魔女界にプロ野球チームを作ろう!!
特別編「1945広島… 。」
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 1945年、広島に原爆が投下された。この破壊兵器により、14万人の尊い命が奪われた。しかし、その中に一人の魔女と魔女見習いがいた。
“「ヒロシマ」の悲劇”
これは魔女界に語り続けられている、美しい師弟愛のドラマである。

 話は少しさかのぼって、1944年4月。人間界では戦争の真っ只中だった。連日連夜空襲警報が鳴り、市民は恐怖に怯えた。東京、名古屋、大阪、神戸、福岡…。日本の重要都市の半分が空襲で焼け落ちた。当時軍港のあった、呉市。空襲で焼け落ちた。広島市民は首をかしげていた。
どうして広島は来ないんだ、と。

 そしてこの広島に一件の食堂があった、岸和田食堂。店長の名は岸和田もみじ。歳は20代〜30代の女性だった。違法営業でいつ摘発されるかわからない店だった。(注意…この頃の食堂は外食券がない人に売っていけないことになっていたが、彼女は誰彼構わず料理を出していた)
 彼女は昨年末に越して来たばかりだった。店の前の通りを日本兵の小隊が行進する。 それをよけながら、店に入る少女がいた。彼女の名は井藤しずか。
「マジョモミジ、いる?」
と、しずかは声をかける。
もみじ「しずか。店の中を掃いてくれるか、今日も客がたくさん来る。忙しくなるぞ」
 午前7時開店。学生たちに注文を取りに行く。この店の人気メニューは肉じゃが。今日も売れ行きは好調である。しずかは学校でイジメにあい、登校拒否になった。家からも勘当され、あてもなく広島の街にフラフラとやってきた。数年前に岸和田でもみじと会ってから、居候していた。しかも、彼女は魔女見習いである。
 あれは去年の満月で笑う月が出た晩のこと。もみじは魔女界に材料を買いに魔女界に行き、帰ってきた。その時、しずかが、格好から魔女と見破りマジョガエルになった。しずかはもみじをマジョガエルにしてしまった時、何度も謝ったという。
 働き者のしずかは9級試験で飛び級で一気に5級になった。
 年が明けて、戦局は激しくなってきた。岸和田食堂の窓ガラスにも「米」の字に紙が貼られた。クーラーの無い時代、食堂内はうだるような蒸し暑さ。ある日しずかは街を歩いていた。もみじの食堂の様な店はたくさんあった。その店を通り過ぎようとした時…。
男「バカ野郎!いつになったら、借金を返すんだ。もう、半年も待っている。ええ加減にして貰わん困るで」
店主「もう少し待って下さい。返そうにもお金がないんです」
男「やかましい!!材料を取り上げますよ!」
そんな光景を横目で見ておつかいを終えた。閉店後、
しずか「今日、おつかいに行ったじゃん。そしたら、借金に困っていた人がいたんよ、どうにかならんの?」
モミジ「うーんほうじゃねぇ、どうにかならんもんかねぇ。山田さんの食堂とは仲もええし」
しずか「魔法を使っちゃだめ?」
モミジ「ええけど、手助け程度にするんよ」
しずか「は〜い」

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