思うこと 第228話             2007年7月1日 記

『夢追い外来』、感動のスタート


 私の個人的な小さな夢を追った『夢追い外来』の予定については『思うこと第216話』で述べたが、 今日、その初日を迎え、感動の時を過ごしたので、報告する。 加えて、周囲の大きな力添えがあってはじめてこの日を迎えることが出来たことについても述べたい。
 私のこの『夢追い外来』については、ホームページに掲載しただけであるから、殆どの方々が知らないわけで、7月1日スターとはいえ、初日は予約もなく閑古鳥がなくであろうが、気長に続けてゆけば、そのうちには口コミで患者様方もきてくださるだろう、という気持ちであった。
 完全予約制で、一人1時間という設定にし、日曜日は午前9時半から12時半までの3枠(3人)、木曜日は午前9時から5時までの7枠(7人)とした。先週金曜日、予約状況を確認して驚いた。何と、初日にあたる7月1日(日曜日)も、次の日曜日の7月8日ともに3枠とも予約が入っていた。嬉しかったし、一体どのようにして私の『夢追い外来』の存在を知ったのか不思議でもあった。ともあれ、ホッとしたし、また、感激であった。
 今日の一人目の患者様は、何と、11年前に私が診察した患者さんで、病気が進んだのでもう一度私に診てもらいたかったとのこと。私は、幸い私はこの方の11年前のことをよく覚えていた。1時間枠の診察は診察するほうにも、診察されるほうにも心のゆとりがあり、とても楽しい時間を過ごせた。病気について、詳しく説明したくなって、患者さんに4〜5分待ってもらって、必要な図をカラーコピーしてきて説明したが、この様なゆとりは大学時代の診察には望むべくもないことであった。50分ほどで診察と指導を終わり、『なにか、聞きたい事、他にありませんか?』とお尋ねしたところ、別の愁訴を次々と2つ話され、その愁訴に関する説明が終わった時に、丁度一時間が経過していた。『相談したかったことが、全部解決しました。ありがとうございました』、と喜んでくださった患者様の言葉に、私は、患者様以上の喜びを味あわさせていただいた。この患者様の主治医(開業医)が私のホームページを見て、それを教えてくださったので、駆けつけてきましたとの事。ホームページと主治医の両方に助けられて患者様に会えたことは、ありがたいことであった。二人目の患者様は、何と、20年前に私が外来で診たかたで、この方のことも幸い覚えていた。口づてに私の外来が7月1日から始まると聞き、すぐさま電話で予約したとの事。患者様は、私に20年ぶりに会えたと、感動で泣いてしまわれ、私も、一緒に感動した。とても多くの訴えがあり、その一つ一つに診察と説明をしていたら、あっという間に60分が過ぎ、次の患者さんがお見えになったので、二人目の患者様にはもう一度来ていただくことにし、再来の予約簿に記入した。三人目の最終枠の患者様はすでにHAMの診断がついていて、しかも、HAMの専門の先生から外来で治療を受けておられるかたであった。治療の経過がとてもよく、主治医からよく説明を受けていて、患者さんも現状に満足との事。受診した理由は、HAMを発見・命名した納先生に一度診て貰い、語りたかったとのこと。HAM友の会にも入会しており、私のホームページをよく見るので、そこでこの外来を知り、申し込んだとのこと。これまた感動であった。
 というわけで、感動している内に、あっという間に時間が過ぎた午前中であった。この様に、私にとっては幸せ尽くめの『夢追い外来』のスタートであったが、実は、多くの善意と好意に支えられて実現出来たのであった。『待ち時間なしに、ゆっくりと診療時間をとり、日曜日でも平日と変わらないレベルの検査と投薬を受けることができる、そういう診療をしたい』という、私の夢追いは、一見簡単そうで、その実、簡単なことではなかった。まず、日曜日は、病院に隣接している調剤薬局は休みであり、救急外来用の院内の常備薬は完備していたが、救急外来と通常外来では必要な薬の数に格段の違いがある。隣の調剤薬局は私共の慈愛会とは別組織なので、経営的に成り立たない日曜のしかも数人しか診ない私の外来のために開けてくださいとは到底お願い出来ない、と、私は相談することを躊躇していたのでるが、何と、先方様から、日曜日に調剤薬局をオープンしましょう、との申し出があった。北元調剤薬局の代表取締役の北元 逸様も、奥様で管理薬剤師の北元 裕子様も共に私(納)のホームページを見て下さっていて、日曜日の『夢追い外来』を調剤薬局としても応援したいとの事。 とても有難いことで、ご好意に甘えることにしたが、このことは、結果的には救急外来のドクター達にとっても朗報となった。 ちなみに、私の方は今日の初日の三人とも処方はしなかったので、ご苦労ばかりかけてしまったことになる。 検査態勢を日曜日と同じレベルにするということも、関連する方々の協力により実現できた。一番私が申し訳ないと思ったことは、私が日曜日に診療する時間帯は、救急外来で時間外診療加算が受けれなくなることであったが、これは、今村英仁理事長の、『会長の“夢追い”のためには、そんなことは小さなことなので気にしないでください。患者さんの立場に立って夢を追うことこそ、我々慈愛会の理念です』、の一言で、私も、私の『夢追い外来』が単純計算では赤字となることには気にしないことに腹を決めて、夢追いに徹することにしたのであった。 というわけで、多くの善意と、患者様がたの熱意に後押しされて、私の『夢追い外来』は順調なスタートをきることが出来た。 皆さんに、ただただ感謝する次第である。