魔女界にプロ野球チームを作ろう!!
特別編「1945広島… 。」
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 しずかは魔女見習い服に変身する。憲兵に内緒で箒を取り出し、空を飛んだ。これは明らかに当時の傍聴法違反者である。
 アメリカのグラマン艦載機とスピード勝負して、見事に勝ちをもぎ取った。やるたびに憲兵にもみじが怒られていた。そして、しずかも後から物凄く怒鳴られるのであった。
 しかし、敵を恐れぬこの少女に淡い初恋が訪れる。戦局悪化によって、客も少ないもみじの店。その扉を開けたのは、17歳くらいの兵士の格好をした青年だった。その青年兵はいつも、卵丼を注文した。その格好は陸軍航空隊の証である白マフラーをしていた。しずかは少し頬を赤く染めながら、卵丼を出していた。そして、いつももみじに
「恋するのを悪いとはいわん。しかしあの青年はいつか神風の知覧基地に配属になる。もし、そうなったらうちらには無事に敵を倒せるように、と祈るしか無い」
「うん…」しずかは上の空で答えた。
 数日後、彼は出撃し沖縄の沖に浮かぶ敵空母を轟沈した。ラジオのニュースで知ったしずかは、その夜涙が枯れるまで泣いた。もみじの妖精フフが声をかけるが、無視された。彼女の妖精ハハも心配そうな表情だ。
 毎晩のように、空爆が行われ岩国市にある重工業地帯が焼け野原になり、沖縄では悲劇の地上戦でアメリカに占領された。(筆者:沖縄の方ごめんなさい)

 そして…8月に入り、もう食堂をするどころではなくなった。
もみじは「すぐに荷物をまとめろ!お前も魔女界へ連れて行く」
しずか「ええっ!うちが魔女界に住んでいいの?」
もみじ「女王様も認めておられ、今朝命令文が送られてきた。広島を離れるのはつらいけど、戦争が終わったらまた住もう」
しずか「わかったわ…」
比治山にあるもう一つの魔女界への入り口から魔女界へ向かった。

 1945年8月6日午前7時15分。アメリカの重爆撃機B29が6機確認され警戒警報が発令される。もし、この時原子爆弾『リトル・ボーイ(かわいい青年の意)』が投下されていたら縦穴式防空壕に入っていた大勢の人は助かったかもしれない。しかし、市民達は空襲はないと思いいつも通りの生活がスタートした。
 午前8時00分、1機のB29が市内上空に現れる。このB29に搭載された機械によって、市内に今なおある相生橋が目標になった。
そして午前8時15分、リトル・ボーイは目標から150メートルずれた島外科医院の580メートル上空で爆発した…。
 広島の時間が止まったといわれている。 作者の卒業する小学校の当時の校舎は全壊した。

もみじ「広島がおおごとじゃ!しずか、次の笑う月の晩に広島に帰るぞ!!」
しずか「ええっ!広島が大変なの?わかったわ、荷物を準備しておきます」
 そして、その晩に二人は広島を久しぶりに訪れた。焼け残った防空壕で一夜を明かし、比治山山頂に立った。市内を見ると、そこには焼け野原が広がっていた。
しずか「こっ、これは…いったい何が起きたの!?マジョモミジ早く来て!!」
もみじ「アメリカの魔法堂からの連絡だ。アメリカ政府は広島に新型の原子爆弾を使用したと発表した。知りあいの魔女が言っていた。そして…『やはり街が消えましたか』と言ったよ」
しずか「そうなの…。なんで人間は戦争するん。うちは決めた。何が何でも魔女になる。人間なんてもう嫌!!」
もみじ「そうか。じゃ、魔女界に戻って…」
しずか「人間は嫌いだけど、広島の街の復興を見てから魔女界に帰るの。だって機会を与えたいじゃない。一応、お世話になったし」


魔女界にプロ野球チームを作ろう!!
特別編「1945広島… 。」

-<完>-
本編第7話『擬宝珠負傷!!ホエールズ大ピンチ』へ…
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