思うこと 第268話           2008年3月11日 記       

福永秀敏氏の講演『患者さんの生と死から学ぶこと』

先日、「日本尊厳死協会かごしま」主催の第14回「公開懇話会」において国立病院機構南九州病院院長の福永秀敏氏の講演があり、私は、心底感動しっぱなしてお話を聴かせていただいたので、その内容の一端を紹介したい。福永氏は、『今日は、亡くなった患者さん、あるいは、今も頑張っている患者さんとのふれ合いについて紹介する中から何か伝えられたらと思う。』と静かに話し始め、最初に出されたスライドがこのスライドであった。

このスライドに大写しになっているのは演者・福永氏の笑顔であるが、これは山田君の描いた絵であることが紹介された。山田君の絵に関しては、私もかって『思うこと 第44話 筋萎縮症の患者さん達による「5人の轍展」に感動』の中で紹介したが、それにしても、この福永氏の顔はよく描けている。福永氏は山田君の生き様やエピソードをとおして、障害もその人の個性であることを我々に語ってくれた。福永氏の人柄と山田君の人間性とのふれあいがすばらしい交響曲を奏でていることに感動したのであった。山田君との感動的なふれあいの話に引き続き、これまでに福永氏が袖触れ合った患者さんたちとのエピソードが次々と紹介された。福永氏は、最近、緩和ケア棟や難治性の難病の患者さんの心のケアとして「ナラティブ(物語)アプローチ」とか「ナラティブセラピー」の重要性が強調されていることを紹介された。これは、「患者さんとの対話によって新しい物語を創造し、会話を通して新しい意味を発生させ、患者さんの持っている問題を解決してゆくという治療法」とのことであった。私達聴衆は、福永氏こそは、このような言葉が強調され始めるよりもはるか20〜30年前から、身をもってこのセラピーを実践してこられたことを実感したのであった。福永氏の豊かな人間性の周囲に、それを慕う患者さん達の輪が継続して今日を迎えていると言えよう。講演のなかで福永氏が語った言葉、『人生はいくつもの小さな物語からはじまる大きな物語である』の言葉は、私の脳裏に今も焼きついている。

用意された席は満席となり、後ろで立って聴いた聴衆も多かったが、会の終了後に集められたアンケートでは、その殆どが、心に響く、すばらしい講演であったというような感想文で、もっと大きな部屋を準備して、もっと多くの方々に聴いていただくべき講演であったとの、感動の声が多く寄せられていた。
なお、「日本尊厳死協会 かごしま」の次回の公開講演会は元鹿児島大学学長の井形昭弘氏が来月講演されるので、皆様奮ってご参加ください。ご来場をお待ちしています。
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とき:平成20年4月26日(土) 開場1時 講演:午後1時30分〜4時
ところ:鹿児島県市町村自治会館 鹿児島新町7番4号(TEL 099−206−1010)
    会館の駐車スペースは少ないですので、できるだけ公共交通機関でのご来場をお願いいたします。
参加費:無料
講演:演題 『健やかに生き 安らかに死ぬために』
   :講師 日本尊厳死協会理事長 井形 昭弘氏
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