条件は、もとより過剰要求であると私は考えている。 私の講演に目を通していただければ、何故私がそう考えるかの理由がお分かりいただけると思う。