魔女界にプロ野球チームを作ろう!!
特別編2「銅像なんて辞めた」

 広島にある平和記念公園。ここは原爆投下以前は繁華街だった。そんな所に匠の案内でミーナ、どれみ、おんぷ、ももこがパック旅行みたいな感じで歩いている。ガイドは匠。5人は原爆の子の像の前に立った。
匠「これは、原爆症で13歳の若さでこの世を去った佐々木貞子さんがモデルになっているんよ。千羽鶴は願いを叶えるっていうのを信じ、1200を越す数の折鶴を作ったけどけども結局は亡くなってしまった」
ミーナ「ねえ匠。あの銅像が少し光ってない?」
匠「まさか、太陽光か何かだろう」
どれみ「光の粒が広がって。えーっ!」
光は銅像を包んでいった。そればかりか銅像から人間になっていくではないか。その人物はジャンプして降りて来た。
???「こんにちは!広島にようこそ!私の名前は貞子。しばらくの間よろしくね」
匠「貞子さん、世界の平和を見なくていいんですか?」
貞子「やってらんないわよ!アメリカとイギリスが中東で戦争始めて、日本国憲法に背いて自衛隊を海外派遣して…。あげくの果てに劣化ウラン弾という核兵器を使って。私が無駄に立っているだけって近頃は感じて。今日だけ、仏様から下界に降りていいと」
匠「で、体がないから原爆の子の像に降りたと?」
ミーナ「天国からわざわざ…でも1日しか戻ることができないんじゃない。私のお母さんは元気だった?」
貞子「お母さんって誰?」
ミーナ「キャシーっていうの。知らないなら良いわ」
貞子「キャシーさん…。あ…!あの優しそうなお姉さんの娘さん。あなたがそうなのね」
どれみ「ミーナ選手のお母さんを知っているんですか?」
貞子「勿論よ。よくクッキーやケーキを焼いてくれるわよ。とても優しい人」
ももこ「わざわざ下界に来るなんて、かなり不満があるみたいね。良かったら今日1日付き合ってあげるよ」
貞子「本当!?嬉しいありがとう。じゃあ、まずは資料館の私のコーナーを見てみたい」
匠「あれか、よっしゃ!もう一度資料館に入館するで」

 広島原爆資料館西館の一番奥にそのコーナーはある。
貞子「あれ?私の折った鶴はこんなに小さかった?そう、あの時は手が麻痺して思う様に動かなかったわね。とても歯がゆかったわ」
ももこ「ここに縫い針で作成したって書いてあるけど、本当なの?」
貞子「事実よ。手がゆうこときかないから仕方無かったの」
匠「半分は隣の患者さんに手伝ってもらったんよ」
貞子「なんで、君はそんなことを知っているのよ」
匠「わしの仕事は新聞記者。だから、調べるのは得意だ。名前は確か…」
貞子「うわっ!君代ちゃんだけには迷惑かけたくないの」
貞子は匠の口を塞ぐ。
匠「ふんがが(わかった)」
おんぷ「他の人の迷惑だわ。外にでましょう」

さっきまで無口を保っていたおんぷが口をひらいた。
貞子「君は誰?さっきから黙っているけど…」
おんぷ「私は国際女優を目指しているのよ。あなたとは性格が合わないわ」
どれみ「おんぷちゃん、ここで瀬川おんぷは無しだよ。平和のシンボル少女としては、おんぷちゃんより有名人よ」
匠「ほうや、春風の言う通り。大先輩の前で何言っとるん」
ももこ「アメリカにもサダコの銅像はあるけど…。ごめんなさい!馬鹿なアメリカ人が右腕を切断してしまって。本当にごめんなさい!」
貞子「あなたが悪いんじゃないから良いわ。ほら、頭を上げて!」
どれみ「許してくれているよ、ももちゃん」
ミーナ「タイムリミットは明日の午前零時まで。明日は私たち、プロ野球の試合があるの。あたしはこう見えても野球選手だから明日は先発で投げるわ。天国から母と見ていてね。あたしのピッチングを」
貞子「キャシーさんと…。わかった、約束するわね」
貞子は小指を立てて差し出す。
ミーナ「指切り…。おじいちゃんから教わったわ。約束破ったら針千本飲まないといけないのよね」
お決まりのおまじないを言った。
匠「ミーナ、約束したからには最高のピッチングをしないとな。罰が当たる。針千本の代わりにな」
どれみ「貞子さん、次はどこに行く?」
貞子「お腹すいたわね」
匠「ハンバーガーでも食べるか。本通りに行くぞ」

 ハンバーガー店。匠たちは決まったのだが、貞子が決まらない。
匠「照り焼きバーガーにしておけば?たぶん、口に合うと思うよ」
貞子「じゃあ、それで」
どれみ「貞子さん、席取っていようよ。匠さんが運んで来るから」

喋って行く内にあっという間に時間は過ぎた。
どれみ「空が灰色がかって来た」
貞子「一雨来そう。傘はあるの?」
ミーナ「ないわ。でも、今の世の中コンビニがあるわ」
貞子「コンビニ?何よ、それ?」
匠「長時間営業でしかも一年中休みなし!雑貨、文房具、銀行、お弁当や飲み物を置いてあってさらには独自の流通網を持っている。ちなみに、アメリカから輸入されたお店のやり方なんだ」
ももこ「アメリカではガソリンスタンドの近くあるの。夜行バスの休憩所にもなっているの」
と言って匠は店内で人数分の傘を購入した。原爆の子の像の前に着いた頃、雨が降り始めた。
貞子「苦しい…とても苦しい」
匠「何!よし、わしの実家が近いからそこへ運ぶ。わしの背中の上に来い!」

 そして歩いて30分ぐらいして匠の実家に到着。貞子を匠は自分の部屋のベッドに寝かせる。
ももこ「病気の体で無茶するからよ!」
貞子「みんな…。これ…」
貞子がポケットから出したのは、5羽の折り鶴だった。
貞子「みんな、今日はありがとう。私もう行かなきゃ…」
貞子の体が光輝く。そして、消えていった。
どれみ「貞子さん。1日だけだったけど…。もの凄く楽しかった。思い出をありがとう」

特別編2「銅像なんて辞めた」
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