個人的出来事    第89話     2007年8月5日 記
チベット日本画スケッチ旅行−3〜7日目−その3−
外国人に狭き門・秘境林芝


 今日は、8月1日に林芝空港に降り立つてから8月2日までの林芝での話をする。
飛行機はそそり立つ両側の峰を抜けて、下の写真のもう少し先にある河川敷の空港に滑り込んだ。



この西蔵(チベット)・林芝空港は出来たばかりで、開業は2006年10月、成都からの一往復のみでスタートしたが、最近では中国国内からの観光客の人気スポットとなろうとしている空港である。 しかし、成都との往復はまだ一日一便のみで、観光客で荒らされていないことから、いまだに秘境と言ってよさそうである。

中国の地方空港ではどこもそうだが軍人が並んで警備にあったっていた。
これまでの中国国内と違う点は、空港から林芝の町まで行く間に、武装した軍の見張り所が2箇所あったことである。写真撮影も許されなかった。

我々をチベット滞在中ずっと案内してくれたのが、私の向かって左の運転手と右側の青年(ラサ大学観光案内英文科3年生で英語が話せるので助かった)の2人で、どちらもチベットの地の方である。このトヨタの LAND CRUISER のお陰で、今日までずっと快適なたびであった。ちなみに、紫外線はものすごく強く、日に当たると皮膚が痛いほどで、家内が通信販売で見つけて取り寄せてくれた紫外線防止のこの帽子が旅行の間車の中でもかぶり続ける必需品となった。また、出発前に間に合った紫外線カットのメガネ、ならびに、強度の紫外線防御の日焼け止めクリームも重宝した。
さて、余談が長くなったが、本論に入る。
この、LAND CRUISER のドアの文字は、

『チベット旅行公司』となっているように、2人は日本で言えば国家公務員である。外国人がチベット国内を旅行する場合、『チベット旅行公司』の案内人と運転手が付き添うことが義務付けられていて、レンタカーなどで自分の予定で旅行することは出来ない。もちろん、中国人は自由である。今回の旅行は、私が外国人であるから、全員同じ運命を享受しなければならなかったのである。ホテルに行く前に私が案内されたのが、

この表示のところで、

公的機関の例によって、並外れて立派であった。
ここで判明したのが、林芝地区内の観光は、中国人はどこを観光しても良いが、外国人には観光してもいい場所と、立ち入り禁止の場所とがあるとのことであった。理由は、以前は、外国人は全面的に入国禁止であったのを、ここまで改善したとのこと、軍と政府からの通達なので如何ともし難いとの事。確かに、部屋の壁に大きくその『掟』が掲げてあった。

どうなることかと気をもんだのもつかの間、張院長先生はじめ皆様方のお力添えにより、私達の今回の旅行は全て予定通り許可されるということになったが、一般的には、未だに外国人には狭き門の林芝地区であることは、今後この地区に行かれる方は留意する必要があるといえよう。
さて、私の林芝での最大かつ唯一の目的は下の地図のなかの

林芝の東側にそびえる標高7756mのナムチャ・バルワ峰(南迦巴瓦)の日本画の下書きを描くことであった。全てはお天気頼みで、晴れていても頂上付近は雲で覆われていることが多く、今回見れたら奇跡との予備知識で望んだのであった。ところが、林芝空港から林芝の町へ行く途中、車の窓から霊峰が見えたのである!すぐに、車を止めてもらい、写真に納めた(下、弱拡と強拡を示す)。


私は、興奮し、いますぐ、この峰を一番良く見ることの出来る地点に直行するよう頼んだ。案内人と運転手の返事は、その前に、外国人は行かねばならない役所がある、といって連行されたのが先述の『公安処外国人管理科』であったのである。『公安処外国人管理科』での手続きを終え、ホテルに辿り着いた時は、もう霊峰を観察できる時間はとっくに過ぎていた。明日は、峰を観れるだろうかと聞いても、案内人は、『山の天気は神様で無いと分からない』とのこと。2日続けて奇跡は起こらないということか! 明日のことは神様にお任せすることにして、その夜は街の中華料理店で林芝中華を味わった。そこで、取って置きの嬉しい出来事が起こった。
ご馳走のたくさんの皿の中に、下の写真のものがあったのである!

食べてみると、まぎれもなく、松茸の味! 日本の松茸よりうまい、と思った。 近くの赤松原生林でいくらでも取れるとのこと。料理前の生のものを見せてもらったところ、

やはり、松茸である!
夢中で、腹いっぱい食べさせてもらった!
さて、その夜は、すこし寝苦しかったが、高山病の症状はなかった。
それは、翌日、ナムチャ・バルワ峰(南迦巴瓦)の観察の時、起こったのである。

この上の地図で説明しよう。左上の『八一鎮林芝具』とある赤い星印が林芝の街である。空港は左下の『林芝机場』である。『ナムチャ・バルワ峰(南迦巴瓦)』は右側中央に(海抜7787)と書いてある白い山の絵にあたる。この『ナムチャ・バルワ峰(南迦巴瓦)』の上のところに(海抜7204)と書いてある白い山の絵が『加拉白至峰』である。この、2つの霊峰を最もよく観察できる地点が2つの霊峰の中間左よりの『魯朗林海』である。
そして、またもや、奇跡は起こった!
この上なき晴天に恵まれ、2つの霊峰とも完璧に観察できたのである!
まず、『ナムチャ・バルワ峰(南迦巴瓦)』(海抜7787)弱拡と強拡を示す。




下写真は、今回始めて使う、待望の EOS-1 D Mark V と格闘している私である。


場所を少し移して、『加拉白至峰』(海抜7204)の観察にも成功した。

問題は、この『魯朗林海』の高度である。海抜4700メーターほどの高度で、ここに写真撮影と日本画の下絵描きに3時間ほど熱中していたのである。この前後も4000メータほどのところで3時間ほど過ごしている。
そして、その結果が、『個人的出来事 第87話 高山病の貴重な体験』となったのである。

では、この続きは、また明日。